八巻孝男さんは、松川橋梁の四季を提出してくれましたが、紹介するのは「夏」と「冬」です。「夏」は夏草の濃い緑と青い空、そして絵筆で粗挽きしたような白い雲が、爽やかでエネルギッシュな夏の景色を捉えているようです。「冬」は、一面靄に包まれた中を最上川の水面が光り、影となった列車が鉄橋をわたる光景が水墨画のように描かれています。
この二つの作品を見て、シャッターを切る時に八巻さんの目は、どこに焦点を合わせているのだろう、という疑問が湧いて来ました。そして自動車教習所での初めての路上訓練の際に教官から言われた「一点を見てはいけない。前方の全体を見ながら注意すべきポイントを掴まえろ」との言葉を思いだしました。
写真家は雲や靄、草や川面といった画角の全体を確認しながら、橋梁を上って来る列車の姿を意識の中で追いかけながらシャッターを切る。そんな作業を行っているのかも知れない。静と動という相反するものを追いかけながら、光と色彩をも一枚の中に封じ込める、それが鉄道写真の醍醐味なのかも知れないな、などと妄想してしまう。





