HOME >   №1 悲しいおせきの話

悲しいおせきのお話(1)

  • 悲しいおせきのお話(1)

 この紙芝居は、致芳小学校3年生の児童がふるさと学習で学んだ地域の歴史をもとに制作したものです。それではかみしばいのはじまり、はじまり。

 

これは、1652年から1654年に致芳地区で本当にあったお話です。

 

悲しいおせきのお話(2)

  • 悲しいおせきのお話(2)

 昔、五十川の西館地区にすんでいた人たちは、田んぼに水を引くことができずになやんでいました。

 ある日、地区のしょうや様の手塚源右エ門という人が、

「せきを作って、田んぼに水を引こう。」

と言いました。

 

「よし、みんなでせきを作ろう!」

 

「作ろう!」

 

悲しいおせきのお話(3)

  • 悲しいおせきのお話(3)

 しかし、村人の強いねがいにもかかわらず、工事は、こぶしが原というところから、なかなか先へすすむことができませんでした。

 

「せきが、くずれたぞー。」

 

「あぶない、にげろ。」

 

「それにしても、こぶしが原は、どうしてもだめだ。昔からあそこは、まのふちとよばれていた所じゃ。水が多すぎて、土手が次々にくずれてしまう。」

 

「しょせんはむりなことだったんだ。」

 

「この土地に田んぼを作るなんて、ばかげたゆめだったんだ。」

 

 

「みんなの気もちは、ようくわかる。でもな、今おれたちがやらなければ、だれがやるんじゃ。」

悲しいおせきのお話(4)

  • 悲しいおせきのお話(4)

 その時、物かげからこの様子を見ていたおせきがかけよってきて、言いました。

 

「だんな様、わたしを人柱にしてください。おねがいです。人柱にしてください。」

「おせき、きゅうに何を言うのだ。そのようなことはゆるさん。」

 

「だんな様がみとめなくても、こぶしが原に身をなげて、神様におねがいするようにちかいを立てました。どうせ、死にゆくわたしでございます。どうか、一言おゆるしのお言葉をいただきとうございます。」

 

「おせき、お前は、それほどまでにわしらのことを・・・。おせき、お前の心、うれしく思うぞ。お前の命、決してむだにはしないぞ。」

 

「だんな様、おかみさん、長い間わたしをそだててくださってありがとうございました。このごおんは、一生わすれません。おふたりのしあわあせをあの世からおまもり申し上げます。それでは、さようなら。」

「おせきー。」

 

 おかみさんは、柱にすがってなきくずれました。源右エ門は、その場に立ったままなきました。 

悲しいおせきの話(5)

  • 悲しいおせきの話(5)
  • 悲しいおせきの話(5)

 それからしばらくして、おせきの思いが通じたのか工事はうまくすすみ、ぶじに「とちの木ぜき」がかんせいしました。

 

 しかしその後、工事がせいこうしたことで身分が高くなった源右エ門をねたむ人が、おせきを人柱にしたことをやくしょにうったえ、そのつみで源右エ門は、しざいとなってしまいました。