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自己演出のすすめ

 鴻上尚史氏(劇作家・演出家)の「自己演出のすすめ」と言う講演を聴いて来ましたので報告します。

 「独り言」が第一の輪とすると、「あなたと話す言葉」が第二の輪で、「皆と話す言葉」は第三の輪となる。対話をしても、「独り言」の声の調子だと聴き取りにくく、皆と話す時に「あなたと話す言葉」を用いると親近感が増す。何故、人が表現力を磨くのかといえば、それは「他の人に好感をもたれるため」であると言える。

「こえ」は声帯を振るわせて音を出すが、共鳴場所が鼻・口唇・頭・咽喉・胸の5箇所あり、これらを組合せて声のバリエーションを増やす。良い声とは、感情やイメージをきちんと表現できる声である。

「こえ」の要素は何かと言うと、①大きさ(独り言、あなたと話す言葉、皆と話す言葉など何種類かの大きさを持つべき)②高さ(よそ行き、普通、本音の3パターン位は欲しい)③速さ④間(早口でも間があると説得力がある)⑤声色、音質の5つある。感情と表現は相互に通行可能であり、出したことの無い声を出すことによって、感情は豊かになる。例えばプレゼンテーションであがった場合、低い声で話すと落ち着く(低い声で話すと丹田にSWが入る)。話す内容ではなく、しゃべり方である。例え演技と言われても、これはやった方が良い。
2005.06.26:dai:コメント(0):[学習]

革命時代の経営哲学

 松井道夫氏(松井証券社長)の「革命時代の経営哲学」と言う講演を聴いて来ましたので報告します。

 IT革命の本質は、“供給者中心”から“消費者中心”へパラダイムシフトが起こったことにある。これからは“顧客”が企業を選別する時代であり、旧来の方法でビジネスを行う企業は淘汰される。

 “IT革命”と“自由化”が同時に来た証券業界では、長らく圧倒的なシェアを有していた野村證券(00年度25%→04年度8%)を松井証券(00年度4%→04年度13%)が上回る革命的な変化が起きている。松井証券のオンライン株式売買代金は99年1月26億円→05年4月2兆7609億円と5年間で1000倍に増加した。個人投資家が“オンライン取引”に移行すると売買回転率は上昇するため、売買代金は飛躍的に増加する。個人投資家は、対面取引からオンライン取引へ移行することで“取引の自由”を手に入れ、きめ細かい注文が出せるようになるため“回転率”が上昇することが理由と考えられる。個人株式売買代金に占めるオンライン比率は84%で、株式市場でオンライン投資家の存在感は高まっている。ペイオフ解禁を機に豊富な団塊世代の資金(100兆円)が株式に移動する可能性が高く、個人の株式売買代金は今後、飛躍的に拡大する可能性がある。


 投資部門別株式売買代金シェアは、90年代後半までは法人が、現在は外国人がマーケットの主役で、近い将来オンライン投資家が牽引する形で個人投資家がマーケットの主役になる時代が来ると考えられ、マーケットを通じて企業が選別される時代が到来するだろう。

 将来は、個が主体で、個が主張する、個の時代になるだろう。公務員削減や年金問題から「日本は間違いなく破綻するだろう」、猛烈なインフレーションを覚悟すべしと言っていることはショッキングだった。
2005.05.26:dai:コメント(0):[学習]

実践的起業家論

 堀江貴文氏(ライブドア社長)の「実践的起業家論」と言う講演を聴いて来ましたので報告します。

 ㈱ライブドアによるフジテレビ買収騒動に関連して、摩擦に費やすエネルギーは例え成功しなくともリターンが大きいこと(周りの見る目が変わること)を、子ども時代の体験を交えて話していた。日本人は総じて和を重んじるため、チャレンジが少ない。現在の経済状況は、オイルショック(経済成長ストップ)に遠因があり、バブルによって10年間延命したが、破綻状況にあると見ている。資産形成のためには、自ら事業を起こすことが大切で、大企業信奉や貯蓄を奨励することは現在では非合理になっている。

 ある事業に参入するか否かは、①マーケットが大きいこと②競争相手が少ないこと③元手が少ないこと④利益率が高いこと、を検討すれば良い。具体的には、マッサージなど癒し系ビジネスは上記項目を全てクリアする。事業に参入する時は、得意で儲かることをやるべきで、ただ単に好きなことをやってはいけない。起業しない場合でも、ベンチャー企業ならば投資するか入社するかなど売り込み易いだろう。

 放送事業への参入については、放送以外の事業収入の増加を目的としたもので、従来のシェア追求型から利益追求型への変化を狙ったものだが、世間では誤解されている。免許制の証券業界が自由競争によって大きく変貌したように、視聴率争いをしている放送業界も利益追求型への変化が求められている。
2005.05.26:dai:コメント(0):[学習]

スローキャリアのすすめ

 高橋俊介氏(慶應大教授)の「スローキャリアのすすめ」と言う講演を聴いて来ましたので報告します。スローキャリアと言うのは、スローフードをもじって考案した造語で、日々充実した人生を送るために、キャリアを目的合理性で考えず価値合理性で考える、ポリシーをもってプロセスにこだわって本物志向のキャリアを積むことだそうです。

 なぜ今スローキャリアなのかと言うことについては、組織内出世を皆のモチベーションに使えないことや、上昇志向の人が減少していること(特に20代)、変化が激しく長期のキャリア目標から逆算するやり方では世の中に振り回されること、内向きの出世ではなく顧客志向のプロフェッショナル人材が経営的にも重要になってきていることがある。

 良い仕事人生の条件としては、一つ目は日々の仕事において動機に支えられた能力を多く活用していること(動機活用)、二つ目は日々の仕事において自分の仕事のやりがいや自分の存在そのものの意義を感じること(意味づけ)、三つめは継続的に学習し発達・成長している実感が持てること(継続的成長)、四つめは家庭など仕事人生以外とのバランスや仕事以外での人生の意味づけを持てること(人生充実)があり、ワーク・ライフ・インテグレーションの概念を語っておりました。

 仕事に役立つ人の能力の四要素として、①要件が変化しやすいが何時からでも習得できる最低必要な要素としてのスキル、②仕事の最低必要要素としての頭の良さ、③要件も保有能力も緩やかに変化する高い成果を生み出す直接要素としての思考・行動能力、④思考・行動能力をドライブする高い成果を生み出す潜在要素としての動機がある。

 動機はエニアグラム・MBTIなどで測定されるが、達成志向・上昇志向系の動機と対人関係系の動機とプロセス系の動機がある。動機にドライブされて能力を発揮している時はストレスを感じにくく、動機が無いのに意思と努力で習得すると燃え尽きてしまう。

 過去のキャリアに自分らしさを感じ、今の仕事に充実感ややりがいを感じている人は、いわゆる勝ち組みではない。幸せなキャリアの条件としては、主体的なジョブデザイン、ネットワーキング、スキル開発の行動を日常から取っている人である。

 主体的なジョブデザイン行動とは、自分の価値観やポリシーを持って仕事に取り組んでいる。社会の変化、ビジネス動向について、自分なりの見解を持っている。部署・チームを超えて、積極的に周囲の人を巻き込みながら仕事をしている。仕事の進め方や企画を立てる上で、今までの延長線上のやり方ではなく、自分なりの発想を持って取り組んでいる。自分の満足感を高めるように、仕事のやり方を工夫している。

 ネットワーキング行動とは、新しいネットワークづくりに常に取り組んでいる。自分のネットワークを構成する個々人が、どんなニーズを持っているか把握し、それに応えようとしている。自分の問題意識や考えを社内外のキーパーソンに共有してもらうようにしている。

 スキル開発行動とは、今後どのようなスキルを開発していくか、具体的なアクションプランをもっている。スキル・能力開発のために自己投資をしている。

 結局、働き方を重視したキャリアの考え方は、キャリア目標より仕事における主体性であり、仕事の質・テーマ・スタイルなどへのこだわりであり、自身のブランド・自己イメージへのこだわりであり、弱い絆も重要視する人間関係へのこだわりであり、キャリアフェーズという考え方でキャリアと人生を分けて自分の言葉で位置づけることであり、経済的精神的セーフティネットを構築することである。

 以上、この抄録をまとめながら、なかなか先進的なキャリア観を語っているなと感じた。
2005.04.26:dai:コメント(0):[学習]

変貌するビジネスシステム

 加護野忠男氏(神戸大学教授)の「変貌するビジネスシステム」と言う講演を聴いて来ましたので報告します。事業(ビジネス)システムとは、顧客に価値を届けるために必要な諸活動を統括する能力と仕組みであり、取引先との連携関係、社内の分業体制、情報システム、資金の循環システム、人事制度、ロジスティックスなどを言う。

 商品の競争は華々しい成功が得られるが、模倣が可能であり競争優位の持続時間が短い。一方、事業システムの競争は目立たない勝利だが、模倣が難しく競争優位の持続時間が長いと言う特徴がある。

 具体的な事業システムとしては、一つ目は、灘の酒蔵の制度があり、丹波杜氏としてコア技術をアウトソーシングし、蔵元は製造設備とブランドしか持たない方法がある。二つ目は、京都の革新性があり、麦踏としてサポートするのでなく鍛える、違う商品を扱う棲み分けから、室町産業や村田製作所が生まれた。

 実践共同体における技術の伝承は、7~8人程度の小さな集団で行うのが良い。集団間の競争、集団内の競争と学習、教え合いには価値があり、雑用にも価値がある。

 伝統的な古典の勉強には価値がある。その理由は、一つは古い事業システムには強靭さがあり、直接対話ができることである。二つは社会・経済の中には分かってないことが多く、先人たちの合理性を学ぶことができることである。三つはビジネスの創造的借用(例えばナショナル・ショップなど)ができる。
2005.04.26:dai:コメント(0):[学習]