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§6 親と子の接し方 悩んでいる子どもに

子ども達の自殺の低年齢化や、いじめの問題等を、目にし、耳にすることが多くなっています。
 何か子どもが絡む事件が起こると有識者といわれる方が
『こういう子どもはサインを出していたはずだ、周りの人がサインに気づき子どもの話を聞いていれば良かった。』
という意味を発信します。
けれども、サインを見つける術を、
また、子どもの話を聞く方法を、
私たちは知っているのでしょうか?
話を聞く方法を学んだのでしょうか? 
確かに、このような問題を起こす前に
子どもからのサインがたくさん出されていると思います
。ただ、親や周りにいる大人達は、子どものサインをキャッチするアンテナを錆び付かせて、
察知することが出来ない状態になっているのではないでしょうか。

 皆さんは、言葉を話せない赤ちゃんが泣いていたら、どう接しますか?
どうして泣いているのか考え、声をかけながら接するのではないでしょうか?
「おなかすいたの?」
「眠いの?」
「抱っこしてほしいのかな?」
などと言いながら、赤ちゃんに触れるのではないでしょうか。
そのときは、赤ちゃんのサインをキャッチするアンテナを張って高くしているのです。
けれども、子どもが言葉を話すようになると、アンテナを張ってなくとも子どもが話してくれるはずだという思いがでて、
アンテナを下げ錆びつかせてしまっているのではないかと思うのです。

 親は子どもが悩みを持っているとき、
子どものためを思って、
子どもと共にその悩みを考え、
親がよいと思う解決策を
子どもに示してしまうことがあります。
それは、子どもの判断力を無くさせてしまうこともあるのです。

 子どもが悩みを抱えた時、次のような言い方で接することはありませんか。
親業では次の型を“おきまりの12型”といって、なるべく避けるようにすすめています。

① 命令 子どもに何かするように、 しないように命令する
② 脅迫 そんなことをしたらこんな大変な(イヤな・恐い等)ことが起こるという
③ 説教 何をすべきか、すべきじゃないかを言う
④ 提案 どうしたら悩みを解決できるか助言する
⑤ 講義 理詰めで迫る
⑥ 同意 肯定的な評価をしたり、賛成する
⑦ 非難 子どもに対して否定的な評価をする
⑧ 辱める 馬鹿にする
⑨ 解釈 子どもの動機は何かを親が解釈したり、 原因を分析したりする
⑩ 同情 子どもの気持ちを良くしようと、今の気持ちからぬけださせようとする
⑪ 尋問 原因、動機、理由を見つけようとする
⑫ ごまかす 悩みから子どもをそらそうとする

 ほとんどの親 (大人)の反応が、 この12の型のどれかに入ると言われています。
9割を超える大人がこのような言い方をしているそうです。
 子どもが困っているとき、悩んでいるときに、このような言い方をすると、子どもの自立をはばんでしまう場合があります。
親が考えた行動をするよう押しつけているからです。

2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]

§5 子どもの悩みに親が出来ること

 小学3年生の男の子のいる受講生さんから
「子どもの悩んでいることに耳を傾けることは、甘やかしではないだろうか。
親は毅然とした態度で子どもに立ち向かった方がいいのではないか。」
と疑問を投げかけられたことがあります。
 例えば子どもが転んで泣いているとき、『ガマンしろ!!』と言えば、我慢出来る子どもになれるのではないかと言うのです。
転んで『痛い』と言っている子どもに『ガマンしろ。』と言えば、子どもは泣くのをやめるのではないかと言うのです。
でも考えてみて下さい。
子どもが我慢したのは親に言われたからです。
その場は我慢しているかのように見えますが、実は痛みをもっと感じているかも知れません。
親が『我慢しろ』と言うことで我慢強い子どもになれるのでしょうか。

 私たちも同じです。
頭痛がしているとき、家人から『それくらい我慢しろ』と言われたら、
頭が痛いと言っているのにどうしてわかってくれないの、と不満を感じませんか?
そのとき、
『頭が痛いのね』
と気持ちを分かってもらえたら、痛みが和らいだと感じることはないですか?
そして理解してくれた人に対しては、好感を持ちますね。

子どもが悩んでいるときに、親が出来るのはどんなことでしょう。
「そのくらい大丈夫。」
「我慢しなさい。」
「皆苦しみながら成長しているのよ。」
「そんなこと悩んでないで早く宿題やりなさい。」
果たしてこういう言葉が適しているのか、考えてみる必要があるのではないでしょうか。

 ある受講生さんが
「会社での悩みを聞いてもらうのに、一番いいのは幼稚園の息子なんです。
妻に話すといつも同じようなことで悩んでいるのね!もう聞き飽きた。と言われてしまいます。
息子に話すと『パパは大変なんだね、とってもイヤでしょう』
と、とても気持ちを分かってくれるのです。」 と話してくれました。

 大人も子どもも気持ちをわかってもらうことが一番こころが安らぐのです。

 親業では、相手から白いボールが来たら、白いボールで返しましょうというやり方を身につけます。



2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]

§4 親業の3本柱

親業の講座は、まず子どもが悩んでいることに耳を傾けることから学びます(聞くこと)。
そして親が困ったことがあった時には、きちんと子どもが理解できるように伝える方法を学びます(話すこと)。
二人以上いれば考え方の違いから欲求が対立する場合が出てきますが、
それをお互いが納得いくよう解決策を考えていくことを学びます(対立を解くこと)。
聞くこと・話すこと・対立を解くことを親業の3本柱といいます。

 この3本柱を職場に置き換えるとこうなります。

○部下がストレスを抱えているようだ、部下の心に寄り添って聞いてみよう。

○指示が独りよがりにならないように、理解しやすいように話そう。

○職場で問題が起きたら、上司の押しつけや部下の反抗ではなく、お互いが納得して解決しよう。


 この3本柱を学校に置き換えるとこうなります。

○生徒がストレスを抱えているようだ、生徒の心に寄り添って聞いてみよう。

○授業中のイヤなことを、生徒が理解しやすいように話そう。

○生徒間や保護者との間で問題が起きたら、教師あるいは保護者の押しつけでなく、お互いが納得して解決しよう。




このことを、理論と体験学習で身につけることができます。



2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]

§3 親業独自の捉え方

親業講座の第1回目で、受講生さんが戸惑うのは、「事実」をとらえてください、という言葉です。

事実はどちらでしょうか。
①子どもがランドセルを置きっぱなしにして遊びにいく
②子どもがランドセルを置いて遊びにいく

どう違うのでしょうか?
①は、この子はいつも置きっぱなしにする子ども・だらしないこどもなんだ
 という受講生の価値判断が入っています

②は、子どもがランドセルを置いて外に出かけた、という事実のみを捉えています。

 親業では、②のような一瞬の事実がどんな感情をおこしたか、に焦点を当てていくことを学びます。これが意外に難しいのです。
今までの生活の中で、
この子どもはおっちょこちょいなんだ、
あるいは職場の○○さんは私に意地悪なんだ、
などと思っていませんか?
そう思ったのは、何故ですか?いつからですか?
以前に何らかの事実があって、そのときそう思ったのではないでしょうか。
それを、相手は~~なんだと決めつけ、色眼鏡で見ているのではないですか?

試しに①の子どもさんに言ってみましょう。
「あんたは、毎日ランドセルを置きっぱなしにして遊びに行って!せめてランドセルくらい机に置いてから行きなさい!」
「毎日じゃないよ、昨日は雨降ったから外に行かなかったよ。」
そう言われれば、こちらはぐうの音も出ません。

②の場合はどうでしょう。
「あんたがランドセルを置いて外に出かけたから、お母さんランドセルにつまずいて転んでしまった。」
「・・・・・」
事実だけを口にしたところ、次の日からランドセルは机に置かれたそうです。


今聞いた言葉・今目の前で起こった行動を、自分がどう感じたかを考えることから
コミュニケーション(親業)は始まるのです。

2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]

§2 子どもに耳を傾けて

児童遊戯施設でこんな様子を見かけました。
 4歳くらいの子どもさんとそのお母さんだと思います。
お母さんは壁に備えつけられたのベンチに座ってスマホを操作しています。
そこに子どもさんが「ママ、ママ一緒に来て。」 と話しかけます。
お母さんからの反応はありません。
返事がないので、ベンチから離れては、
「ボールプールに行ってくるね」
「ドンされたよ」
ちょっと離れた遊具の陰から
「ママ、こっち見て。」
こんなことを言いながら、ベンチのお母さんのところと遊具をいったりきたりしていました。
そうこうしているうちに転んでしまいました。泣き出したのです。
お母さんはすかさず言いました。
「だから言ったでしょ、いい子にしなさいって。」
「うるさい!泣き止みなさい!」
ますますお母さんの声は大きくなり、子どもさんの泣き声も大きくなります。
周りから注目され、お母さんが気まずくなったのか、子どもさんをつれてその場を立ち去りました。

 この子どもさんは何を学んだでしょう。
転んで痛かったこと悲しかったことを泣いて訴えても、大好きなお母さんから分かってもらえなかったのです。

 子どもが小さい時は、親に認めてもらいたい一心で話しかけてきます。
でも、このお母さんのように、子どもの気持ちを理解しようとせずに接していると子どもが大きくなると、
『うちの子何も話してくれなくて』
という状態になるのではないでしょうか。
 中学2年生の子どものいる受講生さんは
「ここ数カ月、子どもと会話らしい会話をしたことがないなぁ。」
と言っています。
学校・部活・塾と本当に忙しい毎日を送っている子ども達の、気持ちを吐き出すところは、あるのでしょうか。
胸の中につらい気持ちがある(ストレスを抱えている)と集中力はなくなり、心身共に健康な生活を送ることは出来なくなります。
家に帰れば、ほっとする、お互いに心が通じ合えるような会話が出来る、そんな家庭であってほしいなと、思います。
「私の家庭では、よく子ども達と会話をしています。」
と言う方の様子を聞いてみると、会話というより一方的に親が口を開いていると感じる場合があります。

 口は一つ、耳は二つです。
子どもと接する場合には、口を開くことより、聞くことを倍にするように心がけてちょうど親と子のバランスがよいように感じます。


2019.03.17:おやコミ研究所:[親業会員情報]