HOME > ヒカリノミチ通信について

新花巻図書館の立地問題…市側は「駅前」で強行突破の構え~「イーハトーブ」、無惨!!??

  • 新花巻図書館の立地問題…市側は「駅前」で強行突破の構え~「イーハトーブ」、無惨!!??


 

 「駅前周辺の方々から、図書館建設についての考えをお聞きしました。私が聞いた限りでは駅前図書館には反対だという声が多かったので、ハッキリ言って驚きました」―。花巻市議会3月定例会の一般質問で5日、羽山るみ子議員(はなまき市民クラブ)は市側が立地場所の第1候補に挙げている花巻駅前の住民の中には「駅前」立地に反対の態度を持っている人が多いという「声なき声」の実態を明らかにした。「駅橋上化の際は西口住民の意向を最大限に尊重すると言っていたが、東口住民に対しては説明会さえもしていない。肝心の足元の住民をないがしろにするものではないか。駐車場の拡幅のため、市道が一方的に廃止することについも事前の説明はなかったという声もあった」と鋭く迫った。

 

 これに対し、菅野圭生涯学習部長は「具体的な問題で、説明の必要が生じた場合は話し合うのはやぶさかではない」と答える一方で、意見集約のために設置された対話型「市民会議」(計4回)の結果を踏まえたうえで、「今議会中(会期3月19日まで)に最終の立地場所について、議会に報告したい」とした。新図書館にかかわる「新花巻図書館整備基本計画試案検討会議」(3月11日開催)や「市図書館協議会」(同18日開催)、「市社会教育委員会議」(同19日開催)など大詰めの会議が目白押しの中で、駅前住民の意向を聴き、それをどう反映させようというのか。その場しのぎの言い逃れではないのか。菅野部長の詭弁ぶりはすでに実証ずみだったはずだが…(3日付当ブログ参照)

 

 「レインボ―計画」―。いまから36年前の平成元年、国土交通省(当時、建設省)が主導した花巻駅前の再開発計画(土地区画整理事業)がスタートした。6か年の年月をかけ、10・7ヘクタールの敷地に宮沢賢治をモチーフにしたモニュメントや多目的広場、ショッピングプロムナードなどを整備し、花巻の「顔」としての賑わい創出が約束されたはずだった。しかし、その夢の青写真は人口減に伴う駅利用者の激減などで果されないまま、現在に至っている。

 

 そんな時に浮上したのが、駅橋上化と新図書館の二大プロジェクトだった。「花巻の未来のために」と当時、土地を安価で提供した住民のひとりはぶぜんとした表情で吐き捨てた。「潤ったのはほんの一部の人たち。そして今度は橋上化によって、賢治のイメージさえも消されようとしている。当時の無念さがトラウマみたいに残っている」。この住民が怒りを抑えきれないといった表情で続けた。「これに追い打ちをかけたのが、例の住宅付き図書館の駅前立地だった。寝耳に水どころか、新聞で初めて知った。もう、だまされたくはない」―

 

 「図書館は誰のために、何のために作るのか…」―。羽山議員が質問を終えようとした時、上田東一市長がさえぎるようにして、手を挙げた。「そこなんですよ。誰のために?そりゃ、市民のために作るんですよ」。私は鼻白む思いで議会中継の画面を見つめていた。「高齢者のためだけの図書館で良いのか。それなら今の図書館で十分。若い人は圧倒的に駅前を希望している」(2022年12月議会)―。こう宣(のたま)わったのは一体、誰だったのか。あなたではなかったか。

 

 “若者待望論”を振りかざしながら、一方で高齢者を分断し、あまつさえ今度は足元の住民の心を踏みにじる形で、新図書館は不幸な出自を迎えようとしている。上田市長は直近の記者会見でこうも述べている。「新しい図書館については、まだこれからです。基本計画が最終的に決まって、その上で基本設計に入っていくということになりますから、今の私の任期の中で実施設計あるいは建設工事まで入るとか、そういうところまではいけないと思います」(2月19日付)。あとは野となれ、山となれ…。上田失政の第1号「新興跡地」(花巻城址)の荒れ野がまな裏に浮かんだ。賢治が”夢の国”と呼んだ「イーハトーブ」の、これがいまの無惨な姿である。

 

 

 

 

(写真は意見集約の不公平性を追及する羽山議員=3月5日午前、花巻市議会議場で、インターネット中継の画面から)

 

「駅前」抜きの“駅前図書館”論争…迷走どころか、脱線寸前~大詰めの攻防戦!!??

  • 「駅前」抜きの“駅前図書館”論争…迷走どころか、脱線寸前~大詰めの攻防戦!!??

 

 「市側は新図書館の建設候補地について、一貫して『駅前立地』を主張してきたが、肝心の足元の地元住民の動向がさっぱり、伝わってこない。これまでの経過をどう説明してきたのか」―。花巻市議会3月定例会の一般質問初日の3日、本舘憲一議員(はなまき市民クラブ)はこう切り込んだ。しばらく間をおいた末、菅野圭生涯学習部長はシドロモドロに「とくに駅前に特定した説明会などは実施していない」と答弁。これを引き取る形で、上田東一市長が「市民全体を対象にした説明会が複数回開かれており、駅前の住民もその場で発言する機会はあったはずだ」と苦しい答弁に終始した。

 

 この日の質疑応答ではあの「住宅付き図書館」の駅前立地構想(いわゆる“上田私案”)がまるで亡霊のように姿を現した。本舘議員は行政開示文書で明らかになったイメージ図を掲げ、こう迫った。「駅橋上化(東西自由通路)と図書館とは実はワンセットの事業ではなかったのか。図書館の駅前立地は市の建設部と図書館を担当する生涯学習部、JR東日本の三者で合意された既定路線ではなかったのか」―

 

 上田市長は当初、このワンセット論に対し「断じて、そんなことはない」と強弁したが、その直後今度は「令和2年の段階まではある意味で、ワンセットだったと言える。しかしその後、二つの事業が単独でも国の補助を受けられるようになり、別々の事業として位置付けることになった。現に橋上化はいま、実施設計の段階にある」と前言を翻(ひるがえ)す答弁を繰り返した。

 

 「令和2年」―。この年こそが「新花巻図書館」迷走劇の始まりだった。2020(令和2)年1月29日、“上田私案”が市民や議会の頭越しに天から舞い降りてきた。上田市長はこうした過去の経緯を踏まえたうえで、こんな謎めいた発言を口にした。「仮に立地場所が病院跡地になった場合、JR側から約束違反ではないかと責任を問われる可能性はある。しかし、市としては責任の取りようがない。われわれ行政はそれほど愚かではない」―。私はこの発言の背後にある種のレトリックを嗅ぎ取っていた。「(JRとの)約束を反故(ほご)にするわけがない」ーという意味での”詭弁”(きべん)を…

 

 2番手の伊藤盛幸議員(緑の風)は建設場所の意見集約をするための対話型「市民会議」のあり方について、こうただした。「無作為抽出した3,500人の中から参加希望のあった75人で構成したということだが、4回の会議に一度も出席しなかった人はいたのか。また10項目の設問のうち、8項目については駅前立地の選択が多かったと報告された。こうした手法は多数決の原理につながり、民意がきちんと反映されているかどうか疑問だ」―

 

 これに対し、菅野部長は「色々な事情で6人が全4回とも欠席した。設問は多方面にわたっており、単なる多数決とは違うと思う」と答えた。伊藤議員が激した調子で口にした。「(「住宅付き図書館」の駅前立地という)市民や議会不在の前例があるから、念にな念を入れて聞いている」―。またぞろ亡霊がむっくり、目を覚ましたようだった。

 

 本舘議員の質問が終わり、次の伊藤議員が登壇した際、菅野部長が「(本舘議員の質問に)補足説明をしたい」と言って、手を挙げた。「駅前の住民を対象とした説明会を実施していないのはまだ、立地場所が最終的に決まっていない段階なので、その必要はないと判断した。病院跡地周辺の住民に対しても同じだ」―。冗談を言ってもらっては困る。場所も建物の説明も一切ないないまま、図書館の「駅前」立地を強行しようとしたのは他ならない上田市長その人ではなかったのか。

 

 その場を取り繕(つくろ)おうとすればするほど「語る」に落ちたり、「藪(やぶ)」をつついて、蛇が飛び出したりと…この日の攻防戦の行司軍配は議員側に挙がったように見えた。一方、上田市長は1万筆を超える病院跡地への立地署名について、「精査した結果、自筆サインをしたのは約6,000人と聞いている」とその数に疑義を呈した。こっちは「窮鼠(きゅうそ)猫を噛む」という諺(ことわざ)がピッタリか。さ~て、「パンドラの箱」を開けた、その先に待ち受けるものは…。この日、傍聴席には40人以上の市民が詰めかけ、質疑の成り行きを見守った。

 

 

 

 

(写真は「ワンセット」のイメージ図を掲げて、質問する本舘議員=花巻市議会議場で。インターネット中継の画面から)

 

 

 

 

 

《追記ー1》~ブログ読者を名乗る方から、以下のようなコメントが寄せられた

 

ブログ記事から素直に読み取れること

 

1.いわゆる「ワンセット論」についてはこれまでの答弁を覆した。補助事業云々の理屈は、市の組織内部のローカルな話。

  

2.新図書館花巻駅前立地で利益を受けるはずの地域住民よりも花巻駅の持ち主であるJR東日本の利益を重視していたらしいこと。駅前市民の意見聴取はなく、JR東日本と何度も議論や交渉を重ねていたこと。

  

3.無作為抽出された3,500人の意見を聞いたならば、統計学的な意味は十分にあったはずだが、75人だかそれ以下の出席者の意見では、その極めて小集団の意見でしかなく、花巻市民の代表的な意見とはなり得ないこと。

 

 

 

《追記―2》~愚かな市民を名乗る方から「約束違反」という以下のようなコメントが寄せられた


 今市議会での市長発言、「仮に立地場所が病院跡地になった場合、JR側から約束違反ではないかと責任を問われる可能性はある。しかし、市としては責任の取りようがない。われわれ行政はそれほど愚かではない。」って図書館立地場所について、事前に何か約束が花巻市とJR東日本で結ばれていたってことでしょうか?「われわれ行政はそれほど愚かではない。」と市長は断言していますが、10年以上この課題を解決できない行政は愚かではない、ということでよろしいでしょうか?

 

  

新花巻図書館の立地問題の決着に向けて…市議会3月定例会が開会~市民会議の発言時間はたったの2分間!!??

  • 新花巻図書館の立地問題の決着に向けて…市議会3月定例会が開会~市民会議の発言時間はたったの2分間!!??

 

 「市民会議には、42名の方が4回すべてに参加していただいたほか、19名の方が3回、6名の方が2回と多くの市民の方にご参加をいただいております。ご参加いただいた市民の皆さんには、新花巻図書館の建設候補地について真摯に話合いをしていただき大変感謝しております。市といたしましては、市民の皆さんの対話による市民会議で出された意見を非常に重く受け止めて、建設候補地を定めるための判断材料として尊重して参りたいと考えております」―

 

 新花巻図書館の立地問題や総合花巻病院の再建問題などの重要案件を審議する花巻市議会3月定例会が26日に開会。上田東一市長は新図書館の立地問題への早期解決へ向けた決意を冒頭のように述べた。それにしても…。この数字をもって「多くの市民」と言ってのける心性には驚き入るばかりである(22日付当ブログの追記参照)。今回、意見集約をするための対話型「市民会議」に欠かさず参加したある市民はこう語っている。「真摯な話し合い」というその中身は…

 

 「ディベートではなく、対話によるという話し合いのルールが毎回、強調された。相手を説得したり、納得させたりせずに共通理解を図るというもの。発言時間は1人2分以内(4回目は3分)とされ、グループ内の雰囲気や時間を気にしながら、自分の言いたいことを選び、まとめるのは大変なことだった。言いたいことが十分言えないモヤモヤを感じて終わった。市民とともに作り上げた結論であるという大義名分が必要なのだろうか。建設地を決定できない市が最後の頼みの綱にしたのが対話型の話し合いという市民の声だったとさえ思われた」

 

 その一方では…「581億7,862万円」―。令和7年度当初予算案として、前年比5・5%増の過去最高額が計上された。任期の最後になる予算計上だけにその執行に期待が寄せられているが、果たして…。これといった“サプライズ”も見当たらない内容に辛口筋からは「カロリーメイト型オワコン」予算とのネーミングも。和訳すると「賞味期限が切れた総花」予算ということになるかも。納得。

 

 今議会には「新花巻図書館整備特別委員会等の設置を求める」―陳情が提出され、議会運営委員会に付託された。提出者の「花巻病院跡地に新図書館をつくる署名実行委員会」(瀧成子代表)は「立地問題が大詰めを迎える中、(令和2年末に解散した)議会側の特別委員会を再設置してほしい」としている。一般質問は3月3日から4日間で、会期は3月19日までの22日間。図書館と病院関連の質問者は以下の通り(敬称略)。

 

 

 

<図書館関連>
 

・本舘憲一(はなまき市民クラブ)、伊藤盛幸(緑の風)、羽山るみ子(はなまき市民クラブ)
 

<病院関連>
 

・鹿討康弘(緑の風)、阿部一男(社民クラブ)、羽山るみ子(はなまき市民クラブ)

 

 

 

 

 

 

(写真は任期最後となる市長演述(施政方針)を述べる上田市長=26日午前、花巻市議会議場で、インターネット中継の画像から)

 

(続)「黒塗り公文書の闇を暴く」…土下座「外交」ならぬ、まるで土下座「行政」~JRとの土地譲渡交渉、そして民意って、な~に!!??

  • (続)「黒塗り公文書の闇を暴く」…土下座「外交」ならぬ、まるで土下座「行政」~JRとの土地譲渡交渉、そして民意って、な~に!!??

 

 「市側で図書館の整備場所が決定し、市の意向として正式に当社敷地を買わせて下さいとなれば、その段階で初めて当社において敷地の譲渡額を算定するために不動産鑑定評価を実施する必要性が生じるが、市側で建設場所がどちらになるか未だ分かりませんという今の状況下において、当社が不動産鑑定評価を実施する理由、必要がないということである」(令和5年7月28日付のJR発言)―

 

 文書開示請求した(令和6年12月12日付)「復命書」から、新花巻図書館の建設候補地のひとつであるJR花巻駅前のスポーツ用品店敷地の譲渡交渉をめぐる生々しいやり取りが明らかになった。そこで浮き彫りになったのは「駅前立地」の確約を一刻も早く、取り付けたいというJR側の強気の姿勢だった。

 

 「譲渡面積は約3,664平方メートル。譲渡価格は市の不動産評価額と同程度の1億3千万」―。2023(令和5)年11月24日、1年2か月ぶりに開かれた第13回「新花巻図書館整備基本計画試案検討会議」の場で、JR用地の譲渡条件が初めて明らかにされた。数カ月に及ぶ協議の末の妥協の産物だった。開示された復命書は令和5年1月11日から同年11月10日までの間に開催された8回の会議の復命記録。例によって、黒塗りされた“のり弁”には変わりはないが、判読可能な行間からは双方のギリギリの攻防戦の様子が垣間見えてくる。

 

 「何回も言うが、まだ場所が決まったわけではないので、具体的な話はその段階でということである」、「花巻市の図書館整備事業に可能な限りの協力はしたいが、収入の減少幅を考慮した場合に、全部の用地を売却するのは難しい」、「そのような駐車場の必要性はあるのか。駐車場を新たに整備するのではなく、駅直結という利点を活かし公共交通をご利用くださいという考えになるのではないか」、「現段階で土地代を対外的に示す必要があるのであれば、市側で不動産鑑定評価を実施していただくことが良いのではないか」、「前回申し上げたとおり、この額がイコール売買額にはならない」…

 

 不動産鑑定を要求する市側とそれをかたくなに拒否するJR側―この辺に双方の力関係の差が歴然と見えるような気がする。「駅前立地の確約書(手形)を持ってきたら、JR側としての正式な譲渡価格を提示する。しかし、(土地代については)『現時点では』という言葉を入れたほうがよろしいかと思う」…駅前立地に固執する市側の足元を見透かしたようなJR側の高飛車の姿勢を見るにつけ、実質的な“仮契約”はすで結ばれているのではないかという錯覚さえ覚えてしまう。一連のJR発言の背後からは「早急に駅前立地を決定せよ。それが無理なら(交渉は)なかったことになる」―こんな無言の圧力が伝わってくる。退路を断たれた敗者の趣(おもむき)である。

 

 それにしても市側がなぜ、これほどまでに「駅前立地」にこだわるのかというナゾは依然として、残ったままである。「なぜ、病院跡地ではダメなのか…」。もっと、深い闇が背後にうごめいているのかもしれない。

 

 立地場所の意見集約をするための対話型「市民会議」は2月15日、全4回にわたった会議が終わった。参加者によるヒアリングシートの中間報告では、病院跡地より駅前への立地を望む意見が若干上回ったと報告された。その際の設問は「都市(建築)計画的視点」に立脚した「活性化」「アクセス」「周辺環境」「駐車場」「費用」など10分類からなっている。図書館というよりもいわゆる「ハコモノ」を対象にしたアンケート調査といった類(たぐい)である。正式な集計は近く公表される予定だが、仮に「駅前立地」が確定すれば、駅橋上化(東西自由通路)と相まって、JR側の手の平で踊らされた“土下座”行政の実態が白日の下にさらされることになる。

 

 当ブログでも再三引用してきたが、これまでの経過を一番わかりやすい形で表明した「上田」語録を総括の意味で以下に再録する。2022年6月28日、松園地区で開かれた市政懇談会での発言である。

 

 「駅前の土地については、購入するためにJR本社の社長の許可が必要となる。現在でも盛岡支社と話し合いをしているが、花巻市としてJRの社長が許可を出した際には図書館を建設するという決定に近い話がなければ社長に話せないと言われている。JRは花巻駅の橋上化をやりたいと思っており、橋上化の話が進めば、土地の売買について真剣に話をしてくれる可能性はある。橋上化がなくなった際には、駅前に図書館を建設することについてもどうなるか分からない」(会議録より)―

 

 

 

 

(写真は発言者の肩書だけが開示された“のり弁”の典型例)

 

 

 

 

《追記》~民意って、な~に?「ウソをつく数字とつかない数字」!!??

 

 

 「駅前か病院跡地か」―。「百年の計」とも言われる文化の殿堂・新花巻図書館の建設場所を決める対話型「市民会議」の最終集計に注目が集まっている。意見が別れる場合、公正中立の形での判定に委ねるのは通常のやり方である。しかし、今回の市民会議の構成を知って、その数字のマジックに驚いた。以下の数字に目を凝らしていただきたい。市側は「多くの市民の方にご参加いただきました」(2月19日開催の記者会見)とうそぶいて憚らない。逆ではないのか。この数字の羅列はまさに「ウソをついている」としか言いようがない。ちなみに「ウソをつかない数字」は18日付当ブログの棒グラフである。

 

 89,656人(令和6年12月末現在の市人口)→3,500人(全人口の中から無作為抽出で選別)→75人(会議への参加希望者)。市側の説明ではこういう手順を踏んで、市民会議を構成したという。では、実際の会議出席者はというと―。65人(第1回)、64人(第2回)、57人(第3回)、53人(第4回)と回を追うごとに減少。全会議(4回)に出席したのは半数を若干上回る42人、3回が19人、2回が6人で、8人は一度も出席しなかったことが判明した。

 

 しかも最終回、ヒアリングシートの記入欄に「(場所は)どちらでもよい」と答えた人が半数に近い25人にも上ったという。その一方では、病院跡地への立地を望む署名が最終的に10,269筆に達している。いずれ場所がどちらに決しようが、今回の市民会議の構成にある種の不透明さが残る以上、当該会議に判定を委ねること自体、将来に取り返しのつかない禍根(かこん)を残すような不安を覚える。賢治の理想郷「イーハトーブ」の図書館誕生劇に暗雲が漂いつつある。

数字が物語る「上田失政」の計量的な分析…隣市・北上との差が歴然!!??

  • 数字が物語る「上田失政」の計量的な分析…隣市・北上との差が歴然!!??

 

 「東芝(現キオクシア)などの企業進出で北上市は、工業都市としての発展がほぼ約束されたと思う。しかし、せっかく文学的な風土があるにもかかわらず、その象徴になるものがない。“工業砂漠”だけにはしたくない」(昭和59年1月25日付「岩手日報」)―。当時、北上市長だった斎藤五郎さん(故人)が40年以上も前に語ったこの言葉が最近、つとに脳裏によみがえる。迷走を続ける新花巻図書館問題との気の遠くなるような乖離がその要因である。

 

 詩歌に特化した全国唯一の図書館である「日本現代詩歌文学館」は斎藤市長のこんな熱い思いが実って、平成2(1990)年5月20日、市制施行30周年事業として正式にオ-プンした。4年後には黒沢尻工業高校の移転に伴い、その跡地に自然美豊かな「詩歌の森公園」が誕生した。10数年の歳月と総工費約26億円をかけた大事業だった。「駅前か病院跡地か」―ある種、不毛な立地論争に揺れる上田市政と「工業砂漠」に文化の拠点を築き上げた斎藤市政。「哲学不在の行政は行政にあらず」…ふと、隣り合わせの行政の実態を数字を使って、読み解いてみたいと思った。

 

 私の手元に「岩手県市町村民経済計算年報」(令和6年5月、県ふるさと振興部)という統計資料がある。自治体ごとの総生産量や所得分配、人口動態などの指標をまとめたもので、期間は平成23年度から令和3年度までの10年間。そのうち、上田東一市長が初当選した平成26(2014)年の以降8年間の統計を比較してみた。「数字はウソをつかない」―。目をショボショボさせながらにらめっこするうちに、その目が点になった。花巻・北上両市の指標の比較は―

 

▼385,000円(令和3年度時点の所得格差)~市民一人当たりの年間所得額は当市が総額で2、519千円、北上市が2,904千円。ちなみに、上田市長の就任時に比べても80千円少なくなっている。また、この8年間、所得額が北上市を上回ったことは一度もない。

 

▼14・4(令和3年度時点の所得指数の比較)~県平均の指数を100として、当市が94,北上市が108・4。当市が100を上回ったことは一度もないのに対し、北上市は常時上回った指数を維持している。

 

▼990人(令和3年時点の人口動態比)~令和2年度までは当市が人口比で北上市を上回っていたが、令和3年度は北上市が93,249人となり、当市の92,259人を逆転、県内の第4位へ。その後も当市の人口は減り続け、市長就任時に98,456人を数えた人口は令和6年12月31日現在で89,656人と8,800人もの激減。上田市政下ではざっと、年間千人弱の減り幅になっている。

 

▼1、155人(令和4年時点での人口の自然減)~一方、県保健福祉年報(人口動態編)によると、出生数から死亡数を引いた人口の「自然減」は北上市が633人だったのに対し、当市は2倍近い1,155人。さらに令和4年時点の当市の死亡者数は1,609人で、北上市の1,133人に比べて476人も多かった。不気味な数値である。急激な人口減の背景にはこうした自然減が大きく作用しているのは明らかだが、周産期医療に対する多額な財政支援や総合花巻病院に対する巨額な赤字補てんなどが人口減に歯止めをかけるに至っていないことも逆に裏付けている。

 

 

▲9,060,330,000円(令和5年度の当市のふるさと納税の寄付額)

 

 上田市政は財政健全化の証として、事あるごとに「ふるさと納税」(イーハトーブ花巻応援寄付金)の好調さを挙げてきた。そして、令和5年度には全国市町村(1,735団体)の中で堂々の第13位にのし上がった。上田市長が留飲を下げたくなる気持ちは分からなくもないが、この巨額な寄付金は一体、どこへ。移住定住や子育て世代への支援を手厚くしているという割には人口減少への歯止め効果は見られず、市民生活の向上にはほとんど資していないということを上記の数値は如実に物語っている。

 

  いまは亡き斎藤・元北上市長が詩歌文学館の計画を議員全員協議会に提案した際、議場は割れるような拍手に包まれ、「市長、やり遂げろよ」という檄(げき)が飛び交ったという。新花巻図書館の立地場所を最終的に決める市議会3月定例会は2月26日に開会する。市民は固唾(かたず)を飲んで、その成り行きを見守っている。

 

 

 

 

(写真は県平均との所得格差を示す花巻・北上両市の棒グラフ)

 

 


《追記》~豪華絢爛にして百花繚乱!?

 

 「市民の暮らしを守る/多彩な支援策で/安心のまちづくり」―を旗印に掲げた令和7年度一般会計当初予算(案)が公表された。総額581億7,862万円で、前年度比5・5%の増。重点施策として「子ども・子育て応援プロジェクト」(88億3,152万円)と「花巻で暮らそうプロジェクト」(24億8,601万円)の実現を掲げ、人口減対策に重点を置いた内容になっている。大盤振る舞いは良しとするが、その実効性のほどは…。上記ブログのもうひとつの「数字」を重ね合わせると、ため息も。詳しくは以下から。

 

令和7年度一般会計予算等について_説明資料 (PDF 2.9MB)新しいウィンドウで開きます