「日米地位協定」抜本見直しの陳情、賛成多数で可決…反対論の薄弱さを露呈

  • 「日米地位協定」抜本見直しの陳情、賛成多数で可決…反対論の薄弱さを露呈

 

 花巻市議会3月定例会に提出していた「日米地位協定」の抜本見直しを求める陳情が3月19日開催の本会議最終日に賛成多数で可決された。この陳情をめぐっては先の総務常任委員会(3月8日付当ブログ参照)で採択され、内閣総理大臣や関係大臣への意見書の送付が決まっていた。採決は議長を除く25人で行われ、賛成19対反対6。3年前、同趣旨の請願が否決された経緯があったが、今回の可決によってこれまで“他人事”として無関心を装ってきた地方議会の間にもようやく、変化の兆しが見えてきたようだ。今後は「沖縄」問題に“自分事”として向き合うことが求められることになる。

 

反対討論をした公明党所属の菅原ゆかり議員(2期目)はその根拠として、①防衛や安全保障などの外交問題は国の「専管事項」であり、日米地位協定については国家間で協議を進めるべきだ、②基地を有する自治体は犯罪や騒音に悩まされているが、当市には米軍基地はなく、地方自治法が定める「公益」が侵害されるということはない、③地方議員は地域課題に取り組むべきだ―などと主張した。余りの稚拙さに驚いた。日米地位協定の是非をめぐる県民投票(1996年)では89%以上の沖縄県民が見直しを求め、今年2月に行われた「辺野古」新基地建設に伴う埋め立て工事の県民投票でも反対が70%以上に及んだ。こうした沖縄の「民意」を一顧だにしない姿勢にもびっくりしたが、事実認識の貧困さにさらにのけぞってしまった。

 

 たとえば、日米地位協定は米軍基地だけではなく、日本全国に網羅的に適用されている。その基地の7割以上が沖縄県に偏在していることによって、米兵らによる凶悪犯罪や米軍機の墜落事故、騒音被害などがこの地域に集中しているのは周知の事実である。つまり、当地花巻の「公益」(市民の安心・安全)も現行の日米安保体制下においては実は、沖縄を含むこうした米軍基地によって、担保されているという“想像力”の欠如が今回、白日の下にさらされた。さらに、オスプレイ(垂直離着陸輸送機)の飛行訓練は岩手県を含む東北地方でも展開されており、低空飛行による騒音被害が出ているほか、過去においては花巻空港が日米地位協定第5条(米軍関係者の移動の自由)の規定に基づき、日米共同訓練の際に米軍機や軍人の出入りに利用されたケ-スもある。

 

 一方で、「専管事項」を取り決めた法令は一切なく、逆に憲法は第92条から第95条にわたって、地方自治のあるべき姿(地方自治の本旨)を定めている。地方議員がよって立つべきはまず、憲法のこの規定である。こうした事実には一切触れないまま、菅原議員は「当市の市民が日米地位協定によって、直接の影響を受けているわけではない」とも言い放った。これこそが”他人事”(つまりはこの人の信じがたい無知・無関心ぶり)の真骨頂というべきであろう。沖縄の「民意」に寄り添うと口では言いながら、真逆の強権支配を続ける「安倍一強」にぴったりと“寄り添って”いる「平和の党」の姿がそこにある。こうした低劣な議論がまかり通るようでは「議会の危機」や「議員の知的劣化」が叫ばれてもいたし方あるまい。そして、私は何よりもその羞恥心(しゅうちしん)のなさに二の句が継げない。

 

 ところで、県内14の市議会のうち、奥州市議会と二戸市議会が3月定例会で議員発議によって、同趣旨の意見書を採択したほか、北上市議会では市外からの陳情を審査対象とし、3月22日の議会最終日で採択する方向で調整している。花巻市議会の意見書(案)は以下の通り。

 

 

 日米地位協定は1960年、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の締結に伴い、従来の日米行政協定にかわって双方で合意されました。しかし、公務中に犯罪を起こした場合、米国側の裁判権が優先されるなどその不平等性が以前から指摘されてきました。日本政府は運用の改善を主張するにとどまっていますが、最近になって、地方自治体や地方議会において協定の抜本的な見直しを求める声が急速に広がりつつあります。

 

 例えば、当花巻市議会もその一員である全国市議会議長会は2016年5月、日米地位協定の抜本的な見直しを求める部会提出決議を採択し、この前年には全国町村議長会も同じ趣旨の特別決議を採択しています。さらに、2018年7月には全国知事会が抜本見直しの提言書をまとめ、日米両政府に提出しました。提言書はこの中で米軍基地は防衛に関する事項であることは十分認識しつつも、各自治体住民の生活に直結する重要な問題であると指摘し、その必要性を訴えています。

 

 よって、日米地位協定の抜本的な見直しを求めます。以上、地方自治法第99条に規定により、意見書を提出します。

 

 

(写真は3年前、米軍属によって引き起こされた「女性暴行殺人」事件の現場。手を合わせる人が絶えなかったが、3回忌を機に祭壇は撤去された。私も二度、この現場に足を運んだ=沖縄県恩納村で、インターネット上に公開の写真より)

 

 

 

《追記―1》~宮沢賢治が泣いている

 

 花巻市は宮沢賢治の精神をまちづくりの基本にすえ、将来都市像として「イ-ハト-ブはなまき」の実現を掲げている。「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」(『農民芸術概論綱要』)という賢治のメッセ-ジや、詩「雨ニモマケズ」の中で繰り返される「行ッテ」精神はそのまま、沖縄に寄り添うことの大切さを教えている。日米地位協定の抜本見直しに反対の論陣を張った公明党所属の菅原ゆかり議員が実は「賢治精神」の発露の場であり、賢治自身も一時期教壇に立ったことがある「花巻農学校」(当時、稗貫農学校)の卒業生であったことをふと、思い出した。

 

《追記―2》~目取真さんが勝訴

 

 2016年4月、名護市辺野古の新基地建設への抗議活動中に米軍に拘束された芥川賞作家の目取真俊さんが、米軍の約8時間に及ぶ拘束や中城海上保安部の緊急逮捕は人権侵害や憲法違反に当たるなどとして、国を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決で、那覇地裁(平山馨裁判長)は19日午前、中城海上保安部の身柄引き受けの遅延に合理的な理由はなく、緊急逮捕にも違法性があると判断した。目取真さんが勝訴した。【3月19日付「琉球新報」電子版】

 

 

《追記―3》~ジュゴンの死骸、見つかる

 

 国の天然記念物で絶滅の恐れがあるジュゴン1体の死骸が18日、沖縄本島北部の西海岸の沖合で見つかった。本島周辺に生息する3頭のうちの1頭とみられ、沖縄県などが確認している。今帰仁(なきじん)漁協によると、18日午後5時ごろ、今帰仁村の運天漁港沖の防波堤付近で死骸が浮いているのを、組合員が見つけた。死骸は回収し、漁港内で保管している。体長約3メートルで、頭部や顔、胸びれに傷があり、出血もしているという。防衛省沖縄防衛局の調査では、ジュゴンは本島周辺に3頭しか確認されておらず、そのうちの1頭とみられる。3頭のうち、西海岸の古宇利島(こうりじま)沖に生息する「個体B」の可能性があり、県や国が特定作業を進める(3月19日付「朝日新聞」デジタル)

 

 

 

 

 

 

 

 

2019.03.19:masuko:[ヒカリノミチ通信について]

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