---舞台には、二人だけ。中央に歩み寄りながら、スポットライトが二人を照らし出す。
【惣 三 郎】 おせき様
【お せ き】 はい(小さな声で)
【惣 三 郎】 わしは、源右エ門殿に、初めて参ったその時から、わしの妻はこの人だと思っていました。おせき様は、私と夫婦になることに不満はありませんか?
【お せ き】 とんでもございません。私も、惣三郎様にお会いしたその日から、この人の妻になりたいと心に決めておりました。私は、本当にうれしゅうございます。
【惣 三 郎】 ほんとにか。(おせきうなづく)旦那様は、わしらの心を見抜いていてくれたんじゃな。
【お せ き】 ええ、ほんとに。私は、旦那様と奥様に、この命を助けられた身。何も恩返しができないのが、申し訳なくて・・・。
【惣 三 郎】 それはわしも同じことだ。わしは、旦那様の恩に報いるためにも、お前をきっと幸せにしてみせるぞ。おせき、わしは、仕官となってお前をもらいに来る。それまで、待っていてくれるな。
【お せ き】 はい、きっとお待ちしております。惣三郎様、愛する人を待つことは、少しも辛くはございません。立派になってお帰りになるのを、おせきは、いつまでもお待ち致しております。
【惣 三 郎】 おせき!
【お せ き】 惣三郎様!
――― 惣三郎、おせきの肩を抱き寄せる。ちょうどのそのタイミングに、舞台上手より、村人が風呂敷を持って来て、二人のラブシーンを隠す。ライトが消えて、幕が降りる。
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