「駅前か病院跡地か」―。建設場所の選定をめぐって、迷走を続けている「新花巻図書館整備基本計画試案検討会議」(座長、市川清志生涯学習部長)が24日、1年2か月ぶりに開催された。懸案だったJR花巻駅前の土地譲渡(約3,664平方㍍)について、JR東日本盛岡支社との間で「評価額1億3千万円」程度で双方が合意に達したことが明らかになった。検討会議側も了承した。これに伴い、二つの立地候補地の「事業費」比較を行うため、花巻市議会12月定例会に「比較調査業務委託費」として、約1,800万円が予算計上される見通しになった。
新図書館の“立地”論争のきっかけはその建設場所の是非に関わる経緯にさかのぼる。市役所にほど近い旧総合花巻病院跡地については5年前、同病院が移転・新築した後で市側が買い取るという「土地譲渡協定書」(平成29年3月6日付)が双方で交わされている。一方、市側が第1候補地に挙げるJR花巻駅前のスポ-ツ用品店敷地については、新規の土地取得になる。このため、市民の間には「せっかく市有地化が決まり、文教地区にふさわしい病院跡地が目の前にあるのに、なぜ駅前にこだわるのか。税金のムダ使い(二重払い)ではないか」という素朴な声が日増しに高まっていた。
この点について、私が市川部長に「病院跡地が市有地になることはすでに既定事実。今回、改めて双方の事業費を比較する際、病院跡地の取得費がこれに算入されることはないと理解して良いか」とただしたのに対し、こう答えた。「跡地の取得についてはまだ、正式な契約は終わっていない。事業費に算入するかどうかは私の立場では判断できない」と言葉を濁した。図書館本体に係る事業費は建設場所に関わらず、同程度と見積もられる。一方、総合花巻病院が市側から現在地を買い取った当時の価格は「3・8億円」(平成28年12月時点の病院側資料)となっている。等価交換の原則に従えば「1・3億(駅前)VS3・8億円(病院跡地)」という単純な算式も目に浮かんでくる。「駅前の方がはるかに安いではないか」ーみたいな…
市川部長はこの日、スポーツ用品店敷地の解体について「その費用は市で負担することになる。12月定例会にその見積もりを出す。(スポーツ店の営業停止に伴う)”店舗補償“のようなものを市側が負担することはない」と明言した。外部のコンサルタントへ委託する今回の「事業費」比較には約9が月を要するという。その後に市民説明会を開いて意見集約をすることになるが、10年越しの新図書館問題の行方はふたたび霧の彼方にかすんでしまったようである。その一方で、市側が今後どんな“からくり”(レトリック、いやむしろトリックというべきか)を繰り出すのか、依然として目を離すこともできそうにない。当面は議会側が今回の業務委託費の予算計上にどう対応するかが焦点になりそうだ。
(写真は1年2か月振りに開かれた「試案検討会議」。立って、マイクを握っているのが市川部長=11月24日午後、花巻市のまなび学園で)
《追記―1》~「タダではない」…上田流「レトリック」の手法
「病院跡地は市で買い取ることで双方が協定で合意しているのに対し、駅前のJR用地は新規取得になる。税金の二重払いではないか」―新図書館の立地場所をめぐってはこれまでも再三、議会で取り上げられた経緯がある。これに対して、上田東一市長の口から飛び出したのが以下の「タダではない」発言である。もう少し、手の込んだ”東大話法“と思いきや、これじゃ子供だましの屁理屈、いや“詭弁”と言わざるを得ない。
●上田市長の「タダ」発言の要旨(2022年12月定例会会議録から)―「仮に病院跡地の譲渡金額が3億円だとして…、いや立地候補地の駅前スポ-ツ店の敷地の金額もまだ決まっていませんが、いずれにせよ(病院跡地に比べて)はるかに安い。たとえば、市が独自にその土地(病院跡地)を他の目的に使おうとした場合、(そこに図書館が建っていれば)新たに土地を求めなければならない。そうすればまた、金がかかってしまう。だから、タダではないと言ったんです」ー。新図書館の病院跡地への立地へ「NO」サイン(予防線)を出したというのがミエミエ。今回の「事業費」比較の中で、今度は衣の袖からどんな鎧(よろい)が見えることになるのか…
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