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時々刻々…市議選告示「地蔵さん詣で」(3日目)

  • 時々刻々…市議選告示「地蔵さん詣で」(3日目)

 

 「願以此功徳/普及於一切/我等與衆生/皆共成仏道」―。苔むし、風化しつつある石仏を手でなぞりながら書き写していくと、こんな漢字が連なった。「願わくはこの功徳をもって、あまねく一切に及ぼし、我らと衆生(しゅじょう)と、みな共に仏道をなさんことを」…。こんな意味だということが分かった、告示日初日にこの「桜の地蔵さん」に触れて以来、その詳しい由来が気になって仕方がなかった。忙しい遊説の合間を縫って、図書館に通い、歴史の狭間に埋もれた悲劇を知った。以来、遊説に出発する前の合掌が習いとなった。

 

 先人の研究資料などから、この地蔵尊が建っている旧奥州街道筋(現桜町4丁目)の近くには藩政時代、重罪人を処刑する「向小路殺生場」があったという。さらに、農民一揆の首謀者などもここで処刑されたという記録も残っていた。こうした過去の記憶を鎮魂し、慰霊するために今からちょうど100年前、花巻城の御家人(同心会)らが中心になって建立されたことを知った。宮沢賢治がこのすぐ近くに農民らの啓蒙を目的にした「羅須地人協会」を設立したのが、像の建立4年後の同じ日だったことについては、市議選告示「第1声」で触れた。

 

 仏教徒でもあった賢治が『農民芸術概論綱要』の中で、人類の幸せと世界平和を訴えたのは実はこの地蔵尊の存在を知ったからではなかったのか。「過去を帯びない現在や未来はない。世代を継ぎ続けることこそが歴史ではないのか」…急に胸が熱くなった。そして、今回の市議選が持つ意味の重要性にはたと、気づかされた。

 

 

 

 

(写真は地蔵尊に手を合わせ、遊説の決意を話す私=7月19日午前8時すぎ、花巻市桜町4丁目で)

 

 

 

《追記ー1》~82歳、がんばれ…仏国土からのメッセージ

 

 平和を願う「仏国土」(平泉)に住む知り合いの女性から、「82歳、がんばれ」と以下のような激励のメッセージが届いた。「いよいよ市議選の闘いが始まりましたね。平泉の空の下で健闘を祈っています。必ずや当選を!上田市政を代えるため、花巻の人々のためにがんばってください」

 

 

《追記ー2》~基地のない島を願う沖縄の地からも

 

 沖縄行のたびに運転手兼ガイド役を務めてくれる友人からも。「掲示板の『一番』は僥倖(ぎょうこう)の知らせ。まるで、劇画を見るようなこの選挙戦の模様をネットを通じて、全国発信します。祈当選」

 

 

時々刻々…市議選告示「ポスタ-狂騒曲」(2日目)

  • 時々刻々…市議選告示「ポスタ-狂騒曲」(2日目)

 

 「誠心誠意 全力!」、「世代交代」、「また生まれ変わっても花巻がいい」、「誰もが安心してくらせる花巻に」、「情熱と行動力」、「31歳、チャレンジ!花巻の未来のために」、「市民と市政のかけ橋になる」―。豪華絢爛&百花繚乱の趣きのあるポスタ-を見ながら、頭がクラクラしてきた。31人の市議選候補者はみんな笑顔で輝かしい未来を語っている。このスロ-ガンがそのまま実行に移されるのなら、「イ-ハト-ブはなまき」の建国は請け合いである。その一方で、こんな数字もある。「奥州市議会第3位、北上市議会17位…花巻市議会第523位」(早稲田大学の議会改革度ランキング)

 

 有権者の皆さん、市内436か所に設置されたポスタ-掲示場をとくとご覧いただきたい。バラ色に彩られた“公約”の真意をくれぐれも見誤らないように…。二元代表制の一方を担う市議会議員を選ぶ選挙は24日に迫っている。

 

 

 

 

(写真は華々しいスローガンが並ぶ候補者のポスタ-=花巻市内で)

時々刻々…市議選告示「第1声」(初日)

  • 時々刻々…市議選告示「第1声」(初日)

 

 花巻市議会選挙が17日告示され、24日の投票日に向けた7日間の戦いの火ぶたが切って落とされた。ポスタ-掲示の一番くじを引き当てた私はいわゆる選挙の七つ道具を抱えて選車に乗り込み、同日午前10時すぎ、自宅近くの「雨ニモマケズ」賢治詩碑を背に第1声のマイクを握った。以下に絶叫調「第1声」(要旨=さわり)を掲載する。

 

 

 安部元総理に対する白昼テロ、長期化するウクライナ戦争、そして拡大の一途をたどるコロナ禍…。岩手県は4日前、ついに過去最多の新規感染数を記録しました。なにか終末感さえ漂う時代に足を踏み入れたような不気味な予感さえしています。さて、私の背後には郷土の詩人、宮沢賢治が逆境に置かれた人たちに“寄り添う”ことの大切さを訴えた「雨ニモマケズ」詩碑が建っています。そして、この場所は賢治が世界全体の幸せと平和へのメッセ-ジを発した「羅須地人協会」があったその場所であります。

 

 このすぐ近くの道端に「桜の地蔵」さんが建っています。「処刑」という不慮の死を遂げた百姓一揆の首謀者を追悼する地蔵尊で、ちょうど100年前の昨日(1922年陰暦7月16日)に建てられました。賢治が「羅須地人協会」を設立したのはそれから4年後の同じ日です。私はこの日付の符合に賢治の確固たる意志が込められているような気がします。

 

 地球規模の危機にさらされているいまこの時、私はこの場所でマイクを握ることの不思議なめぐり合わせに胸が熱くなります。賢治はここ岩手・花巻の地をエスペラント語で「イ-ハト-ブ」と名づけました。「ドリ-ムランド」(夢の国)を意味する“理想郷”のことです。数々のメッセ-ジが賢治精神の“原点”ともいえるここ桜町の地から発せられてきたのです。

 

 私はこの賢治精神の奥深さを最近見た映画で実感させられました。「75歳以上の高齢者に死を選ぶ権利を認め支援する制度、通称プラン75が今日の国会で可決されました。深刻さを増す高齢化問題への抜本的な対策を、政府に求める国民の声が高まっていました」―。カンヌ国際映画祭で新人監督賞の特別表彰を受けた『PLAN75』(早川千絵監督)はこんな淡々としたラジオニュ-スで始まります。私は画面に吸い寄せられながら、背筋がゾッとしました。“姥捨て伝説”を題材にしたあの名画『楢山節考』(今村昌平監督、深沢七郎原作)の現代版ではないかという思いにさせられたからです。

 

 少子高齢化に向かういま、将来を約束するのは「世代交代」しかないというスロ-ガンがまことしやかに一人歩きしています。今年1月の市長選で3選を果たした現職も公約の真っ先に「子どもの達の未来/はなまきを創る」―を掲げています。また、今回の市議選でもその必要性を声高に叫ぶ新人候補も見受けられます。その正当性を否定する気持ちは毛頭ありませんが、これを論じる場合は同時に「PLAN75」の現実にも目を向ける想像力が必要です。「若さ」と「老い」とは実はコインの裏表なのです。「若気の至り」と「年寄りの冷や水」とのコラボレ-ション…「世代ミックス」こそが社会を健全に機能させるための“車の両輪”だと私は思います。そして、このことの大切さを指摘していたのもまた、賢治だったことを改めて思い知らされました。

 

 止まることのないコロナ禍の中で一番、苦境に立たされているのはお年寄りたちです。私は自らに対し「叛逆老人は死なず」というスロ-ガンを課しました。こんな時代閉塞の時代、白旗をあげてオメオメと退場してたまるかという思いです。当年取って82歳の“老残”の身ですが、お化けではありません。ご覧の通り、二本の足でちゃんと立っています。私はお年寄りたちの代表選手として、その悲痛な訴えをリユックサクに一杯詰め込んで、議員をめざしたいと決意を新たにしています。

 

 ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

 

 

 

(写真は賢治碑の近くで第1声を上げる私とスタッフたち(7月17日午前、花巻市桜町4丁目で)

 

 

 

 

 

動乱の時代へ…白昼テロの衝撃!?

  • 動乱の時代へ…白昼テロの衝撃!?

 

 そのショッキングなニュ-スが飛び込んできたのは、今月24日の市議選に向けた、この日3回目の“辻立ち”(街頭での訴え)を終えた直後だった。この日も猛暑か続く8日、私は「『イ-ハト-ブ』の実現を目指す花巻有志の会」の設立代表人として、「いまこそ、郷土の詩人(宮沢)賢治のメッセ-ジを全世界に向けて発信する時ではないか」と汗だくになって絶叫していた。

 

 「安倍(晋三)元首相 銃撃される/心肺停止か 奈良で演説中/41歳男、殺人未遂容疑で逮捕」―。市中心部の住宅地での“辻立ち”を準備していた正午すぎ、手元のスマホがこの緊急ニュ-スを伝えた。一瞬、頭が真っ白になり、事態の重さに打ちのめされた。「たったいま、白昼テロという恐ろしいニュ-スに接しました」―マイクを握った私はまるで憑(つ)かれたように雄叫びを挙げていた。「賢治は『農民芸術概論綱要』の中で世界全体の平和を、そして詩『雨ニモマケズ』の中で弱者に寄り添うことの大切さを訴えました。まさに今回の事件はそのメッセ-ジの緊急性を示していると思います」…

 

 午後5時46分―。かたわらのテレビの速報が安倍元首相の死亡を伝えた。67歳の若さだった。脈絡のない混乱が頭を駆けめぐった。7波の襲来が確実なコロナ禍、戦火が拡大するウクライナ戦争、そして今回の凶行。世紀末、動乱…不吉な言葉がグルグルと去来した。今年の冬から始まった“選挙”の季節の移ろいを私は反芻(はんすう)していた。

 

 「有志の会」は今年1月の市長選の際、敗北した小原雅道・前花巻市議会議長を支援するための“勝手連”組織として、市議や震災被災者ら有志で結成された。会のスロ-ガン「銀河の郷、輝く未来へ」―を私はずっと、大事にしてきた。8回目のこの日最後の“辻立ち”を私はこう締めくくった。

 

 「さらば、おまかせ民主主義」、「叛逆老人は死なず」―。私は市議選に向けた決意の気持ちをこの二つに込めてきた。「この日のテロの報に接し、このスロ-ガンに込めた気持ちがますます、強くなってきました。他人まかせの政治や行政がどんな結果になるのか、そのことを思い知らされたように思います。だから、私はまだ死ぬわけにはいかないのです。隠居なんてしている暇はないんです」―。国の命運を決める参院選は2日後の10日、その1週間後には市議選の告示(24日投開票)が迫っている。

 

 

 

(写真は安倍元首相の凶行を伝える地元紙の号外とハンドマイクやノボリ、スポ-ツ飲料などの“辻立ち”必携の数々)

 

 

ホタルが乱舞するイ-ハト-ブの実現へ

  • ホタルが乱舞するイ-ハト-ブの実現へ

 

 「去年は12匹いたのに、今年はたったの2匹…」―。日出忠英さん(81)はこう言って、がっくり肩を落とした。日出さんは東日本大震災で故郷の宮城県気仙沼市を追われ、当市花巻に居を移した。移住後に妻を亡くし、いまは市中心部に建つ災害公営住宅に1人で暮らしている。私はホタルの発見者が日出さんだということよりも発見者の日出さんがあの震災の被災者であるということに胸を突かれた。

 

 「第2のふるさと」になるべく早く溶けこもうと、日出さんは健康管理を兼ねて近隣の散策を日課にしてきた。近くに大堰川という小川が流れている。造園家でもあるその目はつい、居住空間と自然環境とのバランスに向けられてしまう。ちょうど、猛暑に襲われた去年の今ごろ、川岸の水草の中で明滅を繰り返すホタルを見つけた。1匹、2匹、3匹…。数えると全部で12匹。「こんなまちなかに…」―。高鳴る胸を押さえながら、日出さんはこの大発見の一報を私に伝えてくれた。「元々の地元住民ではなく、新しいふるさとの宝物を見つけてくれたのが被災者の目だった」―このことに私の胸は逆に高鳴った。

 

 「それがねえ、今年はたったの2匹。周囲に街路灯が増えたせいかもしれません。ホタルは外部の光に敏感だから…」―。日出さんから落胆の連絡があった先月末、私はたまたま分子生物学者、福岡伸一さんの文章になる『月刊 たくさんのふしぎ―ホタルの光をつなぐもの』(絵・五十嵐大介、福音館書店)を手にしていた。末尾にこんな言葉が置かれていた。

 

 「私たち人類が地球に生まれたのは、ほんの20万年前。ホタルが生まれたのはなんと1億年前。途方もない時間をこえて、ホタルは命をつないできている。ホタルの光は、生きものがつながりあっている美しい証(あかし)のようなものだね。これまでもつながってきたし、これからもつながっていく。光の明滅は、一度も途切れたことがない。そして、わたしたちの命もその環(わ)の中のひとつだよ」―。私は日出さんと福岡さんから大きな勇気をもらったような気がした。

 

 「賢治の理想郷『イ-ハト-ブはなまき』」の再生はホタルが乱舞するまちづくりから」―。私は近づく市議選の辻立ち(街頭での訴え)のたびに、このスロ-ガンを絶叫している。そういえば、福岡さんは賢治の代表作『春と修羅』を引き合いに出して、こう書いている。「『春と修羅』には、コロナ禍におかれた私たちが文明社会の中の人間というものを捉えなおす上で非常に重要な言葉が書かれている。まず、冒頭で『わたくし』は『現象』だと言っている。これは『わたくし』という生命体が物質や物体ではなく『現象』である、それはつまり自然のものであるということ。ギリシャ語の『ピュシス』は『自然』を表す言葉で、賢治のこの言葉は本来、生命体はピュシスとしてあるのだということを語りかけているように思う」(『ポストコロナの生命哲学』)

 

 1億年も前から、そしてこれから先も永遠に光の明滅を繰り返すホタルの存在こそが「イ-ハト-ブはなまき」のシンボルにふさわしくはないか。まちのど真ん中で乱舞するホタルたち…賢治が「イ-ハト-ブ」と名付けた「ドリ-ムランド」(夢の国)の実現を目指して…

 

 

 

 

 

(写真はホタルの乱舞をイメ-ジする絵本のひとこま=『たくさんのふしぎ―ホタルの光をつなぐもの』から)