ゴールデンウィークも終わり、孫たちも帰京し、それぞれが日常の暮らしへと戻って行った。2025年の桜シーズンの閉幕にあたって、紹介したい桜がある。それは蚕桑駅の防雪林の間に植えられている桜である。山形鉄道を退職された友人から、その桜は平成5年頃、山鉄社員の手で植えたものであることを教えられた。
当時、山形鉄道は開業間もなく、国鉄OBやJRからの出向者、そして山鉄職員の間にはぎこちないものがあり、社長に対して組織改善の嘆願書なども出されたという。そんな時に、社員が協力して桜の樹を植えたのである。友人が入社間もない頃で、その後の職業人生の中でも、一番記憶に残っている事だと語ってくれた。
「みんなで桜の木を植えないか」と、最初に声を上げたのは誰だったろう。その声を上げるまで、その人はどれぐらい悩み、どれほどの勇気が必要だったか。さらに「みんなで一緒にやろう」と続けてくれたのは誰だったのだろう。組織の中で新しい風を吹き込むことは大変なことである。けれどもこの桜の樹は、そうした困難を乗り越えて植えられたのだ。
30余年の歳月が流れ、山鉄社員にもこの桜の由縁を知る人はいなくなっただろう。詐取事件や社員の大量退職による減便運行など、山形鉄道を取り巻く環境は厳しい。社員の中にも辛いものがあることだろう。けれどもそんな後輩の姿を、この桜はいつも見守り、応援しているはず。「僕らはみんなで桜の樹を植えたよ」と。山形鉄道の皆さん、頑張れ!!
【おらだの会】 写真は山猫さん提供。
この記事へのコメントはこちら