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刻まれる歴史 建物財産標

  • 刻まれる歴史 建物財産標
  • 刻まれる歴史 建物財産標

木造駅舎探検の最後は、建物財産標です。現代の備品カードのようなものですが、ほとんど見逃してしまうようなものです。羽前成田駅は正面玄関の右側の柱に、西大塚駅はホーム側から事務室に入る柱に付けられています。

西大塚駅のモノはプラスチック製に代わっていますが、羽前成田駅のモノは木片のまま残っています。羽前成田駅の文字はかすれてしまっていますが、物の「勿」、財の「貝」の字が、かろうじて読み取れる状態で残っています。

西大塚駅は106歳、羽前成田駅も2022年で満百歳になります。建物財産標に刻まれているのは駅舎の歴史と共に人々の人生と街の歴史。二つの木造駅舎には、これからどのような歴史が刻まれていくのでしょうか。そして人の暮らしと故郷はどうなるのでしょうか。

駅舎は魅力にあふれています。17回にわたって連載してきましたが、こんな風に気付かされるのも、二つの駅舎が残っているお陰です。改めて多くの人に両駅をじっくりと観ていただくきっかけになれば幸いです。

雨戸の敷居跡

  • 雨戸の敷居跡
  • 雨戸の敷居跡

ラス前の最後に、気になっている箇所をもう一つ。それはホーム側の雨戸の敷居跡です。両駅共に、ホーム側に雨戸あるいは木戸を建てて風雨を防いでいたようです。けれども西大塚駅には中間に鴨居があって、木戸がそのまま打ち付けられています。成田駅にはビニールトタンで囲っていた写真が残っていますが、鴨居らしきものがあったようには見えません。西大塚駅で打ち付けられている木戸は、古民家の重厚なふすま戸のようで、風雪に立ち向かった当時の人たちの力強い姿が見えてくるようです。ホームに出たら、ちょこっと上を眺めてみてください。

メモリアルオブジェ ベンチと木製はしご

  • メモリアルオブジェ ベンチと木製はしご
  • メモリアルオブジェ ベンチと木製はしご

このシリーズもいよいよラストに近づいてきました。ラス前に、今も両駅に残っている貴重なモノを紹介しましょう。羽前成田駅のベンチと西大塚駅の木製はしごがそれです。この写真はいづれも、1986年(昭和61年)9月5日に撮影されたものですから、34年の間、この場所に鎮座していたことになります。同日に、長井線の全駅を撮影していますので、第3セクター移行に係る準備作業であったことも考えられます。ちょっと一服して、木造駅舎の生き証人・メモリアルオブジェを眺めてみてはいかがでしょうか。

 

長井線各駅の当時の写真はこちらからご覧になれます。

「山形鉄道駅舎今昔物語」⇒ https://flower-liner.jp/yamatetsu_history/

 

小屋根の持ち送り

  • 小屋根の持ち送り
  • 小屋根の持ち送り

羽前成田駅と西大塚駅には、小さな屋根が幾つか付けられています。その中でも、西大塚駅の待合室西側に付いている小屋根は、とても興味深いものです。第一に、これで十分に雪雨除けになるのかと思われるほどに、屋根の幅が狭いことです。第二は、屋根を支える持ち送りの形状にあります。この形状は、「待合室 ベンチの美脚」で紹介したものに類似しています。西大塚駅は西風が特に強いと思われますが、このいかにもか弱い小屋根は100年の風雪に耐えてきたのでしょうか。

破風板の刻印

  • 破風板の刻印
  • 破風板の刻印

破風板(はふいた)は屋根の切妻部分(雨樋が付いていない屋根の端)の板です。羽前成田駅では、この破風板に四角形の意匠が施されています。長年風雪にさらされて、今にも消えてしまいそうな刻印のような彫り物がそれです。破風板に2つ並んだ四角形。それは駅舎全体の四隅にもあたります。単なる「粋」にとどまらない、鎮火や堅固など何がしかの意味が込められているように思えます。