「市長は積極的に花巻市のトップセ-ルスを行います」「市長と市議会は市の両輪です」「市民に情報を提供し、市民の意見を聞きます」「市職員の能力を最大限に活かします」―。9年前の2014(平成26)年2月、現上田東一市長が「花巻に新しい風を!」をスロ-ガンを掲げて初当選した際の「4つの基本姿勢」である。3期目を迎えたいま、“新しい風”どころか、宮沢賢治の理想郷・イ-ハト-ブを破壊しつくす暴風雨だったことが白日の下にさらされつつある。
手元に2通の「開示決定等期間延長通知書」なる文書がある。1通目は花巻市議会6月定例会の一般質問の中で明らかになった新花巻図書館にかかるJR花巻駅前の土地譲渡交渉に関する内容で、私は6月22日付で(受理は26日付)市情報公開条例に基づいて、関連文書の行政文書開示請求をした。条例上の開示期限によると当初、「(令和5年)6月26日から7月10日までの15日間」になっていたがその後、8月9日まで45日間開示を延長する旨の通知があった。その理由については「第三者に関する情報が記録されており、その第三者への意見照会に日数を要するため」とあった。
この件に関しては6月21日の一般質問の中で「(6月)13日にJR側から交渉に応じる」旨の回答があったことが明らかになった。各定例会の初日には市民へ伝達すべき重要な市政課題について、市長による「行政報告」が行われるのが恒例になっているが、6月定例会初日の16日にその言及はなかった。さらに、28日に開催された定例記者会見の場でもこの件に触れる発言はなかった。一方、一般質問の質疑応答では「当方が要求した対象の土地すべて(3,664平方メ-トル)の交渉に応じるという前向きの回答をいただいた。しかし、詳細について明らかにすることは控えたい」(市川清志・生涯学習部長)と「質問があったので答えた」という奥歯にものが挟まった答弁に終始した。
もう1通はJR側からの「土地譲渡交渉」の応諾文書が届いた前日の6月12日に締結された「東北本線花巻駅自由通路及び橋上駅舎整備事業に係る基本協定書」の開示請求で、これも同じ理由で8月4日まで44日間の延長になった。新図書館と駅橋上化という巨大プロジェクトについては当然市民の関心も高く、その成り行きが注目されていた。「基本協定書」締結の翌日の「土地譲渡交渉」の応諾回答…。このタイミングの良さからも上田市長が否定し続けてきた、”利権”がらみの「ワンセット」疑惑が現実味を帯びてくる。今回の相次ぐ「開示延長」に、一方の市民の間には「議会や市民に何か隠しておきたいことがあるのでは…」とあらぬ疑念が起きている。
「市長と市議会は市の両輪、市民に情報を提供し…」―。あらためて、新しい風を呼び起こすという触れ込みだった「4つの基本姿勢」を声に出して読んでみた。「だまされる方がもっと、悪いんじゃないのか」とだんだん、自虐的な気分になってきた。「平成の(風の)又三郎なんて、持ち上げたのはお前さんじゃなかったっけ」…。こんな言葉が天から降ってきた。突然の脳天パンチに一瞬、気を失いそうになった。その通りだったからである。
ふるさと納税の返礼品の見直しで、上田トップセールスの肝いりだった「イーハトーブ花巻応援寄付金」―、その人気商品…”海外産の原材料を使った熟成肉”(牛タン)の先行きも怪しくなってきた。「一体この物語は、あんまり哀れ過ぎるのだ」。賢治の童話『フランドン農学校の豚』は撲殺(ぼくさつ)・解体される動物の悲しみを描いた作品である。イーハトーブのトップセールスマンにはまず、この物語を熟読玩味してもらいたいものである。そういえば、「職員の能力を最大限に活かす」どころか、その職員に対する”パワハラ”疑惑っていうのもあったなぁ、いまもあるんじゃないのかなぁ。旧新興製作所跡地、旧料亭「まん福」跡地…一方で、”負の遺産”だけがうず高く積み上げられていく。そしていま、旧総合花巻病院跡地の利活用の行方に市民の目がいっせいに注がれている。
「どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ…」―。一日も早く、本物の”風神”…「風の又三郎」(賢治)の来訪を望みたい。昔から「風のまち」と言われてきた当地に「凧あげ唄」というわらべ歌がある。「風どうど吹いて来(こ)/海のすみから風どうど吹いて来/豆けら風どうど吹いて来…」―。こんな歌い出しである。
(写真は開示延長を知らせる通知書)
《追記》~”絶望市民”を名乗る方から、さっそくコメント
政治スキャンダルに発展しそうな様相かも。まさしく、”ウエダゲート”事件ですな。
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