「新図書館が完成した暁(あかつき)には大変な読書家と知られる大リーガー(ロサンゼルス・エンゼルス)の菊池雄星投手に名誉館長職をぜひ、お願いしていただきたい」―。花巻市議会3月定例会一般質問の3日、羽山るみ子議員(はなまき市民クラブ)は新花巻図書館の整備計画に関連し、こんな質問をした。これに対し、小原勝市長は「大変、興味深い素晴らしい提案だと思う。実現に向けて、前向きに考えたい」と答えた。同議員は3年前の6月定会でも同じ趣旨の質問をしていたことを思い出したが、その時はスルーしたのを覚えている。今度はなんと身を乗り出すようにして議会中継に聞き入っているではないか。
桃の節句のこの日、雄星投手にとっては初めての書き下ろしとなる『こうやって、僕は戦い続けてきた―「理想の自分」に近づくための77の習慣』(PHP研究所)が刊行された。地元書店で先行発売された同書をすでに読んでいたせいかもしれないが、今回の質問にはまさに鳥肌が立つような感覚を覚えた。正直に言えば、雄星本に先制パンチを食らい、ダウン寸前だったのである。いきなり、こんな書き出しで始まる。
「僕にとっての最高の人生のバイブルは『平家物語』です。かの有名な一節、『奢(おご)れる人も久しからず』『盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理(ことわり)を顕(あらわ)す』は、まさに『諸行無常』(しょぎょうむじょう』というこの世の真理を突いています」―。34歳の大リーガーはこの中世物語を自分流にこう読み解いていた。「人生は諸行無常であり、いつかは衰(おとろ)えるものだからこそ、今この瞬間を謙虚に、そして大切に生きよう。そう思わせてくれる、非常にポジティブな力を与えてくれる本なのです」。そういえば、私が初めての本(『三井地獄からはい上がれ』)を執筆のも同じ34歳の時だったことをハタと思い出した。この偶然にびっくりした。
本書に掲げられた「77の習慣」はその自己実現に向けた挑戦の記録である。後半分に突然、喜劇王のチャールズ・チャップリンが登場する。「人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見ると喜劇だ」―。チャップリンのこの言葉を引き合いに出しながら、雄星投手は以下のように語っていた。この若き野球人の“人生”哲学に不覚にも涙を流してしまった。
「目の前のワンプレーに一喜一憂(いっきいちゆう)するクローズアップの視点だけでは、人生は苦悩と後悔に満ちた悲劇に見えてしまうこともあります。しかし、カメラをぐっと引いて、人生全体を俯瞰(ふかん)するロングショットの視点で見れば、今の苦しみも、壮大な物語を構成する一つのおもしろいエピソードにすぎないのかもしれません。…それは、人生をロングショットで捉え直す、強力な思考ツールです。そうすることで、僕たちは目の前の悲劇を、未来の喜劇へと変えていけるような気がします」。思わず、波乱万丈の我が人生行路を重ねていた。ふむふむ…
私は(2月)21日に開催された新花巻図書館の基本計画にかかるワーキショップ(WS)に公募委員として参加。市全体を「スポーツ・文化」ゾーン(西地区)と「教育・文化」ゾーン(東地区)に棲(す)み分けする「将来都市像」を提案した(2月21日付当ブログ参照)。提案の背景にあったのが、本書である。「5年後に開館予定の新花巻図書館の名誉館長にはこの人をおいて他にはいない」ー。「本は人を呼び、人は本を呼ぶ」…私は拙著『「イーハトーブ”図書館”戦争」従軍記』のあとがきにこう記している。
盛岡市の都南図書館前にはMLB(メジャーリーグベースボール)が制作した「本の虫」を模したマンホールカバーがあるほか、昨年10月からは自身が選んだ本を並べる「雄星文庫」が県内の5書店で始まった。年に200冊以上の本を読むというこの読書家は一方で、2024年11月に日本最大級の全天候型複合野球施設「King of the Hill」(K.O.H)を私費で建設した。母校の花巻東高校近く(西地区)にあるこの施設では将来、大リーグ入りを目指す野球少年たちのはち切れるような歓声が絶えない。
”文武両道”を文字通り、体現する雄星投手の名誉館長への就任をこの目で確かめるまでは死ぬわけにいかない。雄星君、ありがとう。齢(よわい)85歳の老人から、心からの感謝を込めて…。3月5日に開幕するWBC(ワールド・ベースボール・クラッシック)に雄星投手は初出場する。
(写真は一字一句の13万字を自分のペンで綴ったという菊池選手の新刊本)
★オンライン署名のお願い★
「宮沢賢治の里にふさわしい新花巻図書館を次世代に」―。「病院跡地」への立地を求める市民運動グループは七夕の(昨年)7月7日から、全世界に向けたオンライン署名をスタートさせた。イーハトーブ図書館をつくる会の瀧成子代表は「私たちは諦めない。孫やひ孫の代まで誇れる図書館を実現したい。駅前の狭いスペースに図書館を押し込んではならない。賢治の銀河宇宙の果てまで夢を広げたい」とこう呼びかけている。
「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(あらゆる透明な幽霊の複合体)」(『春と修羅』序)―。賢治はこんな謎めいた言葉を残しています。生きとし生ける者の平等の危機や足元に忍び寄る地球温暖化、少子高齢化など地球全体の困難に立ち向かうためのヒントがこの言葉には秘められていると思います。賢治はこんなメッセージも伝え残しています。「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである。われらは世界のまことの幸福を索(たず)ねよう、求道すでに道である」(『農民芸術概論綱要』)ー。考え続け、問い続けることの大切さを訴えた言葉です。
私たちはそんな賢治を“実験”したいと考えています。みなさん、振って署名にご協力ください。海外に住む賢治ファンの方々への拡散もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。
●オンライン署名の入り口は以下から
●新花巻図書館についての詳しい経過や情報は下記へ
・署名実行委員会ホームページ「新花巻図書館を宮沢賢治ゆかりの病院跡地に!]
https://hanamakibiblio.jimdosite.com/
・ヒカリノミチ通信(増子義久) https://samidare.jp/masuko/
・おいものブログ~カテゴリー「夢の新花巻図書館を目指して」 https://oimonosenaka.seesaa.net/



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