その時、物かげからこの様子を見ていたおせきがかけよってきて、言いました。
「だんな様、わたしを人柱にしてください。おねがいです。人柱にしてください。」
「おせき、きゅうに何を言うのだ。そのようなことはゆるさん。」
「だんな様がみとめなくても、こぶしが原に身をなげて、神様におねがいするようにちかいを立てました。どうせ、死にゆくわたしでございます。どうか、一言おゆるしのお言葉をいただきとうございます。」
「おせき、お前は、それほどまでにわしらのことを・・・。おせき、お前の心、うれしく思うぞ。お前の命、決してむだにはしないぞ。」
「だんな様、おかみさん、長い間わたしをそだててくださってありがとうございました。このごおんは、一生わすれません。おふたりのしあわあせをあの世からおまもり申し上げます。それでは、さようなら。」
「おせきー。」
おかみさんは、柱にすがってなきくずれました。源右エ門は、その場に立ったままなきました。
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