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長井線リポート(10) 車両基地の陰で

  • 長井線リポート(10) 車両基地の陰で

 荒砥駅には転車台があったが、その場所は今、車両基地になっている。車両基地の陰に、廃車となった初代ダリア号が置かれている。昭和63年10月25日、山形鉄道開業に合わせてモダンなシンボルカラーでさっそうと登場した初代ダリア号は、仲間に先んじて引退することになった。

 

 車両基地の陰にひっそりと佇むその胸に、去来するものは何であろう。開業時の人々の熱い声援であろうか。それとも仲間と共に走り続けた日々であろうか。あるいは幻のままに潰えた左荒線の夢であろうか。

 

  ボクハ  ギンガテツドウニ  ナッテ

  ソラヲ  カケメグリタカッタ

  イマデモ  ボクハ  ソノユメヲ  ステキレズニ

  キタノ  ソラヲ  ナガメテイル

2021.03.07:orada3:コメント(0):[長井線乗車リポート]

長井線リポート(9)  丸型ポスト復活物語

  • 長井線リポート(9)  丸型ポスト復活物語
  • 長井線リポート(9)  丸型ポスト復活物語

 荒砥からの折り返し列車を待つ間、駅周辺の探検に出かける。今の荒砥駅は2003年(平成15年)4月に建替えられたものであるが、ステンドグラスからの光は、高い天井と相まって一瞬、教会に来たような錯覚を覚える。通路には昔の貴重な写真などが掲示され、駅資料館もあって楽しい時間を過ごすことができる駅である。

 

 荒砥駅は、2002年(平成14年)旧長井駅と共に、東北の駅百選に選定されているが、駅の正面には国鉄の時代の痕跡が見つけることができる。1986年(昭和61年)の写真に写っている丸型ポストが、新駅にも残されているのである。実は、山形鉄道のHPにある写真では、駅前のポストは角型になっているのである。それが、建て替えの際に再び丸型ポストを設置したと思われるのである。

 

 荒砥の方が成田駅においでになった時、「荒砥の駅ばぁ、あんげなあだらしぐしてしまってよぉ。」と語られたことがあった。けれどもこの地には、丸型ポストを復活させた人達がいたのだ。

  ソコニ アルノニハ ワケガアル 

  ソコニハ ヒトノ モノガタリガ アルノダロウ

 

【おらだの会】古い写真は山形鉄道(株)提供。荒砥駅の角型ポストの写真は山形鉄道HPをご覧ください。

 山形鉄道HPはこちらから⇒ https://flower-liner.jp/yamatetsu_history/arato/

2021.03.05:orada3:コメント(0):[長井線乗車リポート]

長井線リポート(8) 旅の終わりに

  • 長井線リポート(8) 旅の終わりに
  • 長井線リポート(8) 旅の終わりに

「鉄橋をわたると君の家が見える・・・・」という歌謡曲があったな、などと思っていると、高架橋をくぐりながら荒砥駅へと進んで行く。鉄橋をわたる時のけたたましさが消え、速度を落として静かに、ゆっくりと左にカーブを切るのである。

 

故郷に帰る人にとっては、田舎弁にスイッチを切り替えるための時間であり、家族に何を話そうかと考える時間となるのでしょうか。そのゆったりとしたスピードは、私にとっては、旅の終わりを惜しむかのようにも感じられた。「終着駅は始発駅」という歌があったが、終着駅には他とは違う何かがあるようだ。

 

2021.03.03:orada3:コメント(0):[長井線乗車リポート]

長井線リポート(7) 鉄橋をわたる時

  • 長井線リポート(7) 鉄橋をわたる時
  • 長井線リポート(7) 鉄橋をわたる時

   列車は、フラワー長井線きっての撮影スポット・最上川橋梁に差し掛かった。1887年(明治20年)より東海道本線木曽川に掛けられていたものを、移設したものである。日本最古の現役鉄道橋として知られ、2008年(平成20年)に土木学会選奨土木遺産に、翌2009年には近代化産業遺産に選定された。さらに2015年(平成27年)には、「やまがた景観物語 おすすめビューポイント」にも選定されている。

   この鉄橋は、当時の荒砥町を中心とした人々の夢だった。舟運から鉄道の時代へという変革の波に立ち向かい、故郷の将来を懸けた運動の果てに実現したものだ。1923年(大正12年)4月22日、この鉄橋を一番列車が黒煙を吐きながらわたる姿を、村人はどんな思いで迎えたのであろうか。

   あれからもうすぐ100年になる。どれだけ多くの人々が、この鉄橋をわたったのだろう。故郷を離れる寂しさと、夢に向かって進みたいとする高揚感、帰省時の何とも言えない懐かしさと安堵感を、この鉄橋をわたる度に味わったのではないだろうか。車両の前面に立ち、ダブルワーレンの回廊をくぐらなければ、こんな感慨に浸ることもなかったであろう。長井線を訪れてくれた旅人は、鉄橋をわたる時に何を感じるのであろうか、教えて欲しいものだ。

        コノハシハ    ムラビトタチノ  ユメダッタ

        コノハシヲ    ワタッテ   ボクハ   ムラヲハナレタ

        コノハシヲ    ワタッテ    ワタシハ   フルサトニ   カエッタ

        コノハシハ    ナニヲ ツナイデ    イタノダロウ

【おらだの会】最上川堤防からの写真は、山形鉄道(株)提供

2021.03.01:orada3:コメント(0):[長井線乗車リポート]

一人暮らしを始めます

2月20日

・長井に生まれ18年になります。この辺りは、田畑が広がっており、とても自然豊かな場所です。若者からしたら、ちょっとつまらないと感じるかもしれません。私は今春の4月に、一人暮らしを始めます。この地を離れ、福島へ行きます。さびしくなったら、また戻って来ます。 

 

・久しぶりに来ました。何も変わっていなくていいなと思いました。来年から東京に行くので、来たくなったら戻って来ます。

 

 

【おらだの会】2月も末になると、旅立ちの時を迎えます。ご飯はちゃんと食ってるか、などとつまらない心配ばかりが頭をよぎったものです。口には出せずとも、大きくなって帰って来て欲しい、というのが今も変わらぬ親心でしょうか。

2021.02.27:orada3:コメント(0):[停車場ノート]