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§9 あなたメッセージでは伝わらない

 先日中学2年生の子どもさんがいる受講生さんが
「躾をしようと私の考えを伝えるのだけれども、子どもは行動を変えようとしないし、逆に反発されてしまいます。本当にイライラする毎日です。」
と言っていました。
 多かれ少なかれ親はこんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。
親は「子どもに教えなければならない。」とばかり、力んでしまうことはないでしょうか。
そして子どもから反発されてしまうことがあるのではないでしょうか。
 子どもは、今まで自分の気持ちを理解してもらえずに親の考えを押し付けられてきたという思いがあります。
その体験から、親の言動を、どうせまた説教されてしまうと決めつけることがあります。
親から「あなたが悪い。」「あなたのやっていることはよくない。」と、
自分の行動を制限・規制する言葉ばかりをかけられてきたからです。
親業でいうお決まりの12の型の言い方です。
この言い方はすべて「あなた」について話す「あなたメッセージ」です。
 例えば、約束の時間にかえってこなかった子どもに
「 (あなた) 今まで何していたの。」
「(あなた)約束を守らなくてダメな子ね。」
と言って親に『ごめんなさい』と言わせようとしていませんか?
こういう言い方では、子どもがもしも謝ったとしても、心の中で「だって」「でも」 と思っているでしょう。

 あなたを主語にして、あなたの行動に制限・規制する言い方を 『あなたメッセージ』といいます。
こういう言い方では、本当の親の気持ち、=子どもが心配だったこと=は子どもには伝わらないのです。
逆に、子どもは、自分がよいと思っていた言動を親に拒否されたと思ってしま
うのです。
 「あなたメッセージ」を使ったときも、
これから伝える「わたしメッセージ」を使ったときも、
子どもはかわいいし、大事だと言う親 (自分) の気持ちは同じなのですが、
「あなたメッセージ」で子どもに伝えると、子どもは親に嫌われているのではないかと思ってしまいます。
例えば、謝れと言われ、納得できない気持ちのまま謝ったとしたら、
子どもに不満が残り、これからも行動を変えることはないでしょう。
『あなたメッセージ』を『わたしメッセージ』にして親の気持ちを伝えて、
子どもが本当に納得すれば、子どもはすすんでして謝り、子どもの行動も変わるでしょう。
 何気ない親の言葉が、子どもに取っては一生の傷になることもあります。


2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]

§8 どうしてチョコレートを食べるの

親業の講座を受講した病棟勤務のAさんから聞いた話です。

入院して食事療法している小学校5年生の優子ちゃん(仮名)は、 TVCMのお菓子を食べていつも怒られていたんです。
病棟にいるお医者さんも看護師さんも私も
「絶対に食べてはダメ!」
と言っているのに、優子ちゃん(仮名)はどうしても我慢できないのか、隠れてお菓子を食べてしまうのです。
「また食べたの?」
「どうして言うことを聞かないの。」
「いつまでも退院出来ないわよ。」
可哀想だとは思いつつ、私もみんなと同じような言葉を、優子ちゃん(仮名)に言っていました。
でも私は、ふと思ったのです。
『優子ちゃん(仮名)は、本当にTVCMに出てくるお菓子を食べたいのだろうな。
私だって太るからやめようと思っても、ダイエットは明日から!と言って食べてしまうのだから。』
 そんなときトイレの片隅でチョコレートを食べている優子ちゃん(仮名)を見つけました。
そして、ちょっとだけ不憫に思えたのです。
『よほどチョコレートが食べたかったのだろうな。』と優子ちゃん(仮名)の気持ちを感じることができたのです。
優子ちゃん(仮名)の気持ちがわかると、
「どうしてもそのチョコレートが食べたかったのね、CM見ると食べたくなるものね」
と、思わず優子ちゃん(仮名)の気持ちをわかったよという言い方にしていました。
その瞬間は優子ちゃん(仮名)はきょとんとした顔をしていました。
驚いたのはすぐに
「看護師さんごめんなさい。もう絶対に食べないから」
と優子ちゃん(仮名)が、泣きながら謝ったのです。
優子ちゃん(仮名)はそれから間食をしなくなり、まもなく退院していったそうです。

 優子ちゃん(仮名)に対してAさんは、相手の気持ちをくむ聞き方(能動的な聞き方=アクティブリスニング)をしたのです。
前回説明したコミュニケーションの障害となる“お決まりの12の型”の言い方をしていると、優子ちゃん(仮名)は反発をしていたのに、
優子ちゃん(仮名)の気持ち (チョコレートを食べたい) を理解したよ、
と伝えたことで、優子ちゃん(仮名)自身が、退院するにはどうしたらいいのか気づいたのです。
 

私たちは、 子どもの気持ちをくむより、
非難したり説教したりして相手を変えようとしていないでしょうか。
相手を変えようとしても変わりません。
そんなときは自分が変わることが必要です。
子どもに親の気持ちをわかってもらいたいと思うなら、親が子どもの気持ちを理解してあげることが必要ではないでしょうか。
思いやりはそこで育ってきます。
 私たちが、悩みがあるとき「あの人に話してみたい、聞いてもらいたい。」と思える人はどんな人でしょう。
話を共感的に真剣に聞いてくれた人だと思います。
 良い親子関係とは、やはり悩みのあるときこそお互いに聞き合える関係ではないでしょうか。

2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]

§7 大人同士の接し方 白いボールを白いまま返そう

もし、自分が友人に悩んでいる気持ちを伝えた時、障害となる12の型で対応されたらどんな気持ちになるでしょう。
例えば『この頃眠れないのよ』と言った時、こんな言い方をされたらどうでしょう。
(命令・指示)
 そんなこと言わないでちゃんと寝ないとダメだよ。
(脅迫・注意)
 ちゃんと寝ないと仕事にさしつかえるるわよ。困るのはあなたなんだから。
(説教・訓戒)
 あれこれ思い悩まなければいいんだよ。気にしてもどうにもならないのだから。(提案・忠告)
どこか具合が悪いではないの。病院に行った方がいいのじゃないの?
(講義・講釈)
 眠れないと思い込まなければいいのよ。
(同意・賞賛)
  眠れないなら、眠らなければいいんじゃないの。
(非難・批判)
  何をバカなこと言ってるの!
(辱める・悪口)
  あなたはひとつのことで くよくよ気にしすぎなんだから。
(解釈・分析)
  この間のことを気にして、そんなこと言ってるの
(同情・激励)
 大丈夫。気にすること無いって。
(尋問・探りをいれる)
 いったい何があったの?  どうしたの?
(ごまかす・注意をそらす)
 そのうち眠れるようになるから、気にしない気にしない

 このような言い方をされたら、
反発を感じたり、
理解してもらえないのだと怒りややるせなさを感じ、
その友人には二度と悩みを話したくなくなってしまうのではないでしょうか?

 子どもも同じです。
小さい時からこのような接し方をすると、理解してもらえないからと、
親には話さなくなるなど、親に対し防衛的態度になってしまいます。
 また、いつも親が解決策を伝えていると、
困ったとき悩みがあるとき、自分で考える力が無いので、
親に頼ろうとする依存型の子どもになりがちです。
では、どんな言い方がいいのでしょうか?

 困っている子どもが投げてきた白いボールを白いまま返すことで、子どもが自分で考えることが出来るようになります。

先ほどの事例『この頃眠れないのよ』の場合

『眠れないの』という白いボールを受け取ったと、同じ白いボールを投げ返す言い方です。

白いボールを白いまま返すと、こんな対応になります
く り 返 す :眠れなくて困っているのね
言 い 換 え  :ぐっすり眠りたいのね
気持ちをくむ  :眠れないと身体に悪いと思って、心配なのね
眠れないほど心配なことがあるのね

このような言葉が返ってくると、ほっとしませんか。

2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]

§6 親と子の接し方 悩んでいる子どもに

子ども達の自殺の低年齢化や、いじめの問題等を、目にし、耳にすることが多くなっています。
 何か子どもが絡む事件が起こると有識者といわれる方が
『こういう子どもはサインを出していたはずだ、周りの人がサインに気づき子どもの話を聞いていれば良かった。』
という意味を発信します。
けれども、サインを見つける術を、
また、子どもの話を聞く方法を、
私たちは知っているのでしょうか?
話を聞く方法を学んだのでしょうか? 
確かに、このような問題を起こす前に
子どもからのサインがたくさん出されていると思います
。ただ、親や周りにいる大人達は、子どものサインをキャッチするアンテナを錆び付かせて、
察知することが出来ない状態になっているのではないでしょうか。

 皆さんは、言葉を話せない赤ちゃんが泣いていたら、どう接しますか?
どうして泣いているのか考え、声をかけながら接するのではないでしょうか?
「おなかすいたの?」
「眠いの?」
「抱っこしてほしいのかな?」
などと言いながら、赤ちゃんに触れるのではないでしょうか。
そのときは、赤ちゃんのサインをキャッチするアンテナを張って高くしているのです。
けれども、子どもが言葉を話すようになると、アンテナを張ってなくとも子どもが話してくれるはずだという思いがでて、
アンテナを下げ錆びつかせてしまっているのではないかと思うのです。

 親は子どもが悩みを持っているとき、
子どものためを思って、
子どもと共にその悩みを考え、
親がよいと思う解決策を
子どもに示してしまうことがあります。
それは、子どもの判断力を無くさせてしまうこともあるのです。

 子どもが悩みを抱えた時、次のような言い方で接することはありませんか。
親業では次の型を“おきまりの12型”といって、なるべく避けるようにすすめています。

① 命令 子どもに何かするように、 しないように命令する
② 脅迫 そんなことをしたらこんな大変な(イヤな・恐い等)ことが起こるという
③ 説教 何をすべきか、すべきじゃないかを言う
④ 提案 どうしたら悩みを解決できるか助言する
⑤ 講義 理詰めで迫る
⑥ 同意 肯定的な評価をしたり、賛成する
⑦ 非難 子どもに対して否定的な評価をする
⑧ 辱める 馬鹿にする
⑨ 解釈 子どもの動機は何かを親が解釈したり、 原因を分析したりする
⑩ 同情 子どもの気持ちを良くしようと、今の気持ちからぬけださせようとする
⑪ 尋問 原因、動機、理由を見つけようとする
⑫ ごまかす 悩みから子どもをそらそうとする

 ほとんどの親 (大人)の反応が、 この12の型のどれかに入ると言われています。
9割を超える大人がこのような言い方をしているそうです。
 子どもが困っているとき、悩んでいるときに、このような言い方をすると、子どもの自立をはばんでしまう場合があります。
親が考えた行動をするよう押しつけているからです。

2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]

§5 子どもの悩みに親が出来ること

 小学3年生の男の子のいる受講生さんから
「子どもの悩んでいることに耳を傾けることは、甘やかしではないだろうか。
親は毅然とした態度で子どもに立ち向かった方がいいのではないか。」
と疑問を投げかけられたことがあります。
 例えば子どもが転んで泣いているとき、『ガマンしろ!!』と言えば、我慢出来る子どもになれるのではないかと言うのです。
転んで『痛い』と言っている子どもに『ガマンしろ。』と言えば、子どもは泣くのをやめるのではないかと言うのです。
でも考えてみて下さい。
子どもが我慢したのは親に言われたからです。
その場は我慢しているかのように見えますが、実は痛みをもっと感じているかも知れません。
親が『我慢しろ』と言うことで我慢強い子どもになれるのでしょうか。

 私たちも同じです。
頭痛がしているとき、家人から『それくらい我慢しろ』と言われたら、
頭が痛いと言っているのにどうしてわかってくれないの、と不満を感じませんか?
そのとき、
『頭が痛いのね』
と気持ちを分かってもらえたら、痛みが和らいだと感じることはないですか?
そして理解してくれた人に対しては、好感を持ちますね。

子どもが悩んでいるときに、親が出来るのはどんなことでしょう。
「そのくらい大丈夫。」
「我慢しなさい。」
「皆苦しみながら成長しているのよ。」
「そんなこと悩んでないで早く宿題やりなさい。」
果たしてこういう言葉が適しているのか、考えてみる必要があるのではないでしょうか。

 ある受講生さんが
「会社での悩みを聞いてもらうのに、一番いいのは幼稚園の息子なんです。
妻に話すといつも同じようなことで悩んでいるのね!もう聞き飽きた。と言われてしまいます。
息子に話すと『パパは大変なんだね、とってもイヤでしょう』
と、とても気持ちを分かってくれるのです。」 と話してくれました。

 大人も子どもも気持ちをわかってもらうことが一番こころが安らぐのです。

 親業では、相手から白いボールが来たら、白いボールで返しましょうというやり方を身につけます。



2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]