「契約相手はどこか」―。新花巻図書館整備基本計画試案検討会議(座長・市川清志生涯学習部長)が30日まなび学園(生涯学園都市会館)で開かれ、冒頭、立地候補地の「事業費比較」調査について、「今月15日に入札が行われ、(請負業者との)契約が成立した」という報告があった。委員から促されてやっと業者名が明らかにされたが、あまり表には出したくないような素振りが逆に気になった。というわけで…
「まさか、そんなことはあるまい。でも万が一のこともあるから…」―。入札情報を調べているうちに、落札した(株)大日本ダイヤコンサルト以外の入札参加業者10社すべてがJR各社と請負関係にある独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(JRTT鉄道・運輸機構建)の有資格業者だということが分かった。つまり、どの業者が落札しても、JR寄りの業者に落ち着くという構図だったことが明らかになった。
「業者の選定につきましては、一般財団法人日本建設情報総合センターが運営する『業務実績情報システム』(テクリス)に登録される、図書館などの公共施設の基本計画策定業務に豊富な実績を有するコンサルタント、概ね実績上位10社程度による入札を予定しています」(令和5年12月20日の定例記者会見における上田東一市長の発言)―。たしかに、入札参加業者の中には図書館業務に実績を持つコンサルタントも含まれているが、すべてがJR寄りの業者だったということはどう見ても「公平性」を逸脱していると言わざるを得ない。
いまや幻(まぼろし)と化した図書館構想があった。ちょうど4年前(2020年)の1月29日、「新花巻図書館複合施設整備事業構想」―いわゆる「住宅付き図書館」の駅前立地が市民や議会の頭越しに突然、公表された。多くの市民の反対で、「住宅併設」案は白紙撤回されたが、計画通りに進んでいれば2023年度中には完成・オープンする運びになっていた。ということは、今回の「事業費比較」調査のうちたとえば、「駅前立地」に関係する現況整理や土地利用計画などは図書館建設を施工する前提として、すでに終了していたということになる。
公共施設の中でもとくに図書館は本体の造形美や周辺の立地環境が重要視される。JR側に偏した今回の入札手続きについて、ある市民はこう話す。「比較調査の公平性を証明するためには、図書館に特化したプロのコンサルタントも入札に参加指名すべきではなかったか。これではJR側との“ひも付き”入札と言われても仕方がない。今回の候補地の比較調査の意図そのものを疑ってかからなければならない」
JR花巻駅は東北の駅百選に選ばれ、駅前ロータリーには宮沢賢治の童話『風の又三郎』をイメージした「風の鳴る林」がある。21本のポールの先端には風車がついていて、風が吹くとくるくると回る仕組みになっている。周辺にはこのほか、『銀河鉄道の夜』をモチーフにしたからくり時計やその列車が銀河宇宙を疾駆(しっく)する巨大壁画など、賢治”ファンタジ-“に満ちあふれている。
駅橋上化(東西自由通路)によって、現駅舎は解体されることになっており、さらにスポーツ店用地の跡地に立体駐車場を併設した”箱物”図書館ができれば、「銀河鉄道始発駅」の風情があった駅前周辺の光景は一変する。
(写真は静かなたたずまい現在の駅前広場。駅舎を出ると、風の鳴る林と賢治のモニュメントが観光客を迎える=花巻市大通りで)
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