『米坂線の今』沼沢駅の1  待合室の活け花

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 羽前沼沢駅は1933年(昭和8年)11月10日に開業した。米坂線は開業以来、豪雪と豪雨に見舞われて来た。米坂線の歴史はまさに被災と復活の歴史であったとも言えるが、沼沢~手ノ子間はその中でも特に災害の多い区間であった。1967年(昭和42年)の冬、5m30㎝の豪雪で「積雪日本一の駅・羽前沼沢駅」の看板が建てられた。また同年8月の羽越豪雨により全線不通となった際は、団体客372名の炊き出しが駅で行われたという。

 

 羽前沼沢駅は1983年(昭和58年)に無人駅となり、同年12月に現在の駅舎が完成している。 待合室に入ると驚くことに花が活けられていた。列車が来ない待合室に花を活けに来る人がいたのだ。誰が、どんな思いで活けているのだろうか。改めて待合室を見ると、他の駅と同様に狭い部屋であるが、この駅には花器を上げる台が設置されていた。設計者の意図であったのか、この小さな気遣いが活け花を飾る人を登場させたように思えた。限られたスペースではあるが、ここで少しだけでも憩って欲しい、との声が聞こえたように思えた。駅こそが鉄道を愛する住民の拠り所であり、鉄道会社と住民をつなぐ結節点なのだと思う。

2025.09.30:orada3:[停車場風景]

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