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腕木の欠き込み

  • 腕木の欠き込み
  • 腕木の欠き込み

垂木 (たるき)や庇 (ひさし) などを支えるために、柱または梁 (はり) などから横に突き出させた横木を腕木と呼ぶそうです。この腕木の意匠にも両駅の特徴を見ることができます。写真からわかるように、羽前成田駅の腕木は大きく欠き込まれています。それに対して西大塚駅のモノは小さく、その曲線の形状は待合室のカウンターの持ち送りにも似ています。

 

【おらだの会】長井線応援キャンぺーでは、西大塚駅でパネルが展示されましたのでご覧いただいた方もおられるかと思いますが、「駅舎探検(成田駅VS西大塚駅)」を再開します。

出札口 銅板葺きの付け台

  • 出札口 銅板葺きの付け台
  • 出札口 銅板葺きの付け台

  いよいよ出札口の窓口部分です。仙台からおいでになった寿司職人の方から、「この台は付け台といって、大切な人に品物をお渡しするときに使うものだ。」と教えてもらったことがあります。

 成田駅の付け台は銅板でくるまれているのに対して、西大塚駅は木製の台の中央部分に金属板をはめ込んでいます。台座がとても美しい曲線を描いています。大事なものをお渡しする、それこそ神聖な場所といった感じがします。

 ところで成田駅の出札口は2ケ所あって、その1ケ所は銅板葺きではありません。駅に残る昭和19年の写真を見ると、この当時は銅板葺きの窓口しかなかったようです。いつの時代に窓口が2つになったのでしょうか。成田駅の出札所に並ぶ新・旧の付け台は、鉄道盛衰の語り部なのかもしれません。

出札口 寄木細工の美しさ

  • 出札口 寄木細工の美しさ
  • 出札口 寄木細工の美しさ

両駅の出札口をご覧ください。素人の私でもわかる点から説明すると、丸棒状の桟は西大塚駅が6本に対して、成田駅は5本。しかも西大塚駅では、中央の付け台がある箇所は桟が1本少なくなっており、切符等の受け渡しがし易くなっています。

 

西大塚駅の出札口は、しっかりとした桟で区切られた中に、枠が入ったガラス戸がはめ込まれたように見えます。それぞれの木の色合いが浮き上がり、寄木細工のような荘厳な雰囲気さえ漂っています。それに対して成田駅のモノは、普通の造りのように見えます。

 

また装着されているガラスを比べると、成田駅のモノは古式ガラス特有のゆがみがありますが、西大塚駅にはゆがみが感じられません。また塗料の状態などを見ても、西大塚駅の窓口は、ある時点で修繕の手が加えられたように思いますが、皆さんにはどのように見えるでしょうか。

待合室 荷物受渡し所の彫り板

  • 待合室 荷物受渡し所の彫り板
  • 待合室 荷物受渡し所の彫り板

待合室のホーム側に、荷物受渡し窓口があります。1984(昭和59)21日に長井駅での手・小荷物取扱いが廃止されたとのことですから、各駅での扱いはそれ以前に廃止されたのではないかと思われます。羽前成田駅のモノは、欄間風に一枚板を彫って仕上げられたものだそうです。西大塚駅には古いレールが置かれています。アート風で一味です。ここで気になるのが、西大塚駅のガラスや桟などが羽前成田駅のモノよりも新しく見えることです。

待合室 カウンターの持ち送り

  • 待合室 カウンターの持ち送り
  • 待合室 カウンターの持ち送り

待合室と言えば出札口ですが、駅舎探検のカメラは、下からのぞき込む趣味があるようです。今回は、カウンター下の持ち送りに注目してください。

羽前成田駅のモノは、古代文明の遺跡を想起させるような幾何学文様の切り込みが施されています。それに対して西大塚駅のモノは、さりげない曲線で仕上げられ、しかも大小の持ち送りを配しています。

出札口は、当時の国鉄にとって最も大事な場所であったと思われますので、その施工についても詳細に指示されていたと思われます。とすると、両駅のこの意匠の相違は、8年間に生まれた建築様式の変化によるものと思われます。もちろんこの場所が、建築当時から手を加えられていないとすればですが。