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家族の風景

  • 家族の風景

 駅舎にはいろんな人が訪れる。列車を待つ間、駅茶でよもやま話をするのが何よりの楽しみである。

 

 荒砥駅付近で生まれた夫人は、朝から夕方まで列車の汽笛を聞いて育ったという。母の実家の宮内に長井線に乗って出かけるのがとても楽しみでウキウキするものだった、と語ってくれた。

 また3歳ぐらいの女の子と時々駅で見かける夫人に話を聞くと、女の子は長井線が大好きなのだという。なんと市外に住むひ孫さんを預かっているのだという。

 

 天童駅の近くに住んでいた方は、自宅で介護していた父が亡くなった時のことを語ってくれた。父がいなくなってからは、それまで住んでいた家が「自分の家」であるとは思えない日が長く続いたという。自分にとって列車の音が聞こえる毎日がとても大事なものだと思っていたが、家族のいる風景の重さを改めて知ったという。

 

 コロナ禍で普通の暮らしの有難さや大切さを教えられたものである。けれども命は永遠のものではない。だからこそ、その日常の重みを噛みしめながら生きていきたいものだと思う。駅に遊びに来る子供たちにとって、父母や祖父母、曾祖母の優しい笑顔が、長井線と共に懐かしい思い出として記憶の中に刻まれていくことを願っている。

 

2024.05.25:orada3:コメント(0):[駅茶こぼれ話]

長井線がつなぐ「縁」

  • 長井線がつなぐ「縁」

 加藤弘一さんの写真展「花とフラワー長井線」も、今週末を残すのみとなった。地元紙に紹介されたこともあり多くの方が来場された。「こんなに美しい花々の咲く場所があったことを初めて知った。」といった感想が多く寄せられた。また撮影地で加藤さんと出会った時に、撮影の仕方や沿線の撮影ポイントなどを教えてもらった、といったエピソードも聞くことができた。

 

 長井線の写真を撮り始めて、いろんな人と巡り合うことできた。そしてこんな風に集まる事が出来る、それが何より幸せなことだ。と、7人展の打ち上げの際に、加藤さんが語っていたのを思いだす。長井線がつないでくれた「縁」なのかもしれない。おらだの会も長井線を応援しているようで、実は長井線から元気を貰っているのかもしれない。

 

 

 【おらだの会】写真は「梨郷の春」。加藤さんの写真展は24日(金)から26日(日)の午後1時半から午後4時まで。ただし最終日は午後3時までです。

2024.05.23:orada3:コメント(0):[駅茶こぼれ話]

黒獅子祭りに湧く長井市

  • 黒獅子祭りに湧く長井市

 5月18、長井市内はイベントが盛りだくさんだった。白ツツジマラソン、長井線と競争しよう、長井ダムでのバンジージャンプ、そして黒獅子祭りである。その中でも市街地を各神社の獅子が練り歩く黒獅子祭りは圧巻である。黒獅子舞は、各邑に祀られた神社に伝わるもので、千年もの間受け継がれて来たものである。最近の言葉で言うならばディープな祭りといえるかもしれない。

 日本全国で、地域振興の切り札としたインバウンドに期待する傾向が強いように思えるが、一番大切なものはやはり地域の人々の熱気ではないだろうか。今年で34回目となるこの祭りの実現に情熱を傾けた方がいた。当時の長井市観光協会の会長である。その方は、黒獅子舞こそが、自分たちが誇るべきものだと語っていた。今年の観客には外国からのお客様も多かったという。34年後の祭りを、元会長はどんな思いで見ているだろうか。

 

 以前、写真家宮嶋康彦氏と街歩きツアーを実施した際に、宮嶋さんは「黒獅子が練り歩く街を大切にして欲しい」と語られたことを思いだす。


 以前開催した「まつりの記憶展」はこちらから
  → 「まつりの記憶」展を開催:おらだの会 (samidare.jp)

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【おらだの会】 写真は2012年の駅前での獅子舞(永山さん提供)

2024.05.20:orada3:コメント(0):[駅茶こぼれ話]

測量させてくださいⅡ

  • 測量させてくださいⅡ

 若い女性が二人、駅舎においでになった。どうみても桜見物に来たとは思えない。梁のあたりを眺める仕草は、鉄道マニアとも違うようだ。話しかけてみると、地元の大学で建築を学んでいるとの事。大学の先生から出された課題の一つに「羽前成田駅のリノベーションを考える」があり、二人はそれに取り組んでいるのだという。

 二人はメジャーを出して、あちらこちらを測量し始めた。その様子を見て、成田駅の模型を作るために、「測量させてください」とおいでになった方を思いだした。どちらも好きなモノに打ち込む姿は輝いて見える。さて大学の先生は、何故この駅を題材の一つとして選んだのであろうか。そして学生たちはどのような空間を表現しようとするのであろうか。将来の羽前成田駅の姿を見られるのが楽しみである。



 駅舎の模型作りの方はこちらから

 

測量させてください:おらだの会 (samidare.jp)

 

2024.04.28:orada3:コメント(0):[駅茶こぼれ話]

鮎貝駅「サークル水仙」のこと

  • 鮎貝駅「サークル水仙」のこと

 先日、所用のついでに鮎貝駅を訪ねた。SNSでも多く取り上げられていた「水仙園」を見たかったのだ。駐車場から歩いてほどなくしてその場所に着いた。水仙はすでに萎えていたが、菜の花が可憐な花を咲かせていた。四季の郷駅へと続く黄色の絨毯を想像しただけで、圧倒されるような思いがした。

 

 そこに看板が建てられてあった。「サークル水仙」の皆さんのメッセージである。そこには20年前から活動を続けてきたこと。そしてこの春をもって解散することが記されていた。この風景を創るまでの地元の人たちの姿が見えて来るようだった。そして、解散を決意した際の辛さも想像できるようだった。

 

 沿線に咲く花々を写真に収める時には、そこに生きる人たちの姿も忘れないで欲しいものだ。おらだの会も今年で発足28年目になる。平均年齢は毎年上がっていくが、縁ある人たちと一緒に花見をし、芋煮会ができることを楽しみに、もう少し頑張ってみようと思う。サークル水仙の皆さん、長い間本当にご苦労様でした。

2024.04.26:orada3:コメント(0):[駅茶こぼれ話]