「駅」のはなし(4) 時間の革命

  • 「駅」のはなし(4) 時間の革命

 『駅のはなし』では、鉄道がもたらしたもう一つの変革に「時間」の概念の変革をあげている。それまでの日本では約2時間を1刻(とき)とし、半刻、小半刻(約30分)を設けていて、小半刻が日常生活における最小の時間単位であった。鉄道は、人々の生活の中にいきなり分単位の時間を持ち込んだというのである。

 

 鉄道の開通が契機となって、翌明治6年1月1日に今日の24時間制が導入された。まさに生活時間の革命である。ちなみに上の写真は明治5年東京(新橋)から横浜開業時の時刻表及び賃金表である。右の出発時間の欄に「刻」との混乱を避けるため、「時」ではなく、「字」の文字が使用されている。

 

 生活時間が短縮される一方で、鉄道の開設によって安全で迅速で安価な旅行が可能となった。それと同時に「旅」というものも変質してきたように思う。心にゆきかう由無し事を追いかけながら、ゆったりとした時間を過ごす場所を探しても良いのではないだろうか。

 

    旅  上      萩原朔太郎

  ふらんすへ行きたしと思へども/ふらんすはあまりに遠し

  せめては新しき背廣をきて/きままなる旅にいでてみん

  汽車が山道をゆくとき/みづいろの窓によりかかりて

  われひとりうれしきことをおもはむ

  五月の朝のしののめ/うら若草のもえいづる心まかせに

2025.12.13:orada3:[駅茶こぼれ話]

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