「補助執行がその隠れ蓑だった」―。新花巻図書館の「駅前立地」へ向けた地ならしが進む中、その行政手続きの拙速ぶりに警鐘を鳴らしてきたが、上田東一市長が法律や規則に抵触する形で”図書館”行政に介入してきたことが明らかになった。「地方自治法」や「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」などによって、 社会教育に関する教育機関の一部の事務を首長部局に委任することが認められているのが、いわゆる「補助執行」制度である。
一方、この制度と関連するものとしては「花巻市教育に関する事務の職務権限の特例を定める条例」(平成20年12月)があり、市長が直接、管理・執行ができる教育関連の事務としては「(学校行事を除く)スポーツ全般と(文化財の保護を除く)文化全般」が該当するとされ、図書館関連は含まれていない。他方、「花巻市教育委員会の権限に属する事務の補助執行に関する規則」(平成19年3月)によると、補助執行の対象は①花巻市立図書館に関すること、②花巻市立図書館協議会に関すること―の2点に絞られ、その事務に携わることができるのは「生涯学習部長、新花巻図書館計画室の職員及び図書館の職員」に限定されている。
条例制定が前提にもかかわらず、いきなり図書館に関する補助執行を生涯学習部など担当部局に丸投げした結果、今回の新図書館問題をきっかけにその「闇」の部分が白日の下にさらされた格好である。上田市長の“越権行為”が現れた典型例が「住宅付き図書館」の駅前立地構想(2020年1月29日)である。この構想が上田市長の主導で進められてきたのは周知の事実であり、“上田私案”と呼ばれる所以(ゆえん)もそこにある。法律や規則を無視したデタラメな”図書館”行政の実態が偶然、明るみに出た出来事があった。
「令和2年の1月29日に駅前のスポーツ用品店の場所に図書館をつくって、そこに複合施設ということで、賃貸住宅を図書館の上に併設した図書館を作る構想というのを発表したことがあります。その発表は、市長がしたのではありません。私が議員の方々に発表をしたというものであります。したがいまして、市長がなにも今日来なければいけないということではないと思います」(4月27日付当ブログ「追記―3」参照)―
「整備基本計画」(案)の市民説明会の際、生涯学習部の担当者はこう答弁した。「市長がなぜ、出席しないのか」と市民が詰め寄ったことへの返答で、私は「市長への忖度か」などとなじった。この場を借りて謝罪すると同時に逆にこの担当者が自分の「職分」を十分にわきまえていたことを理解した。ある種、幕間劇めいたこの光景は目を覆うばかりの上田市長の独断専行を市民の目からそらすため、現場職員が必死になって築いた「防波堤」のように私には見えた。「補助執行」に名を借りた図書館構想の“不都合な真実”が暴かれるのを恐れたのだろうという私の推測は多分、的外れではないと思う。
「そういえば、図書館関連で教育長が口を開いたことは一度もなかったな」と今さらながら自分の不明を恥じてしまう。議会答弁や議員説明会、記者会見…。公の場で真っ先に手を挙げるのはいつも上田市長だった。3月27日開催の定例記会見の場で上田市長はこう述べている。「市ではこの結果(対話型「市民会議」などの市民参画手続き)を踏まえまして、JR花巻駅前を、先ほど申し上げましたとおり建設候補地に選定したところであります」(会議録から)。本来なら、図書館を所管する教育長の口から告げられるべきなのに一事が万事…上田市長の口癖である「コンプライアンス」(法令遵守)を自ら足蹴りする形でうぶ声を挙げたのが「新図書館」の誕生劇だったのである。
市立図書館協議会(5月13日)、市教育委員会議(5月19日)…。正式の「整備基本計画」の策定に向けた動きが急ピッチで進んでいる。「審議会等の設置及び運営に関するガイドライン」の規定によると、遅くとも会議開催3日前までに資料を配布しなければならないとされている。しかし、図書館協議会の委員のひとりは「市側から当日までには何とか間に合わせるという連絡があった」とその拙速ぶりに怒りをあらわにしている。ところで、補助執行の範囲については次のような規定もある。
「地方公共団体は、条例の定めるところにより、当該地方公共団体の長が、次の各号に掲げる教育に関する事務のいずれか又は全てを管理し、及び執行することとすることができる」(「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第23条:職務権限の特例)として、その各号については「図書館、博物館、公民館その他の社会教育に関する教育機関(「特定社会教育機関」)の設置、管理及び廃止に関すること」と定めている。
たとえば、山形県長井市では4年前、市立図書館を含めた社会教育施設を首長部局の管轄下に置く条例改正に踏み切っている。上田市長が本当に“上田私案”(上田図書館)の実現を望んでいるのなら、長井市のように条例を改正して、思う存分に振る舞えばよいだけの話である。だからと言って、これまでの“越権行為”が見逃されてよいわけがない。と同時に、それを許してきた図書館を所管する教育委員会の責任も問いたい。正当な権限を委任されていない補助執行自体が無効ではないか、と。いま渦中にある「新花巻図書館整備基本計画」(案)は事実上、「幻(まぼろし)」の図書館像と化している。
(写真は立地候補地の「事業費比較」資料を示しながら、「駅前立地」の正当性を主張する上田市長=2024年12月9日、花巻市議会議場で)
≪追記ー1≫~AIに聞きました
「無効な行政行為」を名乗る方から、図書館と行政とのかかわりについて、AIに質問したという以下のコメントが寄せられた。“末期”高齢者にとってこの世界は遠くにかすむ存在だが、う~ンとうなずかせる部分もあった。
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新図書館の建設候補地の選定について、市の担当は人工知能、AIを活用していましたので、今回のブログの記事についてAIに聞いてみようと思いました。そもそも市の教育員会が担当するべき図書館の事案について、教育委員会が担当なのに、市長がその仕事を担当しているかのように詐称して行われてきた花巻市の実情が明らかになりました。その回答は以下のとおりです。
・無効な行政行為とは、その成立当初から効力を生じない行政行為のことです。これは、行政行為の瑕疵が重大かつ明白である場合に認められます. 具体的には、処分要件の誤認など、行政行為の主体や内容が不明確な場合に無効となります
・無効な行政行為は、初めから効力を有しないため、取消訴訟を提起することもできません. また、無効確認訴訟によって、無効であることを確認することも可能です。無効な行政行為の判断は、行政行為の瑕疵が重大かつ明白であること、つまり、誰が見ても明白に違法であると認められる場合に限られます
・無効な行政行為と、取消し可能な行政行為の違いを理解することが重要です。取消し可能な行政行為は、一定の瑕疵があるものの、その瑕疵が重大かつ明白でない場合、行政行為は有効として扱われ、後日取消しが可能になります
≪追記―2≫~私もAIに聞いてみました
「両面宿儺」を名乗る方から「追記―1」に関連し、「無効な行政行為」について小学校5年生にも分かるよう、AIに説明を求めたという以下のようなコメントは寄せられた。
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こんにちは!「無効な行政行為」について小学校5年生にも分かるように説明しますね。行政行為って何?まず、「行政行為」とは、国や市区町村などの行政機関が、私たち国民に対して行う決定のことです。例えば~・運転免許証を発行すること・建物を建てる許可を出すこと・税金の額を決めることなどが行政行為にあたります。
「無効な」行政行為とは?「無効な行政行為」というのは、行政機関の決定に、とても重大な問題があるため、最初から法的な効果がないとされるものです。例えるなら、学校のテストで先生が出した問題が、教科書にも載っていないような難しすぎる内容だったり、間違った知識を問うものだったりしたら、そのテスト自体が「無効」になるようなものです。
具体例で理解しよう。例えば:
1. 権限のない人が決定した場合~市長だけが決められる事を、事務員が勝手に決めてしまった
2. 明らかに法律違反の決定~憲法や法律で禁止されていることを許可する決定をした
3. あり得ない内容の決定~「空を飛べる権利を与える」など、現実にはあり得ない許可を出した
こういった場合、その行政行為は「無効」となり、最初から効果がなかったことになります。普通の「取り消せる行政行為」との違い
ちょっとした手続きミスや軽い問題がある行政行為は「取り消せる行政行為」と言って、誰かが「これはおかしい」と言うまでは有効です。でも、「無効な行政行為」は、誰も指摘しなくても最初から効力がないんです。つまり、「無効な行政行為」は、問題があまりにも大きいため、「そんなこと最初からなかったことにしましょう」と扱われるということです。
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