花巻市議会の臨時会が22日開かれ、公益財団法人「総合花巻病院」(大島俊克理事長)に対し、総額5億円の補助金を支出する補正予算案が上程された。さらに、同病院に対して抵当権を設定している金融団が総額6億円の債権放棄に踏み切ることも明らかになった(22日付市HP参照)。関係者によると、同病院は2年連続で債務超過に陥り、今年度末には9億7000万円に達する見込みだという。議員側からは病院側の経営状況や今後の見通しなどについての質問が出たが、「市民の病院」としての位置づけを優先させるべきだとして、財政支援の予算案は全会一致で可決された。
上田東一市長は質疑の中で「2期連続で純資産額が300万円未満になると、自動的に『公益財団』としての資格が消滅する。その期限が年度末に迫っており、今回はそれを回避するための緊急的な措置。この種の支援はこれを最後にしたい。そのためにも病院側には理事会の構成の見直しや経営改革を求めていきたい。将来、市立病院化する考えはない」と答弁。病院側が本年中をメドに「財団法人」から(300万円の縛りがない)「社団法人」への機構改革を検討していることを明らかにした。
同病院が現在地にオープンしたのは2020(令和2)年3月2日。当時の病院側の「移転新築基本構想」(平成28年12月)によると、総工費は86億9千万円で、うち市側の補助金は19億7500万円。この内訳は市単独補助が12億円で、残りの7億7500万円は国の制度利用に伴う市負担分となっている。また、病院側の自己資金はわずかに1億円で、金融団からの借入金が30億3千万にのぼっている。つまり、自己資金をほとんど持たないまま、多額の借金に頼りながらの多難な“船出”(見切り発車)だったことがこの数字からも分かる。これにコロナ禍などが追い打ちをかけ、経営を直撃する形になった。
一方、「公益財団法人」である病院側の管理執行体制は10人以内で構成する「理事会」が担っている。「市民に開かれた病院」を目指すとして、この中には医療福祉関係の有識者や行政関係者も含まれ、当市の副市長(当時)もオープン前の2019(令和元年)10月から理事職にあり、現在は八重樫和彦副市長がその職を継いでいる。
直近の登記簿謄本(土地、建物)によると、金融団(4行)はオープン1年後の2021(令和3)年3月29日付で同病院に対し、総額75億円にのぼる抵当権を設定。その債権額は当初の借入額の2倍以上に達している。このことからも“綱渡り”を覚悟の上で、厳しい運営を続けてきたことがうかがわれる。この間、八重樫副市長は「理事」として、その経営状況などを知る立場にあり、片や経営改善などにも関与しなければならない立ち位置に置かれていたことになる。こうした“二足のわらじ”の功罪も改めて問われなければならない。この点について、上田市長は「お目付け役としての役割を期待したが、十分に果たせたとは思っていない」として、今後の対応に含みを持たせた。
ところで、私が今回の臨時会の招集を知ったのは前日の21日夕に掲載されたHP上の告知だった。十分な審議の余地を与えないという「上田流」議会運営の常とう手段だが、巨額な公金つまり税金に関わる案件が安易な形で「いのちと健康」という大義名分と引き換えに、まるでそのことを”隠れ蓑”(みの)にしたかのようなやり方に危惧を抱いた。多くの市民も不信感を募らせており、議会中継を観たある市民はさっそく、X(旧ツイッタ‐)に書き込んだ。「市民の皆さん、花巻病院の案件で議会のライブ中継が始まっています。すごい内容になっています。病院の経営状態に無関心ではいられない内容です」。また、別の市民は「税金の“私物化”ではないか」と切って捨てた。その一方で、当事者であるベテラン議員は「議会の当日にいきなり、議案が提出されても精査する時間すらない」と不満をぶちまけた。
上田市政の市民不在と議会軽視は今に始まったことではない。当該病院の「移転・新築」構想が公になったのは約10年前の「広報はなまき」の一方的な告知記事だった。また、住宅付き図書館の「駅前立地」構想が突然、青天の霹靂(へきれき)のように降ってわいたのは記憶に新しい。「駅前か病院跡地か」という立地論争が続く中、市側が新たにJR用地の取得を強行しようとする姿勢にも「これこそが税金の二重払い〈無駄遣い〉ではないのか」という市民の批判が高まっている。
私たちの生活を支える財源のほとんどは税金である。だからこそ、審議を十分に尽くした上で、議会の議決を得ることが「財政民主主義」(憲法第83条)の基本なのである。上田市長は事あるごとに「税金の無駄使いは許されない」と繰り返してきた。この言葉を今こそ、おのれに問い返してほしいと思う。上田“迷走劇”の実態については随時、報告したい。
(写真はオープンから丸4年を迎えた総合花巻病院=花巻市御田屋町で)
この記事へのコメントはこちら