図書館立地の意見集約…「災害リスク」への不安の声が~建設場所の決定に影響か!!??

  • 図書館立地の意見集約…「災害リスク」への不安の声が~建設場所の決定に影響か!!??

 

 「駅前か病院跡地か」―。新花巻図書館の立地場所を話し合う対話型「市民会議」(75人で構成)の2回目までの中間報告がまとまった。「活性化」「文化歴史」「周辺環境」「アクセス」「防災」「安全」など11項目のキーワードごとに判定する手法で、双方のメリット・デメリットを比較検討した。第4回目となる2月15日の会議の結果を受けて、市側が最終的な立地場所を決定することになる。中間報告によると、双方の判定結果の上位3は以下の通りになっている(かっこ内の数字は発言件数)

 

<メリット>
 

・花巻駅前~①アクセス(73件)②周辺環境(32件)③活性化(21件)
・病院跡地~①周辺環境(41件)②連携(16件)、土地(16件)③駐車場(11)、費用(11)

 

<デメリット>
 

・花巻駅前~①周辺環境(33件)②土地(14件)③駐車場(9件)、費用(9件)
・病院跡地~①アクセス(53件)②安全(18件)③周辺環境(9件)

 

 

 「これって、商業施設かエンタメ施設を立地するためのアンケート調査ではないのか」―。この数値を見た瞬間、そう思った。たとえば、立地判定の決め手になっているキーワードのひとつが「アクセス」(駅近VS駅遠)。「駅前」立地のメリットの場合、そのアクセスの利便性を生かした「賑わい創出(活性化)」という発言が目立っている。一方、病院跡地のデメリットの筆頭もそのアクセスで、市民会議の参加者の判定基準が「足の便の良し悪し」に軸足が置かれていることが浮き彫りになった。

 

 総じて「図書館」立地とはかけ離れた論議に終始し、「(図書館は)人の集まるところに立地するのではなく、人を呼び寄せる立地空間こそが図書館である」―。こんな持論を持つ私にとっては何かハシゴを外されたような気分である。さらに、市民会議に実際に出席したのは第1回目が65人、第2回目が64人、第3回目はわずか57人に止まった。構成定数(75人)を大幅に下回る人数での判定が真に民意を反映するものだと、当局側は本気で思っているのだろうか。仮に“アリバイ作り”だとしても余りにも稚拙ではないか。さらにその一方では…

 

 「災害区域が近いので怖い」、「土砂(災害)の危険は本当にないのか」、「地盤沈下が不安」…。病院跡地のデメリットとして、その「安全性」に不安を訴える発言が18件に上ったことが分かった。きっかけは、当該図書館用地が急傾斜崩壊危険区域や土砂災害警戒区域などにすっぽり囲まれていることが比較調査報告書で明らかになったことだった。立地に伴う「メリット×デメリット」という次元以前の立地そのものの是非にもかかわりかねない“災害リスク”の表面化に市民は大きな戸惑いを見せている。なぜ、このタイミングなのか…

 

 この地には100年間の長きにわたって、市民のいのちと健康を守るための総合花巻病院の病棟群が建ち並んでいた。市側は「立地の安全性は担保されている」と言うが、市民の不安を払拭するためにも安全性を証明する科学的な根拠と病院経営が可能だったこれまでの経緯について、きちんと説明すべきである。そうでなくても、一部の議員が病院跡地へのネガティブキャンペーンの片棒を担ぐなど”世論誘導”の陰もちらつき始めている。「100年の計」とも言われる文化遺産の行く末の選択を誤ってはならない。

 

 上田東一市長肝いりの住宅付き図書館の「駅前」立地構想が降ってわいたのは、ちょうど5年前。定住促進と家賃収入を当てにした“儲かる図書館”が旗印だった。その同じ場所がいままた、立地論争の渦中にある。図書館に一家言を持つフランス文学者で思想家の内田樹さんのある講演録から、その一部を以下に引用する。

 

 「図書館の社会的有用性は来館者数とか貸出図書冊数とか、そういう数値によって考量されるべきだというのは、いかにも市場原理主義者が考えそうな話です。図書館はふつうの『店舗』とは異質な空間です。だから、来館者数が何倍増えたことは図書館の社会的有意性が何倍になったことであるというような推論をして怪しまないようなシンプルマインデット(単細胞的)な人たちには正直言って、図書館についてあれこれ言って欲しくない」―。まるで、上田市長を名指しした発言みたいに聞こえてくる。

 

 

 

 

(写真は立地場所のメリット・デメリットを話し合う若者世代=花巻市のまなび学園で。HP上に公開のニュースレターより)

2025.02.04:masuko:[ヒカリノミチ通信について]

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