春になって
出稼ぎから父が帰って来る
両手に大きな荷物を抱えホームに降りて来る
父のジャンバーから
プーンと都会の良い匂いがしたのを覚えている
嬉しかったお土産はグローブだった
父に遊んでもらった記憶は少ない
けれども妙に重たい何かを伝えていた
自分に厳しい人だった
愚直に働く人だった
亡くなる前に、ひとしきり私を見ていた
「後は頼んだぞ」と言っているような気がした
あれから何年経っただろう
私も父と同じ年齢になろうとしている
こんな息子を父は何とみているのだろうか
父と母その人生の美しさ 今更ながら見ゆるものあり
何事も語ることとてなけれども 笑みて応えし父の遺影
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