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賢治の里の図書館論議…「語るに落ちた」の巻!!??

  • 賢治の里の図書館論議…「語るに落ちた」の巻!!??

 

 「花巻の図書館建設に全国から署名を集めるというのはいかがなものか」―。1月30日に開かれた第14回新花巻図書館整備基本計画試案検討会議でのある委員の発言に耳を疑った。「イーハトーブ図書館をつくる会」(瀧成子代表)が今回から発言権のあるオブザーバーとして参加することになり、これまでの活動経緯の中で「病院跡地」への立地に賛同する全国からの署名が4,730筆に達したことに触れた。この発言はこれに関連したもので、当日の会議録が8日、HPに掲載された。発言内容を確認して、その真意にゾッとするようなおぞましさを感じた。

 

 「花巻市の図書館をつくるのにですね、あまり意味のない数字をあたかも大きく感じるような形でここに、あの委員会(「つくる会」のことか)の方が発言するというのはそれはそれで結構なことだと思うんですけども、事務方とするとですね、これをそのまま受け止めてそのまま書くというものは、やっぱりいかがなものかという気がいたします。例えば、花巻市民の方が何人要るかぐらいの情報だけにしてここに入れるように当局側が配慮するぐらいのことがあった方がいいのではないかと感じますがいかがでしょうか」(会議録から)

 

 当局側が「団体さんに活動シートを作っていただき、そのままご紹介している」と答えると、激した口調で言った。「このような書き方は私は反対いたします。それは議事録に残していただきたいと思っております。以上です」―。この執拗な語り口に私は逆に「全国署名」の反響の大きさにおののいているのではないかとさえ思った。思い当たるフシが多々ある。発言の主は有識者委員(公益財団法人花巻国際協会理事長)の肩書で、試案検討会議に名を連ね、終始「駅前立地」論を主導してきた経緯がある(2023年9月4日付当ブログ参照)。会議の後半で「語るに落ちた」瞬間があった。発言者はそのご当人である。

 

 「花巻にしかない宮沢賢治のかなり古い書籍とかがある、資料とかですね、それをぜひデジタル化して、それこそ宮沢賢治に興味を持った人は、世界中からアクセスすると花巻図書館のそのアーカイブにたどり着くという状態にするのがとてもいいのではないかと思っております」(会議録から)―。瀧さんが微笑みながら言った。「世界の賢治だからこそ、『イーハトーブ図書館』。だからまず、日本全国の賢治ファンに向かって、メッセージを発したということです…」

 

 なお、高校生から20代の若者の集まり「HANAMAKI・Book・Marks」(代表・照井春風さんと金野渉真さん。構成8人)もこの日から、オブザーバーとしての参加が認められた。

 

 

 

 

 

(写真は珍問答があった試案検討会議=1月30日午後、まなび学園で)

 

 

 

 

造形美も試される…美しい図書館!!??

  • 造形美も試される…美しい図書館!!??

 

 「屋根のついた公園」(岐阜市立中央図書館=3日付当ブログ)は大手旅行代理店「トラベルjp」が選ぶ「日本の美しい図書館8選/旅してでも行きたい優しい場所」の第3位にノミネートされている。複合施設「みんなの森 ぎふメディアコスモス」は世界的な建築家、伊東豊雄さんの手によって、図書館を含めた見事な造形美に創り上げられた。ちなみに、上位2か所は中嶋記念図書館・国際教養大学(秋田県)と東洋文庫(東京都)である。

 

 県産材のひのきが用いられた大屋根、近未来を照らし出すようなドーム型の空間、「グローブ」と名づけられた、クラゲのような照明傘…。実際に足を運んだことはまだないが、写真の数々を見ているだけで、イメージがどんどん、ふくらんでいく。県内外から訪れる観光客らの中にはその”造形美“をひと目見ようという人も多いという。伊東さんは設計に当たり、次の4点をキーワードに掲げた。余りにもきめ細かい設計に圧倒された。新花巻図書館の建設に資するためにも、その詳細を以下に記す。

 

 

●金華山や長良川に呼応する文化の森をつくります

 

・岐阜駅─長良川─金華山をつなぐ緑の拠点をつくることで、街に緑のネットワークが広がっていくことを期待します。
・金華山の生い茂った深い森に対して、この地域の文化や環境にふさわしい樹種を選びながら、多様性のある明るい森をつくります。
・240mの長さの並木道をつくることで、都市軸を強固なものとします。
・この場所が人々の生活の中心の1つとなるよう、柔軟な使い方が出来る外部空間を用意することで、市民の多様な活動を支援します。
・長良川の伏流水を利用したせせらぎをつくることで、様々な人の活動や生物の多様性を生み出します。
・広場や並木道が建物と連携し、まちなかの避難所として利用できるよう計画を行います。

 

 

●大きな家と小さな家を組み合わせることで、にぎわいのある「まち」のような建築をつくります

 

・計画地の広さを生かし、低層で敷地いっぱいに広がった大きな「まち」のような建物をつくります。
・図書館、市民活動交流センター、展示ギャラリーなどがそれぞれ別に組織されていたとしても、極力一体感を生み出すような視覚的関係をつくり、常にどこかがにぎわっている「まち」のような建築を実現します。
・この「まち」は点在する小さな家を大きな家で包み込むことでつくられます。
・「小さな家」はそれぞれ個性をもった親密な空間で、「大きな家」は全体をおおらかに包み込むシェルターです。この2つの家が重なることで、様々な選択性のある場所や環境がつくられます。

 

 

●自然エネルギーを最大限に活用し、消費エネルギー1/2 の建築を実現します

 

・小さな家としての「グローブ」と大きな家としての「木製格子屋根」が組み合わされることで、光や温熱環境の省エネルギー化に寄与します。
・建物直下に流れている長良川の伏流水をくみ上げ、その温度を十分に利用した熱源計画とします。
・全国的にみても日照時間に恵まれた敷地の特性を活かして、太陽光を十分に利用した計画とします。
・床面を輻射によって冷暖房する方式を採用することで、体感的に快適で気持ちの良い空調計画とします。
・上記項目や高効率な照明計画、最新の設備機器などを上手に組み合わせることで、建物において使われるエネルギーを1990 年の同規模建物と比べて「50% 削減」します。

 

 

●「 グローブ」と「木製格子屋根」を組み合わせることで大きな家と小さな家を実現します

 

<グローブ>

 

・この半透明で、大きくて、床から浮かんだ逆さまの漏斗形状のかさを「グローブ」と呼ぶことにしました。
・グローブは上部トップライトからの自然光をおだやかに室内に拡散させます。また、夜にはグローブ内に設けられた照明のシェードにもなります。
・グローブは上部に設けられた開閉式の水平窓を開けることで、自然な風の流れを生み出します。機械による空調ではなく、エネルギーをかけずに2階の大空間を換気することができます。
・グローブはポリエステル製の糸を3方向の軸で織み込んだ生地を中心につくられています。この生地を型にあてて熱成型した後、水平のロッド材を足しながらかたちづくられます。
・グローブには、その性能を最大限に発揮する為に、反射・透過率などを調整する薄い布地が貼られています。この円形や六角形の布地がそれぞれのグローブで異なる柄をつくることで、建物内でのサイン計画を補足する役割も持っています。

 

<木製格子屋根>

 

・木製の格子状の屋根は、ただの仕上げ材ではなく、構造材として働いています。
・この屋根は、120mm×20mm という街なかで流通しているようなサイズのヒノキ材を現地で積み重ねていくことでつくられました。最も分厚いところで、この材料を3方向に7枚ずつ、合計21 枚積み重ねています。
・それぞれの層は職人さんたちの手作業により、接着剤とビスを用いて強固に取り付けられています。
・グローブ上部でむくりあがったような全体の曲面形状は、木材に特別な難しい加工をすることなく、そのしなりを活かして、現地で形状になじむように積み上げながらつくられました。
・これらのヒノキ材は全て、岐阜の県産材である「東濃ひのき」が使われています。

 

 

 まさに「屋根のついた公園」そのもののイメージである。一方、新花巻図書館にかかる「事業費比較」調査に当たっても、土地利用計画や建物の内外観のイメージ図が作成されることになっている。「駅前か病院跡地か」―その回答はもはや、誰の目にも明らかであろう。豊富な森林資源に恵まれた当市においても、霊峰・早池峰を仰ぎ見る「屋根のついた公園」の実現は夢ではない。「駅前図書館」はそもそもの図書館固有の存在意義から問い直されなければならない。

 

 

 

 

(写真は地元の「東濃ひのき」を使った大屋根。館内に点在する11個の「グローブ」が小さな家をイメージさせる=インターネット上に公開の写真から)

「図書館とは屋根のついた公園である」…イーハトーブ図書館の初代館長はぜひ、この人に!!??

  • 「図書館とは屋根のついた公園である」…イーハトーブ図書館の初代館長はぜひ、この人に!!??

 

 「図書館とは屋根のついた公園である」―。このメッセージに思わず、うなってしまった。「みんなの森 ぎふメディアコスモス」の総合プロデューサーを務める吉成信夫さん(67)の信念である。メディアコスモスは岐阜市内にある市立中央図書館を中核とした複合施設で、2015(平成27)年7月にオープン。吉成さんは公募によって、初代図書館長に就任した。この施設は2年前、「図書館と市民運動を軸に地域の可能性を追及している」として、図書館の先進的な活動に送られる最高賞「ライブラリーオブザイヤー」を受賞した。なお、見通しがきく広々とした空間は著名な建築家、伊東豊雄さんが設計した。

 

 吉成さんと当市とは不思議な縁(えにし)で結ばれている。(宮沢)賢治好きが高じて、東京生まれの吉成さんは1996年、一家で岩手に移住。賢治が技師として働いた旧東北砕石工場に併設して建てられた「石と賢治のミュージアム」(一関市東山、1999年オープン)の開設をほぼ一人で担った。また、自然と共生する“賢治ワールド”を実現しようと2年後には葛巻町の廃校を利用した「森と風のがっこう」(NPO法人岩手子ども環境研究所)の開設にこぎ着けたほか、一戸町奥中山の「県立児童館」(いわて子どもの森)の館長なども歴任した。

 

 「ここにいることが気持ちいい。何度でも来てみたくなる。ずっと、ここに居たくなる」―。吉成さんが館長に就任したのはオープンのわずか3か月前のこと。図書館のコンセプトもまだ、固まっていなかった。「滞在型図書館」を目指した吉成さんはこの三つの方針を掲げ、「これまで図書館を利用していない人に、どうやったら利用してもらえるのか」ー試行錯誤を重ねながら、様々な試みを実現した。開館までの足取りも当市と酷似している。

 

 「私が館長として考えてきたことは、柳ヶ瀬商店街を活性化することに図書館がどうやって寄与で きるのか、ここに来た人をどうやって向こうまで振り向けられるのか、それから、どうやったら本を通じて商店主たちを浮かび上がらせることができるか、スポットライトを浴びせることができるのかということを考えたかったわけです」―。吉成さんは開館1周年の記念講演でこう述べている。現図書館が建つのは岐阜大学の旧医学部の跡地で、当市の立地候補地と同じ「病院跡地」という共通点もある。「柳ヶ瀬ブルース」が流れた柳ヶ瀬商店街もシャッタ—通りと化して久しい。「上町商店街」に置き換えてみると、「立地」論争に揺れる当市の新図書館問題の負の部分が透けて見えるような気がする。

 

 吉成さんの著作に『ハコモノは変えられるー子どものための公共施設改革』(2011年1月刊)がある。行政主導型からの発想の転換を促し、それを実践してきた“奮戦記”ともいえる記録である。1階部分には市民活動交流センターや多文化交流プラザがあり、「婚活」ならぬ本を通じた”としょこん”などユニークなイベントが盛りだくさん。禅僧に座禅の場を提供したことも…。名勝・金華山を望むテラス席は人気の的で、霊峰・早池峰山を遠望できる当地の「病院跡地」と立地環境も似通っている。吉成さんは前掲の講演会でこう力説している。

 

 「ここは、もともとは岐阜大学の医学部があったと ころです。ですから、中心市街地でもこんなに大きな場所が取れたのです。その中でどうやって今までにない人の対流を起こしていくのか、人がどうやって出会っていくのか、そこに本がどうやって介在していくのか。図書館というのは、今までのように閉鎖形で全部そこの中で完結しているというふうに考えるのではなくて、むしろ図書館の考え方が街の中に染み出していく、そして、街づくりというか、街の考えが図書館の中にも染み込んでくる、その両方が浸透しあうような造り方というのが、たぶん、これからいろいろな形で出てくるだろうと思っています」

 

 メディアコスモス全体の来館者数は年間、120万人を超えた。実に1日当たり3,300人近い数である。図書館を通じた「まちおこし」が着実に進んでいる。「吉成」流に学ぶ点が余りにも多い。

 

 

 

 

 

(写真は電球の傘を模した「グローブ」と名づけられた図書館の一角。子どもたちの居場所にもなっている。メインスローガンは「子どもの声は未来の声」)

 

 

「事業費比較」調査の怪(下)…えっ、これって“ひも付き”入札じゃないのか!!??

  • 「事業費比較」調査の怪(下)…えっ、これって“ひも付き”入札じゃないのか!!??

 

 「契約相手はどこか」―。新花巻図書館整備基本計画試案検討会議(座長・市川清志生涯学習部長)が30日まなび学園(生涯学園都市会館)で開かれ、冒頭、立地候補地の「事業費比較」調査について、「今月15日に入札が行われ、(請負業者との)契約が成立した」という報告があった。委員から促されてやっと業者名が明らかにされたが、あまり表には出したくないような素振りが逆に気になった。というわけで…

 

 「まさか、そんなことはあるまい。でも万が一のこともあるから…」―。入札情報を調べているうちに、落札した(株)大日本ダイヤコンサルト以外の入札参加業者10社すべてがJR各社と請負関係にある独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(JRTT鉄道・運輸機構建)の有資格業者だということが分かった。つまり、どの業者が落札しても、JR寄りの業者に落ち着くという構図だったことが明らかになった。

 

 「業者の選定につきましては、一般財団法人日本建設情報総合センターが運営する『業務実績情報システム』(テクリス)に登録される、図書館などの公共施設の基本計画策定業務に豊富な実績を有するコンサルタント、概ね実績上位10社程度による入札を予定しています」(令和5年12月20日の定例記者会見における上田東一市長の発言)―。たしかに、入札参加業者の中には図書館業務に実績を持つコンサルタントも含まれているが、すべてがJR寄りの業者だったということはどう見ても「公平性」を逸脱していると言わざるを得ない。

 

 いまや幻(まぼろし)と化した図書館構想があった。ちょうど4年前(2020年)の1月29日、「新花巻図書館複合施設整備事業構想」―いわゆる「住宅付き図書館」の駅前立地が市民や議会の頭越しに突然、公表された。多くの市民の反対で、「住宅併設」案は白紙撤回されたが、計画通りに進んでいれば2023年度中には完成・オープンする運びになっていた。ということは、今回の「事業費比較」調査のうちたとえば、「駅前立地」に関係する現況整理や土地利用計画などは図書館建設を施工する前提として、すでに終了していたということになる。

 

 公共施設の中でもとくに図書館は本体の造形美や周辺の立地環境が重要視される。JR側に偏した今回の入札手続きについて、ある市民はこう話す。「比較調査の公平性を証明するためには、図書館に特化したプロのコンサルタントも入札に参加指名すべきではなかったか。これではJR側との“ひも付き”入札と言われても仕方がない。今回の候補地の比較調査の意図そのものを疑ってかからなければならない」

 

 JR花巻駅は東北の駅百選に選ばれ、駅前ロータリーには宮沢賢治の童話『風の又三郎』をイメージした「風の鳴る林」がある。21本のポールの先端には風車がついていて、風が吹くとくるくると回る仕組みになっている。周辺にはこのほか、『銀河鉄道の夜』をモチーフにしたからくり時計やその列車が銀河宇宙を疾駆(しっく)する巨大壁画など、賢治”ファンタジ-“に満ちあふれている。

 

 駅橋上化(東西自由通路)によって、現駅舎は解体されることになっており、さらにスポーツ店用地の跡地に立体駐車場を併設した”箱物”図書館ができれば、「銀河鉄道始発駅」の風情があった駅前周辺の光景は一変する。

 

 

 

 

 

(写真は静かなたたずまい現在の駅前広場。駅舎を出ると、風の鳴る林と賢治のモニュメントが観光客を迎える=花巻市大通りで)

 

 

閑話休題…「マスコビッチ」は健在ナリ!!??

  • 閑話休題…「マスコビッチ」は健在ナリ!!??

 

 

 「現代女性文化研究所ニュース」なる機関誌が送られてきた。昨年夏に出版した拙著『男やもめの七転び八起き―イーハトーブ敗残記』(論創社刊)の書評が載っていた。筆者は朝日新聞の後輩記者の木村英昭さん(56)。九州や北海道で取材を共にした“同志”である。地べたを這うような取材には定評があった。その姿勢が福島原発事故の際の、いわゆる「吉田調書」のスクープにつながった。

 

 当時、第一原発の所長だった故吉田昌郎氏が政府事故調の調べに答えた「聴取結果書」で、非公開とされていた。余りにも衝撃的な内容だったため、政府筋や右派メディアなどから陰に陽にバッシングが浴びせられた結果、朝日新聞はこともあろうに当該記事を取り消すという前代未聞の醜態を演じた。「ジャーナリズムは死んだ」と私はその時に思った。木村さんは退社し、会社を相手取って、名誉棄損の訴えを起こしたが敗訴した。いまはフリーライターとして、健筆を振るっている。

 

 同じ新聞社の記者である青木美希さんの『なぜ日本は原発を止められないのか?』(文春新書刊)について、会社側は自社からの出版を不承認にした(2023年11月17日付当ブログ「抗(あらが)うということ」参照)。「個」としての記者を認めないという“翼賛”化はすでに木村さんの記事「取り消し」事件の時から始まっていたのである、久しぶりに声を聞いた。「しばらく日本を脱出し、アフリカにでも行こうかと」―。反骨精神は健在だった。私事にわたることだが、気持ちを読み取ってくれたことが嬉しくなったので、以下に紹介させていただく。メディアの腐敗を身をもって体験した人ならではの文章である。

 

 

 自称・叛逆老人の著者とは縁がある。ルポのうまい人で、その文体は増子節と呼ばれた。同じ新聞社時代には感化されたものだ。不義理をしていた。別の記事で書いた主人公が同じ“増子”だったので、「マスコビッチ(著者の愛称)は元気かなあ」と思い、連絡した。すぐにこの本が送られてきた。

 

 身辺雑記かな?ページをめくる。苦労をかけたであろう妻の死を契機に、マスコビッチは旅立つ。三池、沖縄、夕張、根室。記者時代の足跡をたどる旅には、マスコビッチに塗り込められたアイヌ民族と宮沢賢治の思想が折り重なる。そして、再挑戦した22年の花巻市議選での惨敗記で筆は置かれる―。

 

 増子節健在ナリ。こりゃあ「人生のルポ」だわ。マスコビッチは「俺の遺言状」とうそぶくが、一丁前の文章も書けるようになったと自負していた小生にとっては不敵な挑戦状ともなった。「お前にこれが書けるか」と。叛逆こそ生のエンジンだった。これを一年の計としよう。

 

 

 

 

(写真は拙著『男やもめの七転び八起き』)