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“反原発”の旗手の…「賢治をめぐる冒険」~現代版“雨ニモマケズ”宣言、いまこそ「ガザ」への眼差しを!!??

  • “反原発”の旗手の…「賢治をめぐる冒険」~現代版“雨ニモマケズ”宣言、いまこそ「ガザ」への眼差しを!!??

 

 「反原発の源流は賢治だった」―。生活に根差した「反核」思想の最前線に立ち続けてきた物理学者、高木仁三郎さん(享年62歳)の没後23年の今年、改めてその著作を開いてみて、そのことを確信するに至った。1995年、「賢治の科学思想の伝承と実践」という研究テ-マで、第5回(宮沢賢治)イ-ハトブ賞を受賞した高木さんの“原点”に分け入る旅に同行した。水先案内人は自著のずばり、『宮澤賢治をめぐる冒険―水や光や風のエコロジ-』である。

 

 『やまなし』、『雁の童子』、『銀河鉄道の夜』、『グスコ-ブドリの伝記』…。賢治作品をたどるその旅は高木さんの思想遍歴をさかのぼる道行きと言っても良かった。原子力開発の研究に携わってきた高木さんは35歳の時、卒然と大学教授の職を辞し、反原発運動の拠点となる「原子力資料情報室」を立ち上げた。「180度」の転換である。「じつにわたしは水や風やそれらの核の一部分で、それをわたしが感ずることは水や光や風ぜんたいがわたしなのだ」(詩「種山ヶ原」初期形)―。この時の賢治”発見”の感動を高木さんはこう記している。「自然を人の勝手のままに荒々しく利用してきた文明が袋小路にはいったいまこそ、人と自然の優しい関係に新しい光をあててみたい」(「家庭画報」1988年1月号)

 

 「われわれはどんな方法でわれわれに必要な科学をわれわれのものにできるか」(「羅須地人協会」集会案内)―。賢治は花巻農学校を退職後、農民らを対象にした私塾を設立した。「科学をどのようにして人間的な場に戻すか」という自問のさ中にあった高木さんにとって、賢治のこのひと言はまさに、天啓のように映ったにちがいない。『プルトニウムの恐怖』、『核時代を生きる』、『市民科学者として生きる』…。矢継ぎ早に「核の恐怖」を警告してきた高木さんだったが、福島原発は没後11年後に「想定外」の爆発事故を起こした。余りにも短命に過ぎた。

 

 高木さんが最初から賢治”信者”だったわけではない。むしろ逆だった。たとえば、あの「雨ニモマケズ」の書き出しについてはこう語っている。「なにか聖者の道徳講話のような感じを受けて、『サウイフモノニ/ワタシハナリタイ』と言われても、とても私はムリだし、ゴメンだという拒否感が強かった」(『宮澤賢治の冒険』)。長じるに及んで、次第にその心境に変化の兆しが…。そして、「ヒドリノトキハナミダヲナガシ/サムサノナツハオロオロアルキ…」の段に行き着いた途端、高木さんはまるで人が変わったみたいにこう、宣言する。

 

 「常にオロオロし、涙を流すところから、いわばその原点、その目の高さから科学をやっていきたい。それが私にとっても決意表明となったのです。『オロオロし』、『ナミダヲナガス』のを敗北宣言としかとれない書斎派の人には、所詮、実人生を賭して実験をする、そしてそれがひとつの芸術や科学の新しい地平を構成するなどとは思いもよらなかったのでしょう。しかし今、私にとっては新たな『雨ニモマケズ』が甦っています」(同上書)。そういえば、高木さんは「原子力資料情報室」をつくるきっかけが賢治の「羅須地人協会」だったことを繰り返し述べている。

 

 それにしてもである。吉本隆明さんにしろ(10月10日付当ブログ参照)、高木さんにしろ、最高峰の思想家をこれほどまでに“翻弄”(ほんろう)して止まない賢治とは一体、何者なりや。私は最大限の賛辞を込めてつつ、わが郷土の偉人に対し、世紀をまたぐ“詐欺師”なる称号を献上したい気持ちを抱いている。「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です」(『春と修羅』序)―。賢治自身自らが己を「(自然)現象」と位置づけ、”不滅”宣言をしている所以(ゆえん)からである。

 

 「雨ニモマケズ」宣言―。これはもしかしたら、日本だけではなく、ウクライナやパレスチナなど戦争の真っ只中にある世界の危機に向かって発せられた、[銀河宇宙」からの賢治の意を決したメッセ-ジなのかもしれない。

 

東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ

 

 

 

 

(写真は「反原発」を訴え続けた生前の高木さん=インタ-ネット上に公開の写真から)

 

 

 

《追記―1》~100年ぶりの“和解”か(9月15日付当ブログ参照)

 

 韓国で開催された「第28回釜山国際映画祭」(10月4日~13日)のニューカレンツ部門に選出された映画『福田村事件』(英題:SEPTEMBER 1923)が、13日に行われた授賞式で、ニューカレンツ賞(ニューカレンツ部門の最優秀作品賞)を受賞した。ちょうど100年前の1923年9月1日に発生した関東大震災の後、千葉県福田村で起こった、行商団9人が地震後の混乱の中で殺された事件の実話に基づいた劇映画。

 

 ニューカレンツ部門は、アジアの新人監督(1~2作目が対象)が参加するコンペティション。監督を務めた森達也は、『A』『A2』、そして『i 新聞記者ドキュメント』といったドキュメンタリー作品を手掛けてきたが、本作で初めて劇映画の監督に挑戦した(シネフィルニュース)

 

 

 

《追記―2》~映画「ラマッラの市長」

 

 

 「ガザ病院爆発 471人死亡」(10月19日付「朝日新聞」―。イスラエルとパレスチナ(ハマス)との対立がついに「大虐殺」という最悪の様相を見せつつある。まさに時節を合わせるようにして、その「対立」のさ中で苦悩するある市長の姿を追ったドキュメンタリ-映画「ラマッラの市長」(2020年、米国)が日本で初公開された。海の向こうの悲劇を「対岸の火事」としてはならない。その内容は―

 

 パレスチナ自治政府が置かれた街、ラマッラ。隣接するエルサレムは、パレスチナとイスラエルの両国が権利を主張する紛争地となっている。ラマッラ市長のムサは、市民の安全と生活向上、そして希望を標榜する。そんな彼の耳に「米国が在イスラエル大使館をエルサレムに置く」という知らせが入った。市長はわずかな情報を頼りに奔走し、反発する市民に対応する。公共工事でさえイスラエルの許可がないと施工できない理不尽な状況の中、占領下の市長として難しい舵取りを行う日々をカメラが追った(映画案内から)。以下のアドレスから

 

https://asiandocs.co.jp/contents/277

 

 

 

《追記ー3》~「イーハトーブ(まるごと賢治)図書館」の実現へ向けて!!??病院跡地への立地を求めて、署名運動がスタート

 

 

  花巻市内でフェアトレ-ド店を経営する新田文子さんが主宰する「暮らしと政治の勉強会」など三つの市民団体が、宮沢賢治ゆかりの地「イ-ハト-ブ」にふさわしい“夢の図書館”を目指した全国規模の署名運動を展開中。署名用紙などは以下からラウンロードを。11月23日必着。

 

 

★新花巻図書館は病院跡地に!の全国署名を10月1日スタートします。署名用紙のダウンロードはこちらから。集まった署名は11月23日必着でお願いします。
「全国署名を全国に広げます!~これまでの経過説明」はこちらから。おいものブログのカテゴリー「イーハトーブ図書館をつくる会」は「夢の新花巻図書館を目指して」に変更しました。署名実行委員会の活動も報告していきます。新田さんのURLは以下から

 

 

 https://oimonosenaka.com/

 

 

 

 

 

トットちゃんと“柏葉”ワ-ルド…そして、「do the right thing」!!??

  • トットちゃんと“柏葉”ワ-ルド…そして、「do the right thing」!!??

 

 『トットちゃんの15つぶのだいず』(講談社)と題する絵本を手に取って驚いた。トットちゃんこと俳優の黒柳徹子さん(90)の戦争体験を文章に綴った内容だったが、その過酷な体験を静謐(せいひつ)な筆致で書き上げていたのが当地花巻出身の児童文学作家、柏葉幸子さんだったからである。デビュ-作の『霧のむこうのふしぎな町』が宮崎アニメのヒット作「千と千尋の神隠し」の下敷きになったというエピソ-ドは広く知られているが、他にも『つづきの図書館』(小学館児童出版文化賞)や『岬のマヨイガ』(野間児童文芸賞)など受賞歴が多い。「トットちゃんが、小学2年生のとき。日本は戦争をはじめました」という書き出しで始まる文章はこんな風に続いていた。

 

 「とうとう、トットちゃんの一日の食べものは、だいずが15つぶだけになってしまいました。ママが毎朝、だいずをフライパンで炒(い)ってくれます。それをふうとうへ入れて、学校へ行くトットちゃんにわたします。…ママはだいずの入ったふうとうをわたしながら、『食べたら、お水をいっぱいのむのよ。豆がふくらんで、おなかがいっぱいになるわ』と、言ってくれました」―。あの快活は語り口の黒柳さんの知られざる一面が柏葉さんの文体と一心同体となって心に沁み込んできた。ふいに20年以上も前の光景が昨日のことのように目の前に去来した。

 

 2002年4月20日―。花巻市文化会館大ホ-ルは立ち見が出るほどの観客であふれていた。ベルリン映画祭で最高賞(金熊賞)を受賞した「千と千尋の神隠し」(宮崎駿監督、2001年)の鑑賞に詰めかけた人たちだった。隣接する図書館では映画の上映に合わせて「柏葉幸子童話作品展」が開催されていた。この2年前、42年ぶりにふるさとに戻った私は映画館が姿を消してしまった街のたたずまいに愕然(がくぜん)とした。仲間たちに声をかけ、「花巻に映画の灯を再び」市民の会を結成。その旗揚げ記念に計画したのが宮崎アニメと柏葉展の同時開催だった。1日3回の上映会は大盛況で終わった。私たち「市民の会」は益金の一部で柏葉作品を買いそろえ、花巻市立図書館に寄贈した。

 

 「私の父はシベリア抑留の経験者ですが、今の若い人たちは家族に戦争を体験した人がいない。ウクライナ戦争も自分とかけ離れた出来事として見ているけど、日本だって危ないじゃないですか。身近な語り部の代わりとして…」(9月29日付朝日新聞))―。柏葉さんは今回の絵本化について、こう語っている。私の父も先の大戦でソ連軍の捕虜となり、シベリアの凍土に没した。『ミラクル・ファミリ-』、『地下室からのふしぎな旅』、『ざしきわらし 一太郎の修学旅行』、『モンスタ-・ホテル』シリ-ズ…。ファンタジックな“柏葉”ワ-ルドのとりこになっていた私は目の前の現実から目を背けない、柏葉さんのもうひとつの視点にハタと気づかされた。

 

 世界で2500万部の大ベストセラ-になった黒柳さんの『窓ぎわのトットちゃん』の続編が42年ぶりにこのほど刊行された。旧作は初のアニメ映画化も決まり、12月8日から全国で公開される。私たちが夢見る図書館(イ-ハト-ブ図書館)は「まるごと賢治」だけではもったいない。“柏葉”ワ-ルドも詰め込まなくちゃ…。病院跡地への立地を願う私たちの見取り図は着々と整いつつある。

 

 

 

 

 

(写真は原案・黒柳、文・柏葉、絵・松本春野による創作絵本)

 

 

 

 

《追記ー1》~「do the right thing」…死語であったはずの“虐殺”がいま、ふたたび

 

 映画「福田村事件」(9月15日付当ブログ参照)を見て、100年の恐ろしい光景を目の当たりにしたのもつかの間、海の向こうでそれが現実化しつつある。ロシアによるウクライナ侵略に続く、イスラエルとパレスチナとの絶望的な対立。「ジェノサイド」や「ホロコースト」…。“大量虐殺”を意味するおどろおどろしい言葉が頭を去来する。

 

 パレスチナ自治区の「ガザ地区」ではトットちゃんの「15つぶのだいず」どころか、イスラエル側の出方によってはその存在そのものが“消滅”させられる危機さえささやかれている。「do the right thing」(それは正しい行為である=ブリンケン・米国務長官)…。アメリカ流「正義」を盾とした、大虐殺に向けたカウントダウンが始まっている。人間の愚かさの極限!!??

 

 

 

《追記ー2》~市民力、全開!!~病院跡地への立地を求めて、署名運動

 

 花巻市内でフェアトレ-ド店を経営する新田文子さんが主宰する「暮らしと政治の勉強会」が今回の岩手知事選で全開、“市民力”の大切さを教えた。さらに、宮沢賢治ゆかりの地「イ-ハト-ブ」にふさわしい“夢の図書館”を目指した市民団体が全国規模の署名運動を展開中。署名用紙などのラウンロ-ドは以下のアドレスから。11月23日必着。

 

https://oimonosenaka.com/

 

 

 

 

 

 

夢の図書館を目指して…全国署名に向け、キックオフ!!??

  • 夢の図書館を目指して…全国署名に向け、キックオフ!!??

 

 「図書館は賢治ゆかりの病院跡地へ」―。「花巻病院跡地に新図書館をつくる署名実行委員会」(瀧成子・代表)が7日、市内のまなび学園で決起集会(キックオフ)を開き、全国規模の署名活動が本格的にスタ-トした。病院跡地への立地を求める三団体(「新花巻図書館を考える会」「新花巻図書館―まるごと市民会議」「イ-ハト-ブ図書館をつくる会」)の主催で、郷土出身の童話作家、宮沢賢治をベ-スに据えたまちづくりを訴えている。

 

 私自身、その実現を強く望むひとりである。イ-ハト-ブのど真ん中に位置するこの地こそが「夢の図書館」にふさわしいとずっと、思ってきた。そしていま、賢治の薫陶(くんとう)を受けた幾多の先達たちがいっせいにその後押しをしてくれているような気がする。ほとばしるようなその思いを私は連帯のメッセ-ジとしてしたためた。南は九州・沖縄から北は北海道まで、いや海の向こうの地まで多くの賛同者を結集したいと願う。署名用紙など関係資料は下記のアドレスからダウンロ-ドして下さい。

 

 

 「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です」(『春と修羅』序)―。宮沢賢治は自らを“現象”と位置付けているから、言ってみれば永遠に不滅の存在である。というわけで、いつでもどこでもひょいと姿をみせる“神出鬼没”ぶりがこの天才の稀有なる持ち味である。

 

 高木仁三郎(物理学者)、井上ひさし(作家)、中村哲(医師)、吉本隆明(評論家)、むのたけじ(ジャ-ナリスト)、色川大吉(歴史家)…。賢治の影響を受けた人材に贈られる「宮澤賢治賞・イ-ハト-ブ賞」には分野を超えた顔ぶれがキラ星のように並んでいる。14年前、賢治賞の授賞式に臨んだ際のその人の第一声がまだ、頭の奥に刻まれている。

 

 車いすに乗って登壇した吉本さん(故人)は「ぼくはこれまで、いろんな人の悪口を言ってきましたが、言わなかった人っていうのは、宮沢賢治ぐらいです」と切り出した。「古事記」や「遠野物語」に着想を得た代表作『共同幻想論』は全共闘世代のバイブルとも呼ばれた。のちには『宮澤賢治』のタイトルで、独自の賢治論も展開した。「ぼくの好きな宮沢さんの『雨ニモマケズ』という詩が学校の天井に貼ってありました。ぼくはいつでもその下でそれを眺めていました。これはどういう人で、どういうことを考えていたかということを、毎日のように思っていました」―。戦後最大の知の巨人ともいわれた人のこの“賢治”体験に虚を突かれたことを覚えている。

 

 「この土地で『なぜ20年も働いてきたのか。その原動力は何か』と、しばしば人に尋ねられます。人類愛というのも面映(おもはゆ)いし、道楽だと呼ぶのは余りに露悪的だし、自分にさしたる信念や宗教的信仰がある訳でもありません。良く分からないのです。でも返答に窮したときに思い出すのは、賢治の『セロ弾きのゴ-シュ』の話です」―。4年前、アフガニスタンでテロの凶弾に倒れた医師の中村さん(享年73)は2004年、イ-ハト-ブ賞を受賞した際、現地からこんなメッセ-ジを寄せた。その11年後に同賞を受賞したアニメ作家の高畑勲さん(故人)は同じ作品をアニメ化した。

 

 「『春と修羅』には、コロナ禍におかれた私たちが文明社会の中の人間というものを捉えなおす上で非常に重要な言葉が書かれている。まず、冒頭で『わたくし』は『現象』だと言っている。これは『わたくし』という生命体が物質や物体ではなく『現象』である、それはつまり自然のものであるということ」(『ポストコロナの生命哲学』、要旨)―。コロナパンデミックの渦中にあった2021年9月、生物学者の福岡伸一さんは共著の中で、こう語った。このウイルスの謎を解く水先案内人がまたしても賢治だという指摘にびっくりした。

 

 「宮澤賢治とは一体、何者なのか」―。こんな認識を共有する仲間たちが「イ-ハト-ブ図書館をつくる会」を結成し、他の市民団体と一緒に全国に賛同の署名を呼びかけています。現在、当市では新図書館の建設をめぐって、「JR花巻駅前か旧花巻病院跡地か」という“立地”論争が続いています。同会など市民団体は賢治が生前、教鞭を取ったゆかりの地でもある「病院跡地」への立地を望んでおり、私も同じ気持ちです。

 

 「イ-ハトヴとは一つの地名である。強て、その地点を求むるならば、大小クラウスたちの耕していた、野原や少女アリスが辿った鏡の国と同じ世界の中、テパ-ンタ-ル砂漠の遥かな北東、イヴン王国の遠い東と考えられる。実にこれは著者の心象中に、この様な状景をもって実在したドリ-ムランドとしての日本岩手県である」(『注文の多い料理店』広告チラシ)―。賢治は自らの理想郷(イ-ハト-ブ)を称して、ずばり“夢の国”(ドリ-ムランド)と呼んでいます。

 

 私たちはいまこそ、「賢治ワ-ルド」をいっぱい詰め込んだ新図書館を実現したいと心から願っています。ご理解とご協力をお願いいたします。

 

 

 

 

(写真はありし日の吉本さん。“共同幻想”現象を巻き起こした原点は賢治だった=インターネット上に公開の写真から)

 

 

 

《追記》~市民力、全開!!~病院跡地への立地を求めて、署名運動

 

 花巻市内でフェアトレ-ド店を経営する新田文子さんが主宰する「暮らしと政治の勉強会」が今回の岩手知事選で全開、“市民力”の大切さを教えた。さらに、宮沢賢治ゆかりの地「イ-ハト-ブ」にふさわしい“夢の図書館”を目指した市民団体が全国規模の署名運動を展開中。署名用紙などのラウンロ-ドは以下のアドレスから。11月23日必着。

 

https://oimonosenaka.com/

 

 

 

被爆地ヒロシマでも”駅前図書館”騒動…移転反対の請願相次ぐ~イ-ハト-ブの地でも全国規模の署名運動へ

  • 被爆地ヒロシマでも”駅前図書館”騒動…移転反対の請願相次ぐ~イ-ハト-ブの地でも全国規模の署名運動へ

 

 「駅前か病院跡地か」―。新花巻図書館のあり方を論議する「整備基本計画試案検討会議」が1年以上も“開店休業”状態にあるなど迷走の極にある当市だが、被爆地ヒロシマでも図書館の駅前立地をめぐる対立が続いている。市当局はすでに市立中央図書館をJR広島駅南口の商業施設(「エ-ルエ-ルA館」)移転することを決めているが、これに反対する二つの市民団体が請願を提出し、現在継続審査のままになっている。

 

 一方、当市の市民団体の間でも駅前立地に反対する署名運動がスタートし、10月7日午前10時から全国署名に向けた”キックオフ”(決起集会)が市内の生涯学園都市会館(まなび学園)で開かれる。平和のシンボル都市・ヒロシマと宮沢賢治が描いた夢の理想郷・イ-ハト-ブの“立地論争”の行方に注目が集まっている。

 

 「国際平和文化都市・広島にふさわしい中央図書館と公共施設を」と訴える市民団体は6月23日、5473筆の署名を添えて「移転中止」の請願を提出した。「新しい議会において、基幹図書館である広島市立中央図書館および広島市映像文化ライブラリ-を商業施設であるエ-ルエ-ルA館へ移転させることを中止し、広島市立中央図書館等再整備基本計画の見直しを求めることについて」とする請願はその理由として、次のように述べている(要旨)

 

●2023年3月14日に市議会において、移転のための基本・実施設計予算が可決した。しかし、統一地方選挙による改選のため、議員メンバ-も大幅に変更され新しい議会となった。市民に選ばれた議員として、以下のことに尽力していただきたい。すなわち、「移転先で国際平和文化都市としての公共図書館たり得るのか」、「図書文化が商業施設で成り立つのか」、「巨額な予算で広島市の財政は将来もつのか」などについて、過去の資料、議事録、議会での質疑・答弁を再読し、この図書館移転問題の背景を熟考した上で移転の中止と広島市立中央図書館等再整備基本計画の見直しを進めていただくよう請願する」

 

 この問題をめぐっては9月27日開催の9月定例会(総務委員会)でも取り上げられ、新たな火種が明らかになった。この日、移転先の不動産取得費約23億円を含む一般会計補正予算案の一部が賛成多数(賛成5、反対2)で可決された。審議では、取得費が1月の基本計画で示された概算よりも膨らんでいることについて質問が相次いだ。約23億円は移転先の商業施設のフロアや土地の取得費で、予算案は来年度の取得費約49億円も設定。計約72億円は基本計画の概算約65億円を上回ことが分かった。

 

 一方、移転先のフロアの一部で購入のめどが立たず、市が賃貸借契約を結ぶ見込みであることも明るみに出たため、議会側から賃料や期間を示すよう求める声が上がった。市側は「賃貸料がかかってくるとなれば議会に諮る」と答えた。予算案の可決後、移転計画の撤回について「絶対にありえないか」との質問について、市生涯学習課の田尾雅之課長は「考えていない」と答えた。

 

 立地に関わるこの経緯を知るにつけ、足元の迷走劇と瓜二つだなと思った。当地の新図書館をめぐってはその後に白紙撤回されたものの、当初は花巻駅前のJR所有地を50年、賃貸借して住宅付き図書館をつくるというものだった。それでも駅前立地にこだわる市側は現在、JR側と土地譲渡交渉を進めており、その中には商業施設の買取りも条件として含まれている。こうした懸案を抱えた花巻市議会12月定例会は2か月後の12月1日に開会する。市側が強行突破を図ろうとするのか、議会側がこれにどう抵抗するのか―「イ-ハト-ブ”図書館戦争“」の火ぶたがまた、切って落とされようとしている。

 

 

 

 

(写真は駅前立地に反対する広島の市民団体=インタ-ネット上に公開の写真から)

 

 

 

《追記ー1》~中秋の名月と”満月”さん(コメント欄に写真掲載)

 

 雲の陰に隠れたと思ったら、ひょいと顔を見せたり…。中秋の名月の今宵は5年前の7月29日に病没した妻の月命日。”満月”さんの愛称で呼ばれた故人は中空の夜空で元気そうに戯れていた。そうい言えば、存命中は野口雨情のあの歌をよく口ずさんでいたなぁ…

 

十五夜お月さん ごきげんさん
婆やは お暇(いとま)とりました

 

十五夜お月さん 妹は
田舎へ貰(も)られて ゆきました

 

十五夜お月さん 母(かか)さんに
も一度わたしは あいたいな

 

 

 

《追記―2》~「賢治」という神出鬼没

 

 「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です」(『春と修羅』序)―。宮沢賢治は自らを“現象”と位置付けているから、言ってみれば永遠に不滅の存在である。というわけで、いつでもどこでもひょいと姿をみせる。たとえば今回は保守派の論客として知られる佐伯啓思さん(京都大学名誉教授)の「日本の自然観と災害」(9月30日付「朝日新聞」)と題する論考の中に(要旨)…

 

 

 「東日本大震災の直後に、私は宮沢賢治の『グスコ-ブドリの伝記』を改めて読んでみた。冷害に苦しむイ-ハト-ブの話である。島にある火山を爆発させれば、気温上昇で人々を救うことができる。火山局に勤務する若い技師ブドリは、ある技術を使って火山を人工的に噴火させて人々を救うのだが、そのために自らは噴火の犠牲になる」

 

 「イ-ハト-ブに冷害を引き起こすのは自然であるが、また、自然の力が人々を救うのである。火山は巨大噴火によって人間に大きな損害をもたらすだろうが、またその火山によって人は救われもするのである。自然のなかには『生命の力』があるがゆえに、自然は、一方では、人を恐怖に陥れる巨大災害をもたらすが、また逆に、大地の恵みや澄んだ大気によって人々の生命に活力を与える。その両者ともに、自然のもつ『生命』の働きであり、昔の日本人は、それをまた『カミ』といったりもした」

 

 

 

《追記ー3》~市民力、全開!!~病院跡地への立地を求めて、署名運動

 

 花巻市内でフェアトレード店を経営する新田文子さんが主宰する「暮らしと政治の勉強会」が今回の岩手知事選で全開、“市民力”の大切さを教えた。さらに、宮沢賢治ゆかりの地「イーハトーブ」にふさわしい”夢の図書館”を目指した市民団体が全国規模の署名運動を展開中。署名用紙などのラウンロードは以下のアドレスから。11月23日必着。

 

https://oimonosenaka.com/

 

 

 

 

現代を照射する「ル・ボン」語録(群衆心理)…“愚民化”の先にあるものは!!??

  • 現代を照射する「ル・ボン」語録(群衆心理)…“愚民化”の先にあるものは!!??

 

 今から128年前の『群衆心理』で心理学者としての名声を不動のものとしたフランス人、ギュスタ-ヴ・ル・ボン(1841~1931年)は自著の中で「群衆とは、その構成員すべてが意識的人格を完全に喪失し、操縦者の断言・反復・感染による暗示のままに行動するような集合体である」と述べている。普仏戦争の際は軍医として、ストレスを抱える軍人の行動を観察するなどその幅広い視野は社会学や物理学の分野にまで及んだ。ル・ボンが“群衆心理”と名づけた時代の空気はまさに日本の、そして足元(イ-ハト-ブ)の「今」を照射して余すところがない。公開されているある市民ブログ(「浜名史学」)に「ル・ボン」語録が紹介されていたので、以下にその一部を転載させていただく。

 

 

●集団的精神の中に入り込めば、人々の知能、したがって彼らの個性は消え失せる。異質的なものが同質的なもののなかに埋没してしまう。そして、無意識的性質が支配的になるのである

 

●群衆はいわば智慧ではなく凡庸さを積み重ねるのだ

 

●群衆においては、どんな感情もどんな行為も感染しやすい。個人が集団の利益のためには自身の利益をも実に無造作に犠牲にしてしまうほど、感染しやすいのである

 

●孤立していた時には、おそらく教養のある人であったろうが、群衆に加わると、本能的な人間、したがって野蛮人と化してしまうのだ

 

●単独の個人は、自己の反射作用を制御する能力を持っているが、群衆はこの能力を欠いている

 

●群衆は、思考力を持たないのと同様に、持続的な意志をも持ちえないのである

 

●群衆の中に入れば、愚か者も無学者も妬み深い人間も、おのれの無能無力の感じを脱し、その感じに取って代わるのが、一時的ではあるが絶大な暴力の観念なのである

 

●群衆は、弱い権力には常に反抗しようとしているが、強い権力の前では卑屈に屈服する

 

●思想は、極めて単純な形式を帯びたのちでなければ、群衆に受け入れられないのであるから、思想が一般に流布するようになるには、しばしば最も徹底的な変貌を受けねばならないのである

 

●群衆が、正しく推理する能力を持たないために、およそ批判精神を欠き、つまり真偽を弁別し、的確な判断をくだす能力を欠いていることは、付け加えるまでもない

 

●群衆は、熟考と推理の能力を欠いているために、真実らしくないことを弁別することができないのである

 

●民衆の想像力を動かすのは、事実そのものではなくて、その事実のあらわれ方なのである。それらの事実が、こう言っていいならば、いわば凝縮して、人心を満たし、それにつきまとうほどの切実な心象を生じねばならない。群衆の想像力を刺激する術を心得ることは、群衆を支配する術を心得ることである

 

 

 

 

《追記ー1》~二元代表制のもうひとつの姿(その1)…「イ-ハト-ブはなまき」との雲泥の差!!??

 

 

 「議会の請願採択を重く受け止めながらも対馬の将来に向けて熟慮した結果、文献調査を受け入れないとの判断に至った」―。原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、長崎県対馬市の比田勝(ひたかつ)尚喜市長は27日の市議会本会議で、第1段階の文献調査の受け入れをしないと表明した。議場で見守っていた反対派の市民からは喜びの声が上がる一方、推進派市議は、口を真一文字に結んで厳しい表情を見せた。

 

 本会議場の傍聴席約40席は駆けつけた市民らで埋まり、関心の高さがうかがわれた。午前10時半前の開会から2時間近くが経過し、本会議の終盤に市長が壇上に立って「受け入れ反対」を表明すると、傍聴していた市民から「お-」という声が上がり拍手が起きた。市議会は今月12日に調査受け入れを求める請願を賛成多数(10対8)で採択したが、市長と意見が割れることになり、議場の推進派市議からは落胆の声が漏れた。議会後、反対署名を集めた市民団体「核のごみと対馬を考える会」のメンバ-は「核のごみ!! 比田勝市長 反対!!表明」と書かれた手作りの号外約50枚を議会周辺で配布し、通行人にアピールした。比田勝市長は記者会見でこう語った。

 

 「私自身も議会の請願採択は重く受け止めた中での判断。これは私個人の問題ではなく、対馬市で生活する市民の方たち、そして、対馬にこれから育つ子供たちの将来を考えた。議会と反する結果ではあるが、今後議会には丁寧に説明をした中で理解を求めたい」(27日付「毎日新聞」電子版)

 

 

 

《追記ー2》~二元代表制のもうひとつの姿(その2)…「イ-ハト-ブはなまき」との雲泥の差!!??

 

 

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、斉藤鉄夫国土交通相が軟弱地盤改良に必要な設計変更を承認するよう勧告したことに対し、沖縄県の玉城デニー知事は27日、県庁で記者団に「期限までに承認を行うことは困難だ」と述べた。勧告は27日までの承認を求めていたが、知事は判断を先送りする。国交相は今後、地方自治法に基づき、承認するよう指示する文書を県に送るとみられる。

 

 玉城知事によると、国交相宛てで送った27日付の回答文書では、県民や行政法学者らからさまざまな意見が寄せられていることを挙げ「県政の安定的な運営を図る上で、これら意見の分析を行う必要があることなどから、勧告の期限までに承認を行うことは困難である」とした。判断する時期のめどについては、取材に対し「その都度、対応は検討したい」と明言を避けた。

 

 知事が「指示」にも従わない場合、国交相は、知事の代わりに承認する「代執行」に向けた訴訟を提起する見通し。設計変更は、辺野古にある米軍キャンプ・シュワブ東側の埋め立て予定海域で見つかった軟弱地盤を改良するため、2020年4月に防衛省が申請。県は21年11月に不承認としたが、国交相は22年4月、不承認を取り消す裁決をし、県に承認を迫る是正指示を出した。県は是正指示などの取り消しを求め提訴したが、9月4日の最高裁判決で敗訴が確定した(27日付「毎日新聞」電子版)

 

 

 

《追記ー3》~日本人は国民的規模で「狂っている」!!??

 

 こんなショッキングなキャッチコピーが踊る書籍の広告が目に飛び込んできた(27日付「朝日新聞」)。内田樹(知の巨人)と白井聰(気鋭の政治学者)との対談集『新しい戦前』。「大軍拡、物価高でもまるで無反応」「自己防衛の果てに壊れる若者」…。おどろおどろしい小見出しが続く。「この悲惨な現実を見よ」と二人は訴えている。さっそく注文した。29日には届くらしい。この日はちょうど「中秋の名月」。その月明かりの下でページを繰ってみようと思う。