仲順大主と黄金の林の物語とは、こんなお話です。学者であった仲順大主は、早くで妻を亡くし、男手ひとつで三人の子供を立派に育てあげ、孫と共に毎日楽しい生活を送っていた。しかし、だんだんと年をとっていくと、自分の財産の行方が気になり始めた。
「できれば、一番親思いの息子へゆずりたい。」そう思った仲順大主は三人の息子を座敷によび、こんな話をした。「私も年をとり体が弱くなってご飯ものどを通らなくなってきた・・・。そこで、これからは、人の乳を飲んで生きていこうと思う。孫達に飲ませている乳は、今日から私がもらうことにする。そこで、親思いの証として、お前達の子供は捨ててもらいたい。もっとも、乳が飲めなければ子供が育つわけもなかろうが。」
当然ながら、息子達は大騒ぎです。長男と次男は「何てひどい!学者であろうとも人がそんなお言葉。自分の孫を捨ててまで長生きしたいとは!?」兄弟の二人は、そう言うなり、さっさと出ていってしまった。
しかし、三男だけは座敷に残り、「父さんと子供どちらも大事ですが、子供はこの先、天から授かることもあるでしょう。しかし、お父さんはこの世にたった一人だけです。お言いつけに従いましょう。」と、目に一杯の涙をためながら言った。仲順大主は、にっこり笑うと「よく分かってくれた。それでは、三本松の木の下に穴を掘って、早速子供を埋めて来なさい。」と三男に言いつけた。
参考文献: 『新おきなわ昔ばなし』
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