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停車場を降りれば ⑨玉石の水路が巡る

  • 停車場を降りれば ⑨玉石の水路が巡る
 成田地区の路地には,水路がたくさん流れています。この水路は,玉石で護岸されていました。夏の暑い日差しの中でも,せせらぎの音は涼やかで,心を癒されます。目を閉じて,音風景(サウンドスケープ)を楽しんでも良いですね。
2012.08.04:orada:コメント(0):[停車場を降りれば]

停車場を降りれば ⑧豆畑が広がる 

  • 停車場を降りれば ⑧豆畑が広がる 
 羽前成田駅を降りてすぐに,豆畑が広がっています。緑のジュータンが風に揺れています。こんな風景も,美しいものだと感じます。暑い夏の昼下がり,ひと時の休息です。
2012.08.04:orada:コメント(0):[停車場を降りれば]

卯の花姫物語 27 送り橋村の山越え

送り橋村の山越え
 桂江は覚念が国府に訴人するのをおさえて措くには色仕掛けでおさえるよりないと考えて、今までの苦心して来たのは一朝にして水泡に帰して終わった。
 覚念の方でも彼女は始めから誠意のないのを俺に国府に訴人されるのを防ぐ為ばかりに仮に承知したと云う手管で騙していたのであったと悟ったから、今迄の様な手緩い事をしておっては彼女をせしめることはだめだと考えた。其上あの様な色しくぢりをして面皮をかかれた上は、もう其山なも居たたまられない気もする。一層慈の山抜けをして徐ろに方策をめぐらすにしかずと考えたので、日頃同類の悪僧共を従えて夜に紛れて下山をしてしまったのである。
 事己に うした事態となっては姫が主従も益々身辺危うしと云う状態である憂慮の胸に閉ざされて悶々の裡に日を送っている。それに加えて其五月の月は頼義父子が 々多賀城を去って京に引き上げの予定の月であるのを知っていた。
 源氏がいなくなって奥州二州が く清原氏の官僚の治下となっては危険其上ないと感じた。姫は一時も早く手紙で身のふり方を義家が指示を仰がんと考えた。いつもの様に桂江に使いの役を命じたのである。桂江道中に気をつけてどうか無事に帰って来てくれよと云うた桂江 つて必ず首尾よく御役目果たして参りますと云うて、旅装束も厳重にして古寺を下って来た。
 最上川を舟越えで宮宿に来た。送橋村から山越えで其晩は山辺村に泊まる予定でやって来た。
 その山越えの真中頃にさしかかった処であった。狭い山道の両側に七八人の男衆が笠を真深かにかぶって頭を下げてかがんでいた。桂江は気味の悪い人達と思ったが気を付け乍ら通り抜けて行かんとした。程よい処迄で行った時に其中から六尺余りの大男がすくっと立ち上がって正面に両手を広げて道を塞いだ。
 大音声にあ・・いや御女中暫く待てと留めた。桂江大いに驚いたが女乍らも気丈者ひらりと一足後とに下がって、見知らぬ旅の人に無礼の振舞、私は急ぎの用件で通る者速かにそこ通されよと呼り乍ら八方に気を配って身構えた。
2012.08.04:orada:コメント(0)

卯の花姫物語 26 古寺山中の③

古寺山中の三
 たたみかけて要求の実行を迫られた桂江は、約束をしたのは事実でもあって見れば云う可きすべがない進退慈に極まった。返答に困った桂江は又も日延べを願ったのだ。覚念からからと笑ってやい先達っては俺が妻になる事に承知であるが月の経わりであるから十日待ってくれと云うから仕方がないと思って免るしたが、又も日延べを願うとは御前が月の経わりは千年万年もつづくのか、今日と云う今日こそは又もその手に騙けてはおるものか。一旦女房になると承知した上に実行延期の日延も過ぎて終わった今日である。正しく御前には亭主である夫が妻をどうしようと何が不思議であるものだそこの道理が判らないか、そんな事をも知らないなら手をかけて教えてやるとやにわにむんずと手を捕った。
 桂江も絶体絶命の場合である。守り刀を抜いて死んでしまおうかとも思ったが、一旦慈を逃げて行ってその場の様子を主人に報告した上に吾が身の為に事の破れを生じた責任を負うて自殺して責めを果たさんと思ったからやおら捕らえられた手を振りもぎった。流石は奥州一の女丈夫の美人と云われた桂江はただの名ばかりの女丈夫と違って実力を持っての女丈夫であったから、そうなってからは勇気百倍になったのである。又もかかってきた覚念が六尺の大男を跳ね飛ばしたと見る間も早く脱兎の様な早さに走って寺に帰って右の一件 くを姫に報告したのである。
 桂江重ねて其の様な破綻を出して主君を窮地に陥らせたのは皆我が身の為に生じた事件である。其責任は一死を以て果たしますと云うて己に守り刀に手を掛けんとしたので、姫は慌てて押し止どめこれや桂江決して間違ってはくれるな、たとえ之が為めに事の破れとなって国府の軍勢押し寄せ来るとも之必ず御身一人の為めとは云う可き道理ではない、之皆天なり命なりと云うものである。御身に先立たれては生きて甲斐なき吾身である。そちが俺が云う事をきかずに死ねば我身も直ぐに後とを遂うて死にますぞと云われて、桂江漸く主人を死なしていられないと気づいて死を思い止またのであったのだ。それはそうで一応済んで治まったが治まらないのは大忍坊覚念の方である。全くの交渉破裂の状態となって終わったのである。
2012.08.04:orada:コメント(0)

卯の花姫物語 25 古寺山中の②

古寺山中の二
 桂江覚念が無体の恋慕の要求にせっぱづまって、一旦十日の猶予を約束して危難を逃れたが、その後をどうしようと考えると恐ろしい思いがする。
 吾身一人とも違って今となっては吾等主従は世を忍ぶ匿れ人の境涯である。それに加えて一朝自分がへたをやったら大恩受けた御上人様が御身にご迷惑がかかる事が生ずるのである。
  々覚念が毒牙が身に迫って家経様に申し訳が立たない様な瀬戸際まで押し込められた其のときは、一死を以てこたえるばかりと覚悟を極めておったのである。頭脳鋭い姫は、昨今に於ける桂江が挙動によって覚念が様子と合わせて桂江が主人をがばって一人で苦しんでおるのをすっかり判っていた。姫は桂江が可哀想でたえられなかった。或るとき、桂江に向かって辛いだろうがどうか頑張ってくれと云う自分も涙を流して泣いたのである。
 そうした憂き思いで暮らしておるうちに早康平六年も五月上旬となったのである。
 大忍坊に一時喜ばせの十日間の日限などがとうに過ぎて終わったのである。日限が過ぎたからとてやたらな事は出来るものではない。十日間の日限と云うても二人がそっくり出会う機会のない限りは彼が毒牙通りの実行が出来るものではない。彼は其の機会ばかりを鷹が小鳥を狙うようにして気を焦らだたせて狙っておる始末。
 処がある日桂江は他の女衆同僚三人で気晴らし乍ら裏山へ山菜採りに出掛けて行った。始めの内は三人一緒に採っておったが、遂に分かれ分かれになって一人になった。はてと気が付いてあたりを見回したらそこの側に一と群ら茂った薮蔭げに六尺余りの大の男がにやにや笑って立っていたのは別人でない。逃れに逃れ通して漸く之迄で無事でこられた覚念であったのだ。
 びっくり仰天したのは桂江であった。あれ貴方は覚念様と思わず口走ってしまった。にやりと一つ笑った覚念は正しく拙者は覚念様だが、それはどうしたとおっしゃるので御座いますのだ、まさかあのお約束が嘘であったと云う気では御座るまいなぁ・・ 俺が方では待ち遠うて遠うて仕様がない程お待ち申しておりやした。今日と云う今日こそは先達の日延べの日限果して貰いましょうよと。
2012.08.04:orada:コメント(0)