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灯台下暗し(その5)…今度はアンケ-ト“捏造”疑惑!!??

  • 灯台下暗し(その5)…今度はアンケ-ト“捏造”疑惑!!??

 

 「これって、ある種の数字の捏造(ねつぞう)ではないのか」―。花巻市のHP上に掲載されたあるグラフを眺めながら、ふと不安がよぎった。「JR花巻駅橋上化・東西自由通路整備概要案について、高校生と意見交換を行いました」(11月21日付更新)と題する記事によると、JR花巻駅の利用について「よく使う」(52・7%)と「たまに使う」(29・7%)を合わせた計82・4%のうち、事業実施に賛成した割合は78・4%にのぼったという内容だった。統計学上の原則である「有意差」を無視した“数字の詐術”が透けて見えたからである。この日(24日)開かれた記者会見で、市側は「整備に好意的な意見が多数」と述べたが、そのからくりは?

 

 上記の意見交換会に参加したのは市内の4校の75人(うちアンケ-トへの回答者は74人)。統計学で定められたサンプル算出法によると、たとえば2000人に対してアンケ-ト調査を実施する場合、必要最低限で323人が対象とされなければならない。ところが、今回の対象者はそのわずか4分の1にすぎない。ちなみに、4校の在籍者数(定員と実数)は現在時点で2525人にのぼる。さらに、この種のアンケ-トのエビデンス(証拠)を担保する際に最も重要な原則が「無作為抽出」にもかかわらず、その選抜が学校側に丸投げされている点も見逃せない。

 

 たとえば、こんな具合である。「就職が決まった3年生」(花北青雲、参加者57人)、「生徒会役員」(花巻南、同11人)、「探究活動に興味のある者」(花巻北、同5人)、「生徒会役員」(花巻東、同2人)。一方、花巻農高(定員360人)が対象外になっているほか、JR花巻駅を利用して市外の高校へ通学している高校生も当初から除外されている。この点について、担当の建設部都市機能整備室はこう強弁する。「花農とは日程調整がつかなかった。統計上の数字を示したのではなく、集まった意見を公表しただけだ」―。橋上化推進を求める例の“やらせ要請”の悪夢を思い出した。「これは高校生の政治利用ではないのか」…と

 

 駅西口に所狭しと並ぶ駐輪場に足を運んでみた。黒北、黒工、北上翔南、盛岡南、盛岡商、不来方、紫波総合…。区分けされた自転車置き場には地元の高校生だけではなく、JR花巻駅経由で市外の高校へ通う生徒たちの自転車もずらりと並んでいた。一方で、駅を利用しないで自転車や徒歩で直接、通学する多くの生徒たちは最初から対象から排除。結果的に駅利用者に特化した形の今回のアンケ-ト調査に一体、何ほどの意味があるのか。考えて見れば、高校生に限らず、駅利用者が駅の利便性向上を望むのは当たり前ではないか。問題なのは対象者を一部に特化したこうした手法―つまり、世論誘導を企てる上田流「手法」が高校生の周辺にまで及びつつあるということである。

 

 「未来を担う若者世代がそう(橋上化)望むなら、それをかなえてやるのが親の世代の役割ではないのか」―。親しい友人はそうつぶやいた。「橋上化」賛美に彩られた高校生たちの意見表明は100人近くにのぼる。それをツラツラ読みながら、「これは罪深いな」と心底、思った。新花巻図書館と橋上化との”密約”疑惑(ワンセット論)に続く黒い霧である。

 

 

 

 

(写真はずらりと並んだ高校生の自転車群=JR花巻駅の西口広場で)

 

 

 

《追記》~記者会見の資料は下記のアドレスへ

 

 定例記者会見用資料 JR花巻駅橋上化・東西自由通路整備事業に係る今後の取り組みについて (PDF 423.8KB)新しいウィンドウで開きます

 

 

 

 

灯台下暗し(その4)…「新図書館はここっきゃない」!!??…

  • 灯台下暗し(その4)…「新図書館はここっきゃない」!!??…

 

 JR花巻駅前か旧花巻病院跡地か―。新花巻図書館の立地場所をめぐる市側の態度表明に注目が集まる中、私は後者への立地を望む立場から、その理由を記した一文を岩手日報の「日報論壇」へ投稿した。掲載はまだ先になりそうだが、記者会見(24日)や花巻市立図書館協議会(25日)などこの問題を避けては通ることができない重要会議が迫っており、前倒しして当ブログに掲載することにした。また、同趣旨の寄稿文が同じ「日報論壇」に載っているので、参考までにコメント欄に添付する。

 

 

 目の前にこつ然と現れた広大な“空間”に身を置きながら、「図書館の立地はここしかないな」と直感した。花巻市は10月11日から27日まで市内17か所で新図書館の建設場所をめぐって、意見集約のための市民説明会を開催した。その第1候補に挙げられているのがJR花巻駅前のスポ-ツ店用地で、当局側はその取得に前向きな姿勢を見せている。

 

 こんな折しもかつて、花巻城跡に隣接した旧総合花巻病院の移転・新築に伴って、24棟を数えた病棟が解体された結果、私たちは約100年ぶりに由緒ある遺跡など城跡のおもかげに接するという幸運に恵まれた。晴れた日には高台の城跡から霊峰・早池峰など北上山地の雄大な姿を望むができる。当該地は郷土の詩人で童話作家、宮沢賢治の作品にも数多く登場し、たとえば『四又(よまた)の百合』に出てくる“ハ-ムキャの城”とはすぐに、花巻城跡と察しがつく。

 

 さらに、賢治が学んだ現花巻小学校と自らが教壇に立ち、“桑っこ大学”とも呼ばれた旧稗貫農学校に挟まれたロケ-ションはまさに「文教地区」にふさわしい立地条件と言える。現在「まなび学園」(生涯学習都市会館)として、市民に学びの場を提供している場所もこの地に隣接し、かつては賢治の妹トシが学んだ花巻高等女学校(県立花巻南高校の前身)の建物だった。これもまた、歴史の奇縁かもしれない。

 

 実は「図書館法」(昭和25年4月)の生みの親が当地ゆかりの「山室民子」だということは地元でも余り、知られていない。慈善団体「救世軍」の創設者・山室軍平の妻で、花巻の素封家に生まれた旧姓・佐藤機恵子が民子の母である。民子は図書館法を起案するに当たって、生涯教育の大切さを訴えた。

 

 1世紀という時空間をへて、今よみがえった「百年の記憶」と未来を見すえた「百年の計」と―。解体工事で全貌を現した「濁り堀」について、専門家グル-プは「一級品の貴重な遺構。現状保存が望ましい」と答申した。将来は原形を維持したまま、“歴史公園”として利活用できるのではないか。夢は広がるばかりである。いまこそ、山室民子の“遺訓”を生かすべき時ではないかと思う。花巻小学校とシニアが集う「まなび学園」の間にポッカリと浮かんだ空間。まさに、天啓(てんけい)とでも呼びたくなる、“生涯学習”の場にふさわしい環境ではないか。「天啓」とは「天(神)の啓示」を意味する言葉である。「魂の癒しの場」―。世界最古の図書館といわれるアレキサンドリア図書館(エジプト)のドアにはこう記されているという。

 

 

 

(写真は花巻城址の古地図。約100年ぶりに姿を現した堀跡(濁り堀)の西側に位置する広大な敷地が病院跡地=インターネット上に公開の写真から)

 

 

 

 

《追記》~なぜ駅前?花巻の新図書館(コメント欄)

 

 11月17日付の岩手日報「日報論壇」に花巻市在住の伊藤昇さん(80)の寄稿文が掲載された。「図書館とはなにか」という洞察に満ちた内容に感動した。合わせて、お読みいただきたい。

 

 

 

 

 

灯台下暗し(その3)…「駅橋上化」という名のミステリ-!!??

  • 灯台下暗し(その3)…「駅橋上化」という名のミステリ-!!??

 

 JR花巻駅の橋上化(東西自由通路)構想が大詰めを迎えている。この案件が急浮上した約1年半前、私はその胡散臭さを当ブログ(2021年6月16日付)で指摘した。事態はその後想定した通りに、いやさらに悪い方向に向かいつつあるように思える。数字の裏付けもないまま、駅地下通路が“痴漢”の温床になっているというまるで子供だましみたいな論法がその正当化に使われたのは今や昔の感。最近では新花巻図書館との「ワンセット」論(いわゆる“密約”疑惑)が市民の一部でも公然とささやかれるようになった。複雑怪奇なこの構想をひも解く一助に当時の記事をそのまま、以下に再掲したい(文中の数字は掲載時)。少々、長文ですが、お付き合いのほどを…

 

 

 「まるで暗号みたいな数字の乱発による“目くらまし”」―。上田東一市長の詐術手法はひと言でいえば、こんなことになろうか。JR花巻駅東西自由通路(駅橋上化)をめぐって、市側から公表された「Q&A」集を読んでいるうちに頭がクラクラしてきた。35項目にわたる問答(全16ペ-ジ)は数字の羅列ばかり。たとえば、ざっと38億円にのぼる巨額な事業費…目を凝らすと、このご仁が繰り出す“金目行政”のからくりが透けて見えてくる。やや長文のきらいはあるが、〝お任せ民主主義“にオサラバするためにも、辛抱してお読みいただきたい。

 

 「財源として国からの補助金約16億円を見込んでいます。また、JR東日本との負担額が定まっていない、現在使用されている跨線橋の撤去費が約4億円あります。これを除いた約18億円が市の負担となります。この市の負担分の約18億円の95%については、合併特例債の活用を予定しておりますが、合併特例債は償還金(返済金)と金利の70%が国から地方交付税として措置されるため、市の負担分の約18億円のうち、国から交付税措置される額をさし引いた約6億円が市の実質負担額と想定しています。これにJR東日本との負担額がまだ定まっていない跨線橋撤去費の市負担分を加えた約6億円+アルファが市の実質負担額となると考えています」―

 

 「そうか。実際には38億円もかかるのに6億円ですむのなら…。それで駅の利便性が高まるなら、安いもんではないか」―。財政にうとい一般市民や市議の一部が陥りやすい“落とし穴”である。考えて見れば、国庫補助や交付税措置などの財源も元をただせば私たち国民が納める税金である。また「債権」(償還金)は借金そのものであり、その返済は後々の世代まで委ねられる。この上田流が“目くらまし”手法と言われるゆえんである。

 

 さらにはこんな記述も。「駅西側は区画整理事業により良好な住宅地として整備されています。ショッピングモ-ルなどの利便施設の整備も進み、独立した生活圏として人口集積が進み、花西地区は人口が増加している地区(他には花南地区)となっています」―。ふと、そうかなぁ。そう言われてみれば…とここにも“落とし穴“が用意されている。で、実態は―

 

 駅橋上化要請の先頭に立ってきた「花西地区まちづくり協議会」は7行政区で構成されている。市の統計資料によれば、平成29年3月から令和2年3月まで4年間の人口は全体で8418人から8538人(伸び率1・4%)とわずか120人増えたにすぎない。逆に若葉町や材木町、石神町、藤沢町の4行政区では人口減に転じている。私自身、高校時代まで旧花巻農業高校に近い「農学校通り」(藤沢町)に住んでいたが、徒歩で駅に向かうのに難儀したものである。ましてや車社会のいま、駅橋上化(東西自由通路)のメリットを享受できるのは徒歩圏内の西大通り地区の住民に限られるのは目に見えている。ある意味、高齢者や障がい者など移動手段が限定される人たちを排除する、一見「公共」を装いつつ、実際はそうではない(健常者優先の)差別的な”公共”事業とさえ言いたくなる。

 

 あまり表には出したくないのかもしれない、もうひとつの重大な数字の隠ぺいがある。「Q&A」集のどこを探しても見当たらないのが肝心のJR花巻駅の乗車人数や東口と西口を結ぶ地下道の通行量である(HP上には地下道の通行量と高校生に特化した利用状況が駅橋上化を正当化するデータとして別途、掲載されている)。JRや市の統計資料によると、花巻駅の1日平均の乗車人数は3269人(令和1年度)で、地下道の平日の通行量は1日平均(出入り)が約1000人と見積もられている。自由通路が完成したからといって、わざわざ遠方から駅を訪れる人はあるまい。したがって、今回の「JR花巻駅東西自由通路(駅橋上化)」によって、直接の恩恵を受ける最高値は(3269人+1000人)=4269人というレベルに設定することができる。

 

 「木を見て、森を見ず」―。細部に気を取られていると、全体を見失うことにハタと心づき、この数字を電卓に入力してみた。総事業38億円÷4269人=約89万円。この算式から浮かび上がってくるのは、受益者一人当たりの事業費がざっと90万円の巨額に上るという事実である。旧花巻市内の遠方や大迫、東和、石鳥谷の旧3町の住民にとっては何ほどのメリットがあろうか。「受益者負担」の公平性を無視した、これまた「エセ公共事業」と言わざるを得ない。さらに、自由通路やエレベ-タなど市所有にかかる工事費が11億円なのに対し、JR所有分は倍以上の24億円。ところが、JR側にとっては補助対象外のこ線橋の撤去費の一部を負担するだけの“ただ乗り”…あっ、思い出した。昔はやった「キセル」(無賃乗車)みたいなあんばいなのである。

 

 「花巻駅東西自由通路整備事業は、駅利用者及び東西居住者の利便性向上を図るとともに、東西の一体的なまちづくりと駅周辺市街地の活性化、賑わいの創出を図ることを目的としています」(令和2年10月31日開催の松園地区住民説明会の資料より)―。活性化や賑わい創出の具体的な青写真を示さないままの「駅橋上化」問題の欺瞞(ぎまん)はるる述べてきたとおりである。それはさておき、新版「おらが駅舎」物語のミステリ-はこれからいよいよ佳境(かきょう)を迎える。以下はブツブツと口をついて出てきた「つぶやき」語録―

 

 

 

●上田市長が得意満面で「住宅付き図書館」の駅前立地という珍妙な構想をぶち上げたのは、令和2年1月29日(私は「1・29」事変と呼ぶことにしている)。これを受けた形で、地域単位や諸団体を対象にした「駅橋上化」問題の説明会が本格的にスタ-ト。6月から12月にかけて計16回の説明会が行われた。ここで留意しなければならないのはこの説明主体が「建設部新図書館周辺整備室」ということ。察しの良い方はとっくにお気づきのことと思う。つまりは、新図書館建設と駅橋上化とはコインの表裏…どちらかが欠けても機能しないということなのである

 

●ところで、事態が思惑通りに進まないのが世の常である。上田市長がおそらく“サプライズ”気分で公にした件(くだん)の構想に市民の大方がそっぽを向いてしまった。「プライド」が背広を着て歩いているような、この種の人物にとっては面目丸つぶれである。追いつめられた末、「住宅付き」の部分は白紙撤回を余儀なくされたが、ここで白旗を上げるようなご仁ではない。それどころか、花巻市議会3月定例会に上程された「駅橋上化関連予算」(2603万円)が賛成多数で否決されたにもかかわらず、今度は米国生活で身に付けたらしい「アストロタ-フィング」(エセ草の根運動=“やらせ要請”)なる手法を駆使し、再度同じ予算案を議会に再上程するという、なんとも騒々しい〝大立ち回り”ぶりである

 

●この案件を審査する6月定例会は本日6月17日に開会した。「議会制民主主義」の真価も問われる、今回の「駅橋上化」戦争に”参戦”するのは4人。21日から3日間の日程で論戦が交わされる。それにしても、上田市長はどうしてこうまで突っ張るのであろうか。おそらく、これまでの度重なる“失政”を知り尽くしているのが、他ならぬご本人だから―というのが私の見立てである。つまりは「恥の上塗(ぬ)りはできない」という干からびた品性のなせるわざ。「五輪中止」を今さら口にはできないという例の類(たぐい)である。

 

●さ~て、お立合い!駅橋上化問題の担当部署はどさくさにまぎれるようにして、4月1日付で「都市機能整備室」(建設部内)に姿を変え、肝心の図書館はと言えば、ちゃっかりと「新花巻図書館計画室」と名義替えをして、生涯学習部内に引っ越ししているではないか。そして、「Q&A」集には苦し紛れにこんな表現が見える。「無理」を押し通し続ければ、いつまでも「道理」が引っ込む―などと思ったら大間違いである。

 

Q「花巻駅東西自由通路(駅橋上化)整備は、新しい図書館を花巻駅東側に整備することを目的として整備するのではありませんか」

 

A「花巻駅を含む地域は花巻地域の中心市街地でありますので、人口が増加傾向にある花西地区の利便性を図る花巻駅東西自由通路(駅橋上化)整備と駅のそばに新図書館を整備することは花巻駅周辺を含む中心市街地の活性化を図る手段となるものと考えております。しかし、新図書館の建設場所については現在、市民の間で駅周辺かまなび学園周辺かで意見が分かれております。仮に新図書館の建設場所がまなび学園周辺になったとしても、花巻駅東西自由通路(駅橋上化)整備は、花巻駅周辺を含む中心市街地の活性化を図るため、検討すべきものと考えています。その意味で、新図書館建設場所に関するご意見はご意見として、花巻駅東西自由通路(駅橋上化)整備の必要性は、新図書館とは別にお考えいただくようにお願いいたします」

 

●「橋上化の方はすべて、私どもの方で整備をさせていただきます。で、伏してお願い申し上げます。貴殿が所有する図書館の立地予定地はぜひとも私どもに、できれば格安でお譲りいただきますように…」―。舞台上ではJR殿に哀願口調で土下座する上田市長の姿が。観客席からは尻だけが見えて、頭は見えない。皆の衆はアッと驚く大団円に固唾(かたず)を飲む。新版「おらが駅舎」物語もいよいよ、大詰めへ…。観客席からヤジが飛んだ。「『頭隠して、尻隠さず』とはこのこと。“猿芝居”だとしたら、お猿さんに申し分けない。ひょっとしたら、日光東照宮の三猿(見ざる・言わざる・聞かざる)の真似をしているのかも知れないが、どうせ芝居を打つのなら、もっと芸を磨かんかい」―“裸の王様”(アンデルセン)の侘びし気なシルエットを映しながら、緞帳(どんちょう)は静かに下りた

 

 

 

 

(写真は橋上化の理由のひとつに上げられた地下通路。市側は予算案の再上程を前に慌てて防犯カメラの設置を表明した。これを称して、市民の安心・安全に背を向けてきた行政の「不作為」という=JR花巻駅の敷地内で)

 

 

 

 

<追記>~ダ-クツ-リズム(過去を忘れないための旅)

 

 JR花巻駅の薄暗い待合室(11月12付当ブログ)、立地条件に恵まれたポラン保育園の閉鎖(同15日付)…。過去にさかのぼれば、新興跡地(花巻城址)やまん福跡地(旧料亭)、中央広場(”公園”もどき)、心霊スポットの旧ホテル「花仁」(花巻温泉郷・台温泉)などなど。いっそのこと、上田市政の“負の遺産”をめぐるダ-クツ-リズムでも計画してみたらどうだろうか。「花巻橋上駅」も急きょ、このツア-のリストに追加登録することにした。

 

 

 

 

灯台下暗し(その2)…“賢治”のポランが泣いている!!??

  • 灯台下暗し(その2)…“賢治”のポランが泣いている!!??

 

 「水をのまずに酒を呑む/そんなやつらが威張ってゐると/ポランの広場の夜が明けぬ/ポランの広場も朝にならぬ」―。宮沢賢治の作品『ポラ-ノの広場』にこんな“雄叫び”みたいな歌の一節が出てくる。政治の腐敗を見かねた博物局員のキュ-ストや農夫の子ファゼ-ロたちが社会改革に立ち上がるという物語である。「ポラン」とは賢治が名づけた「イ-ハト-ブ」に通じる“理想郷”のことなのかもしれない。

 

 「はなまきポラン保育園」―。賢治にあやかって命名した公立小規模保育所が令和4年度末をもって閉鎖されることになった。平成30年4月、3歳未満児(定員19人)を対象に総工費約3千2百万円を投じて、コンビニ店を改装して開設。設置期間を3年程度と想定していたが、利用者減に歯止めがかからず、令和3年度以降は利用者ゼロの状態が続いていた。15日開催の議員説明会で市側は理由をこう説明した。「2歳児までしか受け入れしないことから、3歳以降はふたたび保育園を探さなければならない。このため、最初から保育園への入所希望者が多く利用者の確保が難しくなった。待機児童が多かった当時の緊急避難的な判断は間違っていなかったと思う」

 

 「橋上化だけで発展するとは考えておらず、人口減少や中心市街地の衰退に少しでも歯止めをかけるために必要と考える。駅西側は今でも人口が増加しており、できれば若い世代に住んでいただければ、花巻市の活性化につながるのではないかと思う」(9月15日「まなび学園」で開催の市民説明会)―。JR花巻駅の橋上化(東西自由通路)の必要性について、駅西口の利便性向上や「動いてる感」の期待効果を繰り返し強調したのは他ならぬ市側ではなかったか。ポラン保育園は駅西口から徒歩10分足らずの距離にあり、まさにその立地条件にぴったりではなかったか…

 

 「少子化がどんどん問題になっている中で、いずれ何年か後にはまた閉園になるという懸念はないか」(2018年9月定例会一般質問)―。市側の設置判断に対し、一方の議会側では開設直後からその先行きを懸念する声が出ていた。この日の説明会でも国や県から補助金の返済が迫られることなどについて、「見通しが甘かったのではないか」と批判が相次いだ。今回、それが現実となった形である。私が問題としたいのは、閉鎖時期の政治判断(危機管理)の甘さである。

 

 ポラン保育園は実は昨年度から2年続きで利用者がゼロになり、実質的な経営破綻に陥っていたことが明らかになった。土地や建物の賃貸料や光熱水費などは年間360万円以上にのぼり、閉鎖までの2年間に市が負担する維持管理費(約720万円)は結局、ドブに捨てたも同然になる。「利用者がゼロになった時点で閉鎖を検討したが、見通しを誤ったと言われれば認めざるを得ない」と市側は防戦一方。これこそが「ブルシット・ジョブ」(壮大なる無駄)の典型ではないのかと思った。「税金の無駄使いは許されない」(上田東一市長)という公約は一体、どこに行ったのか。

 

 「ポラ-ノの広場のうた」はこんな歌詞で終わる。「まさしきねがひに、いさかふとも/銀河のかなたに、ともにわらひ/なべてなやみを、たきゞともしつゝ/はえある世界を、ともにつくらん」―。かつて、つめ草が一面に咲き乱れた「ポランの広場」通りは今、まるで“賢治”の待合室の二の舞みたいに人通りの少ない街並みと化しつつある。「子育て支援」の重要性をことあるごとに口にする上田流「活性化」手法のまやかしがふたたび、白日の下にさらされた感がある。

 

 

 

 

(写真は今年度いっぱいで閉鎖されることになった「ポラン保育園」=花巻市西大通2丁目で)

 

 

 

《追記》~10年一昔

 

 15日に開催された議員説明会の席上、市側は懸案の「JR花巻駅橋上化(東西自由通路整備)」構想について、令和8年度に工事を開始し、供用開始は同10年度になるとの見通しを明らかにした。「10年一昔」というが、いまの高校生が社会人になるまで、“賢治”の待合室はいまのまま、放置され続けるのだろうか(11月12日付当ブログ参照)

 

 

 

 

灯台下暗し(その1)…“賢治”の待合室が泣いている!!??

  • 灯台下暗し(その1)…“賢治”の待合室が泣いている!!??

 

 「“イ-ハト-ブ”賢治が生涯のほとんどを過ごした“花巻”。賢治の空想の世界の入り口でもあり、この待合室を“集い”の場として利用してほしい。そんな場所を賢治の世界で表現できたなら…」―頭上に掲げられた駅長名のメッセ-ジに感動しながら、当市のシンボル・フクロウ(市鳥)を模したレリ-フ「花巻駅マチアイ」をくぐると、縁起でもないが目の前には“銀河宇宙”どころか、賽(さい)の河原を思わせるような空間が広がっていた。壁に飾られた、銀河鉄道をイメージしたらしい写真がなおさら、そんな気持ちを強くした。

 

 JR花巻駅の待合室―。味が自慢だった「駅そば」店はコロナ禍の前に閉鎖され、隣り合わせにあった洋菓子店もその後、撤退した。私が訪れた正午すぎ、薄暗い「マチアイ」には中年の男性と老婦人がぽつねんと座っていた。駅長の木村光一さんが言った。「私もそば好き。昼飯にはしょつ中、利用していました。常連はやはり、電車の乗降客。店の採算が取れないということは、裏返せば乗降客もそれだけ減っているということになります」―。交換した名刺の肩書にびっくりした。「LIVIT」(リビット)とあった。JR東日本東北総合サ-ビス株式会社(本社・仙台市)の愛称で、JR東日本の完全子会社である。

 

 一方で、約40億円の巨費を投じた「駅橋上化(東西自由通路整備事業)」プロジェクトが大詰めを迎えている。市側によると、来年4月から5月にかけてJR東日本との間で「基本協定・基本設計」を締結し、来年度当初予算に所定の経費を計上したいとしている。この案件については「JR側の負担がほとんどない駅橋上化の裏には、新花巻図書館の駅前立地予定地(JR所有)の土地譲渡交渉を有利に進めるためのある種の合意があるのではないか」―。こんな“密約”疑惑がつきまとう中、今年9月から10月にかけて、市内15か所で市民説明会が行われた。この場でも市側の答弁は迷走を繰り返した。

 

 「橋上化だけで発展するとは考えておらず、人口減少や中心市街地の衰退に少しでも歯止めをかけるために必要だということである」、「まちの発展は行政が何かやれば進むものではなく、民間に期待する部分も大きい。この事業により、まちが動いているという印象を持ってもらうことにより、活性化につながる」、「新図書館と橋上化が一体であると言っているのではなく、JR側は橋上化をやりたいと思っているからこそ、橋上化ができなかった場合、JR側に何らかの意向が生じることを懸念している」、「グランドデザイン(青写真)については、市がすべてを整備していくことは無理であり、民間による活性化が必要不可欠である」…

 

 「まちが動いている」…。一体全体、実体の伴わない“霞(かすみ)”みたいな行政ってあるのか。上田東一市長がいみじくも言ったようにこれこそが「絵に描いたモチ」ではないのか。逆に言えば、ほっぺたが落ちそうな本物の牡丹餅を提供できないという事実をこの言葉は浮き彫りにしているのではないか。“密約”疑惑がますます、真実味をおびる所以(ゆえん)である。

 

 ところで、通学などで現駅舎を利用する機会が多い高校生からはこんな声が相次いだ。「待合室が夜に暗いので明かりをふやしてほしい」、「コンビニの他にファストフ-ド店のようものを作ってほしい。お腹を満たせる場所があれば、駅が充実するのでは…」、「旧そば屋さんを改造して、子どもがホ-ム側を見られるスペ-スにすればよい」…。木村駅長が頭を抱えてつぶやいた。「私たちもテナント運営や鉄道業務などを受託する、いわば下請け。コロナ禍の今、新しい店子を見つけるのは容易じゃない。橋上化などは雲の上の話。利用者の不便を承知しつつ、電気代の節約などでしのぐほかない。県内の東北本線でいま、JR直轄の運営は一ノ関、北上、盛岡だけです」

 

 橋上化が運用開始するのは計画通りに進んだとしても、6~7年先。“賢治”の待合室は人も寄り付かない不気味な空間に成り果てようとしている。行政は将来を予測できない「動いている」観を演出する前に、高校生や木村駅長の“悲鳴”にまず、耳を傾けるべきではないか。そういえば、いつも閑古鳥が鳴いている空間がある。中心市街地のど真ん中にある「花巻中央広場」…こちらのお題目も「活性化」だったことを思い出した(コメント欄に関連写真を2枚掲載)

 

 

 

(写真は「そば処花巻」のシャッタ-は半分、下ろされたまま。閉店した洋菓子店のブラインドには「席の長時間占有」を禁止する貼り紙も=JR花巻駅で)

 

 

 

<追記>~「ブルシット・ジョブ」(壮大なる無駄)の予感!?

 

 「JRロ-カル線維持確保連絡会議」の初会合が今月8日に開かれ、県内6路線の沿線自治体が路線維持のために連携を深めていくことを確認した。2019年度の1キロ当たりの1日平均乗客数が2千人未満の赤字線は6路線10区間で、“賢治”の待合室が始発駅の釜石線(花巻―遠野間)は年間12億700万円に上ることが分かった。今後、JR側は赤字解消のための支援を自治体側に求めてくることも予想され、橋上化構想自体が“砂上の楼閣”にならないとも限らない。「ブルシット・ジョブ」(壮大なる無駄=11月2日付当ブログ参照)という嫌な予感が…