「花巻は賢治のまちであるから、賢治にゆかりのある場所に建設するべきという強い意見をお持ちの方々もいらっしゃいます。でもそれについては、市民会議の中でも図書館の場所と宮沢賢治ゆかりの場所であることは必ずしも結びつかないんじゃないかという意見の方もたくさんいらっしゃいました」(3月27日開催の定例記者会での上田東一市長の発言)
「花巻駅前も賢治作品『シグナルとシグナレス』の舞台であり、『銀河鉄道の夜』のモチーフとなった岩手軽便鉄道や花巻電鉄の駅があった場所で賢治ゆかりの地でもあります」(3月28日開催の議員説明会での菅野圭生涯学習部長の発言)
「日ハ君臨シ カガヤキハ/白金ノアメ ソソギタリ/ワレラハ黒キ ツチニ俯シ/マコトノクサノ タネマケリ…」(花巻農学校「精神歌」)―。賢治は1921(大正10)年12月、花巻農学校(旧稗貫農学校)の教師となり,校歌を持たなかった生徒のためにこの歌を作詞した。まるで一編の詩編のような校歌は次第に市民の口の端にも上るようになり、いまでは“市民歌”として毎朝夕の7時、市役所屋上のスピーカーから市内全域に流されている。
“桑っこ大学”と揶揄(やゆ)されたその作詞の舞台こそがもうひとつの立地候補地の「旧花巻病院跡地」だった。真の意味での「ゆかりの地」とはこういう場所を指すのではないのか。上記の二人によると、あらゆる山野を渉猟(しょうりょう)した賢治にとってはその足跡の一つひとつが「ゆかりの地」ということになる。“こじつけ”もいいところである。「駅前立地」へ誘導するための姑息(こそく)な“底意”が透けて見えてくる。
「牽強付会」((けんきょうふかい)とは―。市側も対話型「市民会議」の意見集約の際に利用したという「AI」(人工知能=Copilot)に聞いてみた。「自分に都合がいいように、滅茶苦茶な理屈をこじつけることです」という答えが返ってきた。ピッタリではないか。「整備基本計画」では駅前立地に至る経緯について、誤解を与えないよう丁寧に説明してほしい。
(写真は賢治が花巻農学校「精神歌」を作詞した旧稗貫農学校。前身は郡立農蚕講習所で、生徒数はわずか60人余という小さな学校だった=インターネット上に公開の写真から)
《パブコメ第2弾》~「鶴陰」精神と新興跡地(第1弾は4月1日付当ブログ参照)
・「基本計画」(案)は三つ基本方針の筆頭に「郷土の歴史と独自性を大切にし、豊かな市民文化を創造する図書館」―を掲げ、その精神は先人の偉業をたたえた「鶴陰碑」にさかのぼるとしている。現在、この碑は市博物館に移設・展示されているが、かつては旧花巻城三の丸(のちの東公園)に建っていた。
戦後、当該地は旧新興製作所の社有地となったが、同社が移転して以降は荒れるに任せたまま放置されている。さらに、現在は所有者が存在しない状態になっており、災害時や景観上の不安も高まっている。仮に来館者が新図書館の理念が宿る由緒あるこの地が廃墟と化している現実を知った際の落胆は思いに余りある。新花巻図書館の開館に合わせ、いわゆる「新興跡地」の改修を進めてほしい。
・新花巻図書館の開館時における館長は庁内人事のたらい回しではなく、広い知見を有する人材を求めるために「公募制」を導入してほしい。
《パブコメ第3弾》~当地ゆかりの現役作家コーナーの設置について
平成14年4月、市文化会館で宮崎駿監督のアニメ作品「千と千尋の神隠し」が上映されるのに合わせ、隣接する図書館で「柏葉幸子童話作品展」が開催された。主催した「『花巻に映画の灯を再び』市民の会」は益金の一部で『ミラクル・ファミリ-』や『地下室からのふしぎな旅』、『ざしきわらし 一太郎の修学旅行』、『モンスタ-・ホテル』シリ-ズなど柏葉作品を購入し、図書館に寄贈した。それらの作品はいま、こども室のコーナーに並べられているはずである。
第15回講談社児童文学新人賞を受賞した『霧のむこうのふしぎな町』(1975年)は「千と千尋…」の下敷きになったことでも知られる。柏葉さんの作家活動はめざましく、『つづきの図書館』(2010年)は第59回小学館児童出版文化大賞、『岬のマヨイガ』(2016年)は野間児童文芸賞に輝いている。さらに、3年前には『帰命寺横丁の夏』が米国で出版された最も優れた児童書に贈られる「米バチェルダー賞」を受賞。ドイツ、韓国、ロシア、インドネシアの各国で翻訳出版されている。
そんな矢先に飛び込んできたのが当市在住の阿部暁子さんの作品『カフネ』が本屋大賞を受賞したというビッグニュースである。このほかにも地道な作家活動を続けている人もおり、人材発掘を兼ねた「現役作家コーナー」をぜひ、設置してほしい。
《パブコメ第4弾》~「駅前立地」に至る経緯の記述について
・「花巻市立地適正化計画」(平成28年6月策定)によると、都市機能誘導区域内における事業として「生涯学園都市会館(まなび学園)周辺への『図書館(複合)』の移転・整備事業」が挙げられている。
・一方、「新花巻図書館整備基本構想」(平成29年8月)では「『都市機能誘導区域』に整備することとし…候補地を数箇所選定した上で、基本計画において場所を定める」としている。
以上の記述について、①わずか1年足らずの間に建設場所がまなび学園周辺から『数箇所』に拡大された理由は何か、②今回、対話型市民会議が「駅前立地」を決定する以前に市側は複数の建設候補地の中から、「駅前」を第1候補に挙げた経緯がある。事業主体である市側が当該地を立地の最有力候補地として、位置付けた理由は何か。
この2点について、市民が理解できるように「整備基本計画」の中に明記してほしい。
この記事へのコメントはこちら