この場所に立つと、思わず口ずさむ歌がある。思い出のグリーン・グラスという歌である。「汽車から降りたら小さな駅で迎えてくれる・・・」というメロディが流れると私は、夏休みに帰省する大学生に戻り、あるいは見知らぬ町を訪れる旅人となって、この景色を眺めているのである。
人はその時々に、かけがえのないひと時を懐かしみ、大切な思い出の場所を振り返るものである。故郷喪失とか無縁社会と言われる時代にあっても、それぞれが帰る場所を求めているのではなかろうか。フラワー長井線を旅先として選んでくれた旅人に、小さな駅舎が佇むこの風景が、「帰りたいと思う場所」として心に刻まれてくれればいいと思うのである。