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灯台下暗し(その7)…市民の権利をはく奪する”二元代表制“って!!??~辛口採点大会、本日スタート

  • 灯台下暗し(その7)…市民の権利をはく奪する”二元代表制“って!!??~辛口採点大会、本日スタート

 

 「このまちに住む幸せって、何だろう」―。こんなことをそぞろ考えながら迎えた師走の2日、花巻市議会の12月定例会が開会した。約3か月前の光景が急迫するような勢いでよみがえった。一市民が民主主義の根本を問うた「陳情」行為に対して、9月定例会は総務常任委員会の審査に続いて、ひとりをのぞいて全員が「NO」を突きつけた。返す刀でその人は“陳情妨害”とも受け止められる行政のあり方に刃(やいば)を向けた。私はこの孤立無援のたたかいに勇気をもらった。本来なら市民の「安心・安全」を保証するはずの「二元代表制」(当局と議会)のはざまに捨て置かれた格好の私たち市民にとって、「このまちは本当に幸せなんだろうか」…

 

 当市在住の翻訳家、菊池賞さんは先の市議選(7月24日)に関わる陳情審査の際、行政が議会に不当な圧力を加えたことに関して、上田東一市長宛てに行政責任などを問う公開質問状(11月9日付)を提出した。この一件については当ブログの9月9日付と同21日付さらに11月9日付にその経緯を詳しく掲載しているので、ぜひ読んでいただきたい。宮沢賢治が「夢の国」(ドリ-ムランド)と名づけた“理想郷”がいかに腐食にまみれているのか―今回の事例がそのことをシンボリックに現わしていると思うからである。

 

 ところで、上記の回答期限には11月20日と明記されていた。菊池さんがその時点で、未着の理由を問いただしたところ、「担当部課で協議中なので、回答は遅れる」との由だったという。それからさらに10日以上がたった議会初日のこの日にやっと、回答書が届いた。

 

 以下に上田市長名の回答(日付は11月30日付)の全文を掲載する。「木で鼻をくくる」、「カエルの面(つら)に小便」…とはまさにこのこと。たとえば、「この陳情を採択したとしても…市長が監査の請求をするのは難しいだろう」(会議録から)―という発言の真意をただした質問にはまともに答えていない。この開き直りは「窮鼠(きゅうそ)猫を噛む」のたとえにぴったりではないか。一事が万事…上田流「愚民化」政策の真骨頂を見る思いがする。その対象に職員自身が含まれていることに当の当事者たちが気が付いていないらしいことがさらに、悲劇的というか何とも痛々しい。ちなみに末尾には担当部署の部長と課長の名前が連署されている。

 

 さて、議場の模様をライブ中継するパソコンに目を移せば、車の両輪にたとえられる“二元”の面々がそろい踏みである。公開質問状に登場する岩間総合政策部長も上田市長と同じ最前列に陣取っている。「さらば、おまかせ民主主義」を掲げて惨敗した夏の市議選。だからなおさらのこと、目の前の議会の動向から目を離せなくなった。「花巻市民の権利を守る会」が企画する「市民による辛口採点大会」(いわゆる“通信簿”)なるイベント(11月29日付当ブログ参照)も控えている。さぁ、待ったなし!?

 

 

 令和4年11月9日付でお送りいただきました公開質問状について回答いたします。令和4年9月9日の花巻市議会総務常任委員会において、岩間裕子総合政策部長が説明員として行った説明につきましては、総務常任委員長より岩間裕子総合政策部長が特に指名され、「監査請求の適否について、御意見などを交えながら御説明をお願いいたします」と発言を求められたことに対し、回答したものです。

 

 総合政策部長の説明自体については、あくまでも法令等の規定を根拠として、監査の適否の判断基準となるべき事項について調査の上、具体的、客観的な説明を行ったうえで市としての見解を述べたものであり、単に憶測に基づいて発言したものではなく、また出席した委員に対して一定の結論を不当に誘導したものでもないと認識しております。

 

 上記常任委員会は、委員それぞれが自らの意見を述べたうえで、自由な意思に基づいて採否の判断を行うものであり、岩間裕子総合政策部長の発言は、その判断過程における一つの見解に過ぎません。上記常任委員会の採否の結論は、各委員がそれぞれの判断の下に、議論の末に下された結果であるものと認識しております。

 

 上記常任委員会における総合政策部長の発言は、ご指摘のような憲法第16条、憲法第15条第2項に違反することはなく、また、花巻市職員倫理規程第3条に違反していることはないと認識しているところであります。

 

 

 

 

(写真は12月定例会で議案説明をする岩間部長=12月2日午前、花巻市議会本会議場で)

 

 

 

《追記ー1》~牽強付会…恐るべき“虚偽回答”!!??

 

 「仮に議会において、この陳情を採択したとしても、現時点で、市が把握している情報を前提に考えた場合は、市長が地方自治法199条第6項に基づき、監査の請求をするという結論に至ることは難しいのではないかというふうに考えております」(9月9日開催の総務常任委員会会議録)―。今回の「陳情」案件で岩間部長はこう答弁している。一方、陳情者が質問の骨子に据えた上記の地方自治法はこう規定している。

 

 「監査委員は、当該普通地方公共団体の長から当該普通地方公共団体の事務の執行に関し監査の要求があつたときは、その要求に係る事項について監査をしなければならない」―。岩間発言とこの規定をじっくりと読み比べてほしい。明らかに行政側の“越権”行為であり、もっと言えば、直属部下の市長への“忖度”行為と見た方がいっそ、すっきりするではないか。公開質問状に対する上田市長名の回答がいかにデタラメか、いや市民を愚弄するものか―今回の一市民の勇気が図らずも、上田「強権」支配の正体を満天下にしらしめたという意味は大きい。

 

 

 

《追記―2》~「市民による辛口採点大会」へのご案内

 

 12月5日から3日間、行われる花巻市議会12月定例会の一般質問を対象にした「市民による辛口採点大会」(「花巻市民の権利を守る会」主催)への入場は下記から。フォ-ムの開設は2月5日午前10時から同15日正午まで。質問一覧は11月29日付当ブログを参照ください。

 

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSd0f2cDUoUNvFtxMwIqrFw230OZoYXCJwnSdph9mHAu8wBKog/viewform?usp=pp_url

 

 

 

 

 

 

 

 

灯台下暗し(その6)…一般質問「辛口採点」大会!!??

  • 灯台下暗し(その6)…一般質問「辛口採点」大会!!??

 

 新花巻図書館やJR花巻駅の橋上化など未来を占う重大課題が山積する中、花巻市議会の12月定例会が12月2日に開会する。当局と議会がどう向き合うのか―まさに「二元代表制」の真価が問われる“論戦の場”を今度は市民の目線で評価しようという試みが行われる。企画したのは市民有志でつくる「花巻市民の権利を守る会」で、12月5日から3日間行われる一般質問を同会のフェイスブック(FB)に開設するプラットフォ-ムで集約、年内にその結果を公表する。名づけて「市民による辛口採点大会」…次の三つの「喝(かつ)」を基準に採点する、いわゆる議員の“通信簿”である。

 

●行政にすり寄るだけの保身議員には喝を!

●的外れの質問をする議員には喝を!

●無意味な答弁を長々として質問時間を奪う行政には喝を!

 

 一般質問はインタ-ネット中継やラジオ放送(エフエムワン)、録画配信などでも視聴できる。質疑応答は1人60分以内、開会は午前10時から。詳しくは市議会のHPで。以下に議会基本条例の関連部分を掲載し、質問者の一挙手一投足に目を注ぎたい。今度は市民の側の眼力が試される番である。懸案(図書館と橋上化)を取り上げるのは7人。なお、今夏の改選市議会以降、一度も質問に立たない議員も5人(うち新人2人)にのぼる。

 

 

 

 “議会憲法”とも言われる「花巻市議会基本条例」(平成22年6月施行)は議会と議員の役割について、次のように規定している。

 

第4条「議会の活動原則」~「議会は、市政の監視及び評価並びに政策立案及び政策提言を行う機能が十分発揮できるよう、円滑かつ効率的な運営に努めなければならない。議会は、公正性及び透明性を確保し、市民に開かれた運営に努めなければならない。議会は、市民の多様な意見を的確に把握し、市政に反映させるための運営に努めなければならない」

 

第5条「議員の活動原則」~「議員は、議会が言論の場であること及び合議制の機関であることを認識し、議員相互間の自由な討議を尊重しなければならない。議員は、市政全般についての課題及び市民の意見、要望等を的確に把握するとともに、自己の能力を高める不断の研さんに努め、市民の代表としての自覚を持って活動をしな ければならない。議員は、議会の構成員として、市民全体の福祉の向上を目指して活動しなければならい」

 

 

《質 問 一 覧》

 

<12月5日>

●伊藤盛幸(はなまき市民クラブ)

1、新花巻図書館の整備について

2、全国瞬時警報システム(Jアラ-ト)の発令に伴う行動計画について

●阿部一男(社民クラブ)

1、農業問題について

2、JR花巻駅橋上化・東西自由通路の整備について

3、新花巻図書館の整備について

●久保田彰孝(日本共産党花巻市議会議員団)

1、国民健康保険税について

2、インボイス制度について

3、ごみ集積所について

●小原保信(明和会)

1、笹間第二小学校の活用について

2、農業振興について

●小森田郁也(はなまき市民クラブ)

1、奨学金返還補助制度について

2、花巻市奨学金制度について

 

<12月6日>

●照井明子(日本共産党花巻市議会議員団)

1、JR花巻駅橋上化・東西自由通路の整備について

2、スク-ルバスについて

●伊藤忠宏(明和会)

1、大迫地域の道路環境の充実について

2、有害鳥獣対策について

3、遠隔診療について

●鹿討康弘(はなまき市民クラブ)

1、SL銀河について

2、新花巻図書館建設候補地について

3、学校給食費無償化について

4、小中学校における不登校について

●櫻井肇(日本共産党花巻市議会議員団)

1、改正個人情報保護法について

2、新花巻図書館の整備について

●佐藤現(はなまき市民クラブ)

1、シルバ-人材センタ-への支援について

2、教育環境の充実について

 

<12月7日>

●本舘憲一(はなまき市民クラブ)

1、JR花巻駅橋上化・東西自由通路の整備について

●似内一弘(無会派)

1、行政サ-ビスの向上及び効率的な行政運営について

2、新型コロナウイルス感染症対策について

●佐々木精市(無会派)

1、コミュニティ会議について

2、人材育成について

●菅原ゆかり(無会派)

1、予期しない妊娠への支援について

2、ひとり親世帯への支援について

3、小中学校における児童生徒のてんかん発作時の対応について

 

 

 

 

(写真はある議会報告会の光景。この時、司会役のベテラン議員の妨害で質問をさえぎられた苦い経験を思い出す=2019年2月5日、花巻市のまなび学園で)

 

 

 

《追記》~あるとんでも「ハプニング」!?(当時のブログから)

 

 上記写真説明の「苦い経験」について、当時のブログからその部分を再録する。なお、文中の「ベテラン議員」とは現在6期目の大原健議員(上掲写真の右端)。ハプニングは私が「議員定数削減」問題について、質問した際に起きた。

 

 「この質問はこの場にふさわしくない。あなたの質問にみんな疲れている。個人として議会側に問いただせばよい」―。答弁をさえぎる形で、ある市民が突然発言した。一瞬、頭が真っ白になった。「議員定数の問題は議会活動を支える生命線ではないのか」と口ごもっていた次の瞬間、今度はさらに信じられない出来事が現出した。司会役の大原健議員(無所属)がこの発言を「動議」として認めるとし、「何人かの参加者の方々もうなずいていた」とこれに同調する態度を見せた。まさか「サクラ」とは思いたくはないが、この市民の発言の真意を測りかねた。実際にそう思ったのかもしれない。そんなことよりも、私は一市民の“不規則発言”をタテに質問を封じようとする魂胆(こんたん)にうそ寒い精神の堕落を見た思いがした。腐臭が漂ってきた。「公正性を担保できない司会者の下ではいくら質問を続けてもムダだ」として、私は残余の質問をとりやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灯台下暗し(その5)…今度はアンケ-ト“捏造”疑惑!!??

  • 灯台下暗し(その5)…今度はアンケ-ト“捏造”疑惑!!??

 

 「これって、ある種の数字の捏造(ねつぞう)ではないのか」―。花巻市のHP上に掲載されたあるグラフを眺めながら、ふと不安がよぎった。「JR花巻駅橋上化・東西自由通路整備概要案について、高校生と意見交換を行いました」(11月21日付更新)と題する記事によると、JR花巻駅の利用について「よく使う」(52・7%)と「たまに使う」(29・7%)を合わせた計82・4%のうち、事業実施に賛成した割合は78・4%にのぼったという内容だった。統計学上の原則である「有意差」を無視した“数字の詐術”が透けて見えたからである。この日(24日)開かれた記者会見で、市側は「整備に好意的な意見が多数」と述べたが、そのからくりは?

 

 上記の意見交換会に参加したのは市内の4校の75人(うちアンケ-トへの回答者は74人)。統計学で定められたサンプル算出法によると、たとえば2000人に対してアンケ-ト調査を実施する場合、必要最低限で323人が対象とされなければならない。ところが、今回の対象者はそのわずか4分の1にすぎない。ちなみに、4校の在籍者数(定員と実数)は現在時点で2525人にのぼる。さらに、この種のアンケ-トのエビデンス(証拠)を担保する際に最も重要な原則が「無作為抽出」にもかかわらず、その選抜が学校側に丸投げされている点も見逃せない。

 

 たとえば、こんな具合である。「就職が決まった3年生」(花北青雲、参加者57人)、「生徒会役員」(花巻南、同11人)、「探究活動に興味のある者」(花巻北、同5人)、「生徒会役員」(花巻東、同2人)。一方、花巻農高(定員360人)が対象外になっているほか、JR花巻駅を利用して市外の高校へ通学している高校生も当初から除外されている。この点について、担当の建設部都市機能整備室はこう強弁する。「花農とは日程調整がつかなかった。統計上の数字を示したのではなく、集まった意見を公表しただけだ」―。橋上化推進を求める例の“やらせ要請”の悪夢を思い出した。「これは高校生の政治利用ではないのか」…と

 

 駅西口に所狭しと並ぶ駐輪場に足を運んでみた。黒北、黒工、北上翔南、盛岡南、盛岡商、不来方、紫波総合…。区分けされた自転車置き場には地元の高校生だけではなく、JR花巻駅経由で市外の高校へ通う生徒たちの自転車もずらりと並んでいた。一方で、駅を利用しないで自転車や徒歩で直接、通学する多くの生徒たちは最初から対象から排除。結果的に駅利用者に特化した形の今回のアンケ-ト調査に一体、何ほどの意味があるのか。考えて見れば、高校生に限らず、駅利用者が駅の利便性向上を望むのは当たり前ではないか。問題なのは対象者を一部に特化したこうした手法―つまり、世論誘導を企てる上田流「手法」が高校生の周辺にまで及びつつあるということである。

 

 「未来を担う若者世代がそう(橋上化)望むなら、それをかなえてやるのが親の世代の役割ではないのか」―。親しい友人はそうつぶやいた。「橋上化」賛美に彩られた高校生たちの意見表明は100人近くにのぼる。それをツラツラ読みながら、「これは罪深いな」と心底、思った。新花巻図書館と橋上化との”密約”疑惑(ワンセット論)に続く黒い霧である。

 

 

 

 

(写真はずらりと並んだ高校生の自転車群=JR花巻駅の西口広場で)

 

 

 

《追記》~記者会見の資料は下記のアドレスへ

 

 定例記者会見用資料 JR花巻駅橋上化・東西自由通路整備事業に係る今後の取り組みについて (PDF 423.8KB)新しいウィンドウで開きます

 

 

 

 

灯台下暗し(その4)…「新図書館はここっきゃない」!!??…

  • 灯台下暗し(その4)…「新図書館はここっきゃない」!!??…

 

 JR花巻駅前か旧花巻病院跡地か―。新花巻図書館の立地場所をめぐる市側の態度表明に注目が集まる中、私は後者への立地を望む立場から、その理由を記した一文を岩手日報の「日報論壇」へ投稿した。掲載はまだ先になりそうだが、記者会見(24日)や花巻市立図書館協議会(25日)などこの問題を避けては通ることができない重要会議が迫っており、前倒しして当ブログに掲載することにした。また、同趣旨の寄稿文が同じ「日報論壇」に載っているので、参考までにコメント欄に添付する。

 

 

 目の前にこつ然と現れた広大な“空間”に身を置きながら、「図書館の立地はここしかないな」と直感した。花巻市は10月11日から27日まで市内17か所で新図書館の建設場所をめぐって、意見集約のための市民説明会を開催した。その第1候補に挙げられているのがJR花巻駅前のスポ-ツ店用地で、当局側はその取得に前向きな姿勢を見せている。

 

 こんな折しもかつて、花巻城跡に隣接した旧総合花巻病院の移転・新築に伴って、24棟を数えた病棟が解体された結果、私たちは約100年ぶりに由緒ある遺跡など城跡のおもかげに接するという幸運に恵まれた。晴れた日には高台の城跡から霊峰・早池峰など北上山地の雄大な姿を望むができる。当該地は郷土の詩人で童話作家、宮沢賢治の作品にも数多く登場し、たとえば『四又(よまた)の百合』に出てくる“ハ-ムキャの城”とはすぐに、花巻城跡と察しがつく。

 

 さらに、賢治が学んだ現花巻小学校と自らが教壇に立ち、“桑っこ大学”とも呼ばれた旧稗貫農学校に挟まれたロケ-ションはまさに「文教地区」にふさわしい立地条件と言える。現在「まなび学園」(生涯学習都市会館)として、市民に学びの場を提供している場所もこの地に隣接し、かつては賢治の妹トシが学んだ花巻高等女学校(県立花巻南高校の前身)の建物だった。これもまた、歴史の奇縁かもしれない。

 

 実は「図書館法」(昭和25年4月)の生みの親が当地ゆかりの「山室民子」だということは地元でも余り、知られていない。慈善団体「救世軍」の創設者・山室軍平の妻で、花巻の素封家に生まれた旧姓・佐藤機恵子が民子の母である。民子は図書館法を起案するに当たって、生涯教育の大切さを訴えた。

 

 1世紀という時空間をへて、今よみがえった「百年の記憶」と未来を見すえた「百年の計」と―。解体工事で全貌を現した「濁り堀」について、専門家グル-プは「一級品の貴重な遺構。現状保存が望ましい」と答申した。将来は原形を維持したまま、“歴史公園”として利活用できるのではないか。夢は広がるばかりである。いまこそ、山室民子の“遺訓”を生かすべき時ではないかと思う。花巻小学校とシニアが集う「まなび学園」の間にポッカリと浮かんだ空間。まさに、天啓(てんけい)とでも呼びたくなる、“生涯学習”の場にふさわしい環境ではないか。「天啓」とは「天(神)の啓示」を意味する言葉である。「魂の癒しの場」―。世界最古の図書館といわれるアレキサンドリア図書館(エジプト)のドアにはこう記されているという。

 

 

 

(写真は花巻城址の古地図。約100年ぶりに姿を現した堀跡(濁り堀)の西側に位置する広大な敷地が病院跡地=インターネット上に公開の写真から)

 

 

 

 

《追記》~なぜ駅前?花巻の新図書館(コメント欄)

 

 11月17日付の岩手日報「日報論壇」に花巻市在住の伊藤昇さん(80)の寄稿文が掲載された。「図書館とはなにか」という洞察に満ちた内容に感動した。合わせて、お読みいただきたい。

 

 

 

 

 

灯台下暗し(その3)…「駅橋上化」という名のミステリ-!!??

  • 灯台下暗し(その3)…「駅橋上化」という名のミステリ-!!??

 

 JR花巻駅の橋上化(東西自由通路)構想が大詰めを迎えている。この案件が急浮上した約1年半前、私はその胡散臭さを当ブログ(2021年6月16日付)で指摘した。事態はその後想定した通りに、いやさらに悪い方向に向かいつつあるように思える。数字の裏付けもないまま、駅地下通路が“痴漢”の温床になっているというまるで子供だましみたいな論法がその正当化に使われたのは今や昔の感。最近では新花巻図書館との「ワンセット」論(いわゆる“密約”疑惑)が市民の一部でも公然とささやかれるようになった。複雑怪奇なこの構想をひも解く一助に当時の記事をそのまま、以下に再掲したい(文中の数字は掲載時)。少々、長文ですが、お付き合いのほどを…

 

 

 「まるで暗号みたいな数字の乱発による“目くらまし”」―。上田東一市長の詐術手法はひと言でいえば、こんなことになろうか。JR花巻駅東西自由通路(駅橋上化)をめぐって、市側から公表された「Q&A」集を読んでいるうちに頭がクラクラしてきた。35項目にわたる問答(全16ペ-ジ)は数字の羅列ばかり。たとえば、ざっと38億円にのぼる巨額な事業費…目を凝らすと、このご仁が繰り出す“金目行政”のからくりが透けて見えてくる。やや長文のきらいはあるが、〝お任せ民主主義“にオサラバするためにも、辛抱してお読みいただきたい。

 

 「財源として国からの補助金約16億円を見込んでいます。また、JR東日本との負担額が定まっていない、現在使用されている跨線橋の撤去費が約4億円あります。これを除いた約18億円が市の負担となります。この市の負担分の約18億円の95%については、合併特例債の活用を予定しておりますが、合併特例債は償還金(返済金)と金利の70%が国から地方交付税として措置されるため、市の負担分の約18億円のうち、国から交付税措置される額をさし引いた約6億円が市の実質負担額と想定しています。これにJR東日本との負担額がまだ定まっていない跨線橋撤去費の市負担分を加えた約6億円+アルファが市の実質負担額となると考えています」―

 

 「そうか。実際には38億円もかかるのに6億円ですむのなら…。それで駅の利便性が高まるなら、安いもんではないか」―。財政にうとい一般市民や市議の一部が陥りやすい“落とし穴”である。考えて見れば、国庫補助や交付税措置などの財源も元をただせば私たち国民が納める税金である。また「債権」(償還金)は借金そのものであり、その返済は後々の世代まで委ねられる。この上田流が“目くらまし”手法と言われるゆえんである。

 

 さらにはこんな記述も。「駅西側は区画整理事業により良好な住宅地として整備されています。ショッピングモ-ルなどの利便施設の整備も進み、独立した生活圏として人口集積が進み、花西地区は人口が増加している地区(他には花南地区)となっています」―。ふと、そうかなぁ。そう言われてみれば…とここにも“落とし穴“が用意されている。で、実態は―

 

 駅橋上化要請の先頭に立ってきた「花西地区まちづくり協議会」は7行政区で構成されている。市の統計資料によれば、平成29年3月から令和2年3月まで4年間の人口は全体で8418人から8538人(伸び率1・4%)とわずか120人増えたにすぎない。逆に若葉町や材木町、石神町、藤沢町の4行政区では人口減に転じている。私自身、高校時代まで旧花巻農業高校に近い「農学校通り」(藤沢町)に住んでいたが、徒歩で駅に向かうのに難儀したものである。ましてや車社会のいま、駅橋上化(東西自由通路)のメリットを享受できるのは徒歩圏内の西大通り地区の住民に限られるのは目に見えている。ある意味、高齢者や障がい者など移動手段が限定される人たちを排除する、一見「公共」を装いつつ、実際はそうではない(健常者優先の)差別的な”公共”事業とさえ言いたくなる。

 

 あまり表には出したくないのかもしれない、もうひとつの重大な数字の隠ぺいがある。「Q&A」集のどこを探しても見当たらないのが肝心のJR花巻駅の乗車人数や東口と西口を結ぶ地下道の通行量である(HP上には地下道の通行量と高校生に特化した利用状況が駅橋上化を正当化するデータとして別途、掲載されている)。JRや市の統計資料によると、花巻駅の1日平均の乗車人数は3269人(令和1年度)で、地下道の平日の通行量は1日平均(出入り)が約1000人と見積もられている。自由通路が完成したからといって、わざわざ遠方から駅を訪れる人はあるまい。したがって、今回の「JR花巻駅東西自由通路(駅橋上化)」によって、直接の恩恵を受ける最高値は(3269人+1000人)=4269人というレベルに設定することができる。

 

 「木を見て、森を見ず」―。細部に気を取られていると、全体を見失うことにハタと心づき、この数字を電卓に入力してみた。総事業38億円÷4269人=約89万円。この算式から浮かび上がってくるのは、受益者一人当たりの事業費がざっと90万円の巨額に上るという事実である。旧花巻市内の遠方や大迫、東和、石鳥谷の旧3町の住民にとっては何ほどのメリットがあろうか。「受益者負担」の公平性を無視した、これまた「エセ公共事業」と言わざるを得ない。さらに、自由通路やエレベ-タなど市所有にかかる工事費が11億円なのに対し、JR所有分は倍以上の24億円。ところが、JR側にとっては補助対象外のこ線橋の撤去費の一部を負担するだけの“ただ乗り”…あっ、思い出した。昔はやった「キセル」(無賃乗車)みたいなあんばいなのである。

 

 「花巻駅東西自由通路整備事業は、駅利用者及び東西居住者の利便性向上を図るとともに、東西の一体的なまちづくりと駅周辺市街地の活性化、賑わいの創出を図ることを目的としています」(令和2年10月31日開催の松園地区住民説明会の資料より)―。活性化や賑わい創出の具体的な青写真を示さないままの「駅橋上化」問題の欺瞞(ぎまん)はるる述べてきたとおりである。それはさておき、新版「おらが駅舎」物語のミステリ-はこれからいよいよ佳境(かきょう)を迎える。以下はブツブツと口をついて出てきた「つぶやき」語録―

 

 

 

●上田市長が得意満面で「住宅付き図書館」の駅前立地という珍妙な構想をぶち上げたのは、令和2年1月29日(私は「1・29」事変と呼ぶことにしている)。これを受けた形で、地域単位や諸団体を対象にした「駅橋上化」問題の説明会が本格的にスタ-ト。6月から12月にかけて計16回の説明会が行われた。ここで留意しなければならないのはこの説明主体が「建設部新図書館周辺整備室」ということ。察しの良い方はとっくにお気づきのことと思う。つまりは、新図書館建設と駅橋上化とはコインの表裏…どちらかが欠けても機能しないということなのである

 

●ところで、事態が思惑通りに進まないのが世の常である。上田市長がおそらく“サプライズ”気分で公にした件(くだん)の構想に市民の大方がそっぽを向いてしまった。「プライド」が背広を着て歩いているような、この種の人物にとっては面目丸つぶれである。追いつめられた末、「住宅付き」の部分は白紙撤回を余儀なくされたが、ここで白旗を上げるようなご仁ではない。それどころか、花巻市議会3月定例会に上程された「駅橋上化関連予算」(2603万円)が賛成多数で否決されたにもかかわらず、今度は米国生活で身に付けたらしい「アストロタ-フィング」(エセ草の根運動=“やらせ要請”)なる手法を駆使し、再度同じ予算案を議会に再上程するという、なんとも騒々しい〝大立ち回り”ぶりである

 

●この案件を審査する6月定例会は本日6月17日に開会した。「議会制民主主義」の真価も問われる、今回の「駅橋上化」戦争に”参戦”するのは4人。21日から3日間の日程で論戦が交わされる。それにしても、上田市長はどうしてこうまで突っ張るのであろうか。おそらく、これまでの度重なる“失政”を知り尽くしているのが、他ならぬご本人だから―というのが私の見立てである。つまりは「恥の上塗(ぬ)りはできない」という干からびた品性のなせるわざ。「五輪中止」を今さら口にはできないという例の類(たぐい)である。

 

●さ~て、お立合い!駅橋上化問題の担当部署はどさくさにまぎれるようにして、4月1日付で「都市機能整備室」(建設部内)に姿を変え、肝心の図書館はと言えば、ちゃっかりと「新花巻図書館計画室」と名義替えをして、生涯学習部内に引っ越ししているではないか。そして、「Q&A」集には苦し紛れにこんな表現が見える。「無理」を押し通し続ければ、いつまでも「道理」が引っ込む―などと思ったら大間違いである。

 

Q「花巻駅東西自由通路(駅橋上化)整備は、新しい図書館を花巻駅東側に整備することを目的として整備するのではありませんか」

 

A「花巻駅を含む地域は花巻地域の中心市街地でありますので、人口が増加傾向にある花西地区の利便性を図る花巻駅東西自由通路(駅橋上化)整備と駅のそばに新図書館を整備することは花巻駅周辺を含む中心市街地の活性化を図る手段となるものと考えております。しかし、新図書館の建設場所については現在、市民の間で駅周辺かまなび学園周辺かで意見が分かれております。仮に新図書館の建設場所がまなび学園周辺になったとしても、花巻駅東西自由通路(駅橋上化)整備は、花巻駅周辺を含む中心市街地の活性化を図るため、検討すべきものと考えています。その意味で、新図書館建設場所に関するご意見はご意見として、花巻駅東西自由通路(駅橋上化)整備の必要性は、新図書館とは別にお考えいただくようにお願いいたします」

 

●「橋上化の方はすべて、私どもの方で整備をさせていただきます。で、伏してお願い申し上げます。貴殿が所有する図書館の立地予定地はぜひとも私どもに、できれば格安でお譲りいただきますように…」―。舞台上ではJR殿に哀願口調で土下座する上田市長の姿が。観客席からは尻だけが見えて、頭は見えない。皆の衆はアッと驚く大団円に固唾(かたず)を飲む。新版「おらが駅舎」物語もいよいよ、大詰めへ…。観客席からヤジが飛んだ。「『頭隠して、尻隠さず』とはこのこと。“猿芝居”だとしたら、お猿さんに申し分けない。ひょっとしたら、日光東照宮の三猿(見ざる・言わざる・聞かざる)の真似をしているのかも知れないが、どうせ芝居を打つのなら、もっと芸を磨かんかい」―“裸の王様”(アンデルセン)の侘びし気なシルエットを映しながら、緞帳(どんちょう)は静かに下りた

 

 

 

 

(写真は橋上化の理由のひとつに上げられた地下通路。市側は予算案の再上程を前に慌てて防犯カメラの設置を表明した。これを称して、市民の安心・安全に背を向けてきた行政の「不作為」という=JR花巻駅の敷地内で)

 

 

 

 

<追記>~ダ-クツ-リズム(過去を忘れないための旅)

 

 JR花巻駅の薄暗い待合室(11月12付当ブログ)、立地条件に恵まれたポラン保育園の閉鎖(同15日付)…。過去にさかのぼれば、新興跡地(花巻城址)やまん福跡地(旧料亭)、中央広場(”公園”もどき)、心霊スポットの旧ホテル「花仁」(花巻温泉郷・台温泉)などなど。いっそのこと、上田市政の“負の遺産”をめぐるダ-クツ-リズムでも計画してみたらどうだろうか。「花巻橋上駅」も急きょ、このツア-のリストに追加登録することにした。