「岩手県の財政力は非常に厳しい。国に忖度(そんたく)しないで、基盤整備できますか」、「(国に対し)お願いに行けるリ-ダ-を選んでいただかなくては、岩手県の皆様の幸せにつながらないということを私は今日、布教するために参りました」―。今次の岩手県知事選は立憲民主党など野党が押す現職の達増拓也氏と自民党の全面的な支援を受けた前県議の千葉絢子氏の与野党対決となっているが、冒頭は24日当地花巻で開かれた千葉氏の総決起大会おける本人の発言要旨である。いまや、口にするのも憚(はばか)られる“忖度”とか“布教”という言葉が何のためらいもなく、しかも確信めいた口調でポンポンと飛び出す…そのことに私は心底、怖気(おじけ)づいてしまった。
宮沢賢治は岩手県を「イ-ハト-ブ」と名づけ、こう書いている。「実にこれは著者の心象中にこのような状景をもって実在したドリ-ムランドとしての日本岩手県である」(『注文の多い料理店』広告チラシ)。まさか、“夢の国”のど真ん中でこんな時代がかった、上から目線の言葉を聞くとは思っていなかった。さらに、この候補は「仏国土」―平泉の出身だという。「この鐘の一音が及ぶ所は、世界のあらゆる所に響き渡り、苦しみを抜き、楽を与え、生きるものすべてのものにあまねく平等に響くのです…」(中尊寺建立供養願文=口語訳)―。初代藤原清衡はこの願文に“万物平等”の浄土思想を託した。一体、この人はこうした風土や歴史が培ってきた過去のレガシー(遺産としての記憶)をどう体に刻みこんできたのだろうか。
そいう言えば、イ-ハト-ブの盟主を自認する花巻市の上田東一市長は口先では「中立」を装いながら、千葉候補と二人三脚の蜜月ぶりである。補助金行政にどっぷりと浸かったその手法を是とする二人はきっと、ウマが合うのだろう。そんな中、千葉候補の地元・平泉町長が達増支持を明言したというニュ-スが耳目を集めている。「来年(2023年)はどんな年になるか」と黒柳徹子から問われたタモリはこう答えている。「新しい戦前になるんじゃないですか」
いま全国から注目されている岩手県知事選―。賢治や清衡の「平和思想」を継承する戦いになるのか、あるいはまた「新しい戦前」…あのファシズムの世界へ後戻りするのか。原発の汚染水の放出にはそっぽを向き、五体満足な子どもを産み育てたと自慢気に語るその言葉がそのまま、「障がい者」の心を傷つけていることに気が付かない無自覚性…。この種の人物に対しては「政策」より先に、まずその「資質」こそが問われるべきであろう。将来の国運さえも占いかねない重大な選挙戦の様相を見せつつある。今回の選挙は真の意味で、「夢の理想郷」(イーハトーブ花巻)と「仏国土」(平泉)の真価が試される戦いでもある。
(写真は千葉候補の選挙風景=インタ-ネット上に公開の写真から)
●《知事選特集》
~千葉候補の発言「全記録」のリンク先を以下に掲載します。政治家の命は「言葉」です。アナウンサーを生業にしてきた千葉候補の口からどんな言葉たちが語られているのか。本当の言葉には魂が宿るー“言霊“(ことだま)と言ったのは作家の故石牟礼道子さんでした。
・https://x.com/meguken0714/status/1694859872406536685?s=51&t=5UVcDeGXHwLdDdpIyRS7mg
・https://x.com/meguken0714/status/1694992378606616769?s=51&t=5UVcDeGXHwLdDdpIyRS7mg
・https://x.com/meguken0714/status/1694977179279646986?s=51&t=5UVcDeGXHwLdDdpIyRS7mg
・https://x.com/meguken0714/status/1694710900354322461?s=51&t=5UVcDeGXHwLdDdpIyRS7mg
・https://t.co/ciRPiu3aDT https://x.com/makimakiia/status/1693641660914081858?s=51&t=5UVcDeGXHwLdDdpIyRS7mg
《9月3日投開票の岩手県知事選まで固定掲載》~知事選両陣営に公開質問状
花巻市内で花巻市内でフェアトレ-ド商品などの販売を手がける「おいものせなか」(新田文子代表)は次期知事選に立候補を表明している達増拓也・千葉絢子両陣営に対し、各分野にわたる公開質問状を提出した。新田さんら有志は昨年1月の花巻市長選以降「暮らしと政治の勉強会」を主宰し、「おまかせ民主主義」からの脱却を訴え続けている。質問状への回答やその他のアクセス先は以下の通り。
・岩手県知事選候補者に公開質問状と回答8頁(pdf)
・候補者早わかり版チラシhttps://oimonosenaka.com/wp-content/uploads/hayawakari-rotated.jpg
・おいものせなか | Organic, Ecology and Fair Trade (oimonosenaka.com)
《追記ー1》~現職の達増氏が一歩リード。岩手県知事選
共同通信社は26、27両日、任期満了に伴う岩手県知事選(9月3日投開票)の電話調査を実施し、取材結果を加味して情勢を探った。5選を目指す現職達増拓也氏(59)が幅広い支持を得てリードし、元県議の新人千葉絢子氏(45)が追う展開となっている。回答者の1割強は投票先を決めておらず、情勢は変わる可能性がある。
両氏とも無所属で、立憲民主など野党が達増氏を支援し、自民、公明両党は千葉氏を推す事実上の与野党対決。政党別では、立民、共産、社民を支持すると答えた人のそれぞれ8割を達増氏が固め、千葉氏は自民支持層の6割に浸透した。「支持する政党はない」とした無党派層からの支持は達増氏が6割弱で、千葉氏は2割台にとどまった。男女別で見ると、達増氏は男女それぞれ5割台の支持を得たのに対し、千葉氏は男性3割台、女性2割台だった。電話調査は、岩手県の有権者と答えた人を対象に実施。固定電話で723人、携帯電話で314人の有効回答を得た(27日付共同通信「電子版」)
《追記―2》~シモ-ヌ、フランスに最も愛された政治家
「仙台から」という奇妙な差出名の以下のようなコメントが寄せられた。時節柄から吸い寄せられるような気持で一気に読んだ。早く、映画を観てみたいと思った。
<シモ-ヌ フランスに最も愛された政治家>
今仙台市内ではシモ-ヌ・ヴェイユ(1927‐2017)というアウシュビッツを経験し、女性初の欧州議会議長を務めたフランス人の生涯の描く映画が上映されています。ナチスの独裁政治によってもたらされた最悪の状況と戦い、戦後はその悲惨な現実の記憶に苛まれながら、世間から見捨てられていた人々の人権を本来あるべき姿に戻す様子が描写されています。
今、岩手県内で行われている政治活動は、独裁主義と民主主義、中央集権と地方自治との違いを明らかにするものです。岩手県での結果が今後の日本における民主主義とそれを裏打ちする地方自治の将来を決定する可能性があります。どうか候補者の主張に耳を傾け、ふさわしい人を選ぶことに繋がりますよう隣県から切に祈っています。
https://simonemoviejp.com/index.html
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