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おせきの物語 ②

第 一 場

夕映えの中に、旅の僧のシルエットが浮かび上がる。路傍の石碑の前に立ち、長い祈りの後に、観客の方に向きながら、静かな口調で語りかける。

【旅の僧】 これから私がお話しますのは、今からおよそ四百年前のことでございます。当時、この地方一帯は、まだ荒れた原野でございました。人々の生活は貧しく、日々の暮らしもままならないありさまでございました。
      そんな時、西館部落に住んでおりました手塚源右エ門という方が発起人になり、堰を掘り、この土地を開墾したい、と立ち上がったのでございます。その当時私は、この手塚源右エ門殿に、学問の修養に来ておりました。村人の熱意にもかかわらず、工事は、こぶしが原というところで困難を極めたのでございます。
      そして、それを救ったのが、おせきという当時十九歳の娘でございました。私は、この石碑の前に立つときに、古里の将来にかけた人達の情熱を思わずにはいられません。そして、私たちに、今、生きている私達に、お前たちはこの古里をどうするんだ、と語りかけているような気がしてなりません。

     それでは、私の話を聞いてください。
2012.07.07:orada:コメント(0)

おせきの物語 ①

  • おせきの物語 ①
おせきの物語

 この物語は成田駅の西側に、今もたたずむ供養等にまつわる物語です。
原作は、故菊地清三氏(五十川の岡鼠原地区出身)が、当時の「長井新聞」
に連載していたものです。この原作をもとに、昭和五十六年、地区文化祭において、当時の致芳地区青年団が上演した際の脚本を、復刻したものです。
 懐かしい駅舎の復活と合わせて、私達自身が地域を見直すきっかけとな
ることを願っています。また、成田駅を訪れた皆様が、私達の故郷に関心
を寄せていただき、地域に元気を与えてくれる一助となることを願ってお
ります。      成田駅前おらだの会 代表 宮崎征一

おせきの物語(二場 二幕)

 登場人物
  おせき
  手塚源右衛門
  およし(源右衛門の妻)
  惣三郎(旅の僧)
  村人達


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