アンテナ感度がいいと評されることがあるのですが、おもしろいものが目に飛び込んで来ることがあります。
東京にいてもそういうことはままありましたが、今回は山形にいてこその一品です。
崎戸のコスモス 井上郁子著
出版社は一粒社(山形市)
新聞で作家の角田光代と井上荒野の対談の記事を見つけ、読み進めるうちに『崎戸のコスモス』の存在を知ったというわけです。
さっそく図書館で検索をかけるとちゃんとヒット。山形市で出版された本がヒットしなかったら泣けてきます。
そのまま取り置き予約の後、図書館へ足を運ぶとカウンター係の人が素敵な豆本を手渡してくれました。
豆本というとオモチャっぽいイメージが強かったのですが、『崎戸のコスモス』はとても読みやすい装丁もさる事ながら昭和の文学史の世界へ引き込まれるような内容の随筆。
作家の妻の雰囲気をたっぷりとまとった文体と、食べ物の描写に魅力されてしまいました。
そう作者は同じ井上でも山形の人ではなく九州出身。井上光晴の妻にして井上荒野の母という作家2人を支えてきたお方です。
どんな縁でこの本を出版することになったのかは推し量るよりないのですが、一粒社は文芸評論家の笹沢信が立ち上げた出版社ということがキーの様な気がします。
笹沢氏(2014年逝去)とともに一粒社もなくなってしまったのか、一粒社の本を買うすべもなくいろんなことがもったいなく思われるのでした。
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