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「3・11」(83歳)から「3・11」(9歳)へのバトンタッチ…記憶の継承ということ

  • 「3・11」(83歳)から「3・11」(9歳)へのバトンタッチ…記憶の継承ということ

 

 「私は震災3年後の3月11日に生まれました。私の家族もここで亡くなりました。3月11日は家族としては悲しい日。でも、私の誕生日を祝うことでみんなが元気になれる」(17日付「朝日新聞」)―。東日本大震災で祖母(当時60)を失った小学4年生の佐々木智桜(ちさ)さん(9)は東京からの研修生を前にして、快活にこう話しかけた。この記事を目にした私は言い知れない感動に胸が高鳴った。12年前の同じこの日、私は71歳の誕生日を迎えた。そしていま、遺影の中の「おばあちゃん」しか知らない9歳児がまるで、記憶の風化に抗(あらが)うかようにその継承を続けている。

 

 「どんな悲惨な出来事も時と共に忘れられていく。でも、自分は誕生日という特別な日に起きた震災は忘れようがない。それなら、みんながこの日を忘れないようにする活動をしたい」―。あの大震災の2年後、東京都在住の国家公務員、井上能宏さん(当時38)の呼びかけで「311生(うまれ)の会」が産声を挙げた。私もさっそく、仲間入りした。その年の夏、誕生日が同じメンバ-25人は福島原発などのバスツア-を実現させた。当時、井上さんから寄せられたメ-ルを私は大切に保存している。こう書かれている。「そんな縁のある人たちをまず、311人集めたい。そして、この輪が最終的には日本人全体が当事者となるような広がりを見せれば…」

 

 あれから12年―。「寄る年波には勝てないな」と弱音を吐き始めたそんな時に突然、目の前に現れたのが「震災を知らない世代」の“語り部”―智桜さんだった。お母さんに誘われて語り部講習を受け、昨年12月に釜石市が認定する「大震災かまいし伝承者」に認定された。もちろん、震災後生まれの第1号で今年3月、釜石市の伝承施設「いのちをつなぐ未来館」でのパネル展示の解説でデビュ-を果たした。「外国の人にも伝えたい」とこの秋からは英語を習い始めた。

 

 「3・11」の後を襲ったコロナパンデミック、そして福島原発の汚染水の放出、沖縄・南西諸島で進む軍事力の強化、さらにはウクライナやガザでの悲劇…。まるで「何事もなかった」―かのように奈落(ならく)を転げ落ちる光景に戦慄する。見て見ぬふりをするという周囲の「無関心」がこれに拍車を加える。そんな不条理を背にしながらも、智桜さんはケロっとして言う。「伝えるのは私の役目かな」

 

 おばあちゃんは約160人が犠牲になった「指定避難先」の防災センタ-(釜石市鵜住居地区)に避難して命を奪われた。智桜さんはあえて、この悲劇についても触れた。「小学校で習った『てんでんこ』の歌を踊りつきで披露すると、手拍子がわいた」と記事は伝えている。勇気をもらった。絶望するのはまだ早いと叱られたような気持ちになった。そういえば、図書館とは「人類の記憶の貯蔵庫」とも呼ばれる。新花巻図書館の立地をめぐる”迷走劇”の中、この幼い語り部は問わず語りに、そのことの大切さを私たちに教えているのかもしれない。

 

 

 

 

 

(写真は来館者の質問に笑顔で答える智桜さん。釜石市の未来館で=12月17日付「朝日新聞」の紙面から)

 

 

 

<署名延長のお知らせ>

 

 

 新花巻図書館の旧病院跡地への立地を求める署名運動は全国の皆さまのご協力により、4,730筆という予想以上の賛同をいただくことができました。支援者の一人として、感謝申し上げます。行政側の動向が不透明な中、主催団体の「花巻病院跡地に新図書館をつくる署名実行委員会」(代表 瀧成子)は引き続き、全国規模の署名運動を続けることにしました。締め切りは2024(令和6)年1月末必着。送付先は:〒025-0084岩手県花巻市桜町2丁目187-1署名実行委員会宛て。問い合わせ先は:080-1883-7656(向小路まちライブラリー、四戸)、0198―22-7291(おいものせなか)

 

  署名用紙のダウンロードは、こちらから。 「全国署名を全国に広げます!~これまでの経過説明」はこちらから。署名実行委員会の活動報告などは「おいものブログ」(新田文子さん)の以下のURLからどうぞ。

 

 https://oimonosenaka.com/

 

 

 

 

 

「コストパフォ-マンス」という詐術…「事業費比較」調査予算を可決!!??

  • 「コストパフォ-マンス」という詐術…「事業費比較」調査予算を可決!!??

 

 「旧総合花巻病院跡地は仮に3億円の価値があるとすれば、それを使うということはやはり大きなことだと思うのです。駅前のスポーツ用品店敷地については、金額、昨日言いましたけれども、まだ決まっていない。両方とも決まっていないのですけれども、いずれにしても安いものです、旧総合花巻病院跡地に比べますと…」(令和4年12月定例会会議録から)―。14日開催された花巻市議会12月定例会最終日の審議の模様を議会中継で見ながら、私はちょうど1年前の上田東一市長の答弁を思い起こしていた。「思惑通りに進んでいるな」と内心、ほくそ笑むその心中を察しながら…

 

 この日の審議に付された「(新図書館建設候補地の)事業費比較調査」予算(約1,800万円)について、議長と欠席者1人を除いた25人のうち、原案に賛成18人VS.反対7人で、工期に約9カ月も要する予算案が可決された。今定例会前に結成された新会派「緑の風」(4人)は賛成に回った。この中には議会側の「新花巻図書館整備特別委員会」(令和2年12月解散)の委員長を務め、上田市長に対して病院跡地への立地を決断するよう鋭く迫った議員も含まれていた。何よりもこの当事者の口から今予算案に賛成した理由を聞きたいと思ったが、それはかなわなかった。

 

 一方、2人が反対討論、1人が賛成討論に立ち、久保田彰孝議員(共産党)は「立地候補地のひとつである病院跡地についてはすでに5年前の協定で市側が買い取ることが決まっている。これに対し、市側が主張する駅前用地は所有者のJR側から新たに取得することになり、税金の二重払いになる。これが“立地論争”の原点だったはずだ」と反対の理由を述べた。

 

 「行政の政策立案に当たっては最終的に“利益”があるかどうかが決め手になる。コストパフォーマンス、つまり費用対効果を考える際、その事業にもうけが生じるかどうかがポイントだ」―。3年前の令和2年1月、議会や市民の頭越しにいきなり、住宅付き図書館の駅前立地という構想が公表された直後、当時の副市長は「儲(もう)かる図書館(公共施設)」の正当性をこう強弁した。以来、図書館問題はこの「コスト」論争に傾く形で進められてきた。事業費の比較はもちろん欠かせないが、何より優先させなければならないのは「図書館とはどうあるべきか」という理念論争である。

 

 先月24日に開催された「新花巻図書館整備基本計画試案検討会議」で、JR側の土地譲渡価格が「1・3億円」程度と初めて数値で示された。まだ、正式契約は終わっていないが、病院跡地の取得価格は「3億円」余りと試算されている。市民の関心が一番高い「土地代金」が初めて、対比される形で表に出たと言える。「1・3」VS.「3」という数字の単純比較が今後、どのような形で市民に提示され、説明されるのか―注目したい。私が「コストパフォーマンスの詐術」と言った所以(ゆえん)はここにある。

 

 「事業比較業務は公共機関などが発注する調査設計や地質、測量、補償などの調査を請け負う、いわゆる『テクリス登録』に搭載されている専門業者数社に入札をお願いしたい。個別の企業名は明らかにできないが、いずれも図書館に詳しい実績のある企業だと思っている」―。市川清志生涯学習部長はこの日の質疑の中で、こう答弁した。いずれにせよ、誰の目にも公明正大なコンサルタントの「事業費比較」を期待したい。「どっちが高いか、安いか」―図書館という文化施設の立地の是非が「コストパフォーマンス」(費用対効果)に偏した原因の背後にうごめくのはやはり、“利権の構図”しかない、とこの日の質疑を聞いて確信した(8月17日、同23日、9月4日付当ブログ「新花巻図書館をめぐる”利権の構図”」シリーズを参照)。駅前立地を正当化するための”からめ手”からのアリバイ工作でないことを切に願いつつ…

 

 

 

 

(写真は18対7の賛成多数で可決された予算案=12月14日午前、花巻市議会議場で。議会中継の画面からの撮影のため、画像が乱れている)

 

 

 

 

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「下に~、下に~」…イ-ハト-ブ“大名旅行”の決算書~公費長者のNO1はなんと市議会議長、「議員報酬特別委」の行方は!!??

  • 「下に~、下に~」…イ-ハト-ブ“大名旅行”の決算書~公費長者のNO1はなんと市議会議長、「議員報酬特別委」の行方は!!??

 

 「1,072,910円」―。米国・ホットスプリングス市との姉妹都市提携30周年を祝う花巻市訪問団(10月26日~11月1日まで5泊7日、市長は公務のため4泊6日)に支払われた公費(出張旅費)の明細が開示請求した行政文書で明らかになった。公費出張者7人の総額はざっと470万円(1人平均約67万円)で、公費の“長者番付”のトップは花巻市議会の藤原伸議長の100万余り(冒頭)、意外なことに一方の首長、上田東一市長は二番目(653,680円)に甘んじた。いずれにせよ、止まるところを知らない物価高の中での今回の“大名旅行”について、爪に火をともす納税者の怒りは臨界点を超えつつある。

 

 今回の訪問団には一般参加者7人を含め計17人が参加。市から補助金が出ている「花巻国際交流協会」の関係者を除いた7人が「公務」としての出張扱い。藤原議長の内訳は航空費が往復で604,000円。「プレミアムエコノミ-」という豪華版で、次いで上田市長はエコノミ-料金で、379,000円。残り5人の193,000円も同じエコノミ-料金と思われるが、立場によって金額の差がなぜ、生じるのか―。行政文書の中でその根拠は明らかにされていない。

 

 さて、肝心の「公務」の内容は…記念式典(27日)と記念の灯篭流し(29日)などを中心に学校や図書館、国立公園の視察が組まれているが、帰国前日の30日には具体的な公務日程は見当たらず、「専用車でダラス市内視察」とだけ書かれている。佐藤勝教育長がダラス郊外の遊園地でガッツポ-ズする写真が関係者のFB上に掲載されたのはちょうど、この日のことである(11月1日付当ブログ参照)。さらに、今回の費用の中にはツア-のバス料金989,400円や添乗員の費用1,050,600円など200万円以上が含まれている。この分は一般参加者も負担しているが、いずれにせよ何ともぜいたくな“御成(おな)り”のご一行にはちがいない。

 

 ところで、国民の年間所得の中央値の50%に満たない所得水準の人々のことを「貧困家庭」という。厚生労働省の調査によると、少し古いデ-タになるが2018年時点の貧困線は127万円で、相対的貧困率は15・4%。日本の人口の約6人に1人が相対的な貧困状態にあることを示している。また、今月7日開催の12月定例会の議案審議の中で、新たに物価高騰に伴う支援金7万円の支給対象になる住民税非課税世帯が約1万世帯あり、当市の4分の1の世帯がそれに該当することも明らかになった。なお、1人1世帯の場合、年収93万円以下が非課税世帯とされる。1,072,910円(5泊7日)VS.930,000円(365日)という数式に置き換えてみると、今回の“顎足”(あごあし)付きの異常さが一目瞭然である。

 

 「パ-ティ-券収入をキックバック」―。永田町界隈では自民党派閥の政治資金パ-ティ-をめぐる金銭疑惑が連日、報じられている。足元に目を転じれば、たった「5泊7日」で大枚100万円の“公費”旅行を満喫した当の藤原議長が今度はこともあろうに開会中の12月定例会に「議員報酬調査検討特別委員会」の設置を発議。同特別委員会(高橋修委員長=藤原議長と同じ会派の「明和会」所属)は12日に開催される。

 

 その一方で、議長交際費の支出として「ホ市訪問用土産」(10月23日付)名目で6,930円が計上されている。それにしても随分とケチな手土産ではないか。しかも、それさえも”自腹”(持ち出し)ではない。加えて、今回の渡米の際の新花巻駅の往復も公用車っていうんだから…。いやぁ、まいった。”親方日の丸”(公費天国)バンザ~イ―ここにありである。ちなみに、当市議会の議員報酬(平成30年4月1日現在)は議員が339,000円、議長が431,000円、副議長が369,000円となっている。議員の大勢が報酬アップに傾く中、その是非をめぐる議論の行方が注目される。

 

 ここまで筆を進めているうちにはたと、心づいた。「ハイ、許可します」―。今議会における上田市長の「反問権」の行使について、単なる“八つ当たり”みたいな要求に対しても議長采配が余りにも甘いことに気が付いたのである。そうか、プレミアム付きのプレゼントに対する恩返しのつもりだったのか…つい、そんな勘ぐりさえもしたくなってきた。「据(す)え膳、食わぬは男の恥」ーとでも思っているのか。けっ。金銭感覚のこの麻痺状態はもはや、狂気の沙汰(さた)としか言いようがない。一方で「税金の無駄使い(二重払い)になる」という意見が市民の間に高まっているにも関わらず、花巻駅前のJR用地を図書館の建設場所として新規に取得する姿勢を、市側は崩していない。岸田内閣は崖っぷち、そしてイーハトーブもまた…。あぁ、無情!!??

 

 

 

 

(写真は出発に際し、同行者と集団写真に収まる藤原議長=10月26日、新花巻駅で。公開中の関係者のFB上から)

 

 

 

 

《追記》~「大名旅行のお仲間」を名乗る方から、以下のような長文のコメントが寄せられた

 

 

 花巻国際交流協会理事長佐々木史昭氏=花巻商工会議所副会頭=新花巻図書館試案検討会議委員=中央コーポレーション社長=JRTT(鉄道・運輸機構)有資格者名簿登載業者

 

 佐々木委員「駅の中でもいくつかの案が議論の中であったと思いまして、例えば駐車場の②の案とか、今概要版の左側の図面を見ているのですが、例えば橋上化のほうとくっつけられないかとか、駅前といってもいろいろなことが意見の中で出てきた中で、一番スポーツ用品店敷地の私有地を購入するというハードルがまずあるので、そのハードルの協議をするためにもある程度進めていかなくちゃいけないということでしたけれども、もし可能なのであればスポーツ用品店敷地を市有地にして、図書館を建てるというのが駅前案の中でも最も望ましい方向だということを私は主張させていただいているのに対して、皆さん特段の異論もなかったので、駅前案の中の第一案としてスポーツ用品店敷地にするというのは、議論の中では極めて全うで皆さん理解をしていただける内容で議論をしてきたのではないかなと私は思っておりまして」

 

 「私とあとお一人の方だけがスポーツ用品店敷地で、ほかの方々は駅前でもスポーツ用品店敷地ではないところだったとはどなたもたぶん考えていないんじゃないかと思うんですけれども、そういう中で市が進めておられるこの議論のまとめ方というのは、極めてリーズナブルで、大変それぞれの発言に配慮していただきながら進めていただいているなと、私は感じておりますけれども、どうなんでしょうか」(第12回試案検討会議の公表されている会議録より)

 

 こういう方も公費で米国に旅行したのでしょうけれど、高額の公金を使って庶民には関係ないことをしているのでしょうね。

 

 

 

 

 

 

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「図書館」×「橋上化」…●駅前戦争●攻防記(下)~12月定例会一般質問から

  • 「図書館」×「橋上化」…●駅前戦争●攻防記(下)~12月定例会一般質問から

 

 「新図書館のあり方を協議する(新花巻図書館整備基本計画)試案検討会議のメンバ-の中に、仮に駅前に建設されるようになった場合、その工事に直接携わることになる関係者は含まれているか」―。“駅前戦争”攻防戦の第2日目、トップバッタ-の羽山るみ子議員(はなまき市民クラブ)がいきなり、剛速球を投げ込んだ。この日の答弁者はどうしたわけか終始、市川清志生涯学習部長に委ねられた。「えっ、デザインということですか」と市川部長。「施工ですから、建設関係のことをお尋ねしています」…。波乱含みの質疑応答はこうして、スタ-トした。

 

 「メンバ-は司書だとか市民団体など各界の専門家で構成し、その中には商工会議所や青年会議所の会員も入っている。施行を請け負う可能性のある方もいらっしゃるが、個別の仕事については承知していない」―。市川部長の苦し紛れの答弁を受け、羽山議員がさらに食い下がった。「仮に駅前に立地する場合、『駅近接地』ということで、構造やデザインなどでの法律的な制限はあるか。また、施工業者を選定する際の指名制限はあるか」。市川部長はさらにシドロモドロになりながら、こう答えた。

 

 「(駅前の)立地予定地は線路から離れているので、そのような制限はないと思う。しかし、運行に支障をきたすような場合は作業制限みたいなものはあるかもしれない。いずれにせよ、施工時にはJR側との協議は必要だと言われている。なるべく、そうした制限がかからないような計画づくりをしたい」―。歯切れの悪いこの答弁の背後には“言質”(げんち)を取られまい、つまり後々に証拠を残さないための防御的な話法が見え隠れする。“負け戦(いくさ)”を意識した際に多用される傾向がある。

 

 「建設工事公衆災害防止対策要綱」(令和元年9月)という国交省告示がある。これに従い、JR東日本は線路周辺など鉄道用地に近い工事の安全を図るため、「線路近接工事」に係る指針を作成。その工事に参入できる「有資格業者」の名簿をHP上で公開している。直近の令和5年12月1日現在の花巻市内の該当業者は全部で11社(ほかにコンサルタント関係が2社)で、市川部長がほのめかした業者の一人も「試案検討会議」のメンバ-に名を連ねている。この辺の詳しい経過については、9月4日付当ブログを参照にしていただきたい。

 

 「1,800万円の大金を投じて、立地場所の選定はさらに9カ月先!!??」―。市民の間にもうひとつの“図書館戦争”が勃発しつつある。「駅前と病院跡地」の二つの立地候補地の事業費などの「比較調査業務」を委託する予算案が12月定例会最終日の14日に急きょ、上程されることが明らかになったからである。羽山議員は追及の手をゆるめないで、こうただした。

 

 「旧花巻病院跡地は建物の解体や土壌改良などが終了した時点で、市側に譲渡することは5年前の双方の協定で決まっている。つまり、図書館建設のためにこの土地を取得するということではない。駅前に立地するために、JR所有地を改めて取得することとは次元がまったく違う。今回の比較調査の中に病院跡地の取得費が算入されるようなことはないと思うが、確認したい」―。市川答弁の“迷走”がますます、度を増してきた。「あのう、そのう…。試案検討会議の皆さんからも(病院跡地の)金額も含めて、すべてをという話をいただいている。いずれ、中央の業者(コンサルタント)の調査を待ちたい」

 

 この日、二番手の鹿討康弘議員(緑の風)はJR花巻駅橋上化(自由通路整備)について取り上げたが、「前日の本舘(憲一)議員の答弁で大方は言いつくされているので、この事業によって、駅西口の開発にどのような波及効果が期待できるか。この1点だけをお尋ねしたい」と問うた。答弁に立った上田東一市長は「残念ながら、西口には市有地が少なく、この事業自体の効果はそれほど期待できない。民間開発の呼び水になれば…」と答えるに止まった。鹿討議員からそれ以上の質問はなかった。一方の東口には図書館の有力な立地候補地としての「病院跡地」(市有地)がある。その利活用についても是非、触れてほしかったのに…。 図書館と橋上化―この2大プロジェクトに要する費用はざっと、80億円に上る。

 

 「病院跡地への立地を求める4,730筆の署名が市側に提出された。この市民の声をどう受け止めているか」―。羽山議員は質問をこう、締めくくった。「応対したのは私。4千人以上の市民の皆さんの思いを重く受け止めたい」と市川部長は神妙に答えた。「市民の気持ちに寄り添い、行政側と真摯に向き合い、政策の是非を問い、その真意(本音)を引き出すこと」―2日間の論戦を聴いて、市議会議員の使命の重さを改めて知ったような気がした。

 

 行司軍配の手がこの日も議会側、いや正確には羽山議員に上がったように見えた。「決まり手は突き出し」というアナウンスが議場内に響いた。これはきっと、空耳ではないはずだ。と、思いつつもこの先の動向からは一時も目を離せない日々が続きそうな気配である。

 

 

 

 

 

(写真は試案検討会議に示された「譲渡希望範囲」。ビル群に囲まれ、隣接地は線路など鉄道用地に接している=「比較調査業務」資料から)

 

 

 

《追記―1》~論理破綻!!??

 

 

 「図書館は読書や調査に使われる。観光要素に強い影響を与える施設ではない」(6日付「岩手日報」)―。一般質問の中で、羽山議員が新図書館建設に伴う「まちなか回遊」の可能性を問うたのに対し、市川清志生涯学習部長はこんな的外れの答弁をした。同じ行政の口からはかつて、以下のような位置づけが明言されている(4日付当ブログからの再掲)。これを称して「論理破綻」というのであろう。

 

 「将来、総合花巻病院移転した後の跡地に郊外から図書館を移転させ、民間活力を活かす多機能的な複合施設として整備し、中心市街地における新たな都市機能とすることを目指しています」(平成28年1月、「都市再生整備計画―花巻中央地区/都市再構築戦略事業」)

 

 

 

《追記ー2》~●市民参画戦争●攻防記

 

 

 開会中の花巻市議会12月定例会で7日、「花巻市市民参画条例」の審議が行われた。原案に対して、一部会派(緑の風)から修正案が提出されたが、18対7の賛成多数で原案通りに可決された。当局側がまちづくりの上位条例である「花巻市まちづくり基本条例」(平成20年3月制定)を引き合いに出し、「参画の手法についてはこの条例にほとんど網羅されている」としたのに対し、修正案では「参画を積極的に促すような姿勢が弱い」と原案に反対の主張をした。

 

 「市の執行機関は、まちづくりに関する重要な計画の策定及び変更並びに条例等の制定改廃に当たっては、市民が自らの意思で参画できる方法を用いて、市民が意見表明する機会を保障するものとします」―。まちづくり基本条例は「市政への参画」(第12条)について、こう定めている。賛否両論が飛び交った審議の模様を見ながら、なんとなく“浮世離れ”の気分に襲われた。現在に至る新花巻図書館問題の迷走のきっかけになった「住宅付き」の図書館の駅前立地(令和2年1月)という“悪夢”を思い出したのである。この計画策定こそが”市民参画”などどこ吹く風、市民どころか議会側の頭越しに突然降ってわいた上田流「トップダウン」の実態だった。

 

 条例化などの手続きの整備の必要性は認めつつも例えば、新図書館をめぐる市政運営が本当に”市民目線“に立って行われているのか。今回の「比較調査委託」問題の議会軽視に端的に表れているように、目の前の政策点検こそが喫緊の課題ではないのか。当局と議会とが相互に監視し合う「二元代表制」の重要性を改めて、思い知らされた。

 

 

 

 

 

 

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「図書館」×「橋上化」…●駅前戦争●攻防記(上)~12月定例会一般質問から

  • 「図書館」×「橋上化」…●駅前戦争●攻防記(上)~12月定例会一般質問から

 

 「市側はなぜ、これほどまでに図書館の駅前立地にこだわるのか。もはや、ミステリ-としか言いようがない」―。花巻市議会12月定例会の一般質問が4日から始まり、初日のこの日は本舘憲一議員(はなまき市民クラブ)と新会派「緑の風」の伊藤盛幸議員が市民の間に広がる“疑惑の闇”の解明に迫った。

 

 有識者らで構成する「花巻図書館整備市民懇話会」が「花巻図書館への提言」を提出したのは10年以上前の2012年10月にさかのぼる。現上田(東一)市政に代わってからもすでに9年が経過。先月24日に1年2か月ぶりに開かれた「新花巻図書館整備基本計画試案検討会議」で、立地場所の決定までさらに9カ月間の延長が明るみに出た(11月24日付当ブログ参照)。これだけ長期間の行政の“停滞”はほとんど稀有(けう)な異常事態だとしか言いようがない。

 

 「将来、総合花巻病院移転した後の跡地に郊外から図書館を移転させ、民間活力を活かす多機能的な複合施設として整備し、中心市街地における新たな都市機能とすることを目指しています」(平成28年1月、「都市再生整備計画―花巻中央地区/都市再構築戦略事業」)―。本舘議員は新図書館の立地場所として、当初は「病院跡地」と明記されていた文書を示しながら、「その後、第一候補が駅前に変更になった。なぜなのか。JR花巻駅橋上化(自由通路整備)との相乗効果によって、駅前の活性化(賑わい創出)を期待したからだと理解するが、ほかに別の理由があってのことか」とただした。

 

 これに対し、松田英基副市長は「図書館と橋上化とがセットであれば、その相乗効果で一定の賑わい創出は期待できる。しかし、図書館が仮に病院跡地に立地されることになった場合でも乗降客の安全や駅西口の利便性を考え、橋上化は単独でも進めたい」と答えた。この答弁を受けた上田市長が「反問権」を行使し、気色ばんだ表情でまくしたてた。「別の理由とは一体、何ですか。まったく、理解できない。私たちは議会や市民の意見に謙虚に耳を傾け、それを尊重してやってきた」―。感情的な発言に対し、安易に反問権を認める議長采配にも首をひねりたくなった。

 

 続いて登壇した伊藤議員は冒頭で「憲法」の条文を取り上げながら、こう切り出した。「これまでの経緯を見ると、議会や市民への情報提供が十分だったとはとても言えない。当局ときちんと質疑応答ができるのは3か月一度の定例会だけ。しかも、立地場所の先延ばしの決定を公表したのは(11月24日開催の)試案検討会議の場で、議会側は寝耳に水だった。さらに、開催通知が委員に届いたのはわずか3日前で、20人の委員の半分近く(実際には9人)も欠席している。余りにも議会や市民を無視した拙速なやり方ではないか。憲法15条は(すべての公務員は)全体の奉仕者だと定めている」―

 

 さらに、伊藤議員は追い打ちをかけた。「高校生や若者世代の多くが図書館の駅前立地を望んでいるというデ-タがHP上などでひとり歩きしているが、科学的な根拠はあるのか。(一部の生徒を抽出するのではなく)全高校生(6校)を対象にしたアンケ-トを実施して得られる数値デ-タこそが科学的な数値と言えるのではないか。最近、病院跡地への立地を望む約4、800人(正確には4、730人)の署名が市長宛てに提出されたと聞いている。この数字こそが民意を反映した科学的な根拠ではないのか」―

 

 予想していた通り、上田市長の得意技―目くらまし的な“禅問答”がここで登場した。「科学的な根拠と言ってもよく分からないんですよね。とくに人文(科学)の分野では“科学的”な判断を下すのは難しい。哲学的というか、各人の価値判断が優先されるのでは…」(この辺の数字のマジック=詐術については27日付当ブログを参照)―。「頭隠して、尻隠さず」…行司軍配の手がさっと、議会側に上がったように見えた。

 

 

 

 

 

(写真は東北駅百選に選ばれているJR花巻駅前で繰り広げられる“駅前戦争”。戦火が収まる気配はない。出迎える賢治(のシルエット)が泣いている)

 

 

 

 

<署名延長のお知らせ>

 

 

 新花巻図書館の旧病院跡地への立地を求める署名運動は全国の皆さまのご協力により、4,730筆という予想以上の賛同をいただくことができました。支援者の一人として、感謝申し上げます。行政側の動向が不透明な中、主催団体の「花巻病院跡地に新図書館をつくる署名実行委員会」(代表 瀧成子)は引き続き、全国規模の署名運動を続けることにしました。締め切りは2024(令和6)年1月末必着。送付先は:〒025-0084岩手県花巻市桜町2丁目187-1署名実行委員会宛て。問い合わせ先は:080-1883-7656(向小路まちライブラリー、四戸)、0198―22-7291(おいものせなか)

 

 署名用紙のダウンロードは、こちらから。 「全国署名を全国に広げます!~これまでの経過説明」はこちらから。署名実行委員会の活動報告などは「おいものブログ」(新田文子さん)の以下のURLからどうぞ。

 

 https://oimonosenaka.com/