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§14 親と子の対立について

親子の間には、どんな家庭でも大なり小なりの対立はつきものです。
内容は小さな意見の相違から大きなケンカを伴うものまで、いろいろあります。
親と子といえども別の考えがあり、感じ方が違うのですから対立があるのが当たり前といえるでしょう。
子どもも一人の人格を持った人間であり、親の所有物ではないのですから、
親のいいなりになってもらっては逆に困るわけなのですが、
あまり子どもが自分の意見を通そうとし、親のいうことを聞かないと、
『親という役割業』を辞めたくなることもあるでしょう。
 よく夏休み前になると
「夏休みの間子ども達とケンカをしないで過ごすにはどうしたらいいのでしょうか。」
と質問が多くなります。
子どもも大きくなってくると小さいときと違って自分の意見を通そうとしますし、
親も自分の意見を言い聞かせようとします。
そこで対立が起こるわけです。
意外に子どもの意見を聞いていると『なるほど』と思うときがあるのですが、
そのときはすでに遅くお互い引っ込みがつかなくなってしまっていることがあるものです。
対立したときは相手と口をきくのはイヤになりますね。

 親業訓練講座を提唱した臨床心理学者のトマス・ゴードン博士は、
「対立は人間関係の真実の瞬間である。」と言っています。
対立は必ずしも悪いことではないと言うことです。
たとえ親子といえども、
別の人格を持った人間がいつも同じように、考えたり、感じたりすることはないということです。
人間が二人いれば、対立はあるのが当たり前といえるでしょう。
親と子の間に対立をなくそうとするよりも、当然でてくる対立をいかに解決するかの方が重要でしょう。
対立をいかに処するかで親子の関係を強くもし、弱くも出来ます。
親子が互いにしっかりした絆で結ばれるか、
あるいは心理的な傷を後まで残すような破壊的な関係へ進んでしまうことになるのか、
いずれの可能性も含んでいるのです。
「対立が何度起こるかではなく、いかに解決されるかが、あらゆる人間関係を左右する決定的要因である。」
とトマス・ゴードン博士(親業訓練講座の提唱者)は言います。



2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]

§13 明子さん(仮名)のお母さんの受講の動機

今年の4月に高校を卒業して、専門学校に入学した明子(仮名)は、5月の連休明けから学校に行けなくなりました。
連休前も明子(仮名)は、重い足を引きずつて行っているように感じてはいましたが、
新しい環境だし、遠い学校だから慣れるまでは仕方が無いと思っていました。
うちは夫と明子(仮名)弟の4人家族です。小中高の受け持ちの先生方には、「おとなしく 素直で本当によい子です。」と必ずほめられる素直な子どもでした。
成績は中の上位、私はもう少し意欲的になって勉強すれば成績も上がるのでないかと思っていましたが、
でも女の子だしそんなに勉強だけできてもなぁ、そんなことを思っていたのです。
ずっと親のいうことをよく聞くし、何か行動する時は私にもきちんと断り、几帳面な子でした。
でも今から思えば、人から誘われると出かけるけど、あまり自分から遊びに行くこともなく、元気がある方でもなかったです。
高校卒業後の進路についてもアドバイスはしたけれど、明子が自分で選んだと思っていました。
7月に入り、明子からこんなことを言われて驚きました。
『私は今まで何のために生きてきたのだろう。
親に言われるまま素直に聞くだけで、自分で考えて行動したことは何も無い。
学校もお稽古事も全部お母さんの希望だった。
もう一度人生をやり直したい』
それで、私は親子のよい関係を作れるという親業の講座を受講することにしました。

 24時間のプログラム終了時に、明子さん(仮名)のお母さんはこう言いました。
子どもと自分は違う人間なんだ、考え方が違っていいんだ、それは当たり前のことなのですね。
私は子どものためと言いながら、子どもを親の指示通り動かしてきてしまったのですね。子どもを自分の所有物のように考えていたのですね。


 毎日の生活の中で知らず知らずのうちに親は命令して、子どもの行動を変えさせようとします。
でも行動を変えるのは何歳くらいまででしょうか。。
 力の押しつけではなく、親が言ったことで子どもが行動を変えやすいのは、『わたしメッセージ』であり、
親子がよい関係であるということが絶対必要条件ではないかと思われます。
それには小さいときからの関わりが大切だと思うのです。






2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]

§12 親の気持ちの伝え方

私たち親は、子どもに対して 「○○しなさい。」と命令口調で子どもの行動を変えようとしがちです。
しかし、子どもが大きくなるとなかなか言うことを聞かなくなってきます。

 高校生の順子ちゃん(仮名)の家庭は一人っ子であるということもあって、遅く帰って来ると両親は心配でたまりません。
門限を少しでも過ぎると両親で怒ってしまいます。そのたびにお互いイヤな思いをします。
ある日順子ちゃん(仮名)が
「我が家の両親は厳しくて怒ってばかり、早く高校を卒業して家を出たい。」
と友人に話しているのが聞こえてきました。
『私はそんなにうるさい親なのだろうか。確かに早く帰って来いとは言うけれど、
わたしにとってはかけがいのない子どもで可愛くてしょうがないのに。
どうしてわたしの気持ちが伝わらないのだろう。』
そんな思いで順子ちゃん(仮名)のお父さんお母さんは、親業の勉強を始めました。
「わたしメッセージ」で順子ちゃん(仮名)に伝えるようになって少し経つた頃、
順子ちゃん(仮名)が友人からの誘いを
「私は一人っ子だから両親はわたしが遅くなると心配でしょうがないみたいで、あまり心配させたくないからダメなの」
と誘いをことわっているのを聞き、気持ちをわかってもらったと嬉しかったそうです。
今までも同じ気持ちでいたのに、言い方一つでこんなにも違うのかとびっくりした、と話してくれました。

 私たち親は、子どもが可愛いから毎日一生懸命子育てをしています。
何か子どもに問題が起こると、こんなに一生懸命関わったのにどうしてわかってもらえないのかと思うこともあると思います。
でもそれは決して間違っていたわけではなく
同じ一生懸命でも親の気持ちが伝わらなかっただけだったのです。
「わたしメッセージ」で親がイヤだと思っていることを伝え、
子どもが困って悩んでいることを聞く(白いボールは白いまま返す)ことは、
人間関係を水平な形でお互いを大切にして関わり合っていることになります。
それによりいい関係が生まれてきます。
あなたも大切、わたしも大切である人間関係は、お互いの人格を大切にすることです。
あなたと私の間に水平に架け橋のかかっている状態であれば、
架け橋をつかい躾をしたり、
自分の価値観を伝えることは出来るのではないでしょうか。
2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]

§11 魔法使いがやってきた  わたしメッセージ

子どもの行動を変えさせようと思うとき、親は子どもの自尊心を傷つけるような言葉を使いがちです。
それは無意識にこのようなメッセージをつたえてしまいます。
  ~あなたのやっていることはよくない。あなたの○○はだめだ。~
これは、『あなたメッセージ』と言われる言い方です。
 しかし、そんな言葉では子どもは行動を変えることはないでしょう。
『わたしメッセー」ジとは、
  ①子どもの行動を非難がましくなく、
  ②子どもの行動によって親の受ける影響を具体的に、
  ③子どもの行動によって受ける影響を正直に、
この三点を満たしている言い方です。
指示命令とは違って子どもが行動を変えやすくなります。
焦点を親の気持ちに合わせる言い方です。
 3歳の子どもに
「①おもちゃがいっぱい、ここにあると(子どもの行動)
②ママは掃除機がかけられなくて(親の影響)
③本当に困っちゃう。(親の気持ち)」
と言ったら
「ママ掃除機かけたかったの。わからなかった。」
と急いで片付けたそうです。
親業を学ぶ前、
『(あなた)早く片付けなさい。』
と言って子どもの行動を変えさせようとしている間は、
『だって』『でも』『まだ遊ぶの』と反発したり、
無理矢理片付けさせようとすると泣いて困っていたという話を
受講生さんから聞いていました。
このときこう話してくれた受講生さんはまるで、自分が魔法使いになったような感じだったそうです。

 わたしメッセージは、
私が今どうして相手の行動をイヤなのかを、
わたしという主語で非難がましくなく、
事実を伝えていくものですから、
親と子どもの関係を損なうことなく、
相手が行動を変えようという気持ちになりやすくします。
また、親の言葉を子どもが考えて行動を変えるわけですから、
子どもの思考力を育てる結果にもなります。


 先日、離婚した人達が話しをすることで前を見ていけるような自助グループで、
わたしメッセージで話すようにアドバイスしているという事例を知りました。
「私はどう して元夫 (妻)に対していつまでもこんなに強い怒りを感じ続けているのだろうか。」
「私はこんな時に元夫(妻)への強い怒りを感じる。」
このようなわたしメッセージで話すそうです。
わたしメッセージは問題であると思われるエピソードを語り手の感情に焦点づけることによって、
何が問題なのかを明らかにしていくのに役立つそうです。
ところが、あなたメッセージの形で、エピソードを語っていくと、
例えば
「あなたは私を愛していると言っておきながら、外では実は遊んでいた。」
「あなたは私たちに節約を強いておきながら、自分は外で無駄遣いをして楽しんでいた。」
などという語り口になり、相手に対する非難攻撃に焦点づけることになるのだそうです。
自分の気持ちを整理するのにも役にたつのが、わたしメッセージです。

2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]

§10 あなたの小言は効き目がない

毎日の生活の中で、子どもの行動がどうも心配だと思うことはたくさんあると思います。
例えば「親の言うことを聞かない。」 「遊んでばかりいる。」 「挨拶が出来ない。」 「ゲームばかりしている。」等、
数え上げればきりがないですね。
 その都度親は、『どうしてわかってもらえないの!』と、「早く!」 「ダメ!」 「いけません!」この言葉を言ってしまいます。
親の気持ちをわかってもらいたい一心です。
一度録音して聞いてみると、言うことを聞きたくなくなってしまう子どもの気持ちが、理解できるかも知れません。
 親業では、親が子どもの行動で困っているとき、
子どもが親の気持ちを理解し行動を変えることが出来るような言葉かけを、
「わたしメッセージ」として学びます。
「あなたメッセージ」が相手の言動を言うのに対して、
「わたしメッセージ」は私がどう考える、という言い方で親の気持ちを子どもに伝えようとするものです。
子どもの自尊心を傷つけず、
親子の関係も損なわず、
子どもが心を動かしやすい、
そして行動を自ら変えやすいものです。

 くどくどと子どもにいうことは決して効果的ではありません。
ある中学校の意識調査で、
親に暴力をふるいたいくらいイヤだったことはなにかという質問に対して
「くどくどと何回も同じことを言われたとき。」
という結果が出ています。
多くの親は子どもを導こうという気持ちで、必要なことは 「言って聞かせること」が大事であると思っています。
しかし、何度も同じことを繰り返すことは効果があるとは言えません。
「何度同じことを言えばいいの」
「どうして親の言うことがわからないの」
と声を張り上げ、怒鳴っても子どもには 「馬の耳に念仏」状態。
耳を貸さない子どもに親の言ったことは伝わらず、逆に親がイライラしてストレスがたまってしまいます。
 親が力めば力むほど、親子の関係は損なわれていきます。
一般的に指示・命令・押しつけの多い家庭は、自分で考える力、 表現力の乏しい子どもに育つと言われます。



2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]