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“夢の図書館”の実現へ…「イ-ハト-ブ図書館をつくる会」がシンポ

  • “夢の図書館”の実現へ…「イ-ハト-ブ図書館をつくる会」がシンポ

 

 「病院跡地の近くに住むお孫さんがね、『あの、きれいなヤマはなんっていうの』と聞いたんですって。おばあちゃんが『市役所に聞いてみたら』と言ったら、今度は孫の方から『早池峰っていうんだって。ここに遊び場や図書館ができればいいね』と返ってきたそうです」―。「花巻の未来の図書館を考える」シンポジウムが21日開かれ、主催団体の「イ-ハト-ブ図書館をつくる会」の瀧成子代表はこんなエピソ-ドを交えながら、図書館への熱い思いを語った。この日の参加者は約40人で、市側が進めるJR花巻駅前への立地に賛成を表明したのはわずか2人だった。

 

 パネリストは瀧さんのほか、「新花巻図書館整備特別委員会」の委員長を務めた伊藤盛幸市議と東日本大震災後に気仙沼市から当市に移住した日出忠英さん。伊藤議員はこれまでの経緯を説明し、「候補地のひとつである花巻病院跡地はすでに、市側で取得することが決まっている。JR所有の駅前用地を新たに取得することになれば、税金のムダ使いになる。文教施設としての図書館の立地場所はおのずと決まるはずだ」と話した。「地元の人は案外、足元の良さに気が付かないですよね」―。市中心部の災害公営住宅に住む日出さんはこう切り出し、「実はまちのど真ん中の大堰川にはホタルがいるんです。(宮沢)賢治さんを含め、花巻は宝の山」と続けると、会場からほ~っと驚きの声がもれた。質疑に移ると参加者が競うように手を挙げた。

 

 「病院跡地は賢治や(高村)光太郎にも縁が深い。ざっと100年ぶりにその雄姿を見せた早池峰を仰いだ瞬間、図書館はもうここで決まりと思った」(大迫町、男性)、「景観はもちろんのこと、花巻城跡、まなび学園、市役所、中心市街地…。これだけの求心力を持ち、時間と空間がこれほどマッチした場所は他にない」(旧市内、女性)、「この場所の歴史を知った時、これまでの自分の無知に腹がたった。まなび学園は賢治の妹トシが教鞭を取った旧高等女学校。そこから美しい歌声が聞こえてきたと賢治も語っている。花巻で最も大切な場所だ」(旧市内、女性)…

 

 2分間の持ち時間を超えた思いのたけが会場に充満した。「私の娘も電車通学していたが、部活が終わってから乗り遅れないのが精一杯。高校生が利用しやすいというがまるで、取ってつけた理由としか思えない」(東和町、女性)、「文化をないがしろにしてきたと思うと、自分自身も恥ずかしい。NYタイムズ紙でロンドンに次いで行ってみたい街に選ばれた盛岡がうらやましい。イ-ハト-ブもこれに続こう」(東和町、女性)ー。台湾に留学経験のあるスタッフのひとりは「賢治さんの可能性は無限です」として、こんなエピソードを紹介した。

 

 「語学学校の授業の課題で、全大陸から来た若者の前で、宮沢賢治について話した。賢治と聞いても、みんな知らない。でも、宮崎駿、新海誠も、賢治に大きな影響を受けている、と言うと、みんな『おーっ』と食いつく。最後に、賢治の作品はみんなの国の言葉にも訳されていますよと話すと、『読んでみる』と言ってくれます」

 

 シンポジウムのあと、希望者がまなび学園の敷地から霊峰・早池峰山を望む場所に移動した。あいにく、雲に隠れて見ることはできなかったが、瀧さんがホッと安堵したみたいにつぶやいた。「実は今年の元旦にひとりでこの一帯を散策したんです。生粋の花巻人である私自身が足元の歴史をさっぱり、知らなかった。長い間、病棟群に遮られて視野になかった霊峰に接した時、その神々しさにムチを打たれた感じになりました。みんなと力を合わせて、ここに世界一の賢治ライブラリ-をつくりたい」―

 

 以下にこの日、参加者に配布された設立趣意書の全文を掲載する。

 

 

《「イ-ハト-ブ図書館をつくる会」設立趣意書》

 

 花巻市は図書館に何を期待しているのでしょうか。「賑わい」と「若者のニ-ズ」でしょうか。私たちは、花巻病院跡地こそ、花巻らしい未来の図書館に相応しい場所だと考え、「イ-ハト-ブ図書館をつくる会」を設立しました。図書館は単なる「本を借りられる場所」ではなく、近年では、人と人をつなぎ、まちの課題解決のための、まちづくりの拠点としての役割を求められていることを、私たちも理解しています。

 

 「イ-ハト-ブ図書館」は、花巻がもつ資源を活かし、まちの課題解決にもつながると考えています。花巻の課題の一つは言うまでもなく、中心市街地の活性化です。宮沢賢治をまちづくりの核に捉えている市が、賢治ゆかりのエピソ-ドが豊かな病院跡地をなぜ選ばないのか、不思議です。

 

 賢治は、日本人作家の中で、もっとも関連書籍が多く、もっとも多く外国語に翻訳されている作家だと言 われています。世界一賢治の資料が集まる「賢治ライブラリ-」を実現できるのは、花巻だけです。日本はもとより、世界中から、研究者やファンが訪れるでしょう。

 

 賢治ゆかりの散策コースを整備し、賢治記念館と連携すれば、観光客を市街地へ誘導することも期待できます。病院跡地の整備にともない、「濁り堀(にごりぼり)」という花巻城のお堀の跡が、100年ぶりに姿を現しました。歴史公園を設ければ、歴史好きの子供からお年寄りまで、散策を楽しむことができます。まちの歴史を学ぶことは、子供たちのまちへの愛着を育てることにもなるでしょう。

 

 また、コロナ禍を経験した私たちが求めるのは、深呼吸のできる自然豊かな場所です。花巻の象徴とも言 える早池峰山を望む、広く静かな場所に図書館があれば、これまであまり利用しなかった人も足を運ぶようになるのではないでしょうか。情報センタ-を設置すれば、市民がつながる場としての役割も果たすことができるしょう。 病院跡地には、広い駐車場が可能です。バス路線を変更して「図書館前」バス停を設ける必要はありますが、駅から徒歩11分。ワクワクできる場所があるなら、苦にはならない距離であるはずです。

 

 分断と混迷を深める現代に、図書館の重要性はますます増しています。誰でも無償で、あらゆる知に広く深くアクセスでき、多様な市民がつながることができる図書館は、人とまちをつくります。賢治は、イ-ハト-ブでは「あらゆる事が可能である」と書いています。これは、想像力が人を自由に豊かにするという、賢治からのメッセ-ジだと考えます。想像力を育む図書館こそ、未来への投資です。花巻の豊かな資源を活かせる、病院跡地での建設を望みます。

 

2023年1月21日

 

「イ-ハト-ブ図書館をつくる会」(代表 瀧成子)

問い合わせ・連絡先 0198(22)7291(新田)

 

 

 

 

 

(写真は瀧さんのあいさつに拍手を送る参加者たち=1月21日午前10時すぎ、花巻市花城町の生涯学習会館「まなび学園」で)

 

 

 

 

《追記》~図書館”談義”に花!(コメント欄に写真を掲載)

 

 「賢治さんも早池峰登山に熱中したんだよね。”石っこ”賢さんだから、鉱石を集めたり、高山植物を観察したり…」、「賢治さんが教鞭を取った”桑っこ大学”(農学校の前身)もこの辺だったはずよ」、「まなび学園はシニアの拠点。不登校の子どもたちが通う教室もある。生涯学習の場にピッタリ」、「やっぱり、図書館は病院跡地しかないよね」…。この日は残念ながら、早池峰山は顔を見せなかったが、尽きない図書館”談義”に花が咲いた。

”仮面”共同体「イ-ハト-ブ」の没落…あぁ!?~阪神淡路大震災から28年

  • ”仮面”共同体「イ-ハト-ブ」の没落…あぁ!?~阪神淡路大震災から28年

 

 コメントにしては珍しく、長文が送られてきた。小生の身辺に詳しい内容で投稿者のおおよその特定はできるが、ここでは当ブログに寄せられるコメントの作法を知ってもらうためにあえて、以下に全文を掲載させていただく。今回も「ある後輩」を名乗る人物からで、そのほとんどが匿名投稿である。「まずさ。あんたの場合、票数的にも箸にも棒にも掛からない感じだったんだから、終わってから負け犬の遠吠えみたいに騒ぐのやめな。そんな老害に今さら何ができんの。時代はもう変わってんのさ」―。そういえば、昨年夏の市議選で惨敗を喫した際のこのコメントも「イ-ハト-ヴ市民」を名乗る人物からだった。

 

 「そもそも図書館を図書館と考えているから、おかしなことになる」―。その一方で、今月21日にシンポジウムを計画している「イ-ハト-ブ図書館をつくる会」の元には現役の市職員から、こんなバッシングめいた投稿が実名で寄せられているという。公務員として到底、許されざる行為である。その背後には純粋な市民の声を押しつぶそうとする”悪意”さえ感じられる。上田東一市長の得意技―「異論排除」というあの手口である。宮沢賢治が“夢の国”と呼んだ「イ-ハト-ブ」のこれがなれの果て…「イーハトーブはなまき」の実現を掲げてきた虚像が音を立てて崩れ落ちた瞬間である。

 

 匿名の諸賢よ、仮面を脱ぎ捨て素顔で話し合おうではないか。今だからこそ、『仮面の告白』(三島由紀夫)が必要ではないのか。己の仮面を引きはがしていく辛抱強い営為が…。阪神淡路大震災の発生から17日で28年ー私はこの日、記者として惨劇の現場に向かっていた。

 

 

 先輩へ、失礼ながらお伝えしたいことがあります。先輩、たまに拝見させていただいております。ワ-クショップについてのご意見ですが、傍聴者へのお願いは適切だと思います。「傍聴者を締め出したり~」とか「戒厳令~」とかお書きになられておりますが、ちょっと過剰ではないでしょうか?(主観だから仕方ないですが)。実際に締め出されたのですか?もし、傍聴者受付の段階で先輩だけが、傍聴中止されたのであればそれはそれで問題です(どのような理由か知りたいです)が…(9月7日付、同26日付、10月19日付当ブログ参照)

 

 先輩は実際に傍聴できなかったのですか?「傍聴者への人権侵害」って言いますが、以前先輩のブログで個人の企業の役員名簿の画像がありましたが、これはちょっと…と思ってました。氏名・自宅住所まで写っており、個人が特定できる情報で、不特定多数が見ることができるメディアへ晒すのは良いの?それこそ「個人情報の流出」と捉えられてもおかしくないですよね?

 

 それと様々な活動・団体を構成されているようですが、その団体たちを立ち上げてその後どうなりました?その団体名と趣旨・活動内容、顛末こそこのブログで開示すべきではないですか?(ある程度は掲載しているが、結果どうなった?が多すぎる)。ここ数年の増子さんのブログには個人的に思うところがあります。現在の先輩のブログは、現行政体制の批判と図書館構想・(増子さんの)イ-ハト-ブ理想論、民主主義とはかくあり、それと沖縄のことが大勢を占めているように思います。

 

 今を生きる若者へのエ-ルや檄はほとんどなく、もっとも必要である経済復興への提言や実現への具体策の公開はほぼないですよね?「理想論・主義主張では食っていけない」ことが、30~50代のいわゆる働き盛りの人たちの意見だということを認識するべきではないでしょうか?前回の市議会議員選挙も応援していましたが、結果が全てじゃないですか?

 

・コロナ禍での経済復興のフロ-提案(企業・家庭の困窮打破)

・人口増への体制立案(住みたい街とは何か)などをもっと聞きたかった。

 

 応援していた支持者の視点からは、あまり過激な活動より、もうそろそろ穏やかに過ごしてみてはいかがかと思ってしまいます。あまりネガティブな投稿は支持者から敬遠されますし、ジャ-ナリズム全開の投稿もどうかと思います。もちろん、全ての人がそうではない、多様性のある解釈や意見があるのでいいと思いますが、どうも(誇張した?)批判投稿が多いように感じる。

 

 穏やかで、昔話(ジャ-ナリストだった頃の思い出話)をユ-モアのある語り口で話す増子さんの方が私は好きです。長文失礼しました。

 

 

 

 

(写真はアニメ「千と千尋の神隠し」に登場する正体不明の”カオナシ”=インタ-ネット上に公開されたイラストから)

 

 

 

《追記》~宮沢賢治の”遺訓”(「雨ニモマケズ」から)

 

アラユルコトヲ

ジブンヲカンジョウニ入レズニ

ヨクミキキシワカリ

ソシテワスレズ

 

 

 

 

 

橋上化と新図書館はやはり、ワンセット…行政開示文書で、”疑惑”が明らかに!?

  • 橋上化と新図書館はやはり、ワンセット…行政開示文書で、”疑惑”が明らかに!?

 

 「JR花巻駅橋上化(東西自由通路)と新花巻図書館の駅前立地とは全く別の構想だ」―。上田東一市長がことあるごとに否定してきた橋上化と新図書館のワンセット(表裏一体)“疑惑”が実はその通りであったことが、この間の経緯を記録した行政開示文書で明らかになった。議会答弁や記者会見などでの市長発言の信憑(しんぴょう)性も疑われかねない事態で、この二大プロジェクトに対する市民の目はさらに、厳しくなりそうだ。ちなみに、橋上化に伴う約40億円の総工費のほとんどは国庫補助金と市側の負担で、JR側の持ち出しはほんのわずかである。

 

 発端は平成29(2017)12月にさかのぼる。5年以上も前のこの時期、市側の建設部と図書館を管轄する生涯学習部の合同チ-ムとJR東日本盛岡支社との間で「JR花巻駅周辺整備基本計画調査定例会」という名の組織が結成された。翌年の平成30年8月に解散されるまで計9回の会議が持たれ、この間に橋上化と図書館とを一体で進めることが双方で合意された。たとえば、開示文書ではこんなやり取りが。「図書館や都市施設(バスタ-ミナル)の配置によって、階段口や通路の導入口が変わってくる」(平成30年1月、第2回会議)、「駅舎、図書館複合、店子等全体事業を紐づける理論武装が必要になる」(同4月、第6回会議)…

 

 こうした話し合いを経て令和2(2020)年1月29日、「新花巻図書館複合施設整備事業構想」(いわゆる、賃貸住宅付き「図書館」構想)が突然公表されることになったものの、議会側や市民の反対で「賃貸住宅」部分の白紙撤回に追い込まれた経緯については当ブログで随時、言及してきた。橋上化と図書館との「ワンセット」論議が急速に進展したのはこの前後。突然の計画変更によって、双方の応酬は激しさを増すようになる。開示された文書は全部で116ページで、生々しいやり取りが記録されている。

 

 「図書館が決まらない限りは、自由通路の整備は進められないということか。図書館がOKとなれば、自由通路もOKとなるのか。市民的にも議会的にも自由通路整備をやろうとなったとしても、図書館が決まらないうちは自由通路だけ先に進むのはまずいのか。議会の図書館に関する動きはどうか。落としどころはどこになるのか」(JR側)、「我われにもわからない。個々の議員の考え方もあるので…。自由通路側だけ進んで、図書館が進まないということもこちらとしては上手くない。セットにすることで図書館的にも自由通路的にも良い」(市側、令和2年8月)

 

 「いずれにせよ、反対する人はいる。我々が説明する際に土地購入の可能性があると言えば、突破口になる可能性もあるので協力をお願いしたい」(市側、令和2年9月)、「大元の『賑わいある図書館』というところから、借地(50年間の賃貸借)プラス複合施設ということを想定して協議させていただいてきたと認識している。その後だんだん、(JR)用地を買うことを検討するとか、図書館単体という形など状況が色々変わってきているので、根本的な部分が心配である。いざ、建てる時になった時点で何か話が違うということになるのが怖い」(JR側、令和2年10月)

 

 公開された開示文書の最後の日付は令和4(2022)年7月6日。ここに至る約1年半以上、交渉が行われた形跡はうかがわれない。コロナ禍の影響があったにしてもこの長期の”空白”は一方で、「ワンセット」プロジェクトの難しさも浮き彫りにした。最後の文書にはこうある。「建設場所を決定してからにはなるが、用地売買における協議が整わないうちは当市としても基本設計に入れないと考える」(市側)、「用地を売るかどうかは決定事項ではない。あくまで可能性のレベル。花巻市がどの範囲まで購入したいのか図面で明示してほしい」(JR側)―。当然と言えばそうであるが、議会中継や市長答弁、地元紙が報じる関連記事、新聞投書などを綿密に分析するなどして、橋上化を主導したいJR側の剛腕ぶりが伝わってくる。「駅前か病院跡地か」―いま市民を二分する図書館の“立地論争”についても、JR側は先刻承知のはずである。

 

 「歩いて回れる珠玉の街」―。米ニュ-ヨ-クタイムズ紙は「2023年 訪れるべき世界の都市52選」のひとつとして、盛岡城址を中心にしたまちづくりを手がけている盛岡市をロンドンに次ぐ2番目に選んだ。そういえば、図書館の駅前立地を進める市側の言葉の中にこんな文言があった。「国土交通省的には駅前に東西自由通路を整備し、なおかつウォ-カブル(歩きたくなる空間)に整備することの受けがよい」―。だったら、花巻城址に隣接し、中心市街地に直結する「病院跡地」の方がよほど「ウォ-カブル」ではないか。

 

 同紙のHPは秋の紅葉の時期に盛岡城跡公園で撮影した動画とともに「東京から新幹線で短時間で行ける距離にあり、人混みを避けて歩いて楽しめる美しい場所」などと盛岡の魅力を紹介している。花巻城址と背中合わせの文教拠点「イ-ハト-ブ図書館」も後に続きたいものである。

 

 

 

 

(写真は黒く塗りつぶされた開示文書。“のり弁”とも呼ばれる)

 

 

 

《追記》~本音がポロリ

 

 「JRは花巻駅の橋上化をやりたいと思っており、橋上化の話が進めば、土地の売買について真剣に話をしてくれる可能性はある。橋上化がなくなった際には、駅前に図書館を建設することについてもどうなるか分からない」(会議録から)―。開示文書を裏付けるように上田市長は令和4年6月、ある市政懇談会の場でこう述べた。その後の9月定例会で伊藤盛幸議員(はなまき市民クラブ)がこの発言の真意を問いただした際、上田市長は反問権を振りかざしながら語気を強めて、このワンセット“疑惑”を否定した。本音とは、こんな風にしてポロリと口からこぼれるものである。

 

 

図書館を考えるシンポジウム…「イーハトーブ図書館をつくる会」が21日に開催

  • 図書館を考えるシンポジウム…「イーハトーブ図書館をつくる会」が21日に開催

 

 「図書館はどうあるべきか。その根本の議論を深めたい」―。新花巻図書館をめぐって、市民の議論が二分する中、女性を中心にした有志が「イ-ハト-ブ図書館をつくる会」(代表・瀧成子代表)を立ち上げ、1月21日に「夢のイ-ハト-ブ図書館を目指して」―をテ-マにシンポジウムを開く。瀧さんは「会としては早池峰山など北上山系を望む花巻病院跡地への立地を希望している。しかし、場所論争に前のめりになるのではなく、50年100年先の図書館像をみんなで話し合える場になれば…」と話している。

 

 パネリストは生粋の“花巻人”である瀧さんのほか、「新花巻図書館整備特別委員会」の委員長を務めた伊藤盛幸市議、東日本大震災震災で被災後に当市に移住、「花巻は宝の山」という造園家の日出忠英さんの3人。「つくる会」では今後、賢治ファンを含めた全国規模の署名運動を展開し、行政側への要望活動や議会側への請願・陳情などを通じて、「文化とまちづくりの拠点」としての図書館のあり方を模索していきたいという。本好きが高じて、昨年夏に市内桜町の自宅に私設図書館を開設した四戸泉さんも「つくる会」に期待するひとり。単刀直入にこう“直言”する。

 

 「4年前、花巻にUターンした当時は図書館は駅近派でしたが、住めば住むほどこんなにJR花巻駅の利用者が少ないと思ってもいなかった。だいたい、市長も役所の方々も地元出身者が多いはず。高校生たちが駅前に欲しいのは図書館なんかの堅苦しい公共施設でなく、友達同士で自由にワイワイ騒げ、飲食できる民間の複合施設だと思う。私が図書館を使い始めたのは浪人時代で、あとは大人になって資格試験の勉強の時。駅近図書館に設置するメリットは駅を利用する層が多数を占める都会です。だから、岩手県立図書館は成り立つが、花巻ではマイカ-通勤族が主流なんで、成り立たない」

 

 「つくる会」ではこうしたざっくばらんな“図書館論議”を積み重ね、宮沢賢治のふるさとにふさわしい「夢のライブラリ-」を誕生させたいとしている。初回のシンポは予約優先の定員45人。病院跡地周辺の探索ツア-にもぜひと呼びかけている。合言葉はー「死ぬまでに行きたい世界の図書館15選」へのノミネ-ト!

 

 お問い合わせは~0198-22-7291(事務局、新田まで)

 

 

 

 

(写真は未来の図書館を考えるシンポのチラシ)

 

風土が生み出す図書館…「こども本の森 遠野」、そして「イーハトーブ図書館」~今宵は満月!?

  • 風土が生み出す図書館…「こども本の森 遠野」、そして「イーハトーブ図書館」~今宵は満月!?

 

 「まるで、大木の洞(うろ)に入ったみたい」―。遠野市のまちのど真ん中に誕生した「こども本の森 遠野」に足を踏み入れた瞬間、天井まで届く本棚よりもその本たちを支える大黒柱の重量感に圧倒された。それもそのはず、この図書館は元呉服商の建物をそのまま再利用する形で建てられ、不足する資材は県内の古民家から調達された。著名な建築家、安藤忠雄さんが設計し、2021年夏に同市に寄贈された。子どもたちが寄贈を呼びかけた36カ国からの約350冊を含め、収蔵数はざっと1万3千冊。貸し出しはしない。「本の森」の中で読書するのが、ここの流儀である。

 

 「読書を通して得られる知識や体験はスマ-トフォンで得る情報とは比べものにならないくらいの価値があります。遠野には私たちの多くが忘れてしまった『心の世界』が残っています。子どもたちには古い民家を再生したこの図書館で、たくさんの本を読みながら、過去を学び、いまを考え、未来を想像して欲しいと思います」―。安藤さんは開館に当たり、こんなメッセ-ジを寄せている。「遠野と東北」「自然とあそぼう」「将来を考える」「生きること/死ぬこと」…。13の本棚テ-マを見上げているうちに「さながら、夜空に月や星を見る」ような不思議な感覚になった。

 

 ふと気がつくと、小学生がおおいかぶさるようにして本を読みふけっていた。近くの椅子に座り、目の前の童話を手に取る。『かわいそうなぞう』(土家由岐雄著)…いまも読み継がれる絵本童話である。太平洋戦争のさ中、上野動物園の檻(おり)が爆撃され、動物たちが逃げるのを防ぐために行われた「戦時猛獣殺処分」―。ライオンやクマなどが次々に殺され、最後に3頭の象が残される。毒入りの餌を与えようとするが、象たちはまるで察知したかのように口にしない。次第にやせ細り、やがて餓死してしまう。上空を敵機が旋回している。「戦争をやめろ」と叫ぶ飼育員の言葉で、この悲しい物語は終わる。

 

 ところで、あの小学生はまだ本に熱中している。一体、どんな本とにらめっこしているのか、ちょっと気になる。「(宮沢)賢治コ-ナ-」の前で足が止まった。おなじみの作品がずらりと並んでいる。ふいに「Fantasia of Beethoven」(ベ-ト-ベンの幻想)という例のエピソ-ドを思い出した。いま、新花巻図書館の立地候補地のひとつとして注目を浴びている旧総合花巻病院の中庭に賢治が設計し、自らこう命名した花壇があった。当ブログでも前に紹介したことがあるが、私は自信満々の賢治の言葉がとても好きである。賢治はこう豪語している。

 

 「けだし、音楽を図形に直すことは自由であるし、おれはそこへ花でBeethovenのFantasyを描くこともできる」(『花壇工作』)―。遠野通いを続けているうちに「図書館とはそこの風土から生まれる」―という確信がますます、強くなってきた。病院跡地や隣接する花巻城址は賢治作品に数多く登場する、いわば“賢治精神”のホ-ムグラウンドでもある。私が病院跡地へ「イ-ハト-ブ図書館」の立地を切望する、これがゆえんである。気が遠くなるほどの「図書館像」の乖離(かいり)がいまも脳裏にこびりついて離れない。

 

 「たとえば、鉛筆が落ちたら、その音が響くような図書館という考え方とか、いろいろ考え方があると思いますが、場合によってはザワザワしている図書館でもいいのではないかなと思っています」(賃貸住宅付き「図書館」構想を公表した直後の上田東一市長)、「そんなものは図書館とは言えない。この空間は静寂を旨とすべし。図書館の社会的有用性とは来館者数とか貸出図書冊数、そういう数値によって考量されるべきというのは、いかにも市場原理主義者が考えそうな話です」(フランス文学者で、図書館通の内田樹さん=2020年4月9日付当ブログ)

 

 「本の虫」みたいなあの遠野の小学生は今日も「こども本の森」にいるだろうか。この周辺には「とおの物語の館」や「市立図書館・博物館」、「市民センタ-」「元気わらすっこセンター」などの文化施設が点在し、一帯が「一大文化拠点」の趣(おもむき)を呈している。「こんな立地環境こそが本来、想像力を養う小宇宙なのかもしれない」―こんなことを考える今日この頃。さすがは『遠野物語』(柳田國男著)のまちである。

 

 本日(1月7日)の夜空はウルフムーン(神の化身・オオカミの遠吠え)と呼ばれる満月。雲に隠れていたその月が夜半、中天にまん丸い顔を見せた。願かけのキーワードは「新たなスタート」。新成人となった若者たちと手を携え、今年こそは「イーハトーブ図書館」の実現を!

 

 

 

 

(写真は読書に熱中する小学生。これこそが私が思い描く「夢の図書館」の光景である=2022年秋、遠野市中央通りの「こども本の森」で)