花病「裁判沙汰」余話…「あだ花」と散った夢の跡~仏作って、魂入れず!!??

  • 花病「裁判沙汰」余話…「あだ花」と散った夢の跡~仏作って、魂入れず!!??

 

 「移転地において、年間80万人が行き交うにぎわいを創出。中心部における地域活性化につなげていきます」(平成27年12月1日発行「広報はなまき」)―。もうあれから、足かけ10年になる。「これでシャッター通りともおさらばできるね」…その日、花巻市民は一面を埋め尽くした完成イメージ図に小躍りした。一般病棟のほか少子化に備えた助産所の開設や234席の移動式座席を備えた「多目的ホール」、オーガニックが売り物のレストランなどなど。目の前に示された「(総合花巻病院)移転整備基本構想案」(平成27年11月)はまさに将来の夢を約束する朗報になるはずだった…

 

 暗転はわずか1年後にやってきた。当初予定の事業費約99億円は12億減の約87億円の減額に。当市は当初約30億円の補助を予定していたが、余りにも巨額な税支出に市民や議会側から批判が噴出、結局約20億円に抑えられた。80万人の(病院)関係人口の創出というスローガンは泡沫(うたかた)の夢と消えた。新たに公表された「移転新築整備基本構想」(平成28年12月)によると、自己資金はわずか1億円。ほとんどが補助金や金融機関からの借り入れにおんぶした形の新病院はそれでも強引にオープンを急いだ。一体、なぜ…

 

 「仏作って、魂入れず」―。事実上の“見切り発車”は当然のように、病院の経営を直撃した。現在、裁判を係争中の男性技士のAさん(1日付当ブログ参照)は当時の内情をこう語っている。「臨床工学技士を募集していることを知り、これまで何か所かの病院で培ってきた技量を発揮できると…。ところが、まるで天国と地獄。年間3・5カ月とされていた期末手当は1・5カ月。後に分割払いで支払われたが、労基局から残業手当約2千万円以上の未払いを指摘されたことも。知人の事務員は陰湿なパワハラといじめに耐えられなくなり、退職に追い込まれた」―

 

 “助産所”事件と呼ばれる出来事があった。「助産所は2階建て(延べ154平方メートル)で1日2人の利用者に対し、産婦人科医や助産師など5人が対応に当たる」―。旧構想案でこう明記されていた記述が新構想案ではそっくり削除され、こう書き替えられた。「将来的に産婦人科医師や助産師の体制が整った際には出産の受け入れを検討する。それまでは助産師外来を開設し、出産前後の妊婦指導を行えるようにし、同時に産後ケア施設の開設も検討する」―。この“公約”はすべて反故(ほご)にされ、「出産」受難は解消されないまま、現在に至っている。

 

 「まちづくりのために新病院の建設を急ぐのだとすれば、これほどまでの医療への冒涜(ぼうとく)ない」―。知り合いの開業医が吐き捨てるように言った言葉がまだ、頭の奥に刻まれている。今回の巨額な財政支援を目の当たりにしながら、この医師の怒気がはっきり、分かるような気がした。「上田(東一)市政の誕生に花を添えるための、これは言ってみれば『立地適正化計画』の成功を祝うための“ご祝儀”事業ではなかったのか」―

 

 病院から徒歩で5分前後の場所に職員駐車場がある。その場所でのモラルを欠いた振舞いに町内会から苦情が出たことについてはすでに触れた。その背中合わせに瓦礫(がれき)の荒れ野が広がっている。上田市政の“負の遺産”とささやかれる新興製作所跡地(花巻城址)である。本来なら、まちのシンボルになるべきはずのプロジェクトが無惨な姿をさらけ出している。一方で、東北有数の温泉地がある当市へのインバウンド(外国人観光客の誘客)を呼びかける上田市政…城郭文化に誇りを持つ外国人にとって、この光景はどう映るだろうか。こうした倒錯した発想にめまいを覚える。新病院に続いて、新花巻図書館の行方にも…何か不吉な予感が漂い始めている。

 

 

 

 

 

 

(写真は売店を兼ねた休憩室。当初計画ではオーガニックレストランとコンビニが入居するはずになっていた=花巻市御田屋町の病院入り口わきで)

 

 

 

 

 

 

 

2024.07.05:masuko:[ヒカリノミチ通信について]

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