木造駅舎探検の最後は、建物財産標です。現代の備品カードのようなものですが、ほとんど見逃してしまうようなものです。羽前成田駅は正面玄関の右側の柱に、西大塚駅はホーム側から事務室に入る柱に付けられています。
西大塚駅のモノはプラスチック製に代わっていますが、羽前成田駅のモノは木片のまま残っています。羽前成田駅の文字はかすれてしまっていますが、物の「勿」、財の「貝」の字が、かろうじて読み取れる状態で残っています。
西大塚駅は106歳、羽前成田駅も2022年で満百歳になります。建物財産標に刻まれているのは駅舎の歴史と共に人々の人生と街の歴史。二つの木造駅舎には、これからどのような歴史が刻まれていくのでしょうか。そして人の暮らしと故郷はどうなるのでしょうか。
駅舎は魅力にあふれています。17回にわたって連載してきましたが、こんな風に気付かされるのも、二つの駅舎が残っているお陰です。改めて多くの人に両駅をじっくりと観ていただくきっかけになれば幸いです。