「駅」のはなし(7) 小停車場標準図

  • 「駅」のはなし(7) 小停車場標準図

 明治も後期になると鉄道網は飛躍的な進展をみせ、大都市や地方の中核的な都市においては豪華なあるいは地域の特徴を表現する駅舎が建設されるようになる。一方、大部分の中小の駅舎については、多数の建築工事に対応するため、木造駅舎の標準形式が数次にわたって提示されたという。

 ・明治31年(1898年) 『普通停車塲本屋及附属建物之図』『停車塲建屋定規』

 ・大正7年(1918年) 『小停車場本屋標準図』

 ・昭和5年 (1930年) 『小停車場本屋標準図』

 上の写真は、昭和5年の標準図の「第3号型」の図面である。残念ながらそれ以前の資料を確認する事ができなかったが、成田駅設計の基と考えられる。その注意書には「特殊ノ理由アルモノ及ビ特殊ノ事理アルモノハ別ニ設計スルモノトス」「建設地ノ状況ニ応ジ些少ノ変更ヲナスコトヲ得」「待合室事務室ノ桁行長サハ必要ニ応ジ適時増減スルモノトス」とある。

 図面はこちらから → 国鉄 木造駅舎の図面  小停車場本屋標準図 

 

 フラワー長井線には西大塚駅(大正3年開業)と羽前成田駅(大正11年開業)の2つの木造駅舎が残っている。両駅ともに標準図をもとに設計されたものであろうが、細部の意匠等の差異は大変興味深いものがある。そこには設計者と職人との意思があり、息遣いが聞こえてくるようにも思える。

 多くの駅舎が改修され、人々のドラマが演じられた駅舎が、もはや写真でしか見ることができなくなっている。そんな中で、100年を超えて当時の姿を残していることは驚くべき奇跡といえるかもしれない。そこには年輪を重ねてきた捨てがたい味と深みがあり、現代人をも郷愁の世界に誘う。「小停車場」に、もう一つのドラマが生まれつつあるのかもしれない。

 → 駅舎探検(成田VS西大塚):おらだの会

2025.12.22:orada3:[駅茶こぼれ話]

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