俺だって都会に憧れていた
でもここから出ることはできなかった
家族を捨てられないとか
故郷で生きるんだとか
そんなカッコ良いものじゃない
でも今 俺はここで生きている
朽ちた基準杭のようにここで生きている
祭り終え帰る友垣見送りて 吾は朽ちたる杭のごと在る
停車場で若者達と酒を酌み交わしたものだ。カフェをやりたいとか、それぞれの夢を語ってくれた。いつか彼らは、それぞれの道に向かって飛び立って行った。「大きくなって顔を見せに来るよ。」などと、生意気なことを言っていたものだ。
現実は決して楽なものではない。元気でやっているだろうか。平凡な幸せをつかんでほしい。我が子と同じように彼らのことが気にかかる。いつかまた、彼らと酒を酌み交わす日が来ることを願っている。
いつかまた彼の旅人に会う時を我は待つらん小春日和に
残心の時を過ごせし君なれば背なに祈らんささやかな幸
会いたい人に逢えそうな場所だね
と彼女は言った
そんな人がいる人生は 幸せなのだと思う
たとえその人が 今は亡き人であったとしても
一緒に遊んでくれた近所の兄ちゃんが
就職で東京に行った
その前の日 呼ばれてご馳走をいただいた
ホームから列車が出る時 涙が出て
最後の声も出せず ずーっと下を見ていた
雪が降っていた
山間の村の貧しさが悔しかった
途中下車をしても良いではないか
ゆっくりと流れる時間の中で
忘れていたものに気づくこともある
列車を見送るのも勇気のいることだ