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<「まるごと賢治」コ―ナ―の設置~まばゆいばかりの”人脈図”> ~IHATOV・LIBRARY(「まるごと賢治」図書館)の実現を目指して(その1)

  • <「まるごと賢治」コ―ナ―の設置~まばゆいばかりの”人脈図”> ~IHATOV・LIBRARY(「まるごと賢治」図書館)の実現を目指して(その1)

 

 2年前、花巻城址と背中合わせだった旧花巻病院の病棟群が解体され、目の前に広々とした空間が現れた瞬間、まるで宮沢賢治がこの地に降臨したのではないかという錯覚を覚えた。賢治がこよなく愛した霊峰・早池峰がキラキラと輝きながら、雲間に浮かんでいた。その足元の病院跡地にはかつて、賢治が教鞭を取った稗貫農学校(花巻農学校の前身)が建っていた。「日ハ君臨シ/カガヤキハ/白金ノアメ/ソソギタリ…」―。市民の歌として親しまれている「精神歌」(賢治作詞)は、”桑っこ大学”の愛称で呼ばれたこの校舎でうぶ声をあげた。

 

 IHATOV・LIBRARY(「まるごと賢治」図書館)構想はこんな情景の中から、まるでそうあるべきだという風な自然な形で姿を現した。「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です(あらゆる透明な幽霊の複合体)」(『春と修羅』序)―。賢治は自らを“現象”と位置づけているから、言ってみれば永遠に不滅の存在である。そんな賢治を“実験”してみたいと思う。以下にこの構想を素描する。

 

 

 

 賢治を「師」と仰いだ人材は世界各国にキラ星のように存在する。例えば、原子物理学者の故高木仁三郎さんが反原発運動の拠点である「原子力資料情報室」を立ち上げたのは賢治の「羅須地人協会」の精神に学んだのがきっかけだった。また、アフガンでテロに倒れた医師の中村哲さんの愛読書は『セロ弾きのゴーシュ』で、絶筆となった自著のタイトルはずばり『わたしは「セロ弾きのゴ-シュ」』ーだった。さらには、シンガーソングライターの宇多田ヒカルのヒット曲「テイク5」は『銀河鉄道の夜』をイメ-ジした曲として知られる。

 

 一方、戦後最大の思想家と言われた故吉本隆明さんに至っては「雨ニモマケズ」を天井に張り付けて暗唱していたというから、「賢治」という存在がまさに、“エイリアン”(宇宙人)のように思えてくるではないか。こうしたほとばしるような「人脈図」がひと目で分かるようなコーナーを設置し、賢治という巨木がどのように枝分かれしていったのかーその思想の全体像を「見える化」したい。

 

 「夢のような一幕物語から始めたい」―。宇宙物理学者で賢治研究家でもある故斎藤文一さんの著『愛と小さないのちのトライアングル』(2007年)の書き出しはこう続く。「イ-ハト-ブという名の地に三つのいのちが集まったという話である。三つのいのちが一つになり、楽器になった。やがてその調べは小さな物語となり、波となり、まわりに共鳴の輪を描き、風をはらんで広がった。どこまでも」―。サブタイトルには「宮澤賢治・中村哲・高木仁三郎」の名前が記されている。3人が奏でる“イーハトーブ交響曲“が文中から聴こえてくるような気がする。以下のような美しい歌声とともに…

 

 「イ-ハトヴとは一つの地名である。強て、その地点を求むるならば、大小クラウスたちの耕していた、野原や少女アリスが辿った鏡の国と同じ世界の中、テパ-ンタ-ル砂漠の遥かな北東、イヴン王国の遠い東と考えられる。実にこれは著者の心象中に、この様な状景をもって実在したドリ-ムランドとしての日本岩手県である」(『注文の多い料理店』広告チラシ)―。賢治は自らの理想郷(イ-ハト-ブ)を称して、ずばり“夢の国”(ドリ-ムランド)と呼んでいる。私はこの地に「賢治ワ-ルド」をいっぱい詰め込んだ“夢の図書館”の実現を夢見ている。

 

 

 

 

《註》~今こそ、真の図書館論争を!!??

 

 「駅前か病院跡地か」―。新花巻図書館の立地場所の選定が最終段階に入り、12月中旬までにはどちらかに決まる見通しになった。しかし、「どこに」という“立地論争”が先行する余り、肝心の「どんな」という図書館像をめぐる論議が置き去りになった感がぬぐえない。駅前立地を主張する市側は「賢治コーナー」を新たに設置するとしているが、これまでなかった方が不思議というもんである「IHATOV・LIBRARY」ではベートーベンを気取ったあの賢治とあちこちで遭遇すること請け合いである。銀河宇宙からひょいと舞い降りた、おらが賢治さんと…

 

 

 

 

(写真は稗貫農学校で教鞭を取っていた当時の賢治=インターネット上に公開の写真から)

 

 

 

 

《追記―1》~パワハラとカスハラの”両刀使い”はどうするの…市民に対する逆「カスハラ」!!??

 

 

 賢治が建国した「イーハトーブ」の当代盟主、上田東一市長はパワハラの常習犯として知られるが、6月定例市議会ではその返す刀で「あるブロブは全部ウソだ」と発言。当ブログを名指しするかのようにまさに「カスタマーハラスメント(カスハラ)」(職員への暴言、不当要求などの迷惑行為)まがいの”嘘つき”暴言を浴びせた。

 

 ところで、21日付「岩手日報」は一面トップで「カスハラ 県内19市町村が対策」とデカデカと報じた。当市も名札の表記変更などの対策を取っていることを知った。思わず、「ケッ」と笑った。ハラスメントなどの公益通報制度を定めた当市の「不正防止に係る内部通報に関する規程」は通報者の名前が市長に筒抜けになるザル法同然だったこと明らかになった(16日付当ブログ参照)。そういえば、「うそ八百」発言の兵庫県知事自身のウソも日々、暴露されている。彼方からも此方からも目を離せない。

 

 

 

 

機能不全の「公益通報」制度…全国各地で不祥事、相次ぐ~そして、足元でも「助けてください」とSOS!!??

  • 機能不全の「公益通報」制度…全国各地で不祥事、相次ぐ~そして、足元でも「助けてください」とSOS!!??

 

 「勇気を出し切れず、匿名でしかご連絡できないことが申し訳ないです。現在、職員の多くが自信をなくし、仕事へのモチベ-ションも、将来の希望も失っている状況になっています。市長はよく『市役所の職員はレベルが低すぎる』、『小学生の算数もできない」、『馬鹿すぎる』などと職員を罵ります。市職員は決して無能ではありません。このままでは、有能な職員ほど状況を悲観し、やめていってしまいます。どうか一刻も早く、この地獄のような状況が変わる一助になればと、今回連絡いたしました。多くの職員が苦しんでいます。どうか助けてください。お願いします」(要旨)―。さかのぼること4年前の2020年3月6日付で、花巻市職員を名乗る方からこんな悲痛な訴えが寄せられた。

 

 「なぜ、私の元に?」―。今般の兵庫県知事や鹿児島県警本部長など行政トップによる“内部告発”潰(つぶ)しを目の当たりにし、通報者(内部告発者)の不利益を防ぐ目的で制定された「公益通報者保護法」(平成16年)が果たして、きちんと機能しているかどうか不安にかられた。そんな時、ふいに冒頭の「SOS」発信が頭によみがえったのである。本市が同法にならって「不正防止に係る内部通報に関する規程」を定めたのは平成27年8月。それによると、ハラスメントに係る不正などを含めた事案の通報先は市長直轄の「内部通報窓口」(総務課)とされ、「直ちに市長(市長が認めた場合及び市長を被通報者とする内部通報の場合は副市長)に報告しなければならない」(第6条)と定められている。

 

 パワハラなどを内部告発した兵庫県の元局長はその内容が「うそ八百」だと主張する斎藤元彦知事によって逆に懲戒処分に処せられ、その後、本人は「死をもって抗議する」という遺書を残して自死している。日本経済新聞の社説はこう書いている。「自治体では首長が非常に強い権限を持つ。だからこそ、公益通報の仕組みが十分に機能するようにしておくことは、公正な行政を担保するうえで重要だ。疑問の一つは告発が公益通報に当たるのではないかという点だ。公益通報者保護法は通報先として企業や行政機関の公益通報窓口だけでなく、報道機関など外部への通報も認めている。公益通報に当たるなら通報者の不利益な取り扱いは禁じられる」(13日付)

 

 監督官庁の消費者庁は令和4年6月「通報対応ガイドライン」を改正し、以下の条項を新設した。「各地方公共団体は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に係る公益通報対応業務に関して、組織の長その他幹部に関係する事案については、これらの者からの独立性を確保する措置をとること」―。つまり、通報者と被通報者との「利益相反」を完全に排除するよう配慮を求め、その双方の「独立性」についても触れているが、当市の現行規程ではまだ、そのままになっている。

 

 一方、隣市の「北上市公益通報規則」(令和4年12月改正)は国のガイドラインに従い、「内部公益通報対応業務従事者」を設置することを定め、こう規定している。「内部公益通報対応業務従事者は、自らが当事者となる内部公益通報に関与してはならず、当該内部公益通報において自らが当事者となることが判明した場合は、速やかにその旨を内部公益通報管理者に申し出なければならない」(第5条)。また市長への報告についても原則として、「内部公益通報者を特定させる事項は報告しない」(第9条)と通報者を保護する方向を明らかにしている。

 

 上田東一市長の“パワハラ”疑惑は現在に至るまで庁内のあちこちでささやか続けている。最近も中堅職員が長期休暇に追い込まれたという情報が寄せられた。4年前の「SOS」発信もトップに筒抜けの現行規程を恐れてのことだったのかもしれない。兵庫県の悲劇を繰り返さないためにも、庁内にすがすがしい「新しい風」(上田市長の公約)を吹けせてほしいと願う。

 

 

 

 

(写真は兵庫県知事をめぐる「公益通報」制度の危機を報じた記事=7月12日付「朝日新聞」より)

 

 

 

 

《追記―1》~「パワハラ」知事は辞めろ!!??

 

 兵庫県の斎藤元彦知事がパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題を巡り、兵庫県庁舎(神戸市中央区)の前では19日、有志らが知事に辞職を求める抗議集会を開いた。SNS(ネット交流サービス)で集まった約100人の市民らが横断幕やポスターを手に「知事は辞めろ」と声を上げた。

 

 この日は、元局長の告発内容の真相を解明する調査特別委員会(百条委)が県議会で開かれている。集会を呼び掛けた兵庫県西宮市の無職、八木和美さん(71)は「問題を自分の言葉で説明せず『県政を前に進める』と繰り返す知事は情けない。職員が亡くなったことは県民として悔しく、知事には責任を取ってほしい」と訴えた(19日付「毎日新聞」電子版)

 

 

 

《追記ー2》~議会中継へどうぞ

 

 新花巻図書館や総合花巻病院などをめぐる市政課題が議会内部でどのように議論されているのか、以下のアドレスから議場へ入場できます。議員活動を外部から監視するためにもどうぞ。6月定例会の一般質問でこの案件の双方かいずれかを取り上げた議員は以下の通り(敬称略)。なお、上田市長の”嘘つき”発言は18日の議案審議における伊藤議員の質問に対する答弁の中に出てきます(2,56,28時~)。また、花巻病院の”裁判沙汰”を問うた羽山議員の質問の最後の場面には上田市長の反問権の乱用ぶりが映し出されています。

 

・伊藤盛幸(10日、緑の風)

・阿部一男(13日、社民クラブ)

・照井明子(同、共産党)

・羽山るみ子(同、はなまき市民クラブ)

・鹿討康弘(14日、緑の風)

 

 

インターネット議会中継(外部リンク)

 

 

 

 

 

 

中立性が疑われる選定委員会が、「中立的」なファシリテーターを選定するという“摩訶不思議”!!??

  • 中立性が疑われる選定委員会が、「中立的」なファシリテーターを選定するという“摩訶不思議”!!??

 

 「公募プロポーザルと言いながら、『公募』どころか門戸を閉ざしているのではないか」―。新花巻図書館の意見集約の手法などの運営を外部(ファシリテーター)に委託するための参加受付が9日から始まったが、その期間は19日までのわずか11日間。さらに、駅前か病院跡地かという「二拓」の意見集約にもかかわらず、選定委員(6人)の過半数以上(うち、市職員が3人)が「駅前立地」の立場を鮮明にしており、「もはや、茶番としか言いようがない」という驚きの声が上がっている。

 

 図書館の立地場所の選定を同じ公募プロポーザル方式で実施した大阪府豊中市の場合、受付から企画書の提出まで1カ月の期間を設けているのに対し、当市ではわずか20日。また、8月下旬をメドに契約を締結し、契約期間が終了するのは12月13日と特定されている。つまり、この日までに駅前か病院跡地かどちらかの立地場所が最終的に決まるという段取りになっている。しかし、意見集約の対象(市民)をどのようにして選択するのかという肝心な点については「プロポーザル実施要領」にも「業務委託仕様書」にも一切、触れられていない。

 

 市議会6月定例会で承認された関連予算は総額10,468千円で、業務委託料(9,922千円)を除いた分として、「市民会議参加者謝礼」名目で30万円(2,000円×50人×3回)、「市民会議参加依頼通知郵送料」名目で21万円(84円×2、500通)が計上されている。つまり、市側は2,500人の市民に対し市民会議へ参加の依頼をした上で、その中から50人を選ぶ会議を想定しているように見える。上田東一市長は議会答弁で「無作為抽出で選びたい」と強調したが、年齢や性別を別にしたとしてもこの手法は統計学上は当然のやり方である。

 

 それよりも人口90,341人(令和6年6月末現在)のうち、たった50人で正確に民意を反映できるかどうかである。ちなみに、「病院跡地」への立地を求める署名活動を続けている「花巻病院跡地に新図書館をつくる署名実行委員会」(瀧成子代表)によると、市外を含めた賛同署名はすでに、8,000筆を超えたという。もうひとつのこの”民意”をどう評価するかも大きな課題であろう。

 

 「受注者は、本業務の目的を実現するため、市民が自由に意見交換できるような会議を開催するものとする。参加者それぞれが建設候補地についてどのような意見をもったか、他の参加者と意見を共有するなかで、考え方がどう変わっていったかなどの過程等を市が把握できるよう工夫して会議を運営するものとする」―。業務委託仕様書の中にこんな気になる記述を見つけた。”内心の自由”(憲法第19条)に踏み込む恐れはないのか。個人情報が記載された住民基本台帳を閲覧できるのは市側だけである。そんなことはないとは信じるが、市民会議に参加する市民の選択に当たってはそこにいささかの“恣意”(しい)があってはならない。

 

 上田市長に”嘘つき”呼ばわれされた私ではあるが、“図書館愛”は人後に落ちないと自負している。運よく、“くじ引き”に当たって、市民会議の場で理想の図書館像について、自説を開陳する機会を与えてほしいと神に祈りたい。

 

 

 

(写真は市側が立地の第1候補に挙げるJR花巻駅前。後方に建設場所とされるスポーツ用品店の建物が見える=花巻市大通りで)

 

 

 

 

《追記―1》~井戸端会議にリーダーはいない(天野正子)

     

 60年安保闘争時、「誰デモ入れる声なき声の会」という旗を掲げ、歩道の人に行進への合流を呼びかけた画家の小林トミ。彼女は、自分の都合を優先せざるをえない個人がそれでも生活人として意志表示し、政治を足許(あしもと)にたぐり寄せる非組織の「市民」運動を追求した。社会学者・天野による評伝「小林トミ」(《ひとびとの精神史》第3巻、栗原彬編『六〇年安保』所収)から=7月12日付「朝日新聞」鷲田清一の折々のことば

 

 

《追記―2》~議会中継へどうぞ

 

 新花巻図書館や総合花巻病院などをめぐる市政課題が議会内部でどのように議論されているのか、以下のアドレスから議場へ入場できます。議員活動を外部から監視するためにもどうぞ。6月定例会の一般質問でこの案件の双方かいずれかを取り上げた議員は以下の通り(敬称略)。なお、上田市長の”嘘つき”発言は18日の議案審議における伊藤議員の質問に対する答弁の中に出てきます(2,56,28時~)。また、花巻病院の”裁判沙汰”を問うた羽山議員の質問の最後の場面には上田市長の反問権の乱用ぶりが映し出されています。

 

・伊藤盛幸(10日、緑の風)

・阿部一男(13日、社民クラブ)

・照井明子(同、共産党)

・羽山るみ子(同、はなまき市民クラブ)

・鹿討康弘(14日、緑の風)

 

 

インターネット議会中継(外部リンク)

 

 

 

 

 

 

 

 

神聖な議場で“嘘つき”呼ばわれされた私としては…これって、現代版「花巻事件」じゃないかと~その一方では“立地”論争が大詰めに。あぁ、“嘘だらけ”の人生よ!!??

  • 神聖な議場で“嘘つき”呼ばわれされた私としては…これって、現代版「花巻事件」じゃないかと~その一方では“立地”論争が大詰めに。あぁ、“嘘だらけ”の人生よ!!??

 

 新花巻図書館の「駅前立地」構想が浮上して以来、このまちの鉄道盛衰史に興味を持つようになった。たまに面白い発見がある。たとえば、駅そのものの“立地”論争もそのひとつ。現在の「JR花巻駅」(旧国鉄)が誕生したのは134年前の明治23(1890)年11月1日。当時も建設場所をめぐって、町方とそれ以外の地区との間で誘致合戦が行われ、結局当時、貴族院議員だった伊藤儀兵衛が私有地を寄付して、現在地に決まった。「いつの時代も土地は利権がらみということか」。JR側がいわばタダで手に入れた土地が今度は市側に売却されるという時代の転変に若干鼻白(はな)じろみながら、さらに歴史をひもといているうちに衝撃的な事実にぶち当たった。

 

 「花巻事件」―。『誤った裁判』(岩波新書、1960年刊)によると、この事件が起きたのは昭和27(1952)年12月6日。当時の花巻駅には明治44年に開業した「岩手軽便鉄道」(現釜石線)が乗り入れ、遅れること4年後に東北初の電車としてお目見えした「花巻電鉄」が交差する一大鉄道駅としての賑わいを見せていた。“朝鮮特需”もあって、駅前一帯には飲み屋街が林立し、そのひとつ「玉の家」でこの事件は発生した。

 

 当時、遠野駅に勤めていた29歳の鉄道員Sさんはその日、自宅のある花巻駅に着いたその足で駅前の玉の家にふらりと立ち寄った。遠野でもしこたま飲んだので、すでに酩酊(めいてい)の状態だった。突然、2階のふすま付近が燃えているという叫び声が聞こえた。幸いボヤ程度で収まったが、「放火未遂」事件として、犯人探しが始まった。最後まで2階で飲んでいたSさんに疑いの目が注がれた。あらゆる拷問(ごうもん)の末にSさんは自供に追い込まれた。最高裁で「無罪」を勝ち取るまでに5年の歳月を要していた。

 

 「私は読んでいませんよ。ただ、そのブログにはいろんなことが書かれているらしい。全部嘘なんですが、それが独り歩きしている」―。花巻市議会6月定例会の議案審議の場で、上田東一市長は新図書館の立地問題に絡んで、まるで私のブログを名指しするように、こう答弁した。とっさに花巻事件で「嘘の自供」を強いられたSさんの光景が二重写しになった。最近相次ぐ反問権の乱用や今回の“嘘つき”発言…。時代の隔たりを超えてもなおという思いにかられた。「暴力という形はとらないまでも“公権力”を背景にした、これはある種の言論封殺つまり心理的な拷問ではないのか。強権支配の構造は何ひとつ、変っていない」―

 

 『誤った裁判』には花巻事件のほか、三鷹事件や松川事件など戦後の代表的な「えん罪」事件が8件取り上げられている。筆者のひとりは上田市長と同じ東大法学部出身の弁護士、後藤昌次郎さん(故人)で、生まれは隣り町の北上市。松川事件(昭和24年)を担当したことで知られる後藤さんは花巻事件について、こう書いている。「善良な国鉄職員である被告が、放火未遂のぬれ衣をきせられて、長い間裁判にかけられたのは、取り調べに当たった警察官の拷問のためであった。…岩手県の花巻に住む一国鉄職員の経験はこれだけのことを示すには余りにも不幸なものであった」

 

 人権派弁護士として名を成した後藤さんの姪、後藤昌代さんは地元で和風喫茶「手風琴」(てふういん)を営んでいる。昌代さんら有志のメンバーはバナナのたたき売りや皿回し、南京玉すだれなどの大道芸にも通じ、私が福祉施設に勤務していた当時は何回かお招きしたことがある。さらに,コロナ禍のやもめ暮らしの際には「歌でも歌って、元気になって…」と歌声喫茶のイベントへのお誘いを受けたりもした。まさに「縁(えにし)」とは不思議なものである。

 

 「駅前か病院跡地か」―。134年前、もうひとつの“立地”論争の末に誕生したJR花巻駅前を舞台にした新図書館の建設問題はこれから正念場を迎える。一方の病院跡地をめぐっては、4年前に新装オープンした新病院で「裁判沙汰」が明らかになるなど病院内の不祥事に市民は不安を募らせている。「新図書館&新病院」物語が今後、どんな展開を見せるのかー終わりなき「悲喜劇」の大団円は果たして…

 

 

 

(写真はかつて、通学用にも利用された花巻電鉄。車内の間隔が狭く、馬の首のようにひょろ長かったので、“馬面(づら)”電車とも呼ばれた。民家の軒先をこするように町内をくねくねと進む姿が今も目に浮かぶ。昭和47年に全線廃止。釜石線も乗降客の激減で、花巻事件当時の“赤ちょうちん”の面影はない=インターネット上に公開の写真から)

 

 

 

 

《追記―1》~彼方の首長も“うそ八百”発言!!??

 

 

 兵庫県の斎藤元彦知事らを内部告発した元県民局長の男性(60)が死亡した件で、同知事は10日陳謝したが、辞職は否定した。元県民局長は3月中旬、知事による職員へのパワハラなどの疑惑を告発する文書を県議や報道機関に配布した。斎藤知事は「うそ八百」と否定、逆に停職3か月の懲戒処分を科した。その後、県議会が「百条委員会」を設置したが、元県民局長は七夕の7月7日、自宅で死亡しているのが見つかった。斎藤知事(46)は東大経済学部卒の元総務官僚で、1期目(7月11日付「朝日新聞」より)

  

 

 

《追記ー2》~プロポーザル選定委員会、次回も非公開に!!??

 

 第1回プロポーザル選定委員会(6月27日開催=同日付当ブログ参照)の会議録が9日付HPで公表され、次回も非公開にすることが委員6人の全一致で決まった。非公開の理由について、市の図書館アドバイザ-でもある早川光彦富士大学教授は「我々の協議した内容が公開されると、これに申し込もうとしているところとかが、事前に情報を得られるということになります…」などと意味不明なことを口にした。文化施設でもある図書館建設の叡智を広く公に求めようとする際に外部に知られて何か不都合なことでもあるのだろうか。なお、市職員以外の委員3人は現職の富士大学の教員かかつてその職にあった“大学閥”で占められている。

 

 

 

《追記―3》~プロポーザルの公募は7月9日から

 

 9日付HPに公募プロポーザルの実施スケジュールが公表され、参加申し込みは7月9日から同19日までと決まった。その後、応募者の資格審査や質疑、企画提案書の審査、プレゼンテーションなどを経て、8月下旬に契約締結へ。契約期間は締結日から12月13日まで。いわゆるファシリテーターが決定した後、50人規模の「市民会議」が予定されており、ここで対話による意見集約をするとしている。スケジュールが予定通りに進めば、今年中には「駅前か病院跡地か」の立地論争が決着を見ることになる。

 

 

 

《追記―4》~試案検討会議及び市民参画協働推進委員会へ報告ですか?

 

 「出来レース」を名乗る方から、以下のようなメールが届いた。あらためて委員名簿を確認した結果、外部委員の2人がこの二つの組織(1人はオブザーバーとして)に名前を連ねていることが分かり、趣旨に納得した。

 

 「ブログ記事を見て、改めて今回のプロポーザル実施の経緯を見たのですが、プロポーザルにより選定された手法について、当局の議員説明会では、試案検討会議及び市民参画協働推進委員会へ報告と書かれています。今回のプロポーザル選定委員会にこれら二つの委員会から予め委員が選定されているのはなぜなのかと不思議に思いました。これら二つの委員会への報告はまさに事後報告で、出来レースにするための委員布陣ではないかと思ったりします。そもそもこういう人たちをプロポーザル選定委員会に選ぶのはいかがなものかと思います」

 

 

 

《追記ー5》~議会中継へどうぞ

 

 新花巻図書館や総合花巻病院などをめぐる市政課題が議会内部でどのように議論されているのか、以下のアドレスから議場へ入場できます。議員活動を外部から監視するためにもどうぞ。6月定例会の一般質問でこの案件の双方かいずれかを取り上げた議員は以下の通り(敬称略)。なお、上田市長の”嘘つき”発言は18日の議案審議における伊藤議員の質問に対する答弁の中に出てきます(2,56,28時~)。また、花巻病院の”裁判沙汰”を問うた羽山議員の質問の最後の場面には上田市長の反問権の乱用ぶりが映し出されています。

 

・伊藤盛幸(10日、緑の風)

・阿部一男(13日、社民クラブ)

・照井明子(同、共産党)

・羽山るみ子(同、はなまき市民クラブ)

・鹿討康弘(14日、緑の風)

 

 

インターネット議会中継(外部リンク)

 

 

 

 

《追記―6》~井戸端会議にリーダーはいない(天野正子)

     

 60年安保闘争時、「誰デモ入れる声なき声の会」という旗を掲げ、歩道の人に行進への合流を呼びかけた画家の小林トミ。彼女は、自分の都合を優先せざるをえない個人がそれでも生活人として意志表示し、政治を足許(あしもと)にたぐり寄せる非組織の「市民」運動を追求した。社会学者・天野による評伝「小林トミ」(《ひとびとの精神史》第3巻、栗原彬編『六〇年安保』所収)から=7月12日付「朝日新聞」鷲田清一の折々のことば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花病「裁判沙汰」余話…「あだ花」と散った夢の跡~仏作って、魂入れず!!??

  • 花病「裁判沙汰」余話…「あだ花」と散った夢の跡~仏作って、魂入れず!!??

 

 「移転地において、年間80万人が行き交うにぎわいを創出。中心部における地域活性化につなげていきます」(平成27年12月1日発行「広報はなまき」)―。もうあれから、足かけ10年になる。「これでシャッター通りともおさらばできるね」…その日、花巻市民は一面を埋め尽くした完成イメージ図に小躍りした。一般病棟のほか少子化に備えた助産所の開設や234席の移動式座席を備えた「多目的ホール」、オーガニックが売り物のレストランなどなど。目の前に示された「(総合花巻病院)移転整備基本構想案」(平成27年11月)はまさに将来の夢を約束する朗報になるはずだった…

 

 暗転はわずか1年後にやってきた。当初予定の事業費約99億円は12億減の約87億円の減額に。当市は当初約30億円の補助を予定していたが、余りにも巨額な税支出に市民や議会側から批判が噴出、結局約20億円に抑えられた。80万人の(病院)関係人口の創出というスローガンは泡沫(うたかた)の夢と消えた。新たに公表された「移転新築整備基本構想」(平成28年12月)によると、自己資金はわずか1億円。ほとんどが補助金や金融機関からの借り入れにおんぶした形の新病院はそれでも強引にオープンを急いだ。一体、なぜ…

 

 「仏作って、魂入れず」―。事実上の“見切り発車”は当然のように、病院の経営を直撃した。現在、裁判を係争中の男性技士のAさん(1日付当ブログ参照)は当時の内情をこう語っている。「臨床工学技士を募集していることを知り、これまで何か所かの病院で培ってきた技量を発揮できると…。ところが、まるで天国と地獄。年間3・5カ月とされていた期末手当は1・5カ月。後に分割払いで支払われたが、労基局から残業手当約2千万円以上の未払いを指摘されたことも。知人の事務員は陰湿なパワハラといじめに耐えられなくなり、退職に追い込まれた」―

 

 “助産所”事件と呼ばれる出来事があった。「助産所は2階建て(延べ154平方メートル)で1日2人の利用者に対し、産婦人科医や助産師など5人が対応に当たる」―。旧構想案でこう明記されていた記述が新構想案ではそっくり削除され、こう書き替えられた。「将来的に産婦人科医師や助産師の体制が整った際には出産の受け入れを検討する。それまでは助産師外来を開設し、出産前後の妊婦指導を行えるようにし、同時に産後ケア施設の開設も検討する」―。この“公約”はすべて反故(ほご)にされ、「出産」受難は解消されないまま、現在に至っている。

 

 「まちづくりのために新病院の建設を急ぐのだとすれば、これほどまでの医療への冒涜(ぼうとく)ない。土台、魂(医療)の抜け殻みたいな病院に患者が押し寄せるわけがない」―。知り合いの開業医が吐き捨てるように言った言葉がまだ、頭の奥に刻まれている。今回の巨額な財政支援を目の当たりにしながら、この医師の怒気がはっきり、分かるような気がした。「上田(東一)市政の誕生に花を添えるための、これは言ってみれば『立地適正化計画』の成功を祝うための“ご祝儀”事業ではなかったのか」―

 

 病院から徒歩で5分前後の場所に職員駐車場がある。その場所でのモラルを欠いた振舞いに町内会から苦情が出たことについてはすでに触れた。その背中合わせに瓦礫(がれき)の荒れ野が広がっている。上田市政の“負の遺産”とささやかれる新興製作所跡地(花巻城址)である。本来なら、まちのシンボルになるべきはずのプロジェクトが無惨な姿をさらけ出している。一方で、東北有数の温泉地がある当市へのインバウンド(外国人観光客の誘客)を呼びかける上田市政…城郭文化に誇りを持つ外国人にとって、この光景はどう映るだろうか。こうした倒錯した神経にはめまいすら覚える。新病院に続いて、新花巻図書館の行方にも…何か不吉な予感が漂い始めている。

 

 

 

 

 

(写真は売店を兼ねた休憩室。当初計画ではオーガニックレストランとコンビニが入居するはずになっていた=花巻市御田屋町の病院入り口わきで)

 

 

 

 

《追記》~失敗隠しあるいはマッチポンプ

 

 

 「ガッテン市民」を名乗る方から、以下のような長文のコメントが寄せられた。「上田市政」の本質を的確に分析していることにうなずいた。ますます、「市民不在」の市政運営から目を離せなくなってきた。

 

 

●「ブログ記事で分かったことは、周産期医療について総合花巻病院移転計画でぶち上げた計画が出来なくなって、その失敗隠しで市内の周産期医療施設に対して、産婦人科医等を雇用するのに何千万円もの破格の補助金を出すことになったのではないか、ということです」

 

●「そもそも病気になった市民が集うことで、街の賑わいを作ろうとしていた考え方が不健康、不健全だと思います。更に言うと予想しやすい市政失敗が顕在化した後、それを隠すために必要な施策を、多額な予算措置をしてさもさもすごいことをしているかのようにしている現市政のあり方は、 自分で火をつけておきながらポンプを使って消火する様子、すなわち、何らかの利益・評価を得るために自ら問題を起こし、自分で解決する行為としか考えられません」