「駅前か病院跡地か」―。新花巻図書館の立地場所にかかる市民の意見集約をするための「対話型市民会議」が17日にスタートした。慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の山口覚大学院特任教授がメインファシリテーター(進行役)を務め、WS(ワークショップ)形式で進められた。参加者75人(この日になって1人が辞退)は11のグループに分かれ、意見交換をした。第1回目のこの日は二つの候補地について、それぞれのメリットとデメリットを出し合い、残る2回(予備日として1回)の会議で、意見集約につなげたいとしている。
駅前については「駅に近く、公共交通の便に恵まれている。最近は全国的に駅前図書館が増えている」といったメリットが出された反面、「騒音や防犯上の問題が心配だ」という声も聞かれた。病院跡地については「景観がすばらしく、文教施設とも隣接している」という意見が出された一方で、配布資料に示された「災害リスク」との近接を懸念する声もあった。若々しい声が飛び交う会場の顔ぶれを見ながら、「おやっ」と思った。高齢者の姿がほどんど見当たらなかったからである。ふいに、2年前の議会論戦の光景を思い出した。
「高齢者のためだけの図書館で良いのか。それなら今の図書館で十分。若い人は圧倒的に駅前を希望している」―。その年の12月定例会で上田東一市長は立地場所にからんで、“高齢者”排除とも受け取られかねないこんな暴言を口にした。質問者は檄した口調で迫った。「看過できない重大発言だ。世代間の分断を促しかねない。取り消しを要求したい」。上田市長はこう応じた。「私も現在68歳の老齢世代。だからこそ、将来を見すえて若者を含めたあらゆる世代に開放された図書館を目指したいと思っている。言葉が足りなかったとしたら、訂正したい。ただ、分断だとは決して思っていない。表現が不適切だとしたらお詫びをしたいが、取り消す必要はない」―
今回の市民会議の構成を知ってまた、ビックリした。若年層(10代~30代)が35人、中高年層(40代~60代)が34人に対し、高齢者層(70代以上)はわずか6人だったからである。性別は男性37人、女性38人で、15歳から81歳までの75人で構成されていた。一方、この日の会議で当局側から病院跡地への立地を求める署名が1万筆を超えたことが報告された。
夏の猛暑に耐え、厳寒の寒さに震えながら、この活動を担ったのはほとんどが後期高齢者のお年寄りたちだった。その先頭に立ったメンバーが傍聴席から身を乗り出すようにして、会議の成り行きを見守っていた。「市側は無作為抽出で公平に選んだ市民の中から参加希望を募ったと言っている。私たちにも訴えたいことは山ほどあるけど、(抽出に)外れてしまった。でも万が一、当たったとしても4時間という長丁場に耐えられるかどうか。私たちの署名運動も健康を考えて、1時間に制限した。高齢者に配慮した時間設定はできなかったのか」―。こんなうめきにも似た声が耳に届いた。
この“難行苦行”に辛うじて耐えた不肖84歳も同調したい気持ちになった。「市長の暴言に抗(あらが)い、真摯な図書館論議を続けて欲しい」―と
(写真は会場を埋め尽くしたが会議参加者たち=11月17日午後、花巻市の「まなび学園」で)
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