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停車場憧憬 蒼き山に

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盆地の中に私はいる

街が闇の湖底に沈む頃

西山の尾根々々が

蒼い光と共に迫って来る

 

列車が湖底を進んで行く

安穏という灯りがもれている

私は一人 列車を見送った

 

あたりがふたたび蒼い光に包まれた

山々は 敢然として私の前に立ちはだかる

蒼い光は 死してなお見守らんとする者の

人魂なのか

過去と未来  生と死が

無言のままでそこにある

 

穏やかな葉山の峰やそれぞれの厳しき冬を超えて起ちたり

2017.02.25:orada:コメント(0):[停車場憧憬]

停車場憧憬 秘密のトンネル

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お花畑の真ん中で

小人の王様がつぶやいている

「みんなきれいに咲いたね」

兎たちがおしゃべりをしている

「何して遊ぶ」

 

子どもの頃の私は

きっと一緒になって遊んでいたんだろう

あの頃に戻れる秘密のトンネルが

どこかにありそうな気がする

2017.02.17:orada:コメント(0):[停車場憧憬]

停車場憧憬 吹雪の中で

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息もできない程の嵐に 立ち尽くす

自分で決めた道だけど

休む理由を探している

誰か声をかけてくれないか

 

俺の性じゃないぞとか

助けてくれよとか

さらりと言える人が羨ましかった

 

自分で決めた道だけど

震える程の深い闇だ

四阿(あそこ)まで行けば何か見えて来るのだろうか

友に会えるのだろうか

2017.02.10:orada:コメント(0):[停車場憧憬]

停車場憧憬 除雪人夫のこと

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高校生の私は、冬の間は遠くの町に下宿していた。日曜日の夕方、下宿に帰るために駅に向かう途中で、スコップを担いでくる大人達とすれ違った。鉄道の除雪隊であり、母もその中にいた。

「行ぐなが?」 「うん」 「気つけてな」

僕は母と目を合わせるのも恥ずかしく、その時の母の顔を覚えてはいない。が、せつない感情がこみ上げてきたことを覚えている。男たちが出稼ぎに行く冬の間、家を守り暮らしを守るのは女の肩にかかっていた。お婆ちゃん子であった私が、記憶に残る母の顔はいつも日焼けした顔であった。

 「除雪人夫の頼みに来られると嬉しくて行ったもんだっけなー。」と、窓の外を見ながら何度も同じことを繰り返す。老いた母の顔を見るのも辛いものがあり、ただ「ありがとう」と心の中で繰り返すのみである。

【写真提供:山形鉄道(株)】

2017.02.06:orada:コメント(0):[停車場憧憬]

停車場憧憬 おじいさんとミー君と僕

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おじいさんの手にひかれてよく駅に行ったものだ

ミー君も一緒だ

ガタゴト ガタゴト 列車が入って来た

おじいさんに抱っこしてもらって列車にも乗った

駅舎にはじいちゃんとの思い出がいっぱいある

 

葉山嶺を仰ぎてホームに佇めば  幼き頃の我の居てけり

 

2017.01.13:orada:コメント(0):[停車場憧憬]