「今後、建設候補地のボーリング調査をする予定になっており、その結果次第では立地計画の内容に影響が出ないとも限らない」―。花巻市議会12月定例会の一般質問初日の9日、候補地のひとつである「花巻病院跡地」に関連し、上田東一市長は今後の立地選択に含みのある発言をした。本舘憲一議員(はなまき市民クラブ)と伊藤盛幸議員(緑の風)、久保田彰孝議員(共産党花巻市議団)が、候補地の周囲に急傾斜崩壊危険区域や土砂災害警戒区域など「災害リスク」が存在することについて、「安全性は確保できるのか」とただしたのに対して答えた。
「駅前か病院跡地か」―。新花巻図書館の立地場所については、双方の事業費などを比較調査した資料をもとに現在、「対話型市民会議」(75人で構成)で論議が続けられている。コンサルタントが明らかにした資料によると、病院跡地の土地利用計画図(イメージ図)は災害リスクがある区域が色塗りで描かれ、真っ先に目に飛び込んでくる。質疑に立った3議員は「見たとたん、安全性に疑義を抱かせるような描写ではないか。建設予定地の安全性が担保されていると言うのなら、予断を与えないようもっと、丁寧な説明が必要ではないか」とただした。現にこの資料をめぐっては高橋修議員が所属する会派「明和会」(8人)が主導する形で、病院跡地への“ネガティブキャンペーン”(12月1日付当ブログ参照)が展開されるなど市民の間には立地場所をめぐる判断に困惑する声が広がっている。
この日、明らかにされた地質調査(ボーリング調査)は図書館本体の建設予定地など6か所で、市側は「液状化や地盤沈下などのリスクを調査するためだ」としている。同様の地質調査は駅前候補地でも3か所が予定されている。これまでの経緯について、上田市長は「仮に誤解を与えることがあったとしても、あえて情報はすべて公開すべきだと考えた。判断する際の市民の叡智に期待したい」と答えるにとどまった。これまでの市民説明会や対話型市民会議の場にもこのボーリング調査の一件は報告されていない。なぜ、今なのか。病院跡地への負のイメージがさらに加速することが懸念され、「恣意的な印象操作ではないか」という声がふたたび、高まりそうだ。
「この会議は立地場所をどっちかに決めるという場ではない。双方のメリットとデメリットを出し合い、それを集約していくというのが私の役割だ」―。一方で、メインファシリテーター(進行役)の山口覚・慶応義塾大学大学院特任教授は第1回目の対話型市民会議(11月17日)の冒頭、こう述べている。この日の質疑の中で上田市長は「立地場所を特定する形での意見集約をしていただきたい。無作為抽出で選ばれた市民で構成するこの会議こそが民意を反映する場だと思う。市としてはその結果を最大限尊重したい」と述べ、双方の認識の違いがあらわになった。
他方、概算事業費が「駅前」(39億9千万円)に比べて、「病院跡地」(36億3千万円)の方が安価になっていることについて、3議員は「地方財政法」(「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない」=第4条)や「地方自治法」(「地方公共団体は、その事務を処理するに当っては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」=第2条第14項)―などを引き合いに出し、「法的には安い方を取得するのが筋ではないか」と迫った。
これに対し、松田英基副市長は「これらの法規定は抽象的な内容であり、最上級の憲法規定では住民の福祉向上が自治体の責務だと定められている。金額の多寡(たか)に左右されてはならないというのが憲法解釈だ」と切って捨てた。論点が整理されるどころか、混迷の度はさらに深まりそうだ。上田市長の”強行突破”宣言だと見ておこう。
(写真は色塗りのイメージ図を手にして答弁に立つ上田市長=12月9日、花巻市議会議場で)
《追記ー1》~対話型市民会議の報告書
第1回「対話型市民会議」の論議の内容がニュースレタ―という形でHPに掲載された。以下のアドレスからどうぞ。
新花巻図書館建設候補地に関する市民会議 ニュースレター第1号 (PDF 403.7KB)
《追記ー2》~花巻市議会について
「匿名」を希望する方から、以下のようなメールが寄せられた。「一般質問を拝見して思いました。羽山議員さんの発言が明らかに関連があるのに、通告にない内容だからという理由で切り捨て。何か本質に迫ろうとするのを阻止したいのかな?って疑惑の一般質問に驚愕してますよ!公正、透明性を遵守する花巻市議会であれ!」
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