「駅前か病院跡地か」で揺れる新花巻図書館の立地場所について、その事業費などの比較調査を委託する業者の入札結果がHP上で公開された。それによると、落札したのは大手コンサルタント会社の「大日本ダイヤコンサルタント」(本社・東京)盛岡事務所。落札(契約)額は12,518千円で、市側が予算計上した額17,996千円を約550万円近く下回った。今回の入札について、上田東一市長は「図書館などの公共施設の基本計画策定業務に豊富な実績を有するコンサルタント、概ね実績上位10社程度による入札を予定している」と話していた(令和5年12月20開催の定例記者会見)
落札した同社はJR各社の鉄道事業などを請け負う独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(JRTT鉄道・運輸機構、前身は鉄建公団)の有資格業者の名簿にリストアップされている。HPによると、設立は1963年1月で、活断層の調査を手がけるなど地質や地層の調査・解析に実績があるという。履行(工事)期間は今年1月19日から10月15日までとなっている。市側によると、この間、土地利用計画や建物のイメージ図などの調査・作成をし、その後に市民説明会を開催した上で最終的な立地場所を決定するとしている。
今回の委託調査は「立地候補地の事業費比較がない以上、選びようがないという市民の声があった」(市側の説明)ことがきっかけとされる。これを受け、市議会12月定例会で「比較調査」の委託費として、約1800万円が賛成多数で可決された。事業費の中で注目されるのが立地場所の土地代金。旧総合花巻病院跡地については同病院が移転・新築した後で市側が買い取るという「土地譲渡協定書」(平成29年3月6日付)が双方で交わされている。一方、市側が第1候補地に挙げる花巻駅前のJR用地(スポーツ用品店用地)は新規の土地取得になるため、「税金のムダ使い(二重払い)ではないか」という批判が市民の間に強まっていた。
JR側はすでに駅前所有地の譲渡価格を「1億3千万円」程度と提示しているが、一方の病院跡地については「3億円」余りとされるものの、まだ正式な譲渡契約は交わされていない。こんな“見切り発車”のような今回の入札について、ある市民はこう話す。「そもそも、市有地化がすでに決まっている物件とこれから新規取得をするそれとを比較調査すること自体に合理性や正当性はない。さらに、今回落札した業者はJR側に近い立場にあり、出来レースと疑われても仕方がない。果たして、比較調査の公平性は担保できるのか」と不信感をあらわにしている。
一方、同じJRTT鉄道・運輸機構の工事部門の有資格業者名簿の中には地元花巻の11社が登録されている。その一社の代表取締役は「外部有識者」(公益財団法人「花巻国際交流協会」理事長)として、新花巻図書館整備基本計画試案検討会議の委員に名を連ねている。その発言を以下に記す。検討会議のこうした意向を受ける形で、市側は「駅前立地」へ舵を切った。
「もし可能なのであればスポーツ用品店敷地を市有地にして、図書館を建てるというのが駅前案の中でも最も望ましい方向だということを私は主張させていただいているのに対して、皆さん特段の異論もなかったので、駅前案の中の第一案としてスポーツ用品店敷地にするというのは、議論の中では極めて全うで皆さん理解をしていただける内容で議論をしてきたのではないかなと私は思っておりまして」(令和4年9月20日開催の第12回検討会議の会議録から)
今回の事業費比較の調査を含め、「駅前立地」に向けた布石が着々と進められてきた形跡が読み取れる。一方で、病院跡地への立地を求める市民の声も次第に大きくなっており、“立地”論争の行方から目が離せなくなってきた。
(写真は2024年元旦の早池峰山。この霊峰を遠望する病院跡地への立地を望む市民が日ごとに増えている=花巻市内の北上川河畔から)
<署名延長のお知らせ>
新花巻図書館の旧病院跡地への立地を求める署名運動は全国の皆さまのご協力により、4,730筆という予想以上の賛同をいただくことができました。支援者の一人として、感謝申し上げます。行政側の動向が不透明な中、主催団体の「花巻病院跡地に新図書館をつくる署名実行委員会」(代表 瀧成子)は引き続き、全国規模の署名運動を続けることにしました。締め切りは2024(令和6)年1月末必着。送付先は:〒025-0084岩手県花巻市桜町2丁目187-1署名実行委員会宛て。問い合わせ先は:080-1883-7656(向小路まちライブラリー、四戸)、0198―22-7291(おいものせなか)
署名用紙のダウンロードは、こちらから。 「全国署名を全国に広げます!~これまでの経過説明」はこちらから。署名実行委員会の活動報告などは「おいものブログ」(新田文子さん)の以下のURLからどうぞ。
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