車寄せから待合室に入ります。待合室の見所もいろいろありますが、私のイチオシはベンチの脚。羽前成田駅の脚は、何の変哲もない四角の板材。それに対して西大塚駅の脚は、厚板を見事な曲線を描きながら欠き込んでいます。果たしてベンチの脚の規格まで、発注の際に指示するものでしょうか。隠れた所に職人さんの「粋」を感じます。これには羽前成田駅も脱帽です。さてさて、うら若い女性がベンチに座る。斜めに流した美脚をベンチの美脚が支える。何とも色っぽい風景ですなぁ。
車寄せ 金具VS金具
車寄せ探検の最後は、ここに使われている錆びた金具。羽前成田駅のモノは方杖(ほうづえ)のような金具であり、西大塚駅のモノは屋根の上に取り付けられた雪止め金具である。地元の棟梁に聞くとそれぞれ「化粧持ち送り」、「トンボ」と呼んでいるとのこと。
成田駅の金具は同じようなモノがホーム側にも使われているが、それには中の輪(〇)はない。中に組み込まれた輪は、何のために作られたのであろうか。また成田駅の屋根は縦葺き(瓦棒葺)のため、横葺きである西大塚駅のような雪止め金具は設置されていない。なぜ、成田駅は縦葺きで、西大塚駅は横葺きなのであろうか。駅舎が配置された方角と雪の多少によるものであろうか。
100歳の木造駅舎にあって、全く違和感を感じない程に錆ついた二つの金具。この金具を選択し、工事をした職人はどんな人であったろう。モノには物語があるものだ、と思う。
初のオンラインツアー
9月19日、今はやりの「オンラインツアー」御一行様(?)が羽前成田駅にもやって来ました。やまがたアルカディア観光局と山形鉄道が共同で企画したもの。成田駅では山形鉄道㈱の方言ガイド・清野さんが駅舎を案内。当日は、駅茶で写真展を開催中で、おらだの会の齋藤会長も急遽オンラインに引っ張り出されました。
ツアー参加者の中に、4年前の「駅舎に泊まろうツアー」で成田駅においでになったMさんもおられ、思わぬ再会に感激。たった一度の出会いが縁で、今も長井線を応援してくれていることに感謝です。これからも成田駅での「縁」を大切にしていきたいものだと思いました。
車寄せ 方杖&梁の欠き込み
方杖(ほうづえ)とは、柱と梁(はり)などの横架材の補強のためにつけられる斜め材のことです。西大塚駅の方杖に対して、成田駅の大きさと意匠の違いがわかります。さらに梁の先端部分を見てください。成田駅の梁の先端は大きく欠き込みがありますが、西大塚駅の欠き込みは小さくてほとんど気づかない程です。この欠き込みの差異は、随所で確認することができ、両駅の基本的な違いのように思われます。