「公募プロポーザルと言いながら、『公募』どころか門戸を閉ざしているのではないか」―。新花巻図書館の意見集約の手法などの運営を外部(ファシリテーター)に委託するための参加受付が9日から始まったが、その期間は19日までのわずか11日間。さらに、駅前か病院跡地かという「二拓」の意見集約にもかかわらず、選定委員(6人)の過半数以上(うち、市職員が3人)が「駅前立地」の立場を鮮明にしており、「もはや、茶番としか言いようがない」という驚きの声が上がっている。
図書館の立地場所の選定を同じ公募プロポーザル方式で実施した大阪府豊中市の場合、受付から企画書の提出まで1カ月の期間を設けているのに対し、当市ではわずか20日。また、8月下旬をメドに契約を締結し、契約期間が終了するのは12月13日と特定されている。つまり、この日までに駅前か病院跡地かどちらかの立地場所が最終的に決まるという段取りになっている。しかし、意見集約の対象(市民)をどのようにして選択するのかという肝心な点については「プロポーザル実施要領」にも「業務委託仕様書」にも一切、触れられていない。
市議会6月定例会で承認された関連予算は総額10,468千円で、業務委託料(9,922千円)を除いた分として、「市民会議参加者謝礼」名目で30万円(2,000円×50人×3回)、「市民会議参加依頼通知郵送料」名目で21万円(84円×2、500通)が計上されている。つまり、市側は2,500人の市民に対し市民会議へ参加の依頼をした上で、その中から50人を選ぶ会議を想定しているように見える。上田東一市長は議会答弁で「無作為抽出で選びたい」と強調したが、年齢や性別を別にしたとしてもこの手法は統計学上は当然のやり方である。
それよりも人口90,341人(令和6年6月末現在)のうち、たった50人で正確に民意を反映できるかどうかである。ちなみに、「病院跡地」への立地を求める署名活動を続けている「花巻病院跡地に新図書館をつくる署名実行委員会」(瀧成子代表)によると、市外を含めた賛同署名はすでに、8,000筆を超えたという。もうひとつのこの”民意”をどう評価するかも大きな課題であろう。
「受注者は、本業務の目的を実現するため、市民が自由に意見交換できるような会議を開催するものとする。参加者それぞれが建設候補地についてどのような意見をもったか、他の参加者と意見を共有するなかで、考え方がどう変わっていったかなどの過程等を市が把握できるよう工夫して会議を運営するものとする」―。業務委託仕様書の中にこんな気になる記述を見つけた。”内心の自由”(憲法第19条)に踏み込む恐れはないのか。個人情報が記載された住民基本台帳を閲覧できるのは市側だけである。そんなことはないとは信じるが、市民会議に参加する市民の選択に当たってはそこにいささかの“恣意”(しい)があってはならない。
上田市長に”嘘つき”呼ばわれされた私ではあるが、“図書館愛”は人後に落ちないと自負している。運よく、“くじ引き”に当たって、市民会議の場で理想の図書館像について、自説を開陳する機会を与えてほしいと神に祈りたい。
(写真は市側が立地の第1候補に挙げるJR花巻駅前。後方に建設場所とされるスポーツ用品店の建物が見える=花巻市大通りで)
《追記―1》~井戸端会議にリーダーはいない(天野正子)
60年安保闘争時、「誰デモ入れる声なき声の会」という旗を掲げ、歩道の人に行進への合流を呼びかけた画家の小林トミ。彼女は、自分の都合を優先せざるをえない個人がそれでも生活人として意志表示し、政治を足許(あしもと)にたぐり寄せる非組織の「市民」運動を追求した。社会学者・天野による評伝「小林トミ」(《ひとびとの精神史》第3巻、栗原彬編『六〇年安保』所収)から=7月12日付「朝日新聞」鷲田清一の折々のことば
《追記―2》~議会中継へどうぞ
新花巻図書館や総合花巻病院などをめぐる市政課題が議会内部でどのように議論されているのか、以下のアドレスから議場へ入場できます。議員活動を外部から監視するためにもどうぞ。6月定例会の一般質問でこの案件の双方かいずれかを取り上げた議員は以下の通り(敬称略)。なお、上田市長の”嘘つき”発言は18日の議案審議における伊藤議員の質問に対する答弁の中に出てきます(2,56,28時~)。また、花巻病院の”裁判沙汰”を問うた羽山議員の質問の最後の場面には上田市長の反問権の乱用ぶりが映し出されています。
・伊藤盛幸(10日、緑の風)
・阿部一男(13日、社民クラブ)
・照井明子(同、共産党)
・羽山るみ子(同、はなまき市民クラブ)
・鹿討康弘(14日、緑の風)