「JR花巻駅橋上化」にかかる関連予算が9日開会の花巻市議会予算特別委員会の最終日で可決され、2年間にわたった“橋上化”戦争の攻防に終止符が打たれた。この日上程された「JR花巻駅東西自由通路等整備事業」(3,178千円)については、櫻井肇議員(共産党花巻市議団)と本舘憲一議員(はなまき市民クラブ)が「実質的な新駅建設で、投資効果上も疑義がある。さらに、その手法に透明性が欠ける。受益のほとんどがJRなのに市が事業主体になっているのは納得できない」などとして反対討論をした。採決の結果、賛成18VS反対6で、当初予算は原案通り可決された。昨年夏の市議選で市長与党と目される「明和会」(8人)が議員数の一番多い“第1会派”となったことも今回の逆転劇を後押ししたと言える。
この案件については2年前の3月定例会(2021年)で、整備にかかる調査費(2,603万円)が「より多くの市民の意見を聞くべきだ」として、14対11の賛成多数で否決された経緯がある。その直後、各種団体から橋上化推進の要望が相次ぎ、“やらせ要望”ではないかなどと迷走を繰り返した。こんな中、市側は6月定例会に同額の予算を再上程し、議会側は①花巻駅利用者を含め、より多くの市民の意見聴取を図りながら、調査実施に努めること、②調査結果は速やかに市民や議会に公表し、事業実施の際は市民参画を図りながら進めること、③JR東日本との協議においては、応分の負担を強く求める等、事業費の圧縮に努めること―の3項目の付帯決議を付して、可決した。
「(JR所有の)駅前の土地については、購入するためにJR本社の社長の許可が必要となる。現在でも盛岡支社と話し合いをしているが、花巻市としてJRの社長が許可を出した際には図書館を建設するという決定に近い話がなければ社長に話せないと言われている。JRは花巻駅の橋上化をやりたいと思っており、橋上化の話が進めば、土地の売買について真剣に話をしてくれる可能性はある。橋上化がなくなった際には、駅前に図書館を建設することについてもどうなるか分からない」(2022年6月28日開催の松園地区の市政懇談会での市長発言)―。こうした中で突然浮上したのが、橋上化と新花巻図書館の駅前立地との“ワンセット”疑惑だった。
昨年の9月定例会で伊藤盛幸議員(はなまき市民クラブ)がこの点をただしたのに対し、上田東一市長は「反問権」を振りかざしながら、こう抗弁した。「言葉尻をとらえるのでなく、互いに前向きに検討していこうではありませんか。仮に図書館が駅前のJR所有地に立地できなかったとしても、駅周辺の活性化のため、橋上化は着実に進めていきたい」―。この日の予算審議で橋上化路線に急発進の舵を切った一方で、逆に注目を浴びるのは“ワンセット”とのもうひとつのプロジェクトである新花巻図書館の行方である。
その立地場所としては市側が第1候補に挙げるJR所有の駅前スポ-ツ店用地に代わって、旧総合花巻病院跡地が有力候補地として市民の関心を集めている。この日の委員会でも久保田彰孝議員(共産党花巻市議団)はこう力説した。「市民の健康を守ってきた花巻病院の創立から今年がちょうど100周年。眼下に町並みを望み、背後に霊峰・早池峰を背負うこの景観こそが図書館立地の最適地。この光景を実際に見た市民の多くが、ここしかないと言っている。市長の決断を促したい」―。“別物”論を掲げる上田市長がどう決断するのか。さらに立地場所について、駅前と病院跡地とに分かれた市民の意見集約を今後、どのような方法で集約しようとするのか―その一挙手一投足から目が離せない。
(写真は橋上化“戦争”に終結を告げた瞬間。最上段の右端が高橋議員。今後の市民の関心は新図書館の立地場所に=3月9日午前、花巻市議会議場で。インタ-ネットの議会中継の画面から)
《追記》~“二枚舌”議員の矜持とは!?
「巨額な予算を要する公共施設の事業実施可否は、市民参画ガイドラインの中でも示されているとおり、建設の趣旨が市全域に関わり、多くの市民が等しく利用できる施設であるか否かについて、その必要性、将来性を、今後の財政状況を見据えながら、この本会議場で採決されるべきものであります」―。2年前の3月定例会一般質問でこう述べ、橋上化関連予算案に反対の意思表示をした高橋修議員(明和会、当時は「市民クラブ」所属)がこの日は一転、賛成に回った。状況に応じて考えが変わるのはあり得ることであるし、あってしかるべきことでもあるが、こう大見えを切った以上は堂々と”賛成”討論を披歴するのが、議員たるものの最低限の矜持(きょうじ=たしなみ)というものであろう。
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