天保の大ききんで人心はすさみ、親子の情すら薄らぐ有様でした。
川樋村松林寺十六世住持の金毛(きんもう)和尚は観音様にすがるより他なしと決断し、村人等の協力を得て西国三十三観音を勧請しました。
江戸時代に彫られた金毛和尚像で第26番観音の近くにあります。
順路表示はありませんが、南側に遊歩道が分かれていて10mほど進むと岩陰に彫られています。
像の下側に「天保 四巳? 石工 栄?」と刻まれていることから、石工の像という話もありますが、右手に仏具の金剛杵を持つことから和尚像であると考えます。
第26番「法華山 一乗寺 聖観世音菩薩」
春は花 夏は橘 秋は菊 いつも妙なる 法の華山
春には桜、夏には橘、秋には菊の花が咲くように、いつも有難い仏様の花が咲いている妙法華華のお山です。
鳥の声、梢の音も、観世音菩薩の大慈大悲のお声と聞こえます。
引用:一乗寺 山主 太田 實秀「西国巡礼慈悲の道」より
◇「花」と法華の「華」をかけています。
観音経は「妙音観世音」妙なる※声の観世音と説いています。
※素晴らしい・美しい
第25番「御嶽山 播州清水寺 十一面千手観世音菩薩」
あはれみや 普き門の 品々に なにをかなみの ここに清水
観音様はあわれみ(慈悲)の心を持っている。
普門品※(観音経)を唱えれば何も悩むことはなく、清水の観音様が救ってくれる。
◇「なみ(波)」に「清水」を組み合わせています。
観音経は「或漂流巨(略)波浪不能没」大海を漂流しても観音様を念ずれば波の中に溺れることはないと説いています。
※法華経の「観世音菩薩普門品第二十五」の略称で観音経のことです。
第24番「紫雲山 中山寺 十一面観世音菩薩」
野をもすぎ 里をもゆきて 中山の 寺へ参るは 後の世のため
多くの人々が野山や村里を越えて、中山寺の観音様にお参りに行く。
観音様は、後世救済の手を差し伸べてくれる。
第24番の観音様が彫られた岩は、貴族が被っていた烏帽子の形に似ていることから「烏帽子岩」と呼ばれています。
「烏帽子岩」は茅ヶ崎だけでなく山形にもあるんです。
第23番「応頂山 勝尾寺 十一面千手観世音菩薩」
重くとも 罪には法の 勝尾寺 ほとけを頼む 身こそやすけれ
例え重い罪を犯しても、仏法の救いは罪に勝つ(罪に勝る)。
それは勝尾寺の観音様にお祈りすることで、安らぎの身となる。
◇罪に「勝つ」と「勝尾寺」をかけています。
重い罪とは五逆(五つの罪)のことと考えられます。
五つの罪については第17番を参照ください。
岩部山で一番高い場所に鎮座する観音様です。後は下り坂が続きます。